大江戸・淫ら鬼喰らい師 -さね吸い祓い奇譚-

中七七三

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18.万之介の思い

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「ま、後はまんすけの好きにすればいい」

 北斎は万之介を真正面から見つめて言った。
 ここから先、鬼狂に関わるのかどうか――
 北斎の話を聞いた上で万之介自身で決めろということだ。

「師匠は?」

 思わず万之介は北斎に尋ねていた。 
 鬼狂との関わりの長さでは万之介以上だ。

「ま、俺(おり)ゃ、もう降りることはできねーし、降りる気もねぇんだ」

 北斎は覚悟とか決意という思いとは程遠い、気軽な調子で言った。
 ――人間を書きたい。鬼も人間の一面で分けることはできない。
 と、万之介に語ったのだった。

「てめぇのことはてめぇで決めるんだな。それしかねぇ」

 本当に当然のことを当たり前のように、北斎は言った。

        ◇◇◇◇◇◇

 万之介は鬼狂を思う。
 童女のようでいて、妖艶な色香をもつ鬼祓師だ。
 人に憑いた鬼を喰らう。
 鬼を喰らった後の鬼狂の身体を鎮めるのが万之介の役割であった。 
 挺孔(さね)吸う。
 それを思うだけで己が一物が硬くなる。
 いつか、鬼狂と交わりたい、己が欲望を鬼狂の細く美麗な肉の内に放ちたいと思う。

 が――
 それをすれば――そそも可能であるかどうかも分からぬが――鬼狂との縁は切れる。
 
(俺は無垢であるから、挺孔(さね)を吸えるのだ)

 これは鬼狂が言っていたことだ。
 だから、万之介は女を買うことも控えている。
 本当の意味で女を知らない。
 また、そのような万之介でなければ鬼狂は必要としないであろう。

 手にはいらぬ女への恋慕を募らせ、死ぬかもしれぬ道を行くのか?
 それを己に問う。何度も問うていた。
 しかし、答えは出ない。

「鬼狂様がすきなのだ。俺は好きなのだ」

 それで良いではないかという思いもあるにはあるのだ。
 が、狂しい媚肉への渇望もあった。
 
 悶々としながら、万之介は己が一物を扱くしかなかった。
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