我が忠義を、あなたに ー 命の恩人が前世で読んだ漫画で厄災の使者として討伐されるキャラクターみたいなので、彼の悲惨な運命を回避したい ー

Leon

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第一話 路傍の石

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シュッと、防ぎきれなかったナイフが胸元を抉った。

「っくそ!」

そのまま体勢を崩した俺に、好機を逃さず奴らは再び攻撃してきた。
ふらついていた足を払われ、地面に倒れ込む。無様に敵前に晒した背中に向かって、ナイフが振り下ろされる。
刃がざくりと、背中につき刺さった。

精魂つきはて、動けなくなった俺を尻目に、奴らは音も立てずに去っていった。

寒い。
さっきから目処なく降り注ぐ雨に、体が冷えて寒くて凍えそうなのに、全身にできた傷は熱を主張して、痛い。
矛盾する感覚に、ああ、俺はまた早死にするんだなあ、と他人事のように思った。

この世に生まれておよそ12年、孤児で身寄りのない俺には、前世の記憶がある。
こことは違う世界の日本とかいう国で、高校生とかいう学生をやっていた男のものだ。なんだか良くわからないが、背後から凄まじい音が聞こえた後で記憶が途絶えているので、おそらくその時に死んだのだろうと思う。
ただ、俺にとってそいつはあくまでも違う人間だ。言うなれば、頭の中にやけに詳細な物語が一つ存在しているようなものだった。
しかし男の感情を正確に追体験できたためか、俺の中には無意識に「今度こそ早死にしてなるものか」という気持ちが芽生えていた。今回ばかりは、その気概も砕け散ったようだったが。

生まれてすぐにスラムに捨てられた俺は、すぐに組織に拾われた。依頼を受けて、対象を消す暗殺組織だ。
別人と認識していたと言えども、青年まで生きた人間の記憶は、俺を精神面で早熟にさせた。幼児特有の小さな体は任務遂行に便利で、俺はちょうど4年前から実戦投入されていた。

今日も、いつも通り組織からの任務をこなしてきた後だった。
対象は、荒んだ顔色とは反対に身なりだけはいいどっかの法服貴族。
いつも通りでかい屋敷に忍び込んで、いつも通り対象の首を掻き切ってスラムの家に帰る途中で、組織の黒服を着た男共に襲われた。
任務遂行後で少し疲れていたし、そもそも子供が体格の違う大人相手に勝てるはずもなかった。

ああ、順番が回ってきたんだなあ、と思う。
特に悲しくも辛くもなかった。
俺は殺し屋だ。任務に出始めてたった4年だが、それでも両手の指では足りないくらいには人を殺してきた。
いつかは自分も殺されて死ぬ順番が来るのだろうなと思っていた。
今日がその日だった。それだけのことだ。
何の感傷も浮かばない。
ただただ、雨に濡れた体が、寒かった。












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