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第七章 かぎろひ立つ
二十八、かぎろひ立つ(一)
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「まあ、こんなところにいらっしゃいましたの?」
大宮の池に面した四阿。金色から藍色に染め替えられていく黄昏に、似つかわしくないほど艶やかな声がかかる。
「ああ、郎女」
「ああ、じゃありませんわよ。お探しいたしましたのよ?」
「ごめんね。でも異母兄上から逃げるにはここにしかなかったから」
言って、手にした盃を空ける。日中は照りつける日差しに汗ばんでいたが、夕暮れ時ともなれば、池のほとりに吹く清涼な風が、体に溜まった熱を解きほぐす。
「お酒、召し上がっておられますの?」
「たまには、ね。でないと疲れ過ぎで頭が動かなくなる。風雅というものを忘れてしまいそうだ」
「お務め、大変ですわね」
「まあね」
――色恋にうつつを抜かす暇があるなら、こっちを手伝え。
そう言って、書庫から自分を連れ出した異母兄。
(あの歌は、そこまで騒がれているのか)
この石川郎女と寝たと匂わせる歌。恋仲にあることを宣言した歌。
郎女には、草壁も歌を贈っている。
日嗣の御子と目される皇后の産んだ皇子と、異母弟で先帝に嘱望された皇子。
この恋の鞘当てが、皇位継承にどう影響するのか。
なんとしても子に継承させたい皇后はどう出るのか。沈黙したままの父帝は何をお考えなのか。この先、どうなってしまうのか。
憶測が飛び交い、どちらに着いたほうが得なのか、身の処し方に悩み、臣下たちが水面下で蠢く。
高市が自分を連れ出した理由は知っている。
これ以上、あの女に関わるな。危険だ。
恋で身を滅ぼすと案じているのか。それとも、かけられた罠を案じているのか。
采女との恋は禁忌。
今は帝が何もおっしゃらなかったとしても、将来も同じとは限らない。草壁と争う形になったことで、皇后が何を言い出すかわからない。
書庫にいたら、おそらくこの郎女は用事にかこつけて通い詰めただろう。書庫では誰もそれを止める人物はいない。いや、川島がいるが、異母兄は彼に期待しなかったらしい。自分の目の届くところに置き、監視するつもりなのだろう。
「息抜きしたくて。池を眺めて一献傾けてたんだ」
息を抜きたいのは本当。
「あれは、鴨ですか?」
空いた盃に郎女が酒を注ぐ。
「いや、鴛鴦だ。ほら、あんなに仲良く寄り添って浮かんでる」
「まあ……」
酒を注ぎ終えた郎女が池を眺める。
夫婦つがいで水面に浮かぶ鴛鴦。
あの鴛鴦たちは、今宵も仲良く連れ添って眠るのだろうか。それとも連れ立って遠くへ飛び去ってしまうのだろうか。
連れ添う相手がいなくなったら、「愛し、寂し」と鳴くのだろうか。
「ねえ、大津さま……」
空いていた隣の席に郎女が座る。
「よろしければ、わたくしの室でお酒を召されませんこと? ここよりは高市さまに見つかりにくうございますよ?」
あの鴛鴦のように仲睦まじく、歌のように――。
「――いや、遠慮しておくよ」
しなだれかかってきた郎女をそのままに立ち上がる。
「仕事に戻らないと。異母兄上にどやされる。きみに見つかってしまったように、異母兄上にも見つからないとも限らないしね」
「そんな、一度ぐらい……」
一度ぐらい、共寝してもよろしいのではなくて?
「すまない。あの歌はみなへの牽制だから。いつか、僕がきみを手に入れるまで、それまでに誰かに盗られてしまわないか不安だったんだよ」
「でしたら、今手に入れておけばよろしいのに」
「いや、それはまだ無理だよ。今のままではきみも危ない。きみに恋い焦がれているけど、きみを危険に晒したいわけじゃないんだ。僕がもっと政に参与して、誰からも認められる人物にならなければ」
そうしたら采女を手に入れることができる。褒美として采女を下賜されることもある。
「歌と順番が逆になるだけだよ。嫌かい?」
そっと手を伸ばし、彼女の頬に触れ、その顔を持ち上げる。
「いいえ。ではその時をお待ちしておりますわ」
艷やかに紅を掃いた唇が微笑む。
「ああ。そう時間はかけないよ。僕だって待ち遠しいからね」
名残惜しげに髪を一筋すくって流す。
「じゃあ、ね」
四阿に一人郎女を残し、回廊へと戻る。
一緒にいたいと拗ねて我儘な女と見られるか、それとも、言うことをきいて従順な女のフリをするか。
郎女のなかで、後者が取られたのだろう。今は困らせて恋の駆け引きをする時ではないと。
(さて)
指を拭い、執務に戻る。
本当に仕事に精を出さないと、本気で異母兄に叱られる。
夜の帳が下りた池。そこに浮かぶ鴛鴦の姿は闇に溶けて見ることはできない。
* * * *
「おお、やっと戻ってきたか」
明かりの灯された執務室。そこで両手を広げて迎え入れてくれた室の主。
「……異母兄上」
「お前が戻ってくるのを待ってたんだ」
よくぞ戻った。その待ちわびかた、笑顔が少し怖い。
「お前に訊きたいことがあったのだ。漢の国にあった官僚制度についてだ」
やっぱり。
「異母兄上、僕は知恵湧く泉じゃないですよ? 何でもかんでも訊ねられても困ります。そういうのは博士たちに訊ねてください」
「まあ、そういうな。こんな時間に博士を呼び出すわけにはいかんだろう」
「まあ、それはそうですけど」
とっくに日は落ちている。博士たちも帰宅の途についただろう。呼び戻されるのはかわいそうだ。この室だって官人たちは退出し、異母兄と自分しか残っていない。
「で、何がお知りになりたいんですか?」
「ああ、漢の末、魏の国が成った時の官僚制度についてだ」
「ああ、“九品中正法”ですか」
「そうだ、それ。お前、よくスラスラと名が出てくるな。俺など、“魏”の名を思い出すのが精一杯だったぞ」
「たまたまです」
言いながら、九品中正法について書かれた書物を探す。無造作に卓の上に積まれた山のなかから、どうにか目的のものを取り出した。
「父上が作られる新しい官僚制度にな、それが参考になるかどうか知りたいのだ。あの法の良き点、悪しき点を教えてくれ。真似るとあれば、注意すべきことも教えてくれ」
「そんな簡単に……」
ペラペラと書をめくる手を止める。
「お前なら知っているはずだ」
言われ、グッと息を飲むしかない。
「……九品中正法の良き点は、漢の国から魏の国に移行するにあたって、古く漢に仕えていた者たちの新たな国への忠誠を見極められることにあります。新たな法に従い官位を得るということは、それに従ったことになりますから。また、その中から能力の高い者を登用することで、新たな国を安定させる力にすることもできます」
漢の時代のものではない新しい登用制度。これは、新たな支配者なのだとする証でもある。作った法に万民が従う。それだけの権力を得た。法は、国を治めるためだけではなく、天下に新たな統治者の存在を知らしめる役割もある。
「ふむ。では悪い点は?」
「その官僚となる者たちを選び品格付けるのが“中正官”だというです。中正官に近い立場の者ほど上品に選ばれやすくなります。賄賂が横行する危険性があるということです」
最高上位一品から最低位の九品まで。
この選んだ人物がどの品位にあたるのか、選ぶのは中正官の胸三寸。袖の下を渡すことができれば、その分、上品に就くことができる。
「ではどうしたらいい?」
「中正官による推挙ではなく、帝自らが選び出し、品位を与えるが最上かと。それまでの漢の国にあった、地方の豪族が推挙した官人ではなく、中央が官人を選ぶという部分までは素晴らしいと考えますので、中正官の権限を縮小する、もしくは、最終的に選び出す場に帝にご臨席賜ればよろしいかと」
「では、帝は常に人を見抜く目をお持ちいただかないといけないな」
「そうですね。でも、そうであれば賄賂の入る余地はありません。中正官の権力の肥大化も防げます」
推挙ではない登用。それが試験科目による登用選挙、新たに隋の国に設けられた「科挙」だ。試験によって登用されるのだから、袖の下の入る余地はない。
それに、帝が自ら選ぶという登用方法は、父の気に入るところだろう。父は、帝としての権力を誰かに分け与えることを良しとしない。今だってこうして自分や高市を駒として使うが、駒以上の力を与えることはない。権力に手を伸ばそうとする皇后を嫌悪するぐらい、帝の座に固執しておられる。
「では、それ以前、漢の国で行われていた“郷挙里選”とは何が違う?」
「え?」
「隋の“科挙”とはどう違う? それを我が国で採用することはできるのか? 採用したとして、今の臣や連はどうなる? 伴造は? 国造は?」
「え、あの……、あ、異母兄上?」
九品中正法すら思い出せなかったのではないのか? それをいったい?
矢継ぎ早の質問に、まばたきをくり返す。
「大津。お前は聡く、賢い子だ。こうして俺の訊ねたことに即答するだけの賢さがある。だから今のお前の状況は、お前が考え抜いて出した答えなのだろう。だがな」
高市が立ち上がり、近づいてくる。
「無理をするな。何を求めているのか知らんが、一人で抱え込んで突っ走るな。少しは誰かを頼る賢さを持て」
「異母兄上……」
「情けない武勇だけの兄だが、お前を守るだけの腕は持ち合わせている。――頼れ」
兄としての忠告。憂慮。その目は、心はとても真剣。でも。
「ありがとうございます。でも僕は今、せっかくの機会、色恋を楽しんでいるだけなので」
「大津」
「大丈夫ですよ。ちゃんと節度ある恋をしてますので、邪魔しないでくださいよ」
ニッコリ笑って答える。
大宮の池に面した四阿。金色から藍色に染め替えられていく黄昏に、似つかわしくないほど艶やかな声がかかる。
「ああ、郎女」
「ああ、じゃありませんわよ。お探しいたしましたのよ?」
「ごめんね。でも異母兄上から逃げるにはここにしかなかったから」
言って、手にした盃を空ける。日中は照りつける日差しに汗ばんでいたが、夕暮れ時ともなれば、池のほとりに吹く清涼な風が、体に溜まった熱を解きほぐす。
「お酒、召し上がっておられますの?」
「たまには、ね。でないと疲れ過ぎで頭が動かなくなる。風雅というものを忘れてしまいそうだ」
「お務め、大変ですわね」
「まあね」
――色恋にうつつを抜かす暇があるなら、こっちを手伝え。
そう言って、書庫から自分を連れ出した異母兄。
(あの歌は、そこまで騒がれているのか)
この石川郎女と寝たと匂わせる歌。恋仲にあることを宣言した歌。
郎女には、草壁も歌を贈っている。
日嗣の御子と目される皇后の産んだ皇子と、異母弟で先帝に嘱望された皇子。
この恋の鞘当てが、皇位継承にどう影響するのか。
なんとしても子に継承させたい皇后はどう出るのか。沈黙したままの父帝は何をお考えなのか。この先、どうなってしまうのか。
憶測が飛び交い、どちらに着いたほうが得なのか、身の処し方に悩み、臣下たちが水面下で蠢く。
高市が自分を連れ出した理由は知っている。
これ以上、あの女に関わるな。危険だ。
恋で身を滅ぼすと案じているのか。それとも、かけられた罠を案じているのか。
采女との恋は禁忌。
今は帝が何もおっしゃらなかったとしても、将来も同じとは限らない。草壁と争う形になったことで、皇后が何を言い出すかわからない。
書庫にいたら、おそらくこの郎女は用事にかこつけて通い詰めただろう。書庫では誰もそれを止める人物はいない。いや、川島がいるが、異母兄は彼に期待しなかったらしい。自分の目の届くところに置き、監視するつもりなのだろう。
「息抜きしたくて。池を眺めて一献傾けてたんだ」
息を抜きたいのは本当。
「あれは、鴨ですか?」
空いた盃に郎女が酒を注ぐ。
「いや、鴛鴦だ。ほら、あんなに仲良く寄り添って浮かんでる」
「まあ……」
酒を注ぎ終えた郎女が池を眺める。
夫婦つがいで水面に浮かぶ鴛鴦。
あの鴛鴦たちは、今宵も仲良く連れ添って眠るのだろうか。それとも連れ立って遠くへ飛び去ってしまうのだろうか。
連れ添う相手がいなくなったら、「愛し、寂し」と鳴くのだろうか。
「ねえ、大津さま……」
空いていた隣の席に郎女が座る。
「よろしければ、わたくしの室でお酒を召されませんこと? ここよりは高市さまに見つかりにくうございますよ?」
あの鴛鴦のように仲睦まじく、歌のように――。
「――いや、遠慮しておくよ」
しなだれかかってきた郎女をそのままに立ち上がる。
「仕事に戻らないと。異母兄上にどやされる。きみに見つかってしまったように、異母兄上にも見つからないとも限らないしね」
「そんな、一度ぐらい……」
一度ぐらい、共寝してもよろしいのではなくて?
「すまない。あの歌はみなへの牽制だから。いつか、僕がきみを手に入れるまで、それまでに誰かに盗られてしまわないか不安だったんだよ」
「でしたら、今手に入れておけばよろしいのに」
「いや、それはまだ無理だよ。今のままではきみも危ない。きみに恋い焦がれているけど、きみを危険に晒したいわけじゃないんだ。僕がもっと政に参与して、誰からも認められる人物にならなければ」
そうしたら采女を手に入れることができる。褒美として采女を下賜されることもある。
「歌と順番が逆になるだけだよ。嫌かい?」
そっと手を伸ばし、彼女の頬に触れ、その顔を持ち上げる。
「いいえ。ではその時をお待ちしておりますわ」
艷やかに紅を掃いた唇が微笑む。
「ああ。そう時間はかけないよ。僕だって待ち遠しいからね」
名残惜しげに髪を一筋すくって流す。
「じゃあ、ね」
四阿に一人郎女を残し、回廊へと戻る。
一緒にいたいと拗ねて我儘な女と見られるか、それとも、言うことをきいて従順な女のフリをするか。
郎女のなかで、後者が取られたのだろう。今は困らせて恋の駆け引きをする時ではないと。
(さて)
指を拭い、執務に戻る。
本当に仕事に精を出さないと、本気で異母兄に叱られる。
夜の帳が下りた池。そこに浮かぶ鴛鴦の姿は闇に溶けて見ることはできない。
* * * *
「おお、やっと戻ってきたか」
明かりの灯された執務室。そこで両手を広げて迎え入れてくれた室の主。
「……異母兄上」
「お前が戻ってくるのを待ってたんだ」
よくぞ戻った。その待ちわびかた、笑顔が少し怖い。
「お前に訊きたいことがあったのだ。漢の国にあった官僚制度についてだ」
やっぱり。
「異母兄上、僕は知恵湧く泉じゃないですよ? 何でもかんでも訊ねられても困ります。そういうのは博士たちに訊ねてください」
「まあ、そういうな。こんな時間に博士を呼び出すわけにはいかんだろう」
「まあ、それはそうですけど」
とっくに日は落ちている。博士たちも帰宅の途についただろう。呼び戻されるのはかわいそうだ。この室だって官人たちは退出し、異母兄と自分しか残っていない。
「で、何がお知りになりたいんですか?」
「ああ、漢の末、魏の国が成った時の官僚制度についてだ」
「ああ、“九品中正法”ですか」
「そうだ、それ。お前、よくスラスラと名が出てくるな。俺など、“魏”の名を思い出すのが精一杯だったぞ」
「たまたまです」
言いながら、九品中正法について書かれた書物を探す。無造作に卓の上に積まれた山のなかから、どうにか目的のものを取り出した。
「父上が作られる新しい官僚制度にな、それが参考になるかどうか知りたいのだ。あの法の良き点、悪しき点を教えてくれ。真似るとあれば、注意すべきことも教えてくれ」
「そんな簡単に……」
ペラペラと書をめくる手を止める。
「お前なら知っているはずだ」
言われ、グッと息を飲むしかない。
「……九品中正法の良き点は、漢の国から魏の国に移行するにあたって、古く漢に仕えていた者たちの新たな国への忠誠を見極められることにあります。新たな法に従い官位を得るということは、それに従ったことになりますから。また、その中から能力の高い者を登用することで、新たな国を安定させる力にすることもできます」
漢の時代のものではない新しい登用制度。これは、新たな支配者なのだとする証でもある。作った法に万民が従う。それだけの権力を得た。法は、国を治めるためだけではなく、天下に新たな統治者の存在を知らしめる役割もある。
「ふむ。では悪い点は?」
「その官僚となる者たちを選び品格付けるのが“中正官”だというです。中正官に近い立場の者ほど上品に選ばれやすくなります。賄賂が横行する危険性があるということです」
最高上位一品から最低位の九品まで。
この選んだ人物がどの品位にあたるのか、選ぶのは中正官の胸三寸。袖の下を渡すことができれば、その分、上品に就くことができる。
「ではどうしたらいい?」
「中正官による推挙ではなく、帝自らが選び出し、品位を与えるが最上かと。それまでの漢の国にあった、地方の豪族が推挙した官人ではなく、中央が官人を選ぶという部分までは素晴らしいと考えますので、中正官の権限を縮小する、もしくは、最終的に選び出す場に帝にご臨席賜ればよろしいかと」
「では、帝は常に人を見抜く目をお持ちいただかないといけないな」
「そうですね。でも、そうであれば賄賂の入る余地はありません。中正官の権力の肥大化も防げます」
推挙ではない登用。それが試験科目による登用選挙、新たに隋の国に設けられた「科挙」だ。試験によって登用されるのだから、袖の下の入る余地はない。
それに、帝が自ら選ぶという登用方法は、父の気に入るところだろう。父は、帝としての権力を誰かに分け与えることを良しとしない。今だってこうして自分や高市を駒として使うが、駒以上の力を与えることはない。権力に手を伸ばそうとする皇后を嫌悪するぐらい、帝の座に固執しておられる。
「では、それ以前、漢の国で行われていた“郷挙里選”とは何が違う?」
「え?」
「隋の“科挙”とはどう違う? それを我が国で採用することはできるのか? 採用したとして、今の臣や連はどうなる? 伴造は? 国造は?」
「え、あの……、あ、異母兄上?」
九品中正法すら思い出せなかったのではないのか? それをいったい?
矢継ぎ早の質問に、まばたきをくり返す。
「大津。お前は聡く、賢い子だ。こうして俺の訊ねたことに即答するだけの賢さがある。だから今のお前の状況は、お前が考え抜いて出した答えなのだろう。だがな」
高市が立ち上がり、近づいてくる。
「無理をするな。何を求めているのか知らんが、一人で抱え込んで突っ走るな。少しは誰かを頼る賢さを持て」
「異母兄上……」
「情けない武勇だけの兄だが、お前を守るだけの腕は持ち合わせている。――頼れ」
兄としての忠告。憂慮。その目は、心はとても真剣。でも。
「ありがとうございます。でも僕は今、せっかくの機会、色恋を楽しんでいるだけなので」
「大津」
「大丈夫ですよ。ちゃんと節度ある恋をしてますので、邪魔しないでくださいよ」
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