魔王を瞬殺して引退した転生勇者の元おっさんはエルフの幼妻とらぶえっちな生活がしたいです

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13.血の儀式による力の解放

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「師匠――」
「なんですか。ウェルガー」

 ウェルガーのニュウリーンに対する呼び方が「お姉さま」から「師匠」になった。
 以前であれば、彼女の鉄拳が衝撃波を発し、顔面直撃のパターンだった。
 しかし、ニュウリーンはその呼び名で普通に反応した。

 彼女の中でも、ウェルガーに対する気持ちが何か変わったのかもしれない。
 ただ、人を寄せ付けない様な鋭い視線はデフォルトだった。

「俺の勇者の能力は、相当厳重に封印して解除は不可能に近いって言ってましたけど?」

「誰がそんなことを言いましたか?」

「確か、王宮の偉い人…… 白い長いひげの爺さんだったなぁ。あ、あと片手が無くなった将軍もいた――」

 腕を組んで思い出そうとするウェルガー。
 当時は、リルリルを嫁にもらえることで有頂天になっており、他のことなどよく覚えていなかった。
 そもそも、封印を解除する気などもないので、気にもとめてなかった。

「あッ、多分、その方は王宮付きの賢者様だと思います」

 リルリルが言った。
 彼女はまだ、小さな体をペトッと夫のウェルガーにくっつけていた。
 まるで、コアラの子が親の背にしがみ付いているかのようだった。

「ああ、そいつですか…… 解除方法を教えてくれたのはその老人でしょう」

 ニュウリーンは合点が言ったという感じで頷いた。

「良く、そんなことを師匠に教えましたね」
「10発目で、教えてくれました。ちょっと言葉が聞き取りにくくなりましたが――」

 彼女の瞳に、きらりと嗜虐の光が瞳に宿る。

「さすが賢者だな~ よく耐えたなぁ~」

 遠くの思い出を懐かしむかのようにウェルガーは言った。

 褐色エルフ娘のラシャーラは「なに、この人…… やっぱり怖い」という目でニュウリーンを見た。
 彼女が、この場で最も常識的な感覚の持ち主であることは間違いない。
 その恐ろしい兇悪な存在に対峙したのだから、度胸もある。
 まあ、捕らわれた船から海に飛び込むくらいなのだ――

 勇者の力の封印――
 言葉で言ってしまえば簡単だったが、それは魔法技術的にはかなり高度で大変なことだった。
 魔法を使える存在は体内に「魔力核」を持っている。
 これを持っていなければ魔法は使えない。
 魔力核が魔力を生み出し、それにより魔法を発動させる。 

 魔力核は魔力を生み出す源泉のようなものだ。

 一般の魔法使いで一個か二個だ。
 二桁も持っていれば、「化け物」の部類。
 王国魔法軍の、師団長レベルで、何人かいるかどうかだ。

 ちなみにウェルガーは1000個の魔力核を持っている。
 化け物とか人外の話ではない。
 もはや兵器の部類だ。それも、意志をもった「大量殺戮兵器」のようなものだ。
 勇者とはそういう存在なのだった。

 そして、それ自体は今でも彼の体内に存在するのだ。
 ただ、封印され起動を停止、一切の魔力も出力していないはずだ。

「まあ、完全には無理らしいのですけどね―― 今の段階では」

 長い黒髪をサラリと白い指でとかしながら、ニューリーンは言った。
 そしてイスから立ち上がり、ウェルガーに向かって歩いてくる。
 この星の重力(地球と同じ1G)を無視し、前に突きだした大きな胸が歩に合わせ揺れる。

 そして、手を差し出した。

「え?」
「先ほど渡した、魔道具です。封印解除のチョーカーです」
「あ、はい」

 彼はそれを師匠に返した。
 水晶のようなモノがついた首飾りだ。
 師匠はそれを、指先にひっかけて、ウェルガーにへばり付いているリルリルを見た。

「ひッ……」

 リルリルがキュッと夫の背に抱き着いた。
 この師匠の恐怖を知り、それで視線を受けるには、リルリルは幼すぎた。
 
「大丈夫。多分、噛みつかないから―― 何かあれば、俺が守ってやる」
「アナタ……」

 ウェルガーはエルフの幼妻をギュッと抱きかかえた。
 そして、見つめ合う新婚夫婦。ラブラブだった。

「ふふ、怖がらなくていいわ。これは、結婚祝いだと思って、キレイでしょ。さあ、首にかけてあげる」

 ニューリーンはリルリルに向かって言ったのだ。

「え……」
「ひぃぃ~ アナタぁ」

 ウェルガーからしても、そんな物を妻に掛けさせるのはためらわれる。つーか拒否だ。
 なんというか、封印解除の代償に呪いがかかっていてもおかしくない。

「師匠、それかけて呪われるとか――」
「あるわけないわ。でも、そうね、不安は分かるわ。説明してあげる。その上で―― えっと、エルフの……」

 ジッとリルリルを見つめるニュウリーン。言葉が止まる。

「リルリルです」
「あ、そうそう、ごめんなさい。最近、物覚えがちょっと…… もう私も、歳なのかしら」

 言葉が止まったのは、リルリルの名を忘れたからだった。
 外見は年齢不詳の美女だが、記憶力はヤバくなりつつある年齢なのかもしれなかった。

「このチョーカーで、封印解除して解放出来る力は、全盛期の力の10分の1よ」

「10分の1…… 完全な解除じゃないのかぁ」

 ウェルガーは、そのチョーカーを見つめて言った。
 まあ、10分の1でも魔力核100個分の魔力だ。
 
「最大でということかしら。そして、そのための術式があるの」

 ニュウリーンは、おっぱいの下で手を組んで説明を続ける。

「まず、アナタ―― ウェルガーの最愛の者に、このチョーカーを付けさせる」
「って、ことは…… リルリル」

 その言葉で、抱きしめられているリルリルの耳が真っ赤になってパタパタと振られる。

「私じゃなくて、残念だわ―― 乗り換える気はない? 最後に聞くけど」

 彼の師匠は、真紅のバラのような唇だけで、ニッと笑った。

「また、ご冗談を、師匠――」
「そう……」

 彼女は大きく息をついて、言葉を続けて行く。

「これを、最愛の者の首にかける。それは別に呪いもなにもないわ。身に付けたら外れないなんてこともない。ただのチョーカーよ」

「そうですか――」

 ウェルガーは頷く。彼の師匠は嗜虐性の塊で、どうしようもない程にサイコ。
 エゲツない性欲を特殊な方向に向けるド変態だ。
 しかし、修行のことや、こう言ったことで、嘘を言うことは無い。――だろうと思った。

「で、チョーカーを首に着けた者の血―― それを飲む」
「えええええーー!! 死んじゃいます!! アナタぁぁ」

 怯えきった叫びをあげるリルリル。
 
「落ちついて、エルフちゃん。血と言っても少しよ。指先をちょっと切って舐める程度で十分。女の子なら、血にはなれているでしょう?

「え? なんで? 慣れてません――」 
「慣れてないの?」
 
 不思議そうな顔で、リルリルを見つめるニュウリーン。
 
(あ、師匠はエルフの外見と年齢の違いで、勘違いしているのか)

 ウェルガーはそれを察するが、別にそれを言う気にはならない。
 エルフで一〇歳の嫁。「来てない、生えてない」とか説明の必要はない。それは新婚夫婦のプライベートの問題。
 師匠であっても関係ない。

「でも、ちょっとくらいなら…… お料理して指を切っちゃうこともあったし。それを――」
「それを?」

 ニュウリーンはグイグイ食い込んできた。

「えへへ、切れた指をチュウチュウと舐めて治してもらったこともあります。夫に―― えへへへへ♡」

「ああ、そんなこともあったなぁ~ でも今は、ずいぶん上達したよな。料理だってなんだって♥」
「ふふ、だって大好きなアナタのためだもん♡」
「リルリルゥゥゥゥ―― 可愛すぎィィィ!!」
 
 ウェルガーがリルリルを抱きしめ身悶えするように振り回す。

「あああ、そんなギュッとしないでぇ、激しいしよぉぉ~ 壊れちゃうよぉぉ♡♡ あ、あ、あ、あ、らめぇぇ~♡」

 傍観者としてそこにいるだけの、ラシャーラの褐色の頬まで赤味がさしてくる。
 聞いているだけで、赤面するようなべたアマな新婚生活を見せつけられる。
 彼女は、耐えられなくなり、テーブルに突っ伏して顔を隠した。

(私、これから、同居して大丈夫かしら……)

 そんな不安が彼女の頭によぎった。

「それだ!! それ!」

 ビシッとした声で、ニュウリーンが言った。

「え、はい?」
 
 ウェルガーの悶え狂うような動きが止まった。
 静かに、リルリルを床に下ろした。

 リルリルは「ふぅ~」と大きく深呼吸して呼吸を整える。
 で、ニュウリーンを見やった。

「えっと…… お料理で、指を切って…… 舐めてもらちゃう♡ そう言った感じのことですか?」

「そう。指先を針でちょっと刺して―― 痛いかもしれないけど…… それをウェルガーが舐めればいいの」

 リルリルが、コクンと頷いて、少し考える。そして桜色の唇を開いた。

「そうですか…… それでいいんですか」

 小さくつぶやくような声。

 エルフの美少女は思案気な表情を見せながらも、そう言った。
 彼女も、勇者の力が少し戻ればいいなと思っているのだ。
 最強の勇者だった夫に憧れていたのだから――

(まったく、こんなキレイな子を嫁にして…… まつ毛が長くて、瞳なんて宝石みたい。この子が男の子だったら――)

 心の中で変態的思考を走らせながらも、ニュウリーンは話を戻す。

「ま、それだけよ。呪いなんかないわ。愛する者の血の力で、ちょっとの間だけ、魔力核の一部を起動させるってことよ」

「え、ちょっと待ってください。師匠――」

「ん、なにかしら?」

「『ちょっとの間』って言いましたよね」

「言ったわね。確かに――」

 そう言って、彼女は言葉を止める。また、何か思い出そうとしているかのようだった。

「そうそう。力が解放されるのは、一〇分程度ね」

「一〇分?」

「それに、一回の血の量を増やそうが、時間は変わらないってことらしいわ」

 彼女は封印解放の術式ついてそう語ったのであった。
 血の儀式による力の解放――
 それはそのようなモノであった。
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第11回恋愛小説大賞にノミネート中です
ドン引きするくらいエッチなわたしに年下の彼ができました
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