「おかえり」と「ごちそうさま」のカンケイ。

 十年前、事故で両親を亡くしたわたし。以来、母方の叔母である奏さんと一緒に暮らしている。
 「これからは、私が一緒にいるからね」
 そう言って、幼いわたしの手を握ってくれた奏さん。
 敏腕編集者で仕事人間な彼女は、家事がちょっと……というか、かなり苦手。
 だから、ずっとわたしが家事を担ってる。
 奏さんのために、彼女の好物を作って帰りを待つ日々。
 ゴハンを作るのは楽しい。だって、奏さんが「美味しい」って言ってくれるから。
 「おかえりなさい」と出迎えて、「ごちそうさま」を聴くまで。それがわたしの至福の時間。
 だけど最近、奏さんの様子が少しおかしくて――。
 一緒に並んで手をつないでくれていた奏さん。彼女が自分の人生を一歩前へと歩きだした時、わたしの手は何を掴んだらいいんだろう。
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