大江戸・淫ら鬼喰らい師 -さね吸い祓い奇譚-

中七七三

文字の大きさ
上 下
20 / 20

21.仕舞い

しおりを挟む
「あ、あ、あ、あ、あ、あ」
 
 万之介は何度も何度も精を放っていた。
 万之介は鬼狂を抱いた。
 陽根は、鬼狂の肉裂に挿入され、湿った音を立てる。

(あ、何度…… 何度放っても、あああああ)

 腰が止まらない。
 己が剛直が衰えることを知らず、幼い肢体を貫いていた。

「ふふ、際限ないのぉ。それほどまでに、良いか? あうッ」

 先端が深いところに刺さる。
 鬼狂も、悦楽の声を上げた。

 ふたりは何度も交わり、溶け合うほどに一体となっていた。

        ◇◇◇◇◇◇
 
 静寂の中にあった。
 深夜――
 万之介がその動きをとめたのは深夜になってからだった。

「中々の男よ……」

 鬼狂は隣で寝る万之介の頭を撫でた。
 小さく唇が動いた「さらば」と言ったのかもしれないし、そうでないのかもしれない。
 万之介は、どこか遠くに衣擦れの音を聞いた気がした。
 自分が起きているのか、寝ているのか、そのことを考えることすらできない朦朧とした中であった。
 気だるく、全身が甘く痺れ、動くことができなかった。

 気配が動く。
 鬼狂だ。
 鬼狂が出て行こうとしている。
 それが分る。
 分るが、どうにもできなかった。
 夢なのか現実なのかもわからない。
 ただ、行かないでくれと願うしかなかった。

 鬼狂を止めなくては――
 と、思う。
 思うが、指一本動かすことができなかった。

 気配が消えた。

 万之介の部屋から鬼狂の気配が消えていた。
 甘い香りだけを残し、鬼狂はいなくなっていた。

        ◇◇◇◇◇◇
 
 夜光が川辺を照らす。
 川が黒く不気味に光っていた。
 
 まるで、重さを感じさせない歩みで鬼狂は歩を進めた。
 ふわりと風が吹き、鬼狂の髪を舞わせる。

「法越――」

 鬼狂は月明りを背後にする影に向かって言った。
 黒い影は七人を数えた。

「どうやら、ここらでけりをつける必要があるようですね」

「そのようじゃの」

 法越と呼ばれた影の前にすっと他の影が立った。
 六人の影――

「反魂の術で、どれほどの者を蘇らせた」

「武蔵坊弁慶」

「源為朝」

「塚原卜伝」

「足利義輝」

「佐々木小次郎」

「宮本武蔵――」

 影となった六人が名乗った。
 鬼狂の唇が釣りあがり、笑みの形となる。
 妖艶であり、狂気を帯びた笑みだった。

「なかなか豪の者をそろえたではないか……」

「これで、貴女を手に入れれば完璧でしょう」

「それは、無理じゃな」

「無理ですか」

「法越よ、ここらで仕舞いじゃ」

 鬼狂は宙に身を躍らせた。
 
「応ッ!」

 六つの影が同時に動く。
 黒い影が交差する。何度も、何度も――
 血の匂いがあたりに満ちてきた。

「何度でも殺す! 法越よ、何度でもだ!」

 鬼狂の叫びが月明りの下に響いた。

――完――
しおりを挟む
WEB小説執筆や書評(小説、漫画、一般書)などあれこれ書いています
ネット小説書きの戯言
よろしければどうぞ。
感想 7

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(7件)

東雲飛鶴
2020.12.06 東雲飛鶴

完結おめでとうございます!

2020.12.06 中七七三

ありがとうございます。

解除
空廻ロジカ
2017.06.03 空廻ロジカ

今がお話全体のどのあたりなのか全くわからなく、計り知れない面白さがあります。
鬼狂の内面や存在の秘密を早く知りたいです。

2017.06.03 中七七三

感想ありがとうございます。ネタバレになるので言えないですが、キャラ設定とかちゃんとやってますので。
そろそろ、鬼狂が自分語りしますので。

最初で話の全容というか、方向性が見えんのはあまりよくないかなと。
ありがとうございます。
田沼との差はそれかなぁ。

解除
にんげんだもの

もしかして主人公は作者様がモデル? 

2017.05.29 中七七三

感想ありがとうございます。
いえいえ、主人公は全然別人格ですし、一貫性のない「お上のエロ規制」が何かの暗喩であることもありません。
単純に架空のキャラと、史実を書いただけです。

解除

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

ナースコール

wawabubu
青春
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

自習室の机の下で。

カゲ
恋愛
とある自習室の机の下での話。

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。