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その19:東京空襲! 小笠原沖海戦 3
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柱島の戦艦大和。聯合艦隊司令部の作戦室だ。俺を含め聯合艦隊司令部要員が揃っている。
日本近海の太平洋の地図が貼られている。
聯合艦隊司令長官である俺のところには、全ての情報が集まってくる。
すでに、二式大艇が接敵に成功したという情報が入っている。
情報は逐次入ってきており、敵の排除活動を上手くかいくぐっているようだ。
しかし、上手くいきすぎじゃね?
いかに、高性能の二式大艇といっても、戦闘機に袋叩きになったら、無事じゃすまない。
それは、史実が証明している。
いくら高性能といっても、飛行艇は飛行艇だ。戦闘機に取り囲まれたら、勝てるわけがない。
空母側が本気で排除しようとしているなら、出来なくはないと思うのだが。
なにか、米軍側にも齟齬が発生しているのだろうか?
まあ、二式大艇が接敵できたのは、ラッキーでもあったが、哨戒密度を上げた成果でもある。
俺は、監視艇の北側哨戒ラインを重点的に哨戒するように指示した。
さらに出来る限り哨戒機の数を増やし、密度を高めている。4月に入ってからは、連日バンバン飛ばしてるからな。
「長官は恐空母病だ」という噂も流れてきたのを耳にしている。「ぷっ」とか陰で笑われているのも知っていたよ。
つーか、お前ら、怖がらない方がどーかしているからな。俺は、史実しっているからな、怖いんだよアメリカが。
まあ、結果として、横空の二式大艇が敵を捕捉した。監視艇の一報から2時間だ。出来過ぎといってもいい。
敵の位置もかなり詳細に分かっている。いくら高速の空母部隊でも飛行機よりは遅い。
しかし、いくら高性能の二式大艇といえど、機動部隊を監視し続けて大丈夫なのかと思った。
俺がそう思ったときに、二式大艇から続報が入った。無事なようだ。
「ワレ、グラマンを翻弄。空母の接敵を続ける―― 敵空母進路160度、速度25ノット――」
「おお」というどよめきが起きた。
いや、二式大艇が高性能といっても、グラマンF4Fをかわしきれるのか?
俺は不思議に思った。
「二式大艇の最高速度は450キロくらいだったと思ったが」
「さすが、長官は詳しいですな」
亀島先任参謀がニコニコして言った。揉み手をしそうな勢いだ。
空母が仕留められそうなのでうれしそうだ。
だが、二式大艇とはいっても、戦闘機に囲まれれば、どうにもならないはずだった。
一体何が起きているのだろう?
ま、有利に進んでいるなら、それはそれでいいんだけど。
◇◇◇◇◇◇
自殺行為だと思った。
岡本一飛曹は長峰大尉の考えには同意しかねる物があった。
確かに操縦技量も高く、判断力に優れた士官である。しかし、「二式大艇の性能に酔っているのでは?」と不謹慎な考えが頭をよぎる。
いくら高性能であったとしても飛行艇は飛行艇だ。限界はある。これ以上接敵を続けるのは危険だった。
すでに、敵空母の位置は打電している。本土から攻撃機が飛び立っている。敵空母が逃げ切れるとは思えない。
これ以上の接敵は無駄なのではないか――
火星エンジンは快調に唸りを上げているが、長時間の全力稼働には不安があった。
高度は4000メートル。背後には3機のグラマンF4Fが迫っているはずだ。高度は向こうの方が低い。
「不服か? 岡本一飛――」
それが顔に出てしまった。鋭い目で長峰大尉は岡本一飛曹を見た。射抜くような視線だった。
「しかし、無茶では……」
「そうでもない。あのグラマン、何か問題があるのではないか? あまりに機動がにぶい」
長峰大尉は、グラマンF4Fの動きを観察し結論していた。
特に、上昇力に問題があるように見えた。
彼らの二式大艇を追っているのは、グラマンF4F-4であった。防弾装備、翼の折り畳み機構を備えた改造型だ。
しかし、この改造は、F4Fから上昇力を奪っていた。さらに、エンジン過給機の全開高度の関係で高度4000メートル付近で速度が落ち込む。
この高度では、カタログ性能で時速480キロも出ない。二式大艇の最高速度と大差がなかった。
8000メートル以上では更に性能が落ちた。
しかし、原因は機材のせいだけではなかった。より大きな責を負うべきは、米側の不手際だった。
米側はレーダで二式大艇を捕捉に成功した。しかし、そのときに上空に哨戒機がいなかった。
監視艇攻撃を行っていた艦上機を収容中であったのだ。
収容と発進混乱(最終的には甲板の艦上機を廃棄してる)により、迎撃が遅れ、劣位からの襲撃となっていたのが大きかった。
史実のガダルカナルの航空戦において、一式陸攻が数多く落とされた。
同じF4Fによってだ。
決して無力な戦闘機ではないのだ。
このことは、戦闘機の性能差が戦闘の勝敗を分ける全てではないことを物語っていた。
ガダルカナルでは、コースト・ウォッチャーズ(沿岸監視員)やレーダによる早期警戒体制が出来ていたのが大きかったのだ。
単純なカタログ性能で言えば、F4Fの能力では8000メートルの高空を飛行する一式陸攻を捕捉するのはかなり困難であった。
それをカバーしたのは支援体制だった。
兵器は総合的なシステムであり、なにかに齟齬が発生すれば、威力を削がれてしまう。
もし、F4Fがレーダ誘導によって、より高高度で待ち伏せていた場合、二式大艇は無事には済まなかっただろう。
長峰大尉がそのことまで理解していたわけではない。
彼は機体を巧みに操り、時には20ミリで威嚇を行った。
先に、1機撃墜されているせいだろうか。F4Fの接敵はどこか及び腰であった。
「打電だ」
長峰大尉は短く言った。
◇◇◇◇◇◇
すでに、木更津、館山、横須賀、三沢などの海軍基地から攻撃部隊が向かっている。
策敵攻撃の形をとっている。特設監視艇の第一報で動いているのだ。
一式陸攻だけで90機以上だ。護衛の零戦は21機だ。
史実でもこの時点で本土には相当数の攻撃機があった。しかし、米側の攻撃意図を読み切れず、空母を逃がしてしまった。
俺の知っている歴史の中では、米機動部隊の跳梁跋扈に対し、海軍が本土の警戒態勢を強化していることは確かだった。
木更津と南鳥島で哨戒機を連日飛ばしている。史実の海軍も本土攻撃を恐れていたことは確かだ。
勝ち戦に浮かれて、本土防衛を疎かにしていたわけでもない。まあ、敵の方は1枚上だったということだ。
監視艇が空母を発見してからの、史実の流れはだいたいこんな感じだったはず。
策敵機が東京に向かうB-25を発見してすれちがう。
そして三沢空、木更津空、四空から合計30機に即時待機の命令が出るはずだ。
監視艇からの空母発見の第一報が6時30分。そして、陸攻が攻撃に飛び立ったのが12時45分だ。6時間以上経過している。
結局、攻撃は天候不良もあって途中で引き返し空振りに終わる。
結果、ドゥーリトルの東京空襲は成功。1機も撃墜できずに帝都への侵入を許す。空母も無傷で逃げていく。
米機動部隊はすでにB-25を発艦させると即時反転している。天候不良がなくとも、捕捉は難しかっただろう。
仮に捕捉したとしても30機程度の陸攻では厳しかったかもしれない。
とにかく数を集めてぶつけないと、陸攻は威力を発揮しないのではないかと思っている。
俺は、マレー沖の再現が史実でなかったのは、小規模編隊の散発的な攻撃が中心だったからだと思っている。
例えば、ラバウル空襲を企図したレキシントンに対し、17機の一式陸攻が攻撃している。
ラバウル空襲は阻止したが、空母には何のダメージも与えられなかった。
これは、俺も放置して史実通りになっている。2月のことだった。
陸攻は集中して使用すべき機種だと思う。
そして、武装だ。
「陸攻の装備は?」
俺は改めて確認した。
「それが、魚雷の定数が揃わず、雷装が30機、残りは爆装です。25番です」
「そうか……」
俺の質問に対し、三和作戦参謀が状況を報告した。
機数を揃えることはできたのだが、魚雷が揃わない状況は史実と変わらない。
それは、前から報告を受けている。
「魚雷の生産は進まないか……」
「中々、難しいようです」
魚雷は海中を直進させるために、複雑で精密なフィードバックシステムを持っている。
しかも、何百気圧のかかる空気室は特殊鋼だ。溶接ではなく削りだしで作っていたんじゃないか……
日本の生産力では、魚雷は数を揃えるのが結構大変な精密機械だ。
「魚雷1本家1軒」といわれるくらい高価な兵器でもある。
しかも、戦争中でも、軍隊は予算の枠組みの中で動いているのだ。
いきなり、欲しいので増産してくれといっても、そう簡単には動かない。
このあたりは、海軍省の縄張りだ。
要望は出せるが、そのレベルは超えない。
組織とはそういうものだ。
しかし、本当に貧弱な生産力に不安になってくる。
まあ、30機の雷撃なら、合計4~5本は当たるんじゃないかと皮算用したが。
後は爆弾だ。
海軍で最も一般的な対艦攻撃用の爆弾250キロ爆弾。通称「25番」。
これには、対艦攻撃用の通常爆弾と陸地攻撃用の陸用爆弾がある。
通常爆弾は弾体が分厚く、敵の装甲を貫いて爆発する仕様になっている。
米軍もこの爆弾が装甲をぶち抜くので、1000ポンド(450キロ)クラスの爆弾と誤認していたくらいだ。
火薬は少ないが、致命的な部分で爆発する可能性がある。
一方、陸用爆弾は、火薬は多いが弾体が薄い。信管も反応が早く、ほとんど瞬発だ。
対艦用には、先にこの陸用爆弾で対空火器を沈黙させるという戦法があった。
多分、今回の爆弾も2種類が混在しているのではないかと思う。
爆装の一式陸攻は25番2発積んでいる。燃料搭載量と爆弾搭載量はトレードオフの関係になる。
25番なら最大で4発搭載可能であるが、長距離攻撃ということで、爆弾の数は減らしてある。
水平爆撃は、編隊で目標を囲みこんで、確率的に爆弾を当てる公算爆撃という手法だ。
これで、マレー沖では命中を出している。
「610海里か…… そこそこ遠いな」
「陸攻なら問題ないでしょう」
「そうだな」
一式陸攻の性能を考えれば、十分に攻撃半径内であるといえた。
ただ、護衛の零戦にとってはギリギリだ。ガダルカナルの航空作戦より遠いんじゃないか。
いくら破格の航続性能を持つ零戦とはいっても、かなり厳しい。
史実では450海里付近で戻っているけど……
しかし、裸で一式陸攻を空母にぶつけるのは、自殺行為以外のなにものでもない。
結果として、零戦無しとなっても、一応、飽和攻撃が可能機数は揃えてあるつもりだが……
まだ、この時期の米海軍なら、空母2隻に90機をぶつけるなら多分大丈夫か?
もはや、陸攻は出撃しており、事態は「戦術的」なレベルになっている。こっちのやることは無くなった。
被害を少なくするのは、飽和攻撃しかない。
少数機の分散、突撃では危険すぎる。
ただ、今回は2隻の空母を1隻の分の戦闘機で守らねばならんという点でアメリカ側に不利な要素がある。
だから、90機の陸攻を即時攻撃に出せるようにかき集めた。
その攻撃隊は既に空の上だ。
東京空襲の阻止は、アメリカに与える政治的なインパクトがでかい。
空襲失敗で空母も失えば、海軍は責任を問われるし、作戦の出所がルーズベルトと分かれば、彼への風当たりも大きくなる。
現実問題、日本に対しては、当初の取り決め通り「消極的防御」という流れになると思うのだ。
ニューギニアに侵攻したさいに、空母が出てくる可能性も下がる。
現在米軍の正規空母は、レキシントン、サラトガの戦艦改造空母。ヨークタウン、エンタープライズ、ホーネット、ワスプとなる。レンジャーもあるが、搭載機数は多い物の太平洋戦線では使用できないと判断されたはず。史実ではだが。
つまり合計6隻だ。
このうち、サラトガは1月に雷撃受けて戦線離脱。復帰は6月以降だ。史実ではミッドウェー海戦にも間に合ってない。
ここでエンタープライズとホーネットを沈めれば……
俺はグッと手を握りこむ。妙に汗ばんだ手だった。
これは、セーブもリセットもできない、現実であることを確認した。
日本近海の太平洋の地図が貼られている。
聯合艦隊司令長官である俺のところには、全ての情報が集まってくる。
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しかし、上手くいきすぎじゃね?
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それは、史実が証明している。
いくら高性能といっても、飛行艇は飛行艇だ。戦闘機に取り囲まれたら、勝てるわけがない。
空母側が本気で排除しようとしているなら、出来なくはないと思うのだが。
なにか、米軍側にも齟齬が発生しているのだろうか?
まあ、二式大艇が接敵できたのは、ラッキーでもあったが、哨戒密度を上げた成果でもある。
俺は、監視艇の北側哨戒ラインを重点的に哨戒するように指示した。
さらに出来る限り哨戒機の数を増やし、密度を高めている。4月に入ってからは、連日バンバン飛ばしてるからな。
「長官は恐空母病だ」という噂も流れてきたのを耳にしている。「ぷっ」とか陰で笑われているのも知っていたよ。
つーか、お前ら、怖がらない方がどーかしているからな。俺は、史実しっているからな、怖いんだよアメリカが。
まあ、結果として、横空の二式大艇が敵を捕捉した。監視艇の一報から2時間だ。出来過ぎといってもいい。
敵の位置もかなり詳細に分かっている。いくら高速の空母部隊でも飛行機よりは遅い。
しかし、いくら高性能の二式大艇といえど、機動部隊を監視し続けて大丈夫なのかと思った。
俺がそう思ったときに、二式大艇から続報が入った。無事なようだ。
「ワレ、グラマンを翻弄。空母の接敵を続ける―― 敵空母進路160度、速度25ノット――」
「おお」というどよめきが起きた。
いや、二式大艇が高性能といっても、グラマンF4Fをかわしきれるのか?
俺は不思議に思った。
「二式大艇の最高速度は450キロくらいだったと思ったが」
「さすが、長官は詳しいですな」
亀島先任参謀がニコニコして言った。揉み手をしそうな勢いだ。
空母が仕留められそうなのでうれしそうだ。
だが、二式大艇とはいっても、戦闘機に囲まれれば、どうにもならないはずだった。
一体何が起きているのだろう?
ま、有利に進んでいるなら、それはそれでいいんだけど。
◇◇◇◇◇◇
自殺行為だと思った。
岡本一飛曹は長峰大尉の考えには同意しかねる物があった。
確かに操縦技量も高く、判断力に優れた士官である。しかし、「二式大艇の性能に酔っているのでは?」と不謹慎な考えが頭をよぎる。
いくら高性能であったとしても飛行艇は飛行艇だ。限界はある。これ以上接敵を続けるのは危険だった。
すでに、敵空母の位置は打電している。本土から攻撃機が飛び立っている。敵空母が逃げ切れるとは思えない。
これ以上の接敵は無駄なのではないか――
火星エンジンは快調に唸りを上げているが、長時間の全力稼働には不安があった。
高度は4000メートル。背後には3機のグラマンF4Fが迫っているはずだ。高度は向こうの方が低い。
「不服か? 岡本一飛――」
それが顔に出てしまった。鋭い目で長峰大尉は岡本一飛曹を見た。射抜くような視線だった。
「しかし、無茶では……」
「そうでもない。あのグラマン、何か問題があるのではないか? あまりに機動がにぶい」
長峰大尉は、グラマンF4Fの動きを観察し結論していた。
特に、上昇力に問題があるように見えた。
彼らの二式大艇を追っているのは、グラマンF4F-4であった。防弾装備、翼の折り畳み機構を備えた改造型だ。
しかし、この改造は、F4Fから上昇力を奪っていた。さらに、エンジン過給機の全開高度の関係で高度4000メートル付近で速度が落ち込む。
この高度では、カタログ性能で時速480キロも出ない。二式大艇の最高速度と大差がなかった。
8000メートル以上では更に性能が落ちた。
しかし、原因は機材のせいだけではなかった。より大きな責を負うべきは、米側の不手際だった。
米側はレーダで二式大艇を捕捉に成功した。しかし、そのときに上空に哨戒機がいなかった。
監視艇攻撃を行っていた艦上機を収容中であったのだ。
収容と発進混乱(最終的には甲板の艦上機を廃棄してる)により、迎撃が遅れ、劣位からの襲撃となっていたのが大きかった。
史実のガダルカナルの航空戦において、一式陸攻が数多く落とされた。
同じF4Fによってだ。
決して無力な戦闘機ではないのだ。
このことは、戦闘機の性能差が戦闘の勝敗を分ける全てではないことを物語っていた。
ガダルカナルでは、コースト・ウォッチャーズ(沿岸監視員)やレーダによる早期警戒体制が出来ていたのが大きかったのだ。
単純なカタログ性能で言えば、F4Fの能力では8000メートルの高空を飛行する一式陸攻を捕捉するのはかなり困難であった。
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兵器は総合的なシステムであり、なにかに齟齬が発生すれば、威力を削がれてしまう。
もし、F4Fがレーダ誘導によって、より高高度で待ち伏せていた場合、二式大艇は無事には済まなかっただろう。
長峰大尉がそのことまで理解していたわけではない。
彼は機体を巧みに操り、時には20ミリで威嚇を行った。
先に、1機撃墜されているせいだろうか。F4Fの接敵はどこか及び腰であった。
「打電だ」
長峰大尉は短く言った。
◇◇◇◇◇◇
すでに、木更津、館山、横須賀、三沢などの海軍基地から攻撃部隊が向かっている。
策敵攻撃の形をとっている。特設監視艇の第一報で動いているのだ。
一式陸攻だけで90機以上だ。護衛の零戦は21機だ。
史実でもこの時点で本土には相当数の攻撃機があった。しかし、米側の攻撃意図を読み切れず、空母を逃がしてしまった。
俺の知っている歴史の中では、米機動部隊の跳梁跋扈に対し、海軍が本土の警戒態勢を強化していることは確かだった。
木更津と南鳥島で哨戒機を連日飛ばしている。史実の海軍も本土攻撃を恐れていたことは確かだ。
勝ち戦に浮かれて、本土防衛を疎かにしていたわけでもない。まあ、敵の方は1枚上だったということだ。
監視艇が空母を発見してからの、史実の流れはだいたいこんな感じだったはず。
策敵機が東京に向かうB-25を発見してすれちがう。
そして三沢空、木更津空、四空から合計30機に即時待機の命令が出るはずだ。
監視艇からの空母発見の第一報が6時30分。そして、陸攻が攻撃に飛び立ったのが12時45分だ。6時間以上経過している。
結局、攻撃は天候不良もあって途中で引き返し空振りに終わる。
結果、ドゥーリトルの東京空襲は成功。1機も撃墜できずに帝都への侵入を許す。空母も無傷で逃げていく。
米機動部隊はすでにB-25を発艦させると即時反転している。天候不良がなくとも、捕捉は難しかっただろう。
仮に捕捉したとしても30機程度の陸攻では厳しかったかもしれない。
とにかく数を集めてぶつけないと、陸攻は威力を発揮しないのではないかと思っている。
俺は、マレー沖の再現が史実でなかったのは、小規模編隊の散発的な攻撃が中心だったからだと思っている。
例えば、ラバウル空襲を企図したレキシントンに対し、17機の一式陸攻が攻撃している。
ラバウル空襲は阻止したが、空母には何のダメージも与えられなかった。
これは、俺も放置して史実通りになっている。2月のことだった。
陸攻は集中して使用すべき機種だと思う。
そして、武装だ。
「陸攻の装備は?」
俺は改めて確認した。
「それが、魚雷の定数が揃わず、雷装が30機、残りは爆装です。25番です」
「そうか……」
俺の質問に対し、三和作戦参謀が状況を報告した。
機数を揃えることはできたのだが、魚雷が揃わない状況は史実と変わらない。
それは、前から報告を受けている。
「魚雷の生産は進まないか……」
「中々、難しいようです」
魚雷は海中を直進させるために、複雑で精密なフィードバックシステムを持っている。
しかも、何百気圧のかかる空気室は特殊鋼だ。溶接ではなく削りだしで作っていたんじゃないか……
日本の生産力では、魚雷は数を揃えるのが結構大変な精密機械だ。
「魚雷1本家1軒」といわれるくらい高価な兵器でもある。
しかも、戦争中でも、軍隊は予算の枠組みの中で動いているのだ。
いきなり、欲しいので増産してくれといっても、そう簡単には動かない。
このあたりは、海軍省の縄張りだ。
要望は出せるが、そのレベルは超えない。
組織とはそういうものだ。
しかし、本当に貧弱な生産力に不安になってくる。
まあ、30機の雷撃なら、合計4~5本は当たるんじゃないかと皮算用したが。
後は爆弾だ。
海軍で最も一般的な対艦攻撃用の爆弾250キロ爆弾。通称「25番」。
これには、対艦攻撃用の通常爆弾と陸地攻撃用の陸用爆弾がある。
通常爆弾は弾体が分厚く、敵の装甲を貫いて爆発する仕様になっている。
米軍もこの爆弾が装甲をぶち抜くので、1000ポンド(450キロ)クラスの爆弾と誤認していたくらいだ。
火薬は少ないが、致命的な部分で爆発する可能性がある。
一方、陸用爆弾は、火薬は多いが弾体が薄い。信管も反応が早く、ほとんど瞬発だ。
対艦用には、先にこの陸用爆弾で対空火器を沈黙させるという戦法があった。
多分、今回の爆弾も2種類が混在しているのではないかと思う。
爆装の一式陸攻は25番2発積んでいる。燃料搭載量と爆弾搭載量はトレードオフの関係になる。
25番なら最大で4発搭載可能であるが、長距離攻撃ということで、爆弾の数は減らしてある。
水平爆撃は、編隊で目標を囲みこんで、確率的に爆弾を当てる公算爆撃という手法だ。
これで、マレー沖では命中を出している。
「610海里か…… そこそこ遠いな」
「陸攻なら問題ないでしょう」
「そうだな」
一式陸攻の性能を考えれば、十分に攻撃半径内であるといえた。
ただ、護衛の零戦にとってはギリギリだ。ガダルカナルの航空作戦より遠いんじゃないか。
いくら破格の航続性能を持つ零戦とはいっても、かなり厳しい。
史実では450海里付近で戻っているけど……
しかし、裸で一式陸攻を空母にぶつけるのは、自殺行為以外のなにものでもない。
結果として、零戦無しとなっても、一応、飽和攻撃が可能機数は揃えてあるつもりだが……
まだ、この時期の米海軍なら、空母2隻に90機をぶつけるなら多分大丈夫か?
もはや、陸攻は出撃しており、事態は「戦術的」なレベルになっている。こっちのやることは無くなった。
被害を少なくするのは、飽和攻撃しかない。
少数機の分散、突撃では危険すぎる。
ただ、今回は2隻の空母を1隻の分の戦闘機で守らねばならんという点でアメリカ側に不利な要素がある。
だから、90機の陸攻を即時攻撃に出せるようにかき集めた。
その攻撃隊は既に空の上だ。
東京空襲の阻止は、アメリカに与える政治的なインパクトがでかい。
空襲失敗で空母も失えば、海軍は責任を問われるし、作戦の出所がルーズベルトと分かれば、彼への風当たりも大きくなる。
現実問題、日本に対しては、当初の取り決め通り「消極的防御」という流れになると思うのだ。
ニューギニアに侵攻したさいに、空母が出てくる可能性も下がる。
現在米軍の正規空母は、レキシントン、サラトガの戦艦改造空母。ヨークタウン、エンタープライズ、ホーネット、ワスプとなる。レンジャーもあるが、搭載機数は多い物の太平洋戦線では使用できないと判断されたはず。史実ではだが。
つまり合計6隻だ。
このうち、サラトガは1月に雷撃受けて戦線離脱。復帰は6月以降だ。史実ではミッドウェー海戦にも間に合ってない。
ここでエンタープライズとホーネットを沈めれば……
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ファンタジー
転生石原閣下による大東亜戦争必勝論
東亜連邦を志した同志達よ、ごきげんようである。どうやら、私は旧陸軍の石原莞爾に転生してしまったらしい。これは神の思し召しなのかもしれない。どうであれ、現代日本のような没落を回避するために粉骨砕身で働こうじゃないか。東亜の同志と手を取り合って真なる独立を掴み取るまで…
※超注意書き※
1.政治的な主張をする目的は一切ありません
2.そのため政治的な要素は「濁す」又は「省略」することがあります
3.あくまでもフィクションのファンタジーの非現実です
4.そこら中に無茶苦茶が含まれています
5.現実的に存在する如何なる国家や地域、団体、人物と関係ありません
6.カクヨムとマルチ投稿
以上をご理解の上でお読みください
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