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その13:オーストラリア封鎖計画
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俺はお茶を口にした。
聯合艦隊はやはりいいお茶を使っていた。
「米豪遮断には豪州を占領するまでのことはないだろう」
俺は言った。
「長官! お言葉ですが、豪州は反攻の起点となります。占領は必要です」
「陸軍が首をタテに振らないだろう。中国より広いんだぞ」
史実では聯合艦隊からは豪州占領作戦が提示される。
しかし、陸軍と海軍軍令部から大反発。
結果、米豪の交通線を遮断するということで、ニューギニア作戦とソロモン作戦が実施される。
ガダルカナル侵攻はこの文脈の中で発生するのだ。
「では、交通線の遮断ですか? 長官」
「一つの方法だが…… 完ぺきな遮断ができるかね?」
交通線の遮断は軍令部が言い出す。
ソロモン方面に進出して、ニューカレドニアまで侵攻するというものだ。
陸軍は、オーストラリア占領よりマシということで、渋々賛成する。
俺は、この作戦案を叩き潰したい。
ソロモン、ニューギニアの二方面作戦はダメなんじゃないかと思う。
「交通線の遮断には、ニューギニアがポイントだ」
俺は言った。
米豪交通線遮断の方針はすでに、大本営政府連絡会議の中、「交通線遮断等対濠重圧の体勢を強化しつつ濠州を英米の覇絆より離脱せしめるに努む」と言う方針が1月中に出ている。この担当は海軍となっている。
しかし、海軍だけでは土地は占領できない。陸戦隊という組織があることはあるが、オーストラリア占領に使う戦力じゃない。
その後、陸軍は豪州への派兵、占領は国力の限界を超えると反発する。
自分たちの中国への進出の失敗を認める発言すらして、オーストラリア侵攻を嫌がる。
だいたい、陸軍中央部は、中国との戦争も反対で拡大を望んでいなかった。
戦後一般に思われている以上に、作戦立案に関し、意外に健全な部分を残している。
悪名高き「インパール作戦」にしても、反対者は続出だった例を見ても分かる。
とくに、兵站補給に関しては、軍艦で完結している海軍よりもシビアだ。
これ以上は侵攻できないという「攻勢終末点」の意識がある。
まあ、それを現場で無視して暴走するという持病も持った組織なのであるが。
「ニューギニアですか?」
幕僚の1人が、訝しげに聞いてくる。
「ニューギニアだ」
正面に貼られている地図を全員が見つめている。
「敵艦隊の撃滅、敵の出方を絞るなら、主軸となる侵攻は1か所であることが望ましい。また、ソロモンを押さえたとしても、完全な遮断は難しい」
「入り口を押さえられないなら、出口ということですか?」
黒島先任参謀だった。
風呂は入らず異臭のする参謀であるが、頭の回転は速い。
ざわざわと会議が揺れる。
とにかく、日本はオーストラリアからの逆襲を恐れていた。
そして、実際に日本の敗因の一つとなっているのは、オーストラリアの兵站基地化なのだった。
これを何とかするというのは、海軍、陸軍とも認識は共通している。
陸軍への説得が楽なのはニューギニアだ。
資源地帯の安全を図るという効果で説明できる。
問題は軍令部にソロモン進出を断念させることになる。
フィジー・サモアに連なる島嶼ラインを押さえることで、海路を封じ込めるという物だ。
成功すればそれなりの効果はあるだろうが、ニューギニア以上に遠いのだ。
天国に近い島ところじゃない。
「軍令部には、ニューギニア侵攻による豪州封鎖作戦を提示する。ソロモン方面は、ラバウル外周の基地整備にとどめるべきだろう」
ラバウルは1月中に占領している。大した抵抗は受けていない。
しかし、占領したとたん、連日空爆だった。
今は、連合国の機材が多くないので、そうたいしたことないが、その後は史実のような事態になるだろう。
ここは、ラバウル防衛のための外周基地をいくつか設定するにとどめるべきだ。
正直、日本の国力ではここですら、攻勢終末点の外側だった。
ツラギ占領も行わない。ここを占領すると、ガダルカナルに繋がりそうな気がプンプンする。
それでも、ラバウルはトラックが壊滅するまで、きっちり持ちこたえていた。
航空戦は防空に徹した方が、機材、人員の損失は少なくて済む。
これは、太平洋戦争の各地で見られた傾向だ。
「まずは、その方向でいく。宇垣参謀長いいか?」
「分かりました」
「2方面へ戦力を分散するのは愚策だ。まずはニューギニアを押さえることだ。なにか、意見のある物は?」
特に異論は出なかった。
「黒島先任、ペーパーをまとめてくれ」
俺は言った。
◇◇◇◇◇◇
会議が終わり、執務室で俺は考えている。
『なあ、これで行けるかね?』
脳内の女神様に話しかけた。まあ、大したことは言わないのは分かっているけど。
誰かに語りかけずにいられなかった。
史実からずれてくると、それが史実以上の正解なのか、やはり確信がなくなってくる。
『難しい事はどうでもいいのだ! 大和魂で米英撃滅! 東亜の解放なのだ! 早々に艦隊決戦で、米艦隊を全滅させるのだ! 聯合艦隊は無敵なのだぁ!』
やはり、大したことは言わなかった。
頼りにならない女神様だ。
『豪州など、一気に占領してやればいいのだ』
『いや、陸軍が嫌がりますから。それに船もありませんし……』
『なんで、いつも、船が無い! 船が無いというのだ! 無ければ作れ!』
『いや、それはそうですけどね……』
この世界でも第二次戦時標準船を造るのか……
まあ、日本が数を揃えるには、なにかを我慢しなければいかんのだが。
この戦争の悲劇の一面を象徴するかのような「戦標船」のことを考えると気が重い。
せめて、二重底くらいは維持したいが……
「オーストラリア封鎖か……」
俺は独りごちた。
日本にとってオーストラリアは非常に重要だ。
中立になってくれないかと思うくらいだ。
この国が中立だったらと願わずにはいられない。
まあ、今から政治工作で、離反させるなんて、高等技術が使えるわけがない。
そんなことができる能力があるなら、そもそも日中戦争で泥沼に突っ込まない。
また、オーストラリアにとっても連合国から離れるメリットはゼロだ。
しかし、アメリカはというと、大戦当初、意外にオーストラリアを重視してなかったらしい。
オーストラリアからの反攻の有効性には普通に気づきそうなものだと思う。
ところが、俺の知る限りアメリカ側は、マッカーサーが作戦案を提案するまで一切準備していない。
対日戦は守勢を保ち、ドイツを打倒して後、本気をだす――
言ってしまえば、ルーズベルト大統領やワシントンの首脳の考え方はこんなものだ。
当事者のオーストラリアは、日本が攻め込んでくるのではないかと戦々恐々だった。
日本が警戒するほど、豪州の兵站基地化という発想を重視してなかったらしいのだ。
まあ、ワシントンの意向については、ソースはマッカーサー本人が戦後に出した自伝なので、本当かどうかは怪しい面もある。
ただ、これはアメリカ国内も多くの人の目にも触れる物だ。
日本に関する記述ではなく、国内の作戦決定に関して、自分の功績に嘘書いたら叩かれると思うのだ。
その意味では信じてはいいのではないかと思う。
ただ、ずっとそうとも思えない。
マッカーサーをフィリピンに封じ込めたとしても、ニューギニアを日本軍が落とせば流れは変わる可能性はある。
とにかく、アメリカに「今は太平洋方面は守勢を維持した方が得策」と考えさせるようにすべきなんだ。
ニューギニアへの侵攻、基地化がアメリカの態度をどう変えるかは、推測できなかった。
アメリカにとって、ポートモレスビーが支配され、日本の防御態勢が固くなっていくのを看過するのは危険という意見が台頭するか?
するとすれば……
米海軍からだろうな。
陸軍は欧州重視だし、それほどの判断の材料を持っていない。
オーストラリアが消極的な姿勢を維持するなら、大きくは動かないだろうと思う。
「米海軍のアメリカ内部での発言力を弱めること。そのためには、やはり海戦に勝ち続けることか……」
1943年までなら、米海軍に決戦を強要して、勝つことは可能だと思う。
その勝利の積み重ねが、アメリカ内部での、米海軍の発言力低下につながらないか?
対日戦優先を唱える、マッカーサーを封じたとしてだ。
もう一つの対日戦優位を訴える勢力は米海軍となる。
アメリカの物量は圧倒的だ。
真珠湾から戦争の行方を変えろと言うのはムリゲーだ。
だけど、アメリカに弱点がないかといえば、そうでもない。
アメリカ本土とニューギニアの距離は1万キロ以上。
これは日本本土から距離の倍以上だ。
日本が中国大陸との二正面作戦を行っているのと同様に、アメリカも欧州戦を行っている。
大西洋では膨大な物資をUボートの脅威の下、輸送しなければならない。
日本が中国に物資を送るより大変なことは確実だ。
物量は豊富なのは確かだが、2方面作戦の局面の厳しさはアメリカの方が厳しい。
1943年までは、アメリカは太平洋での船舶不足に苦しむことは確かだ。
まあ、日本の船舶不足とは比べるまでもないが。
1943年までに南太平洋戦域に投入された軍事物資の70%近くがオーストラリアで生産されたものとなる。
この時点までの物量とは、アメリカの物量ではなく、オーストラリアの物量だったんだ。
食料における野菜の補給は全てオーストラリアからだ。
戦争で必要な膨大な木材もそうだ。
18000台の車両。
何十万という軍服。
自動車部品。
大型渡洋船舶が50隻。
近距離輸送に使い勝手のいい700~800トンの小型船舶にいたっては数百隻だ。
オーストラリアの封鎖は絶対必須だ。
そして、その物量の発揮場所であったニューギニアに足がかりを作らせない。
戦力を維持して1945年まで逃げ切るにはこれは必須のことだと思っていた。
もしオーストラリアが兵站基地として本格稼働した場合、ニューギニア戦線の補給ラインは日本本土から5000キロに対し、約500キロくらいになってしまう。
オーストラリアを封鎖するための作戦を全力で行う。
そして、対日戦に発言力を持つ米海軍の士気と権威を失墜させる。
俺の、作戦目的はこれだ。
ニートの軍ヲタの限界点。
大本営による戦争運営体制は、陸海軍の妥協を生み出し、グレーな作戦を生み出す。
どこまで、それを一本化できるのか。
そもそも、俺にそれが出来るのかという問題があるが……
一度、大本営で決まってしまえば、それを翻意させるのは至難の業だ。
そんなことに労力を使っていくのは勘弁して欲しい。
そして、マッカーサーだ。
あのコーンパイプの将軍様をフィリピンに釘付けにできるかどうか。
この戦争の行方に大きな影響を与えそうだった。
米軍がどんな対抗措置を取るのか……
対ドイツ戦重視で移行してくれないか。俺はそれを願うだけだった。
聯合艦隊はやはりいいお茶を使っていた。
「米豪遮断には豪州を占領するまでのことはないだろう」
俺は言った。
「長官! お言葉ですが、豪州は反攻の起点となります。占領は必要です」
「陸軍が首をタテに振らないだろう。中国より広いんだぞ」
史実では聯合艦隊からは豪州占領作戦が提示される。
しかし、陸軍と海軍軍令部から大反発。
結果、米豪の交通線を遮断するということで、ニューギニア作戦とソロモン作戦が実施される。
ガダルカナル侵攻はこの文脈の中で発生するのだ。
「では、交通線の遮断ですか? 長官」
「一つの方法だが…… 完ぺきな遮断ができるかね?」
交通線の遮断は軍令部が言い出す。
ソロモン方面に進出して、ニューカレドニアまで侵攻するというものだ。
陸軍は、オーストラリア占領よりマシということで、渋々賛成する。
俺は、この作戦案を叩き潰したい。
ソロモン、ニューギニアの二方面作戦はダメなんじゃないかと思う。
「交通線の遮断には、ニューギニアがポイントだ」
俺は言った。
米豪交通線遮断の方針はすでに、大本営政府連絡会議の中、「交通線遮断等対濠重圧の体勢を強化しつつ濠州を英米の覇絆より離脱せしめるに努む」と言う方針が1月中に出ている。この担当は海軍となっている。
しかし、海軍だけでは土地は占領できない。陸戦隊という組織があることはあるが、オーストラリア占領に使う戦力じゃない。
その後、陸軍は豪州への派兵、占領は国力の限界を超えると反発する。
自分たちの中国への進出の失敗を認める発言すらして、オーストラリア侵攻を嫌がる。
だいたい、陸軍中央部は、中国との戦争も反対で拡大を望んでいなかった。
戦後一般に思われている以上に、作戦立案に関し、意外に健全な部分を残している。
悪名高き「インパール作戦」にしても、反対者は続出だった例を見ても分かる。
とくに、兵站補給に関しては、軍艦で完結している海軍よりもシビアだ。
これ以上は侵攻できないという「攻勢終末点」の意識がある。
まあ、それを現場で無視して暴走するという持病も持った組織なのであるが。
「ニューギニアですか?」
幕僚の1人が、訝しげに聞いてくる。
「ニューギニアだ」
正面に貼られている地図を全員が見つめている。
「敵艦隊の撃滅、敵の出方を絞るなら、主軸となる侵攻は1か所であることが望ましい。また、ソロモンを押さえたとしても、完全な遮断は難しい」
「入り口を押さえられないなら、出口ということですか?」
黒島先任参謀だった。
風呂は入らず異臭のする参謀であるが、頭の回転は速い。
ざわざわと会議が揺れる。
とにかく、日本はオーストラリアからの逆襲を恐れていた。
そして、実際に日本の敗因の一つとなっているのは、オーストラリアの兵站基地化なのだった。
これを何とかするというのは、海軍、陸軍とも認識は共通している。
陸軍への説得が楽なのはニューギニアだ。
資源地帯の安全を図るという効果で説明できる。
問題は軍令部にソロモン進出を断念させることになる。
フィジー・サモアに連なる島嶼ラインを押さえることで、海路を封じ込めるという物だ。
成功すればそれなりの効果はあるだろうが、ニューギニア以上に遠いのだ。
天国に近い島ところじゃない。
「軍令部には、ニューギニア侵攻による豪州封鎖作戦を提示する。ソロモン方面は、ラバウル外周の基地整備にとどめるべきだろう」
ラバウルは1月中に占領している。大した抵抗は受けていない。
しかし、占領したとたん、連日空爆だった。
今は、連合国の機材が多くないので、そうたいしたことないが、その後は史実のような事態になるだろう。
ここは、ラバウル防衛のための外周基地をいくつか設定するにとどめるべきだ。
正直、日本の国力ではここですら、攻勢終末点の外側だった。
ツラギ占領も行わない。ここを占領すると、ガダルカナルに繋がりそうな気がプンプンする。
それでも、ラバウルはトラックが壊滅するまで、きっちり持ちこたえていた。
航空戦は防空に徹した方が、機材、人員の損失は少なくて済む。
これは、太平洋戦争の各地で見られた傾向だ。
「まずは、その方向でいく。宇垣参謀長いいか?」
「分かりました」
「2方面へ戦力を分散するのは愚策だ。まずはニューギニアを押さえることだ。なにか、意見のある物は?」
特に異論は出なかった。
「黒島先任、ペーパーをまとめてくれ」
俺は言った。
◇◇◇◇◇◇
会議が終わり、執務室で俺は考えている。
『なあ、これで行けるかね?』
脳内の女神様に話しかけた。まあ、大したことは言わないのは分かっているけど。
誰かに語りかけずにいられなかった。
史実からずれてくると、それが史実以上の正解なのか、やはり確信がなくなってくる。
『難しい事はどうでもいいのだ! 大和魂で米英撃滅! 東亜の解放なのだ! 早々に艦隊決戦で、米艦隊を全滅させるのだ! 聯合艦隊は無敵なのだぁ!』
やはり、大したことは言わなかった。
頼りにならない女神様だ。
『豪州など、一気に占領してやればいいのだ』
『いや、陸軍が嫌がりますから。それに船もありませんし……』
『なんで、いつも、船が無い! 船が無いというのだ! 無ければ作れ!』
『いや、それはそうですけどね……』
この世界でも第二次戦時標準船を造るのか……
まあ、日本が数を揃えるには、なにかを我慢しなければいかんのだが。
この戦争の悲劇の一面を象徴するかのような「戦標船」のことを考えると気が重い。
せめて、二重底くらいは維持したいが……
「オーストラリア封鎖か……」
俺は独りごちた。
日本にとってオーストラリアは非常に重要だ。
中立になってくれないかと思うくらいだ。
この国が中立だったらと願わずにはいられない。
まあ、今から政治工作で、離反させるなんて、高等技術が使えるわけがない。
そんなことができる能力があるなら、そもそも日中戦争で泥沼に突っ込まない。
また、オーストラリアにとっても連合国から離れるメリットはゼロだ。
しかし、アメリカはというと、大戦当初、意外にオーストラリアを重視してなかったらしい。
オーストラリアからの反攻の有効性には普通に気づきそうなものだと思う。
ところが、俺の知る限りアメリカ側は、マッカーサーが作戦案を提案するまで一切準備していない。
対日戦は守勢を保ち、ドイツを打倒して後、本気をだす――
言ってしまえば、ルーズベルト大統領やワシントンの首脳の考え方はこんなものだ。
当事者のオーストラリアは、日本が攻め込んでくるのではないかと戦々恐々だった。
日本が警戒するほど、豪州の兵站基地化という発想を重視してなかったらしいのだ。
まあ、ワシントンの意向については、ソースはマッカーサー本人が戦後に出した自伝なので、本当かどうかは怪しい面もある。
ただ、これはアメリカ国内も多くの人の目にも触れる物だ。
日本に関する記述ではなく、国内の作戦決定に関して、自分の功績に嘘書いたら叩かれると思うのだ。
その意味では信じてはいいのではないかと思う。
ただ、ずっとそうとも思えない。
マッカーサーをフィリピンに封じ込めたとしても、ニューギニアを日本軍が落とせば流れは変わる可能性はある。
とにかく、アメリカに「今は太平洋方面は守勢を維持した方が得策」と考えさせるようにすべきなんだ。
ニューギニアへの侵攻、基地化がアメリカの態度をどう変えるかは、推測できなかった。
アメリカにとって、ポートモレスビーが支配され、日本の防御態勢が固くなっていくのを看過するのは危険という意見が台頭するか?
するとすれば……
米海軍からだろうな。
陸軍は欧州重視だし、それほどの判断の材料を持っていない。
オーストラリアが消極的な姿勢を維持するなら、大きくは動かないだろうと思う。
「米海軍のアメリカ内部での発言力を弱めること。そのためには、やはり海戦に勝ち続けることか……」
1943年までなら、米海軍に決戦を強要して、勝つことは可能だと思う。
その勝利の積み重ねが、アメリカ内部での、米海軍の発言力低下につながらないか?
対日戦優先を唱える、マッカーサーを封じたとしてだ。
もう一つの対日戦優位を訴える勢力は米海軍となる。
アメリカの物量は圧倒的だ。
真珠湾から戦争の行方を変えろと言うのはムリゲーだ。
だけど、アメリカに弱点がないかといえば、そうでもない。
アメリカ本土とニューギニアの距離は1万キロ以上。
これは日本本土から距離の倍以上だ。
日本が中国大陸との二正面作戦を行っているのと同様に、アメリカも欧州戦を行っている。
大西洋では膨大な物資をUボートの脅威の下、輸送しなければならない。
日本が中国に物資を送るより大変なことは確実だ。
物量は豊富なのは確かだが、2方面作戦の局面の厳しさはアメリカの方が厳しい。
1943年までは、アメリカは太平洋での船舶不足に苦しむことは確かだ。
まあ、日本の船舶不足とは比べるまでもないが。
1943年までに南太平洋戦域に投入された軍事物資の70%近くがオーストラリアで生産されたものとなる。
この時点までの物量とは、アメリカの物量ではなく、オーストラリアの物量だったんだ。
食料における野菜の補給は全てオーストラリアからだ。
戦争で必要な膨大な木材もそうだ。
18000台の車両。
何十万という軍服。
自動車部品。
大型渡洋船舶が50隻。
近距離輸送に使い勝手のいい700~800トンの小型船舶にいたっては数百隻だ。
オーストラリアの封鎖は絶対必須だ。
そして、その物量の発揮場所であったニューギニアに足がかりを作らせない。
戦力を維持して1945年まで逃げ切るにはこれは必須のことだと思っていた。
もしオーストラリアが兵站基地として本格稼働した場合、ニューギニア戦線の補給ラインは日本本土から5000キロに対し、約500キロくらいになってしまう。
オーストラリアを封鎖するための作戦を全力で行う。
そして、対日戦に発言力を持つ米海軍の士気と権威を失墜させる。
俺の、作戦目的はこれだ。
ニートの軍ヲタの限界点。
大本営による戦争運営体制は、陸海軍の妥協を生み出し、グレーな作戦を生み出す。
どこまで、それを一本化できるのか。
そもそも、俺にそれが出来るのかという問題があるが……
一度、大本営で決まってしまえば、それを翻意させるのは至難の業だ。
そんなことに労力を使っていくのは勘弁して欲しい。
そして、マッカーサーだ。
あのコーンパイプの将軍様をフィリピンに釘付けにできるかどうか。
この戦争の行方に大きな影響を与えそうだった。
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