6 / 16
第6話 思惑
しおりを挟む
大変長い間お待たせ致しました。投稿できていない間にお気に入りに登録して下さった方もいらっしゃり、とても嬉しいです。
今後ともよろしくお願い致します。
・・─・・─・・─・・─・・─・・─・・─・・─・・─・・─・・
「どういうおつもりですか」
深夜、静かな部屋の中に、厳しい声が響く。
執務机に着き、書類を捌くアルトゥールに、ローデリックが問いかけた。
「あのような者を伯爵邸に引き入れるなどと…坊もあの者が何を生業としているのか分かっておられるでしょうに」
「だからだ、ローデリック」
書類から顔を上げぬまま、アルトゥールが応じる。
「あの服装、怪我、明らかに裏側の人間だろう。上手く使えれば、我がシュヴァルツ家の現状を打破する手駒となるかもしれない。獅子身中の虫となる可能性も無くはないが、僕があの者を上手く御せれば良いだけのことだ。全ては僕の力量次第、何も心配することは無い」
「…左様で。差し出口を申しました」
「良い。気にするな」
「ありがとう存じます」
ふと、何かを思いついたように、アルトゥールが顔を上げた。
「しかしあの者は、初めは子猫のように威嚇していたが、やけに早く警戒を解いたな」
「ええ、アルトゥール様に名付けられてから、態度が軟化したように思われますね。名が付いたのが余程嬉しかったのでは?」
先程のルアンの様子を思い出して、アルトゥールはうっすらと笑う。
名付けられて喜ぶとは、本当に猫のようでは無いか。
「そうか・・・思っていたより面白い拾い物であったかもしれないな」
アルトゥールはその優秀な脳内で考えを巡らせる。様々な計略は、夜の闇に溶けていった。
今後ともよろしくお願い致します。
・・─・・─・・─・・─・・─・・─・・─・・─・・─・・─・・
「どういうおつもりですか」
深夜、静かな部屋の中に、厳しい声が響く。
執務机に着き、書類を捌くアルトゥールに、ローデリックが問いかけた。
「あのような者を伯爵邸に引き入れるなどと…坊もあの者が何を生業としているのか分かっておられるでしょうに」
「だからだ、ローデリック」
書類から顔を上げぬまま、アルトゥールが応じる。
「あの服装、怪我、明らかに裏側の人間だろう。上手く使えれば、我がシュヴァルツ家の現状を打破する手駒となるかもしれない。獅子身中の虫となる可能性も無くはないが、僕があの者を上手く御せれば良いだけのことだ。全ては僕の力量次第、何も心配することは無い」
「…左様で。差し出口を申しました」
「良い。気にするな」
「ありがとう存じます」
ふと、何かを思いついたように、アルトゥールが顔を上げた。
「しかしあの者は、初めは子猫のように威嚇していたが、やけに早く警戒を解いたな」
「ええ、アルトゥール様に名付けられてから、態度が軟化したように思われますね。名が付いたのが余程嬉しかったのでは?」
先程のルアンの様子を思い出して、アルトゥールはうっすらと笑う。
名付けられて喜ぶとは、本当に猫のようでは無いか。
「そうか・・・思っていたより面白い拾い物であったかもしれないな」
アルトゥールはその優秀な脳内で考えを巡らせる。様々な計略は、夜の闇に溶けていった。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜
西園寺わかば🌱
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。
4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。
そんな彼はある日、追放される。
「よっし。やっと追放だ。」
自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。
- この話はフィクションです。
- カクヨム様でも連載しています。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
魔拳のデイドリーマー
osho
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生した少年・ミナト。ちょっと物騒な大自然の中で、優しくて美人でエキセントリックなお母さんに育てられた彼が、我流の魔法と鍛えた肉体を武器に、常識とか色々ぶっちぎりつつもあくまで気ままに過ごしていくお話。
主人公最強系の転生ファンタジーになります。未熟者の書いた、自己満足が執筆方針の拙い文ですが、お暇な方、よろしければどうぞ見ていってください。感想などいただけると嬉しいです。
転生して貴族になったけど、与えられたのは瑕疵物件で有名な領地だった件
桜月雪兎
ファンタジー
神様のドジによって人生を終幕してしまった七瀬結希。
神様からお詫びとしていくつかのスキルを貰い、転生したのはなんと貴族の三男坊ユキルディス・フォン・アルフレッドだった。
しかし、家族とはあまり折り合いが良くなく、成人したらさっさと追い出された。
ユキルディスが唯一信頼している従者アルフォンス・グレイルのみを連れて、追い出された先は国内で有名な瑕疵物件であるユンゲート領だった。
ユキルディスはユキルディス・フォン・ユンゲートとして開拓から始まる物語だ。

破滅する悪役五人兄弟の末っ子に転生した俺、無能と見下されるがゲームの知識で最強となり、悪役一家と幸せエンディングを目指します。
大田明
ファンタジー
『サークラルファンタズム』というゲームの、ダンカン・エルグレイヴというキャラクターに転生した主人公。
ダンカンは悪役で性格が悪く、さらに無能という人気が無いキャラクター。
主人公はそんなダンカンに転生するも、家族愛に溢れる兄弟たちのことが大好きであった。
マグヌス、アングス、ニール、イナ。破滅する運命にある兄弟たち。
しかし主人公はゲームの知識があるため、そんな彼らを救うことができると確信していた。
主人公は兄弟たちにゲーム中に辿り着けなかった最高の幸せを与えるため、奮闘することを決意する。
これは無能と呼ばれた悪役が最強となり、兄弟を幸せに導く物語だ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる