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その27:失敗から学ぶ者
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「結局、私のクビはつながったわけかね」
ハワイの太平洋艦隊司令部。上から見ると「コの字型」となっている白いビルだ。
その執務室で、ニミッツ太平洋艦隊司令長官は言った。
レイトン情報参謀は、姿勢を正し自分を救った上司を見つめている。
彼は、前任者のキンメル長官の元でも情報参謀を務めていた。真珠湾攻撃の責任を取って辞めると言った彼を引きとめたのは、ニミッツだった。
その日以来、彼はその頭脳で日本人を効率よく殺していくことだけを考えていた。
レイトン情報参謀は大きなメガネをクイッと持ち上げた。
理知的と言っていい大きな額。一見すると軍人というよりは、役所の出納係りのように見える男だった。
「長官をクビにできるはずはありません。責任は――」
「レイトン君、海軍士官としての嗜みを持ちたまえ」
「はい」
ニミッツは苦笑ともいえる表情を浮かべ、部下を見つめた。
要するに、余計なことは言わず、己の出来ることをせよということだ。
レイトンはこの聡明な上官に対し敬意を持っていた。
日本海軍を打ち負かす最適な人物であると思っている。
「まあ、今の段階で、組織内で責任問題を問うてもしょうがないがね――」
「それを言うなら、キンメル長官も」
「それも、海軍士官の慎みの一つだよ、レイトン君」
「はい」
ニミッツはこの役人か会計士のように見える情報参謀を評価していた。
レイトン情報参謀は、開戦前に日本海軍が、先制攻撃してくることを予測していた。彼は優れた情報参謀であった。
しかし、彼はここでミスをした。いや、それをミスと言ってしまうのは酷なものだった。彼は日本の攻撃を真珠湾ではなく、フィリピンであると予測したのだ。
そもそも、日本海軍内部でも「開戦早々そんな投機的作戦やるな!」と反対された真珠湾攻撃だ。アメリカ側が予想できなくて当然だった。
しかも、アメリカは蒼龍、飛龍は軽空母と誤認しており、その航続距離を含めた性能も低く見積もっていた。
日本海軍の空母部隊に、あれほどの力があるなど、アメリカ海軍の中の誰一人として思ってなかったというのが正解に近い。
その真珠湾攻撃から、ほぼ5か月以上が経過した。真珠湾は徐々にその姿を元に戻していた。
工廠設備、燃料タンクが無傷であったのは僥倖だった。
燃料タンクがやられていた場合、本国でも不足気味のタンカーを手配しなければならなかった。おそらく今以上のてんやわんやになっていただろう。
それを思うと「不徹底な攻撃だったな」と日本に対して言ってやりたくなる。半分以上は負け惜しみであることを認めつつも。
ニミッツは椅子に腰掛け上半身を乗り出した、デスクに肘を立て指をくんた。
組んだ指で口元を隠している。
彼の思考はすでに、過去から未来へと切り替わっていた。
「ワシントンの提案をどう思うかね? 情報参謀」
デスク上にはその書類が置いてあった。
「日本本土への、艦砲射撃ですか――」
口元を引きつらせるようにしながら、レイトン情報参謀は言った。
幼児の思いつきだと思った。
キング艦隊司令長官からは、今後の作戦計画の指示があった。それは、日本本土への砲撃、爆撃――
とにかく、いかなる方法でも日本人に、本土が安全ではないことを知らしめる作戦を行えというものだった。
「失敗に懲りないのですかね」
レイトン情報参謀は言った。
簡単に言ってしまえば、日本本土への攻撃など夢物語。他にやるべきことが山ほどあったのだ。
エンタープライズ、ホーネットにB-25を搭載し、東京を空襲するという計画は失敗した。
空母部隊ですら、作戦通りに接近できず、全滅させられたのだ。
さらに、鈍重な戦艦など繰り出せば、日本近海に魚の棲みかを新たに作るだけだった。メイド・イン・USAの。
「我々は他にやるべきことがあると小職は考えます」
「魚雷かね?」
ニミッツは眉の片方を釣り上げ、端的に言った。
「それも重大な懸案事項です」
「ロックウッド大佐の方で、対処しているはずだがな」
「州議の圧力で調査が進んでません」
アメリカ海軍にとって、今日本に出来る有効な反撃は潜水艦によるシーレーン攻撃だった。すでに、無制限潜水艦作戦を宣言し、アメリカは日本の補給線を寸断しに動いている。
しかし――
アメリカの潜水艦の動きは芳しくは無かった。
まず、根拠地の問題だった。
オーストラリアが、本土防衛にシフトしており、同地に有力な潜水艦基地を作ることが難しくなっている。
また、出来たとしても日本軍の勢力範囲外であり、日本のシーレーンからかなりの遠距離となる。
つまり、潜水艦のための適当な根拠地がないのだ。
さらに――
アメリカの潜水艦は、艦隊決戦用に作られた物だった。艦は対応できたが、乗組員の意識改革が難しかった。
そして――
魚雷の不足と不良の問題だ。フィリピンが日本軍に攻められ、キャビテ軍港に保管してあった大量の魚雷が失われていた。
残った魚雷も不良だらけだった。まず、命中しても爆発するかどうかは運次第という兵器としては、どう考えても失格という代物だった。
潜水艦司令部の参謀長であるロックウッド大佐が、この事実を報告しているが、ワシントンの動きはよくない。
魚雷の製造工場の労働組合と州議員が癒着し、不良品の検査を認めないのである。
まさに、ニューディール政策の暗黒面を味わっている最中ということになる。
「魚雷の問題は、私の方からも働きかけよう」
「お願いいたします」
「さて――」
すっとニミッツが目を細めた。
緊張するレイトン大佐。
「東京空襲作戦、失敗の原因はなんだね?」
不意にニミッツが切り込んできた。
「日本の哨戒圏の算定ミスが第一。そして日本側爆撃機の足の長さ。日本本土の防空体制に対する情報不足。我々がレーダー運用に慣れてないために発生したミス――」
「よろしい」
用意されていた台本を読み上げるようにレイトンは言った。
その言葉をニミッツは人差し指を立て遮った。
軍人というよりは、一種の技術者か研究者然とした感じだった。
自分の作った機械装置が予想通り働いていることに満足しているような表情だ。
「では、この戦いで見えた日本海軍の弱点はなんだね?」
「弱点?」
「そうだ、彼らもこの戦いで弱みを見せている」
「それは……」
レイトンはメガネのブリッジを人差し指で持ち上げた。
そして、言葉を続ける。
「日本軍の航空機は脆すぎます。かなり脆弱です。特に基地航空隊の主力ともいえる双発機が」
「なるほどね。根拠は? 我々は日本軍の機体サンプルをまともに手に入れてないのだが」
「戦った者からの聞き取り」
「弱いね。戦場での証言が常に正しいとか限らない」
挑発するようにニミッツは言った。彼にしては珍しい物言いだった。
「ガンカメラのフィルムを入手しています」
「ほう――」
「映像分析の結果、防弾は不十分か、もしくはなされていません。あの規模の雷撃機としては、長すぎる航続距離も傍証になります」
「まだ、弱いな。たまたまの事例かもしれない。その双発機はイギリスの戦艦を沈めている」
「それは、上空護衛の戦闘機が無かったこと。イギリスの対空火器が、太平洋戦線のレベルに無かったことが理由です」
「で、あるなば――」
ニミッツは口の端を釣り上げ笑みを見せた。
「上空護衛の戦闘機と、我々の対空火器があれば、危険は少ないと言えるのかね?」
「それは、敵の数にもよります。彼我の戦力比次第ですが…… まさか?」
レイトンの明晰な頭脳は、一つの作戦構想を脳裏に浮かべていた。しかし、それはあまりにも奇策に過ぎる気がした。
さらに、前提となる条件も厳しい。だが、成功したならば……
「どうだね? 艦砲射撃は出来そうな気がしないか?」
ニミッツはそう言った。彼は自分の部下が同じ結論に至っていることに満足していた。
◇◇◇◇◇◇
「軍令部の方はどうだったかね? 渡辺君」
俺は渡辺参謀に訊いた。次期作戦案について、今軍令部と最終調整中だった。
「同時にやればいいじゃないかとのことです」
「莫迦か? フィジーとかサモアくんだりまで行けるか」
俺は言った。
俺を中心とした聯合艦隊司令部は次期作戦として、ニューギニア攻略を主軸においた計画をたてた。
軍令部は、フィジー、サモアまでを占領する計画を持ってきた。
こんなん、補給限界超えるわ。地図みたことねーのかよ。
まあ、史実の山本五十六はミッドウェー攻略を押しまくるわけだが。
しかし、この勝ち戦の中、行け行けドンドンになるのは、仕方ないかもしれない。
そもそも、ソロモンの場合、島が続くので補給も出来そうな気になるのだろう。
そう甘いもんじゃないのだが、そんな経験をしたことのない人間が、分かるはずがない。
米豪遮断ということなら、ポートモレスビーとミルン湾を押さえることでかなり効果があるはずだ。
どっちにせよ、完全な遮断はできないだろう。補給に掣肘を加えるというのがせいぜいのところだ。
アメリカ空母誘致に関して言えば、どっちでも出てくるかどうか分からない。
暗号が読まれて、待ち伏せ食ったのは、珊瑚海海戦もミッドウェーと同じだった。
だから俺はなるべく戦力集中の原則を守っていきたいと思う。
それで、出てこなければそれはそれでありがたい。優先すべきは、ニューギニアの完全占領だからだ。
とりあえず、暗号の乱数表を新規に交換して、しばらくはしのげるだろう。どのくらいだろうか……
暗号の問題は費用や手間の問題もあるので、小手先の対応しかできない。
それに、暗号問題では、商船暗号をなんとかしないといけない。潜水艦の被害が多かったのは、商船の行動が掴まれていたのも大きな原因だ。
攻撃されなくても、船舶はやっとこ必要量限界スレスレなのだ。
本来、戦前の日本経済を維持するためには、1000万トン以上。試算によれば2000万トン必要と言うデータも見た記憶がある。
日本の船舶保有量が600万トンくらいで、なんでこうなっているのかといえば、戦前は外国船籍の船も活動していたからだ。
戦争になって、そういった船がなくなったわけだ。
戦争をしているという事実だけで、日本の船舶は一気に厳しくなってくる。
それも1945年まで我慢できるかどうかだ……
そのためには、オーストラリアを封じ込む。そして、ニューギニアをチョークポイントとして確保しなければだめだ。
この時の俺は、自分たちが攻めることだけを考えていた。
完全にアメリカからイニシャティブを奪ったわけではなかったのに。
ハワイの太平洋艦隊司令部。上から見ると「コの字型」となっている白いビルだ。
その執務室で、ニミッツ太平洋艦隊司令長官は言った。
レイトン情報参謀は、姿勢を正し自分を救った上司を見つめている。
彼は、前任者のキンメル長官の元でも情報参謀を務めていた。真珠湾攻撃の責任を取って辞めると言った彼を引きとめたのは、ニミッツだった。
その日以来、彼はその頭脳で日本人を効率よく殺していくことだけを考えていた。
レイトン情報参謀は大きなメガネをクイッと持ち上げた。
理知的と言っていい大きな額。一見すると軍人というよりは、役所の出納係りのように見える男だった。
「長官をクビにできるはずはありません。責任は――」
「レイトン君、海軍士官としての嗜みを持ちたまえ」
「はい」
ニミッツは苦笑ともいえる表情を浮かべ、部下を見つめた。
要するに、余計なことは言わず、己の出来ることをせよということだ。
レイトンはこの聡明な上官に対し敬意を持っていた。
日本海軍を打ち負かす最適な人物であると思っている。
「まあ、今の段階で、組織内で責任問題を問うてもしょうがないがね――」
「それを言うなら、キンメル長官も」
「それも、海軍士官の慎みの一つだよ、レイトン君」
「はい」
ニミッツはこの役人か会計士のように見える情報参謀を評価していた。
レイトン情報参謀は、開戦前に日本海軍が、先制攻撃してくることを予測していた。彼は優れた情報参謀であった。
しかし、彼はここでミスをした。いや、それをミスと言ってしまうのは酷なものだった。彼は日本の攻撃を真珠湾ではなく、フィリピンであると予測したのだ。
そもそも、日本海軍内部でも「開戦早々そんな投機的作戦やるな!」と反対された真珠湾攻撃だ。アメリカ側が予想できなくて当然だった。
しかも、アメリカは蒼龍、飛龍は軽空母と誤認しており、その航続距離を含めた性能も低く見積もっていた。
日本海軍の空母部隊に、あれほどの力があるなど、アメリカ海軍の中の誰一人として思ってなかったというのが正解に近い。
その真珠湾攻撃から、ほぼ5か月以上が経過した。真珠湾は徐々にその姿を元に戻していた。
工廠設備、燃料タンクが無傷であったのは僥倖だった。
燃料タンクがやられていた場合、本国でも不足気味のタンカーを手配しなければならなかった。おそらく今以上のてんやわんやになっていただろう。
それを思うと「不徹底な攻撃だったな」と日本に対して言ってやりたくなる。半分以上は負け惜しみであることを認めつつも。
ニミッツは椅子に腰掛け上半身を乗り出した、デスクに肘を立て指をくんた。
組んだ指で口元を隠している。
彼の思考はすでに、過去から未来へと切り替わっていた。
「ワシントンの提案をどう思うかね? 情報参謀」
デスク上にはその書類が置いてあった。
「日本本土への、艦砲射撃ですか――」
口元を引きつらせるようにしながら、レイトン情報参謀は言った。
幼児の思いつきだと思った。
キング艦隊司令長官からは、今後の作戦計画の指示があった。それは、日本本土への砲撃、爆撃――
とにかく、いかなる方法でも日本人に、本土が安全ではないことを知らしめる作戦を行えというものだった。
「失敗に懲りないのですかね」
レイトン情報参謀は言った。
簡単に言ってしまえば、日本本土への攻撃など夢物語。他にやるべきことが山ほどあったのだ。
エンタープライズ、ホーネットにB-25を搭載し、東京を空襲するという計画は失敗した。
空母部隊ですら、作戦通りに接近できず、全滅させられたのだ。
さらに、鈍重な戦艦など繰り出せば、日本近海に魚の棲みかを新たに作るだけだった。メイド・イン・USAの。
「我々は他にやるべきことがあると小職は考えます」
「魚雷かね?」
ニミッツは眉の片方を釣り上げ、端的に言った。
「それも重大な懸案事項です」
「ロックウッド大佐の方で、対処しているはずだがな」
「州議の圧力で調査が進んでません」
アメリカ海軍にとって、今日本に出来る有効な反撃は潜水艦によるシーレーン攻撃だった。すでに、無制限潜水艦作戦を宣言し、アメリカは日本の補給線を寸断しに動いている。
しかし――
アメリカの潜水艦の動きは芳しくは無かった。
まず、根拠地の問題だった。
オーストラリアが、本土防衛にシフトしており、同地に有力な潜水艦基地を作ることが難しくなっている。
また、出来たとしても日本軍の勢力範囲外であり、日本のシーレーンからかなりの遠距離となる。
つまり、潜水艦のための適当な根拠地がないのだ。
さらに――
アメリカの潜水艦は、艦隊決戦用に作られた物だった。艦は対応できたが、乗組員の意識改革が難しかった。
そして――
魚雷の不足と不良の問題だ。フィリピンが日本軍に攻められ、キャビテ軍港に保管してあった大量の魚雷が失われていた。
残った魚雷も不良だらけだった。まず、命中しても爆発するかどうかは運次第という兵器としては、どう考えても失格という代物だった。
潜水艦司令部の参謀長であるロックウッド大佐が、この事実を報告しているが、ワシントンの動きはよくない。
魚雷の製造工場の労働組合と州議員が癒着し、不良品の検査を認めないのである。
まさに、ニューディール政策の暗黒面を味わっている最中ということになる。
「魚雷の問題は、私の方からも働きかけよう」
「お願いいたします」
「さて――」
すっとニミッツが目を細めた。
緊張するレイトン大佐。
「東京空襲作戦、失敗の原因はなんだね?」
不意にニミッツが切り込んできた。
「日本の哨戒圏の算定ミスが第一。そして日本側爆撃機の足の長さ。日本本土の防空体制に対する情報不足。我々がレーダー運用に慣れてないために発生したミス――」
「よろしい」
用意されていた台本を読み上げるようにレイトンは言った。
その言葉をニミッツは人差し指を立て遮った。
軍人というよりは、一種の技術者か研究者然とした感じだった。
自分の作った機械装置が予想通り働いていることに満足しているような表情だ。
「では、この戦いで見えた日本海軍の弱点はなんだね?」
「弱点?」
「そうだ、彼らもこの戦いで弱みを見せている」
「それは……」
レイトンはメガネのブリッジを人差し指で持ち上げた。
そして、言葉を続ける。
「日本軍の航空機は脆すぎます。かなり脆弱です。特に基地航空隊の主力ともいえる双発機が」
「なるほどね。根拠は? 我々は日本軍の機体サンプルをまともに手に入れてないのだが」
「戦った者からの聞き取り」
「弱いね。戦場での証言が常に正しいとか限らない」
挑発するようにニミッツは言った。彼にしては珍しい物言いだった。
「ガンカメラのフィルムを入手しています」
「ほう――」
「映像分析の結果、防弾は不十分か、もしくはなされていません。あの規模の雷撃機としては、長すぎる航続距離も傍証になります」
「まだ、弱いな。たまたまの事例かもしれない。その双発機はイギリスの戦艦を沈めている」
「それは、上空護衛の戦闘機が無かったこと。イギリスの対空火器が、太平洋戦線のレベルに無かったことが理由です」
「で、あるなば――」
ニミッツは口の端を釣り上げ笑みを見せた。
「上空護衛の戦闘機と、我々の対空火器があれば、危険は少ないと言えるのかね?」
「それは、敵の数にもよります。彼我の戦力比次第ですが…… まさか?」
レイトンの明晰な頭脳は、一つの作戦構想を脳裏に浮かべていた。しかし、それはあまりにも奇策に過ぎる気がした。
さらに、前提となる条件も厳しい。だが、成功したならば……
「どうだね? 艦砲射撃は出来そうな気がしないか?」
ニミッツはそう言った。彼は自分の部下が同じ結論に至っていることに満足していた。
◇◇◇◇◇◇
「軍令部の方はどうだったかね? 渡辺君」
俺は渡辺参謀に訊いた。次期作戦案について、今軍令部と最終調整中だった。
「同時にやればいいじゃないかとのことです」
「莫迦か? フィジーとかサモアくんだりまで行けるか」
俺は言った。
俺を中心とした聯合艦隊司令部は次期作戦として、ニューギニア攻略を主軸においた計画をたてた。
軍令部は、フィジー、サモアまでを占領する計画を持ってきた。
こんなん、補給限界超えるわ。地図みたことねーのかよ。
まあ、史実の山本五十六はミッドウェー攻略を押しまくるわけだが。
しかし、この勝ち戦の中、行け行けドンドンになるのは、仕方ないかもしれない。
そもそも、ソロモンの場合、島が続くので補給も出来そうな気になるのだろう。
そう甘いもんじゃないのだが、そんな経験をしたことのない人間が、分かるはずがない。
米豪遮断ということなら、ポートモレスビーとミルン湾を押さえることでかなり効果があるはずだ。
どっちにせよ、完全な遮断はできないだろう。補給に掣肘を加えるというのがせいぜいのところだ。
アメリカ空母誘致に関して言えば、どっちでも出てくるかどうか分からない。
暗号が読まれて、待ち伏せ食ったのは、珊瑚海海戦もミッドウェーと同じだった。
だから俺はなるべく戦力集中の原則を守っていきたいと思う。
それで、出てこなければそれはそれでありがたい。優先すべきは、ニューギニアの完全占領だからだ。
とりあえず、暗号の乱数表を新規に交換して、しばらくはしのげるだろう。どのくらいだろうか……
暗号の問題は費用や手間の問題もあるので、小手先の対応しかできない。
それに、暗号問題では、商船暗号をなんとかしないといけない。潜水艦の被害が多かったのは、商船の行動が掴まれていたのも大きな原因だ。
攻撃されなくても、船舶はやっとこ必要量限界スレスレなのだ。
本来、戦前の日本経済を維持するためには、1000万トン以上。試算によれば2000万トン必要と言うデータも見た記憶がある。
日本の船舶保有量が600万トンくらいで、なんでこうなっているのかといえば、戦前は外国船籍の船も活動していたからだ。
戦争になって、そういった船がなくなったわけだ。
戦争をしているという事実だけで、日本の船舶は一気に厳しくなってくる。
それも1945年まで我慢できるかどうかだ……
そのためには、オーストラリアを封じ込む。そして、ニューギニアをチョークポイントとして確保しなければだめだ。
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