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7.鶴は千年、神は何年?
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まったくとんでもないことになった。
勝手に戸籍を改ざんされて、それを直しにやってきたら、カモネギよろしく(自称)神様に嫁がされてしまった。
それもこの結婚はひいおじいちゃんをはじめ、町の人全員が諸手を挙げての万歳三唱状態。ここを抜け出して逃げようにも、誰も助けてくれないだろう。電車に乗って逃げようにも、途中のどこかで見つかれば、またここに連れ戻される。
それに。
(町の人、人質にされちゃったからなあ)
あの自称神様男。私が逃げたら、町に災いを起こすー!! みたいなこと言ってくるし。そんなの勝手にしなよ!! 私を騙すような町、勝手に滅ぼされればいいんだわ――なんてこと、言えたらいいんだけどねえ。はあ。
用意された部屋で一人、何度もため息をもらす。
どんだけ町に腹を立ててたとしても、災害起こされたら、後味悪いじゃん? ひいおじいちゃんたちも暮らしてるんだし。それに、災害なんて起きなくっても、私が逃げたことでひいおじいちゃんたちが悪く言われるかもしれないし。村八分ってやつ? こんな小さな町でやられたら、ひいおじいちゃんたち、ひとたまりもないよ。はあ。
部屋の窓。その窓枠にひじをついて、空を見上げる。
これでもかってぐらい青い空と、負けないぐらい緑を濃くした山。その裾野には稲穂のそよぐ田んぼと集落。海を映した鏡のような海。
ここが田舎の温泉宿とかなら、最高の景色で、最高のロケーションなんだけどなあ。
源泉かけ流しの天然温泉のある、知る人ぞ知る隠れた宿。広がる海を眺めながらの露天風呂。もしくは、満天の星空を眺めながらの露天風呂。美人女将がいて、この後、地元の新鮮な魚介類を使った絶品料理とか出てくる――とか、そういうの。
「なんだ。吾妹はそのようなものを望んでいたのか」
「ぅわっ!! ななな、なにっ!?」
窓枠の上。そこから、ヌッと現れた顔にメチャクチャ驚く。「驚く」なんて言葉じゃ済ませられないほど、心臓バクバク。口から飛び出る……っていうより、胸を突き破って出てきそうなぐらい。
「そこまで驚くことはなかろう。ここは吾の社だ。吾がどこから現れてもおかしくないだろう」
ヌッと現れたそれは、するりと窓から部屋に入ってくるけど。
「あ、アンタねえっ!! いくら自分の家だからって、もっとまともな現れ方があるでしょっ!!」
「まとも?」
「窓から入ってくるなんて、非常識にもほどがあるわよ!!」
入室するにしても、窓から「ヌッ」はないと思うのよ。「ヌッ」は!!
遅刻したヤンキーが窓から入ってくる――なんてのは学生の話で。それでも、逆さまの「ヌッ」と顔を出したりしないわよ。ヤンキーだって、重力に従って、上下を間違えずに窓から入ってくるわよ。(多分)
「なら、あちらから入ってきたらよかったのか?」
視線の向けられたのは、なんかめでたそうな、松と鶴の描かれた襖。何枚も続くそれの向こうには長い長い廊下がある。
「いや、あそこからでも無理。勝手に入ってくることが無理」
私はまだアンタに気を許してなんかないんだからね? いくら自分の家だからって、ノックしてから入るとか、最低限のプライバシーってもんがあるでしょうよ。
「ふむ。なかなか気難しい性分なのだな、吾妹子は」
だから、勝手に吾妹子、嫁認定すんなっ!! って……。
「アンタ、その格好、なに?」
怒りよりも、そのファッションに目が行く。
ここに来た時、初めて会ったときは神主さんっぽい白い袴姿だったんだけど、今は……、その……。
「――ハニワ?」
一つに束ねられてた髪は左右に分けられ、耳の横でまとめられてる。服も白っぽいのは同じだけど、襟の合わせが逆で、下は袴じゃなく、ダボッとしたズボンの裾を紐で結んで絞ってる。首には、いくつもの勾玉が連なった飾り。
ようするに、どこからどう見ても、360度、ハニワスタイル。
「これが吾の普段の装いなのだが。おかしいか?」
「いや、おかしいとかなんとかって言うより……、この時代にそんなハニワファッションをやる人がいるとは思わなかった」
「だから、人ではないと言うておるのに」
憮然とする(自称)神様。
「似合ってないとは言ってないわよ」
その顔が面白くて、つい笑いとホンネがこぼれる。
そう。似合ってないわけじゃない。似合い過ぎてるぐらいサマになってる。最初に見た神主スタイルより、こっちのが板についてる。
「そういやアンタ、初めて会った時もそんな格好してたわよね」
結婚とかなんとか言われてここに連れてこられた時じゃない。私が子供のころ、森の中で助けてもらった時も、こんな感じの格好をしていた。
「この装いのが落ち着くからな。里のババ共が揃える外つ国の装いは、あまり好かぬ」
「外つ国の装い?」
外国のファッションってこと?
里の人たちは、この自称神様にジーンズでも履かせようとしてるの?
「違う。汝の言う“カンヌシスタイル”だ」
「え、あれ、日本古来の装いじゃないの?」
日本原産。100%日本製。
「違う。少なくとも吾が生まれた時にはなかった装いだ」
え、ちょっと待って。あれ、時代劇とかでもやってるような衣装だと思うんだけど。
神主スタイルが落ち着くって人も珍しいけど、ハニワスタイルのがいいって人はもっと珍しい。
「ねえ、アンタ、何歳なのよ」
百歩、いや千歩、一万歩ぐらい譲ってアンタが神様だとして。アンタ、何年生きてるのよ。
「知らぬ。下界は目まぐるしく時が移ろうのでな。百年、二百年ぐらいは数えておったが、面倒なので今は数えておらぬ」
面倒なのでって。
「じゃあ、その格好が普通だった頃から生きてるっていうの?」
「そうだ。吾の伯父上も似たような出で立ちをしておった」
「伯父上?」
「吾の母上の兄だ」
いや、「伯父=両親の兄」「叔父=両親の弟」なんてのを確認したわけじゃなくって。
「というか、アンタ、母親とかそういう親族がいるのね」
「自分は神様だー!!」なんて言い出すから、そういう血族がいるとか、思いもしなかったわ。
「遥か昔に黄泉路を下ったがな。母も伯父も人であったから」
え。あ、そっか。
伏し目がちになったソイツに、胸がツキンと痛んだ。百歩、いや千歩、一万歩ぐらい譲って神様だとしても、ズケズケ訊いてもいいことじゃなかったよね。
「構わぬ。汝には、吾のことを知っておいてほしいからな」
少しだけ微笑んだ、(自称)神様。
「吾は、この地を治めておった伯父の妹、斎姫だった母と天から降りてきた神である父との間に生まれた」
ってことは、神様と人のハーフ?
「そうだな。神と人の間の子だ。伯父が死に、母が死に。天の父のもとに帰ってもよかったが、母との思い出が忘れがたくてな。そのままこの地にとどまっておる」
へえ……。って、ちょっと待って。
“ハニワ”って古墳時代よね?
前方後円墳とか、土器とか、「サンチンセイコウブ」みたいな呪文があったりなかったりする頃よね?
「ナントすてきな平城京」(710年)とか、「ナクヨうぐいす平安京」(794年)とかにはハニワはなくなってるし。「イイクニ作ろう鎌倉幕府」(1192年)とか、「イチゴパンツで太閤検地」(1582年)とか、「ヒーローオオゼイ、関ケ原」(1600年)とかだとチョンマゲだろうし。
もし素直に信じるなら、とんでもなく長寿で、とんでもなく長く生きてることになるけど。
「……寂しくないの?」
育ててくれた伯父さんもお母さんもいないのに。天に帰ればお父さんがいるのに。
「今は汝がおるからな」
不意に伸びてきた手が私の髪を撫でる。
「汝が居れば飽きぬ。退屈せぬ」
クスッと笑った(自称)神様。柔らかく細められた目とか、ゆるく上がった口角とか。軽くかしげられた顔とか。
「なんだ。今日は逃げぬのか?」
へ? 逃げる?
「吾と妹背になる覚悟はできたか?」
へ? 妹背? って、あ!!
「近い、近い、近いっ!!」
眼前に迫ってきたハニワ神様をグイーッと押しのける。
「勝手に近づかないでって言ってるでしょ!! 神様だかなんだか知らないけど、馴れ馴れしくするんじゃないわよ!!」
まったく。
ちょっとかわいそう、寂しくないのかなって思った私がバカだった。あやうく、ほだされ流されるとこだったわ。
コイツは(自称)神様で、スキあらば私の貞操を狙ってくるトンデモ野郎。うっかり、その顔に見とれてたら、とんでもないことになっちゃう。油断も隙もないヤツ。
「ふむ。惜しいことをした」
クツクツと喉を鳴らして笑う神様。
「次は問わずにそのままなだれ込むとするか。さすれば、汝もここで暮らすことを是とするであろう」
なっ!! なだれっ!!
「絶対、そんなことさせないから!!」
雰囲気に流されてとかそういうの、絶対やらないからねっ!!
勝手に戸籍を改ざんされて、それを直しにやってきたら、カモネギよろしく(自称)神様に嫁がされてしまった。
それもこの結婚はひいおじいちゃんをはじめ、町の人全員が諸手を挙げての万歳三唱状態。ここを抜け出して逃げようにも、誰も助けてくれないだろう。電車に乗って逃げようにも、途中のどこかで見つかれば、またここに連れ戻される。
それに。
(町の人、人質にされちゃったからなあ)
あの自称神様男。私が逃げたら、町に災いを起こすー!! みたいなこと言ってくるし。そんなの勝手にしなよ!! 私を騙すような町、勝手に滅ぼされればいいんだわ――なんてこと、言えたらいいんだけどねえ。はあ。
用意された部屋で一人、何度もため息をもらす。
どんだけ町に腹を立ててたとしても、災害起こされたら、後味悪いじゃん? ひいおじいちゃんたちも暮らしてるんだし。それに、災害なんて起きなくっても、私が逃げたことでひいおじいちゃんたちが悪く言われるかもしれないし。村八分ってやつ? こんな小さな町でやられたら、ひいおじいちゃんたち、ひとたまりもないよ。はあ。
部屋の窓。その窓枠にひじをついて、空を見上げる。
これでもかってぐらい青い空と、負けないぐらい緑を濃くした山。その裾野には稲穂のそよぐ田んぼと集落。海を映した鏡のような海。
ここが田舎の温泉宿とかなら、最高の景色で、最高のロケーションなんだけどなあ。
源泉かけ流しの天然温泉のある、知る人ぞ知る隠れた宿。広がる海を眺めながらの露天風呂。もしくは、満天の星空を眺めながらの露天風呂。美人女将がいて、この後、地元の新鮮な魚介類を使った絶品料理とか出てくる――とか、そういうの。
「なんだ。吾妹はそのようなものを望んでいたのか」
「ぅわっ!! ななな、なにっ!?」
窓枠の上。そこから、ヌッと現れた顔にメチャクチャ驚く。「驚く」なんて言葉じゃ済ませられないほど、心臓バクバク。口から飛び出る……っていうより、胸を突き破って出てきそうなぐらい。
「そこまで驚くことはなかろう。ここは吾の社だ。吾がどこから現れてもおかしくないだろう」
ヌッと現れたそれは、するりと窓から部屋に入ってくるけど。
「あ、アンタねえっ!! いくら自分の家だからって、もっとまともな現れ方があるでしょっ!!」
「まとも?」
「窓から入ってくるなんて、非常識にもほどがあるわよ!!」
入室するにしても、窓から「ヌッ」はないと思うのよ。「ヌッ」は!!
遅刻したヤンキーが窓から入ってくる――なんてのは学生の話で。それでも、逆さまの「ヌッ」と顔を出したりしないわよ。ヤンキーだって、重力に従って、上下を間違えずに窓から入ってくるわよ。(多分)
「なら、あちらから入ってきたらよかったのか?」
視線の向けられたのは、なんかめでたそうな、松と鶴の描かれた襖。何枚も続くそれの向こうには長い長い廊下がある。
「いや、あそこからでも無理。勝手に入ってくることが無理」
私はまだアンタに気を許してなんかないんだからね? いくら自分の家だからって、ノックしてから入るとか、最低限のプライバシーってもんがあるでしょうよ。
「ふむ。なかなか気難しい性分なのだな、吾妹子は」
だから、勝手に吾妹子、嫁認定すんなっ!! って……。
「アンタ、その格好、なに?」
怒りよりも、そのファッションに目が行く。
ここに来た時、初めて会ったときは神主さんっぽい白い袴姿だったんだけど、今は……、その……。
「――ハニワ?」
一つに束ねられてた髪は左右に分けられ、耳の横でまとめられてる。服も白っぽいのは同じだけど、襟の合わせが逆で、下は袴じゃなく、ダボッとしたズボンの裾を紐で結んで絞ってる。首には、いくつもの勾玉が連なった飾り。
ようするに、どこからどう見ても、360度、ハニワスタイル。
「これが吾の普段の装いなのだが。おかしいか?」
「いや、おかしいとかなんとかって言うより……、この時代にそんなハニワファッションをやる人がいるとは思わなかった」
「だから、人ではないと言うておるのに」
憮然とする(自称)神様。
「似合ってないとは言ってないわよ」
その顔が面白くて、つい笑いとホンネがこぼれる。
そう。似合ってないわけじゃない。似合い過ぎてるぐらいサマになってる。最初に見た神主スタイルより、こっちのが板についてる。
「そういやアンタ、初めて会った時もそんな格好してたわよね」
結婚とかなんとか言われてここに連れてこられた時じゃない。私が子供のころ、森の中で助けてもらった時も、こんな感じの格好をしていた。
「この装いのが落ち着くからな。里のババ共が揃える外つ国の装いは、あまり好かぬ」
「外つ国の装い?」
外国のファッションってこと?
里の人たちは、この自称神様にジーンズでも履かせようとしてるの?
「違う。汝の言う“カンヌシスタイル”だ」
「え、あれ、日本古来の装いじゃないの?」
日本原産。100%日本製。
「違う。少なくとも吾が生まれた時にはなかった装いだ」
え、ちょっと待って。あれ、時代劇とかでもやってるような衣装だと思うんだけど。
神主スタイルが落ち着くって人も珍しいけど、ハニワスタイルのがいいって人はもっと珍しい。
「ねえ、アンタ、何歳なのよ」
百歩、いや千歩、一万歩ぐらい譲ってアンタが神様だとして。アンタ、何年生きてるのよ。
「知らぬ。下界は目まぐるしく時が移ろうのでな。百年、二百年ぐらいは数えておったが、面倒なので今は数えておらぬ」
面倒なのでって。
「じゃあ、その格好が普通だった頃から生きてるっていうの?」
「そうだ。吾の伯父上も似たような出で立ちをしておった」
「伯父上?」
「吾の母上の兄だ」
いや、「伯父=両親の兄」「叔父=両親の弟」なんてのを確認したわけじゃなくって。
「というか、アンタ、母親とかそういう親族がいるのね」
「自分は神様だー!!」なんて言い出すから、そういう血族がいるとか、思いもしなかったわ。
「遥か昔に黄泉路を下ったがな。母も伯父も人であったから」
え。あ、そっか。
伏し目がちになったソイツに、胸がツキンと痛んだ。百歩、いや千歩、一万歩ぐらい譲って神様だとしても、ズケズケ訊いてもいいことじゃなかったよね。
「構わぬ。汝には、吾のことを知っておいてほしいからな」
少しだけ微笑んだ、(自称)神様。
「吾は、この地を治めておった伯父の妹、斎姫だった母と天から降りてきた神である父との間に生まれた」
ってことは、神様と人のハーフ?
「そうだな。神と人の間の子だ。伯父が死に、母が死に。天の父のもとに帰ってもよかったが、母との思い出が忘れがたくてな。そのままこの地にとどまっておる」
へえ……。って、ちょっと待って。
“ハニワ”って古墳時代よね?
前方後円墳とか、土器とか、「サンチンセイコウブ」みたいな呪文があったりなかったりする頃よね?
「ナントすてきな平城京」(710年)とか、「ナクヨうぐいす平安京」(794年)とかにはハニワはなくなってるし。「イイクニ作ろう鎌倉幕府」(1192年)とか、「イチゴパンツで太閤検地」(1582年)とか、「ヒーローオオゼイ、関ケ原」(1600年)とかだとチョンマゲだろうし。
もし素直に信じるなら、とんでもなく長寿で、とんでもなく長く生きてることになるけど。
「……寂しくないの?」
育ててくれた伯父さんもお母さんもいないのに。天に帰ればお父さんがいるのに。
「今は汝がおるからな」
不意に伸びてきた手が私の髪を撫でる。
「汝が居れば飽きぬ。退屈せぬ」
クスッと笑った(自称)神様。柔らかく細められた目とか、ゆるく上がった口角とか。軽くかしげられた顔とか。
「なんだ。今日は逃げぬのか?」
へ? 逃げる?
「吾と妹背になる覚悟はできたか?」
へ? 妹背? って、あ!!
「近い、近い、近いっ!!」
眼前に迫ってきたハニワ神様をグイーッと押しのける。
「勝手に近づかないでって言ってるでしょ!! 神様だかなんだか知らないけど、馴れ馴れしくするんじゃないわよ!!」
まったく。
ちょっとかわいそう、寂しくないのかなって思った私がバカだった。あやうく、ほだされ流されるとこだったわ。
コイツは(自称)神様で、スキあらば私の貞操を狙ってくるトンデモ野郎。うっかり、その顔に見とれてたら、とんでもないことになっちゃう。油断も隙もないヤツ。
「ふむ。惜しいことをした」
クツクツと喉を鳴らして笑う神様。
「次は問わずにそのままなだれ込むとするか。さすれば、汝もここで暮らすことを是とするであろう」
なっ!! なだれっ!!
「絶対、そんなことさせないから!!」
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