22 / 41
★イラストです+閑話★
しおりを挟む
表紙イラストができましたので、それにプラスして閑話と投稿します。
イラストは漫画家を目指しております娘が画いたモノです。
閑話は本題とは関係ない、ふたりのちょっとした日常のエピソードです。
ちょこんと、小さなエルフの少女が草の上に座った。
「風が抜けて涼しいです。アナタもこっちに――」
リルリルがウェルガーを見あげて行った。
濃藍の瞳が緑の風景の中で輝く宝石のようであった。
黄金の細い糸で創り上げた彼のような、長い髪が浜風の中を揺れている。
陽光を散乱させ、まばゆい光の粒子に包まれているかのように見えた。
その光景は、まるで幻想を実体化させたかのような感じがして、ウェルガーは呆然と立って自分の妻を見つめる。
「もう、ジッとみて…… 隣に座って欲しいです」
恥じらいと蕩けるような愛情の混じった声音で、エルフの美少女は言った。
リルリル、10歳――
元勇者ウェルガーの幼妻だ。
ウェルガーは、元日本人のおっさんで、女には全く縁がないブラック企業の中間管理職だった。
他人のプロジェクト失敗のしりぬぐいのために行った過酷な業務で過労死。
そして、異世界に転生した。
異世界に生まれ変わり「ラッキー」と思ったが、それは甘かった。
赤子のときから、黒髪の悪魔、鬼畜、変態の師匠により、勇者としての過酷な修行が始まったのだ。
もはやそれは、虐待という言葉すら生ぬるい。
「民明〇房」が数ページを割くに十分な内容の修行だった。(本編参照)
(俺は、やっと幸せを手にした。そして、リルリルも絶対に幸せにしなければならない。絶対にだ! 命に代えてもだ)
勇者となった彼は、人類を滅亡の淵に追い込んだ数百万の魔族を一撃で全滅させる。
さらに、山脈より巨大な魔王を瞬殺し、ぶっ飛ばした。死んだ魔王はこの星の第三の月として衛星軌道に乗っているのだった。
そして、彼は勇者を引退し、その力は封印された。
彼は、エルフの幼妻を娶った。一目ぼれの相手だった。
人類を救った功績で、南の手つかずの孤島を領地としてもらった。
今は、人の良い島民(一緒に移住してきた)とその島で暮らし、島の開発を続けている。
いつもは、建設に必要な木の伐採を行っているウェルガーだが、今日は休みだった。
そして、入江の疎林の方へリルリルと一緒に出かけた。デートだ。
「もう~ 早く来てほしいです」
パンパンとくさっぱらを手で叩き、隣に座れと要求するリルリル。
「えっと…… お願いがあるんだけど」
「え?」
「座るんじゃなくて、ひざまくらしてくれないかな…… ダメならいいけど」
ウェルガーは思い切っていった。
彼女の膝の上、底で寝転んでみたくなったのだ。
「えッ…… ひざまくらですか?」
そう言って、リルリルはあたりをきょろきょろする。
人気が無いのを確認しているのだ。
「ダメかな。ダメなら座るだけもいいし」
そう言ってウェルガーはリルリルの隣に座った。
軽く彼女の手をとった。
(くそぉぉぉ―― なんで、こんなに細くて、小さくて可愛くて、あり得ない程柔らかいんだ…… ぐぁぁぁぁぁ――)
リルリルとの接触。家の中では散々、イチャイチャしているのだが、ちょっと触っただけで、ウェルガーの脳が溶けそうになる。
外でイチャイチャするのと、家の中ではまた違うモノがあった。
「人、いないですよね――」
「まあ、この辺りは、人はこないよ。そもそも、島の人口がまだ少ないし」
「そ、そうですよね……」
そう言いながら、リルリルの耳が赤くなりパタパタと振られていく。
「いいです。ひざまくら―― でも、ギュッと重くしないでください」
リルリルは恥ずかしそうに言った。
家ではもっと、恥ずかしいことをやっているけど。
初々しい新婚夫婦の姿がそこにあったのだ。
「リルリル―― 可愛いなぁ♥」
そう言ってウェルガーはごろんと、彼女の膝の上に寝転ぶ。
思いきり体重はかけないが、柔らかい腿の感触――
そして、彼女の体温が染み込んでくるようだった。
「もう…… 小さな、子どもみたいです」
「子どもみたいな、俺はダメか?」
「ん…… そ、そんなことないです。大好きです。私は、どんなアナタも大好きです」
周辺の空気がべたべたの砂糖か蜂蜜のような匂いになってくるようだった。
(ウェルガー、大好き、大好き、大好き、大好き、大好き、愛してます)
愛する夫の重さを細い脚の上に感じ、リルリルも、幸せだった。
抑えることのできない、彼への思いがあふれ出てくる。恥ずかしくて言葉にはできない。
違う――
その思いは、口にすることが出来ない様な思いだった。
時間がゆっくりと流れて行く――
海から聞こえる波音は倦みもせず、同じ音を繰り返していた。
幻想と夢と現実が混ざり合い、その空間を彩っていく。
ふたりはジッと見つめ合っていた。
イラストは漫画家を目指しております娘が画いたモノです。
閑話は本題とは関係ない、ふたりのちょっとした日常のエピソードです。
ちょこんと、小さなエルフの少女が草の上に座った。
「風が抜けて涼しいです。アナタもこっちに――」
リルリルがウェルガーを見あげて行った。
濃藍の瞳が緑の風景の中で輝く宝石のようであった。
黄金の細い糸で創り上げた彼のような、長い髪が浜風の中を揺れている。
陽光を散乱させ、まばゆい光の粒子に包まれているかのように見えた。
その光景は、まるで幻想を実体化させたかのような感じがして、ウェルガーは呆然と立って自分の妻を見つめる。
「もう、ジッとみて…… 隣に座って欲しいです」
恥じらいと蕩けるような愛情の混じった声音で、エルフの美少女は言った。
リルリル、10歳――
元勇者ウェルガーの幼妻だ。
ウェルガーは、元日本人のおっさんで、女には全く縁がないブラック企業の中間管理職だった。
他人のプロジェクト失敗のしりぬぐいのために行った過酷な業務で過労死。
そして、異世界に転生した。
異世界に生まれ変わり「ラッキー」と思ったが、それは甘かった。
赤子のときから、黒髪の悪魔、鬼畜、変態の師匠により、勇者としての過酷な修行が始まったのだ。
もはやそれは、虐待という言葉すら生ぬるい。
「民明〇房」が数ページを割くに十分な内容の修行だった。(本編参照)
(俺は、やっと幸せを手にした。そして、リルリルも絶対に幸せにしなければならない。絶対にだ! 命に代えてもだ)
勇者となった彼は、人類を滅亡の淵に追い込んだ数百万の魔族を一撃で全滅させる。
さらに、山脈より巨大な魔王を瞬殺し、ぶっ飛ばした。死んだ魔王はこの星の第三の月として衛星軌道に乗っているのだった。
そして、彼は勇者を引退し、その力は封印された。
彼は、エルフの幼妻を娶った。一目ぼれの相手だった。
人類を救った功績で、南の手つかずの孤島を領地としてもらった。
今は、人の良い島民(一緒に移住してきた)とその島で暮らし、島の開発を続けている。
いつもは、建設に必要な木の伐採を行っているウェルガーだが、今日は休みだった。
そして、入江の疎林の方へリルリルと一緒に出かけた。デートだ。
「もう~ 早く来てほしいです」
パンパンとくさっぱらを手で叩き、隣に座れと要求するリルリル。
「えっと…… お願いがあるんだけど」
「え?」
「座るんじゃなくて、ひざまくらしてくれないかな…… ダメならいいけど」
ウェルガーは思い切っていった。
彼女の膝の上、底で寝転んでみたくなったのだ。
「えッ…… ひざまくらですか?」
そう言って、リルリルはあたりをきょろきょろする。
人気が無いのを確認しているのだ。
「ダメかな。ダメなら座るだけもいいし」
そう言ってウェルガーはリルリルの隣に座った。
軽く彼女の手をとった。
(くそぉぉぉ―― なんで、こんなに細くて、小さくて可愛くて、あり得ない程柔らかいんだ…… ぐぁぁぁぁぁ――)
リルリルとの接触。家の中では散々、イチャイチャしているのだが、ちょっと触っただけで、ウェルガーの脳が溶けそうになる。
外でイチャイチャするのと、家の中ではまた違うモノがあった。
「人、いないですよね――」
「まあ、この辺りは、人はこないよ。そもそも、島の人口がまだ少ないし」
「そ、そうですよね……」
そう言いながら、リルリルの耳が赤くなりパタパタと振られていく。
「いいです。ひざまくら―― でも、ギュッと重くしないでください」
リルリルは恥ずかしそうに言った。
家ではもっと、恥ずかしいことをやっているけど。
初々しい新婚夫婦の姿がそこにあったのだ。
「リルリル―― 可愛いなぁ♥」
そう言ってウェルガーはごろんと、彼女の膝の上に寝転ぶ。
思いきり体重はかけないが、柔らかい腿の感触――
そして、彼女の体温が染み込んでくるようだった。
「もう…… 小さな、子どもみたいです」
「子どもみたいな、俺はダメか?」
「ん…… そ、そんなことないです。大好きです。私は、どんなアナタも大好きです」
周辺の空気がべたべたの砂糖か蜂蜜のような匂いになってくるようだった。
(ウェルガー、大好き、大好き、大好き、大好き、大好き、愛してます)
愛する夫の重さを細い脚の上に感じ、リルリルも、幸せだった。
抑えることのできない、彼への思いがあふれ出てくる。恥ずかしくて言葉にはできない。
違う――
その思いは、口にすることが出来ない様な思いだった。
時間がゆっくりと流れて行く――
海から聞こえる波音は倦みもせず、同じ音を繰り返していた。
幻想と夢と現実が混ざり合い、その空間を彩っていく。
ふたりはジッと見つめ合っていた。
0
お気に入りに追加
951
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


鬼神転生記~勇者として異世界転移したのに、呆気なく死にました。~
月見酒
ファンタジー
高校に入ってから距離を置いていた幼馴染4人と3年ぶりに下校することになった主人公、朝霧和也たち5人は、突然異世界へと転移してしまった。
目が覚め、目の前に立つ王女が泣きながら頼み込んできた。
「どうか、この世界を救ってください、勇者様!」
突然のことに混乱するなか、正義感の強い和也の幼馴染4人は勇者として魔王を倒すことに。
和也も言い返せないまま、勇者として頑張ることに。
訓練でゴブリン討伐していた勇者たちだったがアクシデントが起き幼馴染をかばった和也は命を落としてしまう。
「俺の人生も……これで終わり……か。せめて……エルフとダークエルフに会ってみたかったな……」
だが気がつけば、和也は転生していた。元いた世界で大人気だったゲームのアバターの姿で!?
================================================
一巻発売中です。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

女性の少ない異世界に生まれ変わったら
Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。
目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!?
なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!!
ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!!
そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!?
これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。

生活魔法しか使えない少年、浄化(クリーン)を極めて無双します(仮)(習作3)
田中寿郎
ファンタジー
壁しか見えない街(城郭都市)の中は嫌いだ。孤児院でイジメに遭い、無実の罪を着せられた幼い少年は、街を抜け出し、一人森の中で生きる事を選んだ。武器は生活魔法の浄化(クリーン)と乾燥(ドライ)。浄化と乾燥だけでも極めれば結構役に立ちますよ?
コメントはたまに気まぐれに返す事がありますが、全レスは致しません。悪しからずご了承願います。
(あと、敬語が使えない呪いに掛かっているので言葉遣いに粗いところがあってもご容赦をw)
台本風(セリフの前に名前が入る)です、これに関しては助言は無用です、そういうスタイルだと思ってあきらめてください。
読みにくい、面白くないという方は、フォローを外してそっ閉じをお願いします。
(カクヨムにも投稿しております)

平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。
モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。
日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。
今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。
そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。
特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる