我が忠義を、あなたに ー 命の恩人が前世で読んだ漫画で厄災の使者として討伐されるキャラクターみたいなので、彼の悲惨な運命を回避したい ー

Leon

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第二話 衝撃

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誰かが、俺に話しかけている。
微睡の中で、そんなふうに思った。
意識を向ければ、自分の体は柔らかくて温かいものに包まれている。
この世に生まれてこの方感じたことのないほど心地よさに、思わず頬を擦り付けた。

再び眠りに落ちようとした時、不意に、誰かが自分に触れてこようとする気配を察した。
一気に、意識が覚醒する。
左手でその手を振り払いつつ、ガバリと上体を起こした。
瞬間、全身に激しい痛みを感じて、うずくまった。

「っあ‘’あ‘’!いってえ!」

「ああ、ダメだよ、動いちゃ。ひどい怪我なんだから」

やんわりと肩を持ち、押し倒そうとしてくる手から逃れるように身を捩る。
出来るだけ距離を取ろうと後ろに下がったところで、自分が今までベットに横たえられていたのだと気がついた。

「くっそ、誰だ、お前。…俺を、どうするつもりだ」

痛む傷を庇いながら、声の持ち主を睨め付ける。その顔が目に入った瞬間、限界まで高まっていた警戒心がかき消され、代わりにものすごい衝撃が襲った。

目の前にいたのは、氷肌玉骨の美少年。癖のない金色の髪に、澄んだクリスタルブルーの瞳。すっと通った鼻梁。
神々がこぞって依怙贔屓したかのような美貌の少年は、しかし、年の頃は俺と同じくらいだろうか。

彼は俺からの明らかな敵意にも臆さず、ただこちらを覗き込んでいた。

「大丈夫かい、君は3日も眠ったままだったんだよ」

やや眉を下げた、その表情でさえも美しい。が、俺が愕然としたのは別にその美貌のせいではない。

「僕の名前はアルトゥール。君が路地裏に倒れていたのを見つけて、うちで看病していたんだ」

そう、こいつの名前はアルトゥール。アルトゥール・フォン・シュヴァルツだ。
俺はこいつを、ずっと前から知っていた。

彼は、前世の自分が読んでいた漫画で討伐される、悪役だったのだ。



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