念其霜中能作花 -念(おも)え 其れ霜中に能(よ)く花を作すを-

 とある中国の後宮。皇帝は皇后となった女を蛇蝎のごとく嫌っていた。
 ――女が、皇帝の愛した寵姫を殺してまでその地位に上り詰めたから。寵姫を殺したのは皇后。
 「お飾りの皇后」「寵愛をいただけない哀れな皇后」
 そんな皇后の冷たい室へ、九年ぶりに皇帝が訪れる。
 「九年前のご寵姫だけじゃない。新たに後宮に上がることになった妹にまでその悋気をみせた」
 愛されないとわかっていても、その皇后という地位にしがみつくのか。自分の妹ですら叩き出すのか。
 嫉妬、悋気、強欲、傲慢、そして冷酷。稀代の悪女。笑い方を忘れた女。
 皇帝は語る。
 「今まですまなかった」――と。

―――――――
 「念其霜中能作花」は「念(おも)え 其(そ)れ霜中に能(よ)く花を作(さく)すを」と読みます。雪の中であってもよく花を咲かせる梅を素晴らしいと褒め称える漢詩。中国南北朝時代の詩人、鮑照の『梅花落』から採用させていただきました。
 梅の花=開花期は1月~3月。花言葉は「上品、高潔、忍耐」。
 香栄=梅の別名、「香栄草(かばえぐさ)」から。
 恵風=2月の別名、「恵風(けいふう)」から。
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