だって、体が求めてる!

若松だんご

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14.どデカいゾウさん問題

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 オレンジ色の淡い光しかない寝室。
 どうかすると自分の足先さえおぼつかないほど暗い空間。
 私や彼が身じろぎするたび、乱れていくシーツ。
 ベッドの脇には、脱ぎ捨てられた互いの服。
 シャツもスカートも下着さえも。朝比奈さんに脱がされ、自分でも脱ぎ捨てた。
 それは、朝比奈さんも同じ。彼が脱ぐのを、私も手伝った。
 今の私達に、隔てるものは何もない。

 ――部屋に来たら……、これぐらいではすまないよ?
 ――怪我してるけど、だからって、多分止められない。

 もしかして。もしかしてだけど。
 さっき、私がゴハンを作りに来た時は、朝比奈さん、すっごく我慢してたのかもしれない。

 「あっ……!」

 マンションに戻ってきて、互いにキスをして抱き合って。もつれ合うようになだれ込んだこの寝室。ここでの彼は、普段の紳士な雰囲気とは全然違う。優しく扱ってはくれるけど、とっても性急に、激しく私を求めてくる。
 食べられる。
 喰われる。
 そんな風に思うぐらい。
 せめてシャワーを浴びてからってお願いも聞き入れてくれなかったし、なんなら「あとで、一緒に浴びよう」とまで言われてしまった。
 左小指を骨折して、包帯まで巻いてるってのに。
 そんなことまったく意に介さず、貪るように私の体を手で唇で愛撫する。

 「壬生さん……」

 乱れたシーツの上。仰向けに転がった私の上に、朝比奈さんが覆いかぶさる。

 「ン……、フ……ッ」

 降りてきた唇。
 その濡れた唇に逆らわず、自分の唇を押しつける。
 何度も、何度も。
 角度を変えて。
 
 (もっと……)

 体への愛撫はもちろん、こうしてキスするのもすっごく気持ちいい。キスしてるだけなのに、体の奥が熱くなって、頭がヘンになりそう。

 「朝比奈さん……」

 キスの合間に名前を呼んで、彼の首に手を回す。
 性急に、貪欲に。相手を求めてるのは、朝比奈さんだけじゃない。
 私だって、もっと彼が欲しい。食べられるだけじゃない。私も彼を食べたい。

 「ンンッ……」

 噛みつくように、開いた唇にキス。
 そこから、どちらからともなく舌を絡める。
 彼の舌のザラッとした感覚。口蓋をなぞられるゾクッとした感覚。
 キスだけじゃない。
 抱き寄せ、身を寄せたことで彼の体と私の体がこすれ合う。熱く、湿った体が、キスでこすれ合って、そこからまた体が快感を得る。

 (気持ちいい。気持ちいい……)

 与えられる愛撫に陶酔する。
 朝比奈さんがするように、私も手を滑らせ、彼の肌をなぞる。時折その手に反応して、体をピクッと震わせる彼。軽く呻き漏らす吐息。たまらない。

 「京香って、呼んでいい? 呼ばせて?」

 キスを終え、首筋をなぞるように落ちていく唇。少し甘えるような問いかけ。

 「あ、う、ンッ! い、いいよ」

 浮いた鎖骨をチュッと吸われ、どっちかわかんない「いいよ」になった。

 「京香……」

 少し顔を上げた朝比奈さん。うれしそうで、艶めいてて、すっごくエロい顔。私を見つめる眼差しは、肉食の獣を思わせるほどなのに、その目に、どうしようもなく体が熱くなってくる。食べられることに、悦びを感じてしまう。

 「あっ! そ、こぉっ、アアッ……」
 
 それまで私の表面にしか触れてなかった彼の手が、滑るように私の足の間にたどり着き、ツプリと指が中に沈む。

 (ナニ、コレ……)

 指なんて、今まで何度も挿れられたことあるはずなのに。愛撫なんて、初めてじゃないはずなのに。

 「スゴい、濡れてる……、熱い……」

 長い指をクチュクチュ動かす朝比奈さん。少し驚いたように言った。

 「あ、アァン……!」

 私、こんなに濡れるタチだっけ? こんなに感じるタチだっけ?
 嬌声をを上げながら思う。
 私、こんなに淫乱だったっけ?
 もっとしてほしくて、もっと乱してほしくて。自ら脚を開く。

 「朝比奈、さん……」

 目が潤む。声が熱い。

 「京香……」

 「ヒぅ……! あ、アアッ、アァン……ッ!」

 私の願いを察したように、朝比奈さんの顔が、脚の間に沈み、挿れた指が二本に増えた。チュッと吸い上げられ、舌で転がされるクリストス。

 (ナニコレ。ヤバ、い……!)

 嬌声を上げるだけでは、シーツを握りしめるだけでは耐えきれない、とんでもない快感が駆け上ってくる。

 「京香。逃げないで」

 よじりたかった腰をグイッと持ち上げられ、更に深く、しつこく、激しい愛撫される。グチュグチュと掻き出される蜜。時折、ジュルっと啜り上げる音が暗闇に響く。

 「やっ、ダメッ、ダメェッ……!」

 こんな愛撫、知らない。こんな気持ちよさ、知らない。
 目の前チカチカしてくるし、ギューッと体の奥に爆発寸前のマグマが溜まる。
 ヤバい。これは、絶対。

 「イッ、イクッ! ダメッ、ダメェッ……!」

 叫ぶと同時にマグマ爆発。バァンと弾けた快感が、足先まで突き抜ける。

 「ア、ヒ……、ア……」

 声がうまく出ない。持ち上げられた腰をゆっくり下ろされるけど、体は、シーツに触れただけで、ビクンビクンと跳ね続ける。そして跳ねるたびに、トロトロと膣からお尻に向けて蜜が流れ落ちていく。

 「京香……」

 少し離れてた朝比奈さんが戻ってくる。
 イカされてうれしいのに。愛されて幸せなのに。
 なのに、その顔を見ると、とんでもなく恥ずかしい。
 でも。

 (うれしい……)

 離れていたのは、彼がコンドームを着けてたから。着けたってことは、これで終わらない。戻ってきたってことはその先があるってことだから。
 うれしい。
 この先に、指と舌以上の快感が待っている。今よりもっと、いっぱい愛してもらえる。

 「朝比奈さん……」

 そんな期待を込めて彼の名前を呼ぶ。
 初めて会った時から、もしかしたらずっと欲しいと思ってたもの。
 それを今、やっともらうことができる。
 股の間、開いた私の脚の向こうに陣取った朝比奈さん。
 ああ、ようやく挿ってくるんだ。あれが、――って。

 (デカッ!)

 これからのことに陶酔しかけてた思考が、ヒクッと止まる。
 ゴムをつけた、朝比奈さんのソレ。で、デカすぎない?
 興奮してる、勃ってるのはわかってるけど。けどっ!

 (は、入る――の?)

 まさか、処女でもないのに、裂けて出血……とかないよね? ね?

 「京香。もし、辛かったり、痛かったら、言って?」

 「う、うん……」

 素で答えてしまう。
 私が強張っちゃったことに気づいたのか、少しでも怖がらせないように、少しでもリラックスできるように(?)朝比奈さんが私の脚を持ち上げ、足首にキスしたり、指先を吸ったりしてくれるけど。

 (全然集中できない!)

 デカい。デカいよ、アレ。
 暗いからよく見えなかったけど、あれ、先っぽ、お腹につくぐらい反ってたよね? よくバナナとかに例えられるけど、バナナどころの太さに感じられなかったんだけど?
 ガンガンのバッキバキ。
 あれが、今から――。

 「京香」

 私の上にのしかかる朝比奈さん。
 大きく開き濡れたそこに、ゴム越しでもわかるぐらい滾ったソレが押し当てられる。

 (痛くありませんように――!)

 ものすごく場違いな祈りを込めて、ギュッと目を閉じる。

 ズプリ。

 「アッ!」

 押し入るそれに、声を上げる。
 焼けつくような熱さ。圧倒的な質量。
 なのに。

 (気持ち……いいっ!)

 蜜のぬるみのせいか、ミチミチと無理やり押し広げられてるのに気持ちいい。彼には狭かった(かもしれない)そこを、腰を推し進めることで、彼が最適な形に拓いていく。

 「アアッ!」

 ゴリュッと何かがぶつかる音が奥から響く。
 
 「クッ……!」

 その衝撃は、彼にも伝わったらしく、苦しげに息を漏らし、そして――。

 ドチュ。
 ゴリ。

 「アッ、ヒィ、アアッ……!」

 ぶつかったのは、おそらく私の子宮口。それを確認するように、二度、三度、突き上げられ、腰をグリグリ通しつけられた。同時に、腫れた陰唇に彼の茂みが押し付けられる感覚。

 (全部、入ったの……かな?)

 入ったのなら、受け入れられたのならいいんだけ……どっ!

 「アアッ! ンうっ……!」

 入ってるだけ、腰を動かされてるわけでもないのに、大きく嬌声を上げる。
 このマンションの防音大丈夫だよね? 漏れてないよね?

 「京香、もう少しだけこのままでも、いい?」

 「う、うん……」

 私を抱きしめる朝比奈さん。
 いや、このままで、動かないでってのはこっちのセリフ。
 今動かされたら、私、気持ち良すぎて気絶しそう。
 それでなくても、朝比奈さんのそれ、ものすごく気持ちいい。
 最初は、あんな大きなの大丈夫? って思ってたけど、今はその大きさがすごく気持ちいい。
 私がユルユルお股になってたとか、ガバガバ女だったとかそういうのじゃなくて。

 私、これが欲しかった。

 って思う。
 こうして抱き合って、つながり合って。
 ずっとずっとこうしたかったんだって、こうして一つになれたことに喜びを感じる。
 
 「直登さん……」

 私のなかに彼がいる。私の身体を抱きしめる彼がいる。
 穏やかな波のように、くり返しやってくる快感と幸せ。身体のなかから、とても満たされる。

 「京香……」

 そっと朝比奈さんが私の頬に触れる。そこから交わされるキス。

 「ン、フッ、ンン……」

 最初は軽いキスだったのに、次第に深く舌を絡めるようなキスに変わっていき。

 「ごめん。これ以上は限界」

 「アアッ!」

 口が寂しい。そう思う間もなくドチュっと腰を叩きつけられた。

 「京香のなか、気持ち良すぎ、てっ!」

 さっきまでとは打って変わって、激しくぶつけられる。

 「アッ、い、イイッ! わたし、もっ……!」

 その激しさに、身体が、胸が揺れる。その感触すら気持ちいい。耐えられなくて、必死にシーツを握りしめる。
 腰を動かされるたび、膣がめくり上がるような感覚。そして押し戻されるような感覚。
 擦れる。ぶつかる。離れる。
 襲い来る快感。
 満たされるだけでは足りなかった身体が、絶頂に向けて膣を震えさせる。
 欲しい。ちょうだい。あなたのすべてを。
 そして、一緒に。

 「京香っ!」

 「アッ、ああっ、あああっ……!」

 ドクンと、私の中で爆ぜる。
 ゴム越しでもわかる、熱いもの。

 「あ、イッ、アアッ……」

 脈打つたびにあふれる熱さに、ビクンビクンと身体が跳ねる。快感は身体の隅々まで満ちて、頭が真っ白になる。
 セックスで得る、絶頂の気持ちよさなら知っている。そう思っていたけれど。

 (こんなの、初めて……)

 本気で思った。
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