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第六章 いにしへ恋うる鳥
二十六、いにしへ恋うる鳥(五)
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「ちょっと川島さまっ!!」
「川島っ!!」
呼び止める、というより、人の首根っこを引っ掴んでくるような声に、川島は本気でグエッと喉が詰まりそうになった。
後ろから走って追いかけてくるのは忍壁、泊瀬部兄妹。言いたいことも思ってることも同じだとわかるくらい、よく似た顔で怒って追いかけてくる。
「なんだあ? 愛しい背の君、尊敬する義兄の出仕を見送ってくれるのかぁ?」
「そんなのどうでもいいです!!」
ピシャリと泊瀬部。……そこ、あまり「どうでもいい」にされたくないな。これでも一応お前の背の君だし。
「それより、大津の!! 大津の異母兄上ですよ!! あれ、どうなってるんですか!!」
忍壁がつんのめるように訊ねる。
「どうなってるって?」
「しらばっくれないで!! 大津の異母兄さまとあの采女のことです!!」
わかってる。わかってるから誤魔化そうとしたのに。泊瀬部はどこまでも直情的、まっすぐだ。
「……あの歌、聞いたのか?」
「ええ。占いにでたとかどうとか」
「あの異母兄さまが、あんな采女風情と……っ!!」
あんなって。仮にもあの采女は蘇我の系譜につながる者だぞ。
時が時ならば、皇后になってもおかしくない血筋の生まれ。乙巳の変、先の戦。この二つで零落した豪族だが、それでも勢力が消えてなくなったわけじゃない。
「山辺義姉さまを大切になさってるって思ってたのに……」
口を尖らせ俯いた泊瀬部。
優しい異母兄の心変わりが信じられないのだろう。あれほど妻を大事にしていたのに。大事にされて義姉、山辺も幸せそうにしていたのに。
思うことは一緒らしく、忍壁もそろって口を尖らせるが、こちらは俯かなかった。
「ねえ、大宮でも大津の異母兄上はあの采女に会ってるの?」
忍壁はまだ幼いと判断され、大宮に招かれることは滅多にない。だからこうして、なにか情報を得たくて妹と突撃してきたのだろう。
一緒に仕事している自分ならなにか知ってるのではないか?
あの歌は本当のことなのか?
一縷の望みをかけて来たんだろう。二人の顔を見ていれば、察することが出来る。
「それがなあ、オレにもわからないんだよ」
「は?」
「一緒に仕事してるんじゃないの?」
キョトンとする兄妹。
「いやなあ、それがさ、大津は高市殿に連れてかれたんだよ。『お前のような歴史に詳しい者がこんなところでくすぶってるのはもったいない』ってな。大津は今、高市殿の下で働いてるよ」
裏を返せば、「川島は、くすぶってても問題ないから書庫に放置」なのだが。それは、まあ……いい。
「だから、詳しく訊きたいのなら高市殿のところに行け」
「え……」
「高市の……」
どうした? お前たちの異母兄だろ? 頼れる兄貴だろ?
「高市の異母兄上には、ちょっと訊きづらい……」
「異母兄さまは、ちょっと、なんか、怖い……」
二人の語尾が濁り、勢いがいくらか削がれる。
普段は、二人共高市殿に懐いているようだが、根は少々怯えていたらしい。
まあ、あの見た目だしなあ。無骨!! 武人!! ってかんじで、怒られると身がすくむ。
そーか、そーか。高市殿は怖いか。それで二人共、この優しく頼りになるオレのもとに来たってわけか。
「うん、でもちゃんと知りたいから、わたし、異母兄さまにお会いしてくるわっ!!」
「待てよ、ボクも行くっ!!」
走り出した泊瀬部。追いかける忍壁。
こら、待て。高市殿は怖かったんじゃないのか?
というか泊瀬部、お前、夫にせめて「いってらっしゃいまし」ぐらいの挨拶はないのか? これから、暑い中頑張って出仕するんだぞ、オレは。
「やれやれ……」
それだけ、大津のことが気になるのか。義姉の山辺が心配なのか。
ため息とともに、妻とその兄の背中を見送る。
どうなってるんだって訊きたいのはこっちだよ。
突然の石川郎女との交際。
采女との恋愛は禁忌。皇子であっても処罰は免れ得ない。
それぐらい、アイツだってわかってるはずだ。それなのに。
何考えてるんだよ。
高市殿が大津を連れて行った理由。表向きは、忍壁たちに話したヤツだけど、真意は違う。
――色恋にうつつを抜かす暇があるなら、こっちを手伝え。
あの歌に対し、帝は何もおっしゃられなかった。なぜ何もおっしゃらないのか不気味ではあるけど、だからって増長したような態度を取り続けていいわけがない。だから、高市殿は弟を守るために、仕事に没頭させ、采女に会えないように仕向けた。自分の手元に置いておけば、とりあえず采女との接触という危険から守ることができる。そう判断したのだろう。
何やってんだよ、大津。
お前、そのせいで、高市殿を手伝うっていう表舞台に出てしまったじゃないか。ずっと裏方で、目立たず生きていればよかったのに。ずっと書庫に籠もっていれば、目をつけられず平穏に暮らせたのに。高市殿の近くに配されては、否応なく政治に巻き込まれてしまう。
色恋で身を滅ぼすか、政治で滅びるか。
アイツに流れる血が、それを求めてるのか。アイツが平穏に逃げることを許さないのか。
「――クソッ!!」
苛立ちのまま髪を乱す。
一番苛立つのは、そばにいてなんにもしてやれない自分だ。
オレは高市殿のように、アイツを守る手段を持ち合わせていない。
大来殿がいたらなあ――。
そうしたら少しは助力できたのだろうか。大来殿と結婚して、あいつの義理の兄、後ろ盾となって守ってやることが――。
「あ、あのう……皇子さま」
おずおずと声をかけてきた舎人。
なんだ、オレは今機嫌がすっごく悪いんだ。
「そんなに御髪を乱されては……、そのお姿で大宮には出仕するには、ちょっと……」
あ。
せっかく整えた髪が感情のままにグシャグシャだ。
「よし。今日は休もう!! 髪が決まらなかった。それが理由だ。それがダメなら腹痛、ハライタとでも伝えておけ」
ええ~っと困惑顔の舎人。髪の毛ぐらいで? と思ってるんだろう。
「いいんだよ。今日はそういう気分じゃない」
こんな気分で働いたって、ろくなことにならないからな。
* * * *
夜、髪に椿から取った油を塗る。なるべく全体に行き渡るように、それでいてあまり濃くならないように控えめに。
塗り終えたら何度も櫛で梳く。櫛は柘植の木でこしらえたもの。
柘植の櫛で梳くと髪に艶が出る。椿油を使うとより良い。
髪が絡まないように、何度も何度も気をつけながら梳る。
それを終えたら次に、眉を抜き整える。
白粉をはたく。なるべく薄く、自然に。
貝に入った紅を、そっと小指で取って唇に指し――。
「――ごめんなさい、夏見、片付けてもらってもいいかしら?」
「姫さま……」
「やはり、慣れないことはしないほうがいいわね」
異母姉さまたちにお教えいただいた化粧。頑張ってみたけれど、鏡に映る自分がどうにも好きになれなくて、途中で諦める。
「ふう……」
カタリと櫛を置き、溜まった息を吐き出す。
本当は化粧をして、着替えようと思っていた。皇女らしく、華やかな衣装を身にまとって、宝石で彩られた簪を挿そうと思っていた。けど――。
似合わない。
どれだけ素晴らしく化粧できたとしても、どれだけ高価な衣装を着たとしても、わたくしはあの人に敵わない。
着飾れば着飾った分、違いを感じて余計に惨めになる。
「もう遅いから寝るわ。夏見も下がっていいわよ」
「承知いたしました。――おやすみなさいませ、姫さま」
「ええ、おやすみ」
化粧道具を持って退出した夏見。
――お帰りをお待ちしないのですか?
以前の彼女ならそう訊ねてきたはず。でも今は、訊かなくてもわかってるから何も言わない。待ったところで無駄なことを知っているから。
一人残った閨に、虫の音だけが染み渡る。以前なら、大津さまと一緒に聴き入ったりしたのに。夏に紛れ込むように現れた秋の気配に耳を傾けていたのに。
それなのに。
今はなんてうるさく、寂しい虫の音なの。
今も、大津さまはあの人と一緒にいらっしゃるのかしら。
あの匂い立つように美しい采女。華やかで、自信に満ちた人。
大津さまの歌に返歌を詠んだ人。
あの歌は、わたくしに向けられたものだと思ってたのに。どうやらそれは勘違いだったみたい。だって、こうして大津さまはあの采女と一緒にいらっしゃる。「我がふたり寝し」などと詠むんですもの。今頃はお二人で虫の音に耳を傾けてるのかもしれない。かつてわたくしとしたように、並んで腰掛け、肩を寄せ合って、きっと――。
「――――っ!!」
パタリと鏡を伏せる。
今、鏡なんて見たくもない。
醜い、嫉妬にまみれたわたくしなど映したくない。
容姿でも愛情でも劣っているのに、これ以上心根まで醜くなりたくない。せめて心ぐらいは綺麗でいたい。
あの自信たっぷりな采女より、愛してくれない大津さまより、醜く嫉妬する自分が一番嫌い。
クェコッ、ケコッ……。
虫の音に混じって、時を外した鳥の鳴き声が響く。
あれはなんという鳥の声だったかしら。――たしか、鴛鴦。夫婦仲良く番う鳥。宮のそば、磐余の池に住まう鳥。
こんな夜遅くに鳴くなんて。きっと一羽で寝るには辛すぎて、「愛し、寂し」と鳴いているのね。
「川島っ!!」
呼び止める、というより、人の首根っこを引っ掴んでくるような声に、川島は本気でグエッと喉が詰まりそうになった。
後ろから走って追いかけてくるのは忍壁、泊瀬部兄妹。言いたいことも思ってることも同じだとわかるくらい、よく似た顔で怒って追いかけてくる。
「なんだあ? 愛しい背の君、尊敬する義兄の出仕を見送ってくれるのかぁ?」
「そんなのどうでもいいです!!」
ピシャリと泊瀬部。……そこ、あまり「どうでもいい」にされたくないな。これでも一応お前の背の君だし。
「それより、大津の!! 大津の異母兄上ですよ!! あれ、どうなってるんですか!!」
忍壁がつんのめるように訊ねる。
「どうなってるって?」
「しらばっくれないで!! 大津の異母兄さまとあの采女のことです!!」
わかってる。わかってるから誤魔化そうとしたのに。泊瀬部はどこまでも直情的、まっすぐだ。
「……あの歌、聞いたのか?」
「ええ。占いにでたとかどうとか」
「あの異母兄さまが、あんな采女風情と……っ!!」
あんなって。仮にもあの采女は蘇我の系譜につながる者だぞ。
時が時ならば、皇后になってもおかしくない血筋の生まれ。乙巳の変、先の戦。この二つで零落した豪族だが、それでも勢力が消えてなくなったわけじゃない。
「山辺義姉さまを大切になさってるって思ってたのに……」
口を尖らせ俯いた泊瀬部。
優しい異母兄の心変わりが信じられないのだろう。あれほど妻を大事にしていたのに。大事にされて義姉、山辺も幸せそうにしていたのに。
思うことは一緒らしく、忍壁もそろって口を尖らせるが、こちらは俯かなかった。
「ねえ、大宮でも大津の異母兄上はあの采女に会ってるの?」
忍壁はまだ幼いと判断され、大宮に招かれることは滅多にない。だからこうして、なにか情報を得たくて妹と突撃してきたのだろう。
一緒に仕事している自分ならなにか知ってるのではないか?
あの歌は本当のことなのか?
一縷の望みをかけて来たんだろう。二人の顔を見ていれば、察することが出来る。
「それがなあ、オレにもわからないんだよ」
「は?」
「一緒に仕事してるんじゃないの?」
キョトンとする兄妹。
「いやなあ、それがさ、大津は高市殿に連れてかれたんだよ。『お前のような歴史に詳しい者がこんなところでくすぶってるのはもったいない』ってな。大津は今、高市殿の下で働いてるよ」
裏を返せば、「川島は、くすぶってても問題ないから書庫に放置」なのだが。それは、まあ……いい。
「だから、詳しく訊きたいのなら高市殿のところに行け」
「え……」
「高市の……」
どうした? お前たちの異母兄だろ? 頼れる兄貴だろ?
「高市の異母兄上には、ちょっと訊きづらい……」
「異母兄さまは、ちょっと、なんか、怖い……」
二人の語尾が濁り、勢いがいくらか削がれる。
普段は、二人共高市殿に懐いているようだが、根は少々怯えていたらしい。
まあ、あの見た目だしなあ。無骨!! 武人!! ってかんじで、怒られると身がすくむ。
そーか、そーか。高市殿は怖いか。それで二人共、この優しく頼りになるオレのもとに来たってわけか。
「うん、でもちゃんと知りたいから、わたし、異母兄さまにお会いしてくるわっ!!」
「待てよ、ボクも行くっ!!」
走り出した泊瀬部。追いかける忍壁。
こら、待て。高市殿は怖かったんじゃないのか?
というか泊瀬部、お前、夫にせめて「いってらっしゃいまし」ぐらいの挨拶はないのか? これから、暑い中頑張って出仕するんだぞ、オレは。
「やれやれ……」
それだけ、大津のことが気になるのか。義姉の山辺が心配なのか。
ため息とともに、妻とその兄の背中を見送る。
どうなってるんだって訊きたいのはこっちだよ。
突然の石川郎女との交際。
采女との恋愛は禁忌。皇子であっても処罰は免れ得ない。
それぐらい、アイツだってわかってるはずだ。それなのに。
何考えてるんだよ。
高市殿が大津を連れて行った理由。表向きは、忍壁たちに話したヤツだけど、真意は違う。
――色恋にうつつを抜かす暇があるなら、こっちを手伝え。
あの歌に対し、帝は何もおっしゃられなかった。なぜ何もおっしゃらないのか不気味ではあるけど、だからって増長したような態度を取り続けていいわけがない。だから、高市殿は弟を守るために、仕事に没頭させ、采女に会えないように仕向けた。自分の手元に置いておけば、とりあえず采女との接触という危険から守ることができる。そう判断したのだろう。
何やってんだよ、大津。
お前、そのせいで、高市殿を手伝うっていう表舞台に出てしまったじゃないか。ずっと裏方で、目立たず生きていればよかったのに。ずっと書庫に籠もっていれば、目をつけられず平穏に暮らせたのに。高市殿の近くに配されては、否応なく政治に巻き込まれてしまう。
色恋で身を滅ぼすか、政治で滅びるか。
アイツに流れる血が、それを求めてるのか。アイツが平穏に逃げることを許さないのか。
「――クソッ!!」
苛立ちのまま髪を乱す。
一番苛立つのは、そばにいてなんにもしてやれない自分だ。
オレは高市殿のように、アイツを守る手段を持ち合わせていない。
大来殿がいたらなあ――。
そうしたら少しは助力できたのだろうか。大来殿と結婚して、あいつの義理の兄、後ろ盾となって守ってやることが――。
「あ、あのう……皇子さま」
おずおずと声をかけてきた舎人。
なんだ、オレは今機嫌がすっごく悪いんだ。
「そんなに御髪を乱されては……、そのお姿で大宮には出仕するには、ちょっと……」
あ。
せっかく整えた髪が感情のままにグシャグシャだ。
「よし。今日は休もう!! 髪が決まらなかった。それが理由だ。それがダメなら腹痛、ハライタとでも伝えておけ」
ええ~っと困惑顔の舎人。髪の毛ぐらいで? と思ってるんだろう。
「いいんだよ。今日はそういう気分じゃない」
こんな気分で働いたって、ろくなことにならないからな。
* * * *
夜、髪に椿から取った油を塗る。なるべく全体に行き渡るように、それでいてあまり濃くならないように控えめに。
塗り終えたら何度も櫛で梳く。櫛は柘植の木でこしらえたもの。
柘植の櫛で梳くと髪に艶が出る。椿油を使うとより良い。
髪が絡まないように、何度も何度も気をつけながら梳る。
それを終えたら次に、眉を抜き整える。
白粉をはたく。なるべく薄く、自然に。
貝に入った紅を、そっと小指で取って唇に指し――。
「――ごめんなさい、夏見、片付けてもらってもいいかしら?」
「姫さま……」
「やはり、慣れないことはしないほうがいいわね」
異母姉さまたちにお教えいただいた化粧。頑張ってみたけれど、鏡に映る自分がどうにも好きになれなくて、途中で諦める。
「ふう……」
カタリと櫛を置き、溜まった息を吐き出す。
本当は化粧をして、着替えようと思っていた。皇女らしく、華やかな衣装を身にまとって、宝石で彩られた簪を挿そうと思っていた。けど――。
似合わない。
どれだけ素晴らしく化粧できたとしても、どれだけ高価な衣装を着たとしても、わたくしはあの人に敵わない。
着飾れば着飾った分、違いを感じて余計に惨めになる。
「もう遅いから寝るわ。夏見も下がっていいわよ」
「承知いたしました。――おやすみなさいませ、姫さま」
「ええ、おやすみ」
化粧道具を持って退出した夏見。
――お帰りをお待ちしないのですか?
以前の彼女ならそう訊ねてきたはず。でも今は、訊かなくてもわかってるから何も言わない。待ったところで無駄なことを知っているから。
一人残った閨に、虫の音だけが染み渡る。以前なら、大津さまと一緒に聴き入ったりしたのに。夏に紛れ込むように現れた秋の気配に耳を傾けていたのに。
それなのに。
今はなんてうるさく、寂しい虫の音なの。
今も、大津さまはあの人と一緒にいらっしゃるのかしら。
あの匂い立つように美しい采女。華やかで、自信に満ちた人。
大津さまの歌に返歌を詠んだ人。
あの歌は、わたくしに向けられたものだと思ってたのに。どうやらそれは勘違いだったみたい。だって、こうして大津さまはあの采女と一緒にいらっしゃる。「我がふたり寝し」などと詠むんですもの。今頃はお二人で虫の音に耳を傾けてるのかもしれない。かつてわたくしとしたように、並んで腰掛け、肩を寄せ合って、きっと――。
「――――っ!!」
パタリと鏡を伏せる。
今、鏡なんて見たくもない。
醜い、嫉妬にまみれたわたくしなど映したくない。
容姿でも愛情でも劣っているのに、これ以上心根まで醜くなりたくない。せめて心ぐらいは綺麗でいたい。
あの自信たっぷりな采女より、愛してくれない大津さまより、醜く嫉妬する自分が一番嫌い。
クェコッ、ケコッ……。
虫の音に混じって、時を外した鳥の鳴き声が響く。
あれはなんという鳥の声だったかしら。――たしか、鴛鴦。夫婦仲良く番う鳥。宮のそば、磐余の池に住まう鳥。
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