恋をするなら、キミとがいい

  「シズルって、女みたいだよな」

 中学の時、そう言って自分を笑っていたのは、幼馴染で友達だと思っていた相手、井高翔太(イダカ ショウタ)。
 なんだよ。幼馴染なんだから、そういう噂とかを、一番に怒ってくれてもいいのに。お前が、一番に笑うのかよ。
 それまで、「ショウタくん」と呼んでいた相手。その相手の裏切りに、志弦は傷つき、彼とは違う高校に進学し、彼とは違う東京の大学に進学した。学ぶ学部だって、ヤツとか被らせない。
 これで、実家に帰らない限り、アイツと人生が交差することはない。
 そう思っていたのに。

  「今日から、よろしくお願いしまっす!」

 志弦のバイト先に入ってきた、同じ大学の工学部の後輩、氷鷹陽翔(ヒダカ ハルト)。
 似てるけど、名前も違う。年齢だって。顔だって。
 「イダカ」と「ヒダカ」。全然違う。なのに。

 ――どうしようもなく、アイツを思い出してしまう。

 氷鷹の持つ明るさのせいか。それとも、その強引なまでにこっちを引っ張ってく性格のせいか。
 離れたい。だけど、状況が志弦を離してくれなくて。

  「俺、佐波先輩に何かしましたか?」
 
 志弦の態度に不審がる氷鷹。でも、「なぜ」も「どうして」も説明できなくて。

  「ゴメン。キミは悪くない。悪くないんだけど……」

 氷鷹と仲良くやることはできない。どうしても過去を思い出して、苦しいんだ。
 そんな志弦の態度に、めげることなく距離を縮めてくる氷鷹。

 「俺、ちょっくら役所行って、名前、変えてきます! ついでにその〝イダカ〟ってヤツも殴ってきていいっすか?」

 志弦のために。志弦と仲良くなりたいから。
 そんな氷鷹の態度に、硬く閉じこもっていた志弦の心はほぐれてゆき――。

  「オレ、氷鷹に会えてよかったよ」

 過去のことは彼に出会うために、彼を大事に思えるようになるために用意されてた、ただのステップ。
 そう思えるようになった志弦は、氷鷹の差し出す手を、自ら掴む。
24h.ポイント 7pt
220
小説 38,770 位 / 196,446件 BL 10,656 位 / 26,034件

あなたにおすすめの小説

宰相ポジに転生してたらしいのでめちゃくちゃ自分のために頑張ります

Mei
BL
──神子召喚の儀が行われた日、私は前世の記憶を思い出した。 攻略難易度が高すぎてほとんどバッドエンドになってしまうBLゲームの宰相に転生したレジナルドは、愛する家族を守るため&国の崩壊を防ぐため、宰相ポジを存分に利用して神子総愛されルートを目指すことにした。 ところが、なぜか宰相の自分が色んな人物に愛されてしまい──!? 40代宰相おじさんが老若男たちに愛される話です。 もしかしたらセクシーな展開になるかもしれないです。 相手未定、総受け気味。

それ以上近づかないでください。

ぽぽ
BL
「誰がお前のことなんか好きになると思うの?」 地味で冴えない小鳥遊凪は、ずっと憧れていた蓮見馨に勢いで告白してしまう。 するとまさかのOK。夢みたいな日々が始まった……はずだった。 だけど、ある出来事をきっかけに二人の関係はあっけなく終わる。 過去を忘れるために転校した凪は、もう二度と馨と会うことはないと思っていた。 ところが、ひょんなことから再会してしまう。 しかも、久しぶりに会った馨はどこか様子が違っていた。 「今度は、もう離さないから」 「お願いだから、僕にもう近づかないで…」

番を失くしたアルファと添い遂げる方法

takumi sai
BL
亡き姉の婚約者と同居することになった千歳祐樹。彼女を失ってから2年、祐樹は姉の元婚約者である外科医・立花一狼に対して抱いた禁断の感情を封印すべく、オーストラリアへ留学していた。 「俺は彼女だけを愛し続ける」—そう誓った一狼は、今も指輪を外さない。孤高のアルファとして医師の道を歩む彼の家に、一時的に居候することになった祐樹は、罪悪感と憧れの間で揺れ動く。 「姉さんじゃない…僕は僕だ…」 「俺たちも似ているのかもな。葵の影に囚われて、前に進めない」 未亡人医師×自責系学生 オメガバース。 二人の葛藤と成長を描いた、切なくも温かい愛の物語。番を亡くした医師と、彼の元婚約者の弟の、禁断の恋の行方とは

惚れたら負け

すずかけあおい
BL
昼休みの社内食堂。 宮崎が彼女に振られたことを友人の秋吉に愚痴り、そこに宮崎に惚れている朝野が現れ、いつものように宮崎の隣に座る。 〔登場人物〕 朝野 直誠(あさの なおまさ)27歳・情報システム部 宮崎 繚(みやざき めぐる)29歳・総務部 秋吉 清仁(あきよし きよひと)29歳・経理部

かわいいお兄さんは好きですか?

すずかけあおい
BL
年上の幼馴染にムラムラ悶々としてしまう年下攻め×それに気づいていない無自覚誘い受け。 攻め視点、クリスマスの話です。 〔攻め〕津田 史崇(つだ ふみたか)18歳 〔受け〕佐倉 鼓(さくら つづみ)20歳

【完結】出会いは悪夢、甘い蜜

琉海
BL
憧れを追って入学した学園にいたのは運命の番だった。 アルファがオメガをガブガブしてます。

【完結】雨降らしは、腕の中。

N2O
BL
獣人の竜騎士 × 特殊な力を持つ青年 Special thanks illustration by meadow(@into_ml79) ※素人作品、ご都合主義です。温かな目でご覧ください。

愛させてよΩ様

ななな
BL
帝国の王子[α]×公爵家の長男[Ω] この国の貴族は大体がαかΩ。 商人上がりの貴族はβもいるけど。 でも、αばかりじゃ優秀なαが産まれることはない。 だから、Ωだけの一族が一定数いる。 僕はαの両親の元に生まれ、αだと信じてやまなかったのにΩだった。 長男なのに家を継げないから婿入りしないといけないんだけど、公爵家にΩが生まれること自体滅多にない。 しかも、僕の一家はこの国の三大公爵家。 王族は現在αしかいないため、身分が一番高いΩは僕ということになる。 つまり、自動的に王族の王太子殿下の婚約者になってしまうのだ...。