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その12:貫かれメスの声で鳴く

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「これで、俺たちは家族となったわけだ―― 戦う俺たちを慰めてくれればいい」

 アバロウニの口の中にたっぷりと精液を流し込んだ男――
 バルロイは、ねっとりと湿ったような笑みを浮かべていた。
 その言葉はアバロウニに「傭兵団の娼婦になれ」と言っているのだ。 

「それだけの、技を仕込まれてんだ。大人気になるぜ」
 
 バルロイは、アバの美しい顔を見つめながら言った。
 アバの舌奉仕によって得た快楽を反芻はんすうしているかのような表情だった。

(同じだ―― にがいし、臭いし――)

 キリシャガの精液。
 自分を蹂躙し輪姦した盗賊たちの精液。
 どれも同じだ。

 しかも、バルロイの精液はドロドロで濃厚だった。
 喉に絡み、苦く臭い。男の精は何度飲んでもなれるモノでは無かった。

 それでもバルロイの前で、それを吐きだすことはできない。
 彼は喉にへばり付くような精液を嚥下した。

「まあ、ちゃんと飯も食わせてやるし。銭だってやるぜ―― 奴隷じゃねぇ。家族だからな」

 アバロウニはそう言っている男に美しい双眸を向けた。

「ひゅぅ~ 見れば見るほど、本当にいい女だ。あんなことがつかなきゃな……」
「あんなこと?」
「いや、気にしなくていい。とにかく、体が戻り次第、働いてもらう。働かざる者食うべからずだ」

 娼婦になる――
 傭兵団付の娼婦だ。
 荒くれた男たちの情欲のはけ口として生きていく。

 男のアレを咥え、精液を口ですすり、そして身体の奥に、男のモノを挿しこまれる。
 そして、胎内にあのドロドロの精液を出される。

 それをしなければ、自分は生きていない。
 アバロウニはそれを理解している。しかし、理解していることと、納得していることは別の話だった。
 キリシャガに孕まされ、盗賊団によって輪姦された。お腹にいた子どもは――
 そのことに関して思うことはない―― いや、思わないようにしていたが正しいかもしれない。

(あのまま、子どもを産んでいたら、ボクは心も女になっていたかもしれない)

 ふと、そんなことを思う。
 女の肉体となり、男に戻ることがなくなっても、まだアバの心は「男」のモノだった。
 だから、苦しかった。
 彼は、女になることを拒んでいた。
 しかし、このような身になってしまうと「男」であるという「意識」は永遠に続く拷問のようなものだった。
 女体という牢獄にその「意識」が囚われている。

「医者の話じゃ、もう孕むことが出来ないようだしな。この商売にぴったりだぜ」

 アバロウニは、盗賊団に輪姦凌辱され、流産していた。
 その結果、妊娠する能力を失っていたのだった。

「まあ、明日からは、洗濯女として仕事してもらうかぁ~ ここの女の世界にも慣れてらわねぇとな」
「洗濯女? 女の世界?」
「なぁに、汚れ物を洗うだけの仕事だよ。客がとれない娼婦の仕事だよ。仕事をするようになったら、輜重隊の方に行ってもらからな」

 それよりもアバロウニが恐れを抱いたのは「女の世界」に入れということだった。
 故郷の村ですら、彼が雌体化したときに、美しさに他の女は強烈な嫉妬心を見せた。
 特に、雌体化傾向の強い者ほど、彼に対する嫉妬、反発は強かった。
 そういった他人の悪意に晒されるのは、慣れようとしても中々慣れるものではなかった。
 そう言った「女の世界」の中で心がささくれていくことはすでに何度も経験している。

「まあ、オマエさんが、人気になるのは、目に見えている。下積みをやっておくのも悪くないだろうさ」
 
 傭兵団長のバルロイはそう言うと、部屋から出て行った。
 アバロウニは、それを目で追うこともなく、ただ下を向いていた。

        ◇◇◇◇◇◇

 傭兵団は戦争を商売とする集団だった。
 バルロイの率いる傭兵団は「地獄の犬傭兵団」という名前だ。
 強そうな名前を付けるのも傭兵団にとっては必要なことだと団長のバルロイは考えていたのだ。

 傭兵団の人数は戦闘する傭兵の数だけで300人だ。
 そして、その3倍以上の人間が輜重隊に属していた。
 輜重隊とは戦闘を行わない、裏方の存在だ。
 しかし、その存在なくしては、傭兵は戦争ができない。

 中には、鍛冶、木工などの武器加工を行う職人もいた。
 傭兵団専門の商人もいたし、その下には物流を担う人間もいた。
 普段は、水運びなどの重労働を行っており、戦場に向かうときには、輸卒隊となる存在だ。
 さらに、そこには「娼婦」も存在しているということだ。
 
 そして、傭兵の家族も一緒に暮らしているのだ。

 いわば、ひとつの村のような共同体が、戦争で飯を食っているという状態。
 それが、この世界の傭兵団であった。

「もっと、気合いいれて踏むんだよ! どこのお嬢様しらないが、それくらいできないのッ?」

 年かさの女の声が響いた。

「わ、わかりました」
「ふん! わかってるのかね。本当に」

 アバロウニは凄まじい悪臭のする液体に足を踏み入れ、汚れ物の洗濯をしていた。

 洗濯場は、傭兵団の生活する兵舎とも、輜重隊とも離れていた。
 なぜなら、臭いがものすごいからだ。
 漂白には「小便」が使用されていた。それも、醗酵して腐らせた小便だ。
 そのアンモニアの漂白効果で選択を行うのだった。

 この世界に「石鹸」がないわけではない。
 ただそれは非常に高価であった。
 比較的安い「灰汁」の利用も一部ではなされていたが、まだ一般的なものではなかった。

(頭がクラクラする……)

 アバロウニは、もう体が回復したとみなされ、洗濯女と一緒に仕事をさせられていた。
 洗濯女の多くは娼婦兼業だ。娼婦だけでは十分に稼げない女と娼婦にすらなれない女がその仕事やっていた。
 彼女はそう言った女に交ざり、大きなたらい桶のながで洗濯物を踏むのだった。
 腐った小便のヌルリした感覚が足を蝕むような気がする。

 ドンッ――

「あっッ!」

 アバは背中を押された。バランスを崩し、腐った小便の中に尻もちをついた。
 バシャリと便所の汚水以上の悪臭がする漂白液が飛び散る。

「グズ女! 洗濯も満足にできないのか? それとも、男のチンコを咥えて早く金を稼ぎたいか?」

 腐った小便が服に浸かった、匂いが身体の芯まで浸み込んでくるような気がした。
 
「相変わらず、臭い場所だねぇ~ どうにもさぁ」
  
 眼帯をし、地図のように顔中に傷の走っている男だった。
 一見すれば、団長のバルロイより「傭兵団の団長」のような雰囲気をもっている。
 なんというか「ならず者」というイメージを濃縮して、肉体を持たせたような存在だった。

「ヘベレケン輜重隊長――」
「もめごとは困るんだよねぇ、ほら団長も言ってるでしょ「家族」だって」

 その外見とは裏腹に、放し方は飄々としており、どこかに韜晦とうかいしたものを感じさせるものだった。
 ただ、言われた方は表情を硬くし、震えている。
 この「地獄の犬傭兵団」で輜重隊長に逆らえる者などいないのだ。
 傭兵団の財政を管理し、食事から物資補給を握っている。
 とにかく、輜重隊無しでは、傭兵団は成立しない。
 団長のバルロイですら、表だって彼とは対立できない。

「アバロウニちゃんいる?」
「あ、あそこで、洗濯を――」

 アバロウニは、腐った小便で汚れた体で洗濯物を踏み続けていた。
 輜重隊長のヘベレケンは「臭いねェ」と言いながらも歩を進める。

「アバちゃんかい?」

 不意に呼ばれたアバロウニは振り向いて、固まった。 
 凶悪な人相をした隻眼の男がそこに立っていたのだ。
 傷の隙間に顔のパーツがあるような男だったのだ。しかも隻眼だった。

「臭いから、身体洗って、俺のところに来てくれない」
「アナタは……」

 アバロウニは、ヘベレケンとは初対面だった。 
 いや、傷が癒えず寝込んでいるときに、ヘベレケンの方はアバロウニに会っていたのだが。

「馬鹿、輜重隊長のヘベレケン様だよ……」

 アバの隣で洗濯物を踏んでいる女が言った。

「ヘベレケン様―― アナタのところに」
「そッ、身体を綺麗に洗ってからさぁ、来てほしいんだよ。色々ね、お話とか、他のこととかあるからさぁ」

 そう言って、クルッとヘベレケンは踵を返した。

        ◇◇◇◇◇◇

「ヘベレケン様、アバロウニが来ました」
「ん、通して」

 アバロウニは、部屋に入った。机と書架のある部屋。
 豪華ではないが、きちんと整理されている。
 机の向こうには、傷だらけの隻眼の男が座っていた。

(笑っているのか?)

 その表情が傷のため、よく分からない。
 ただ、吊り上った口角が笑みを浮かべているようには見える。

「ようこそ『地獄の犬傭兵団』に。ようこそ『輜重隊』に。アバロウニちゃん。アバちゃんでいいか。団長もそう呼んでいたし」

 アバ――
 自分のことをそう呼ぶ人間は、本当はこの世界で一人でよかった。
 キリシャガにその名でよばれたとき「そう呼ばないでくれ」小さく言ったことを思い出す。
 誰にも聞こえない、自分の口の中だけに響くような声だった。

「まだ、匂うけど…… ま、大丈夫だろうね」

 そう言われて、顔を赤くするアバロウニ。
 相当念入りに洗ったつもりだが、浸み込んだ匂いがなかなか抜けなかったのだ。

 いや――
 もう、自分の身体は「腐った小便」どころではないくらい汚れている。
 ふと、そう思った。

「明日から客をとってもらうよ。で、今日から告知を出して、予約を受け付ける。どれくらい先まで、埋まるかねぇ。キレイだもんね、アバちゃん」

(明日から……)

 その日が来たとアバロウニは思った。この傭兵団の娼婦として生きていく暮らし。それが始める。

「まあ、キリシャガに大分仕込まれたみたいだけど、どんなもんか……」

 すっと机から、ヘベレケンが立ちあがった。
 そして、アバの来ている服に手を伸ばす。
 ふと指が器用に彼の服を脱がしていく。
 衣擦れの音がし、服が素肌の上を流れ、下に落ちていく。

 アバはそこで完全に服を脱がされた。

「そうだね、下着は自分で脱いでみてくれないか」

 彼は細く白い脚を上げ、下着を抜いた。

「ほうッ…… 一級品だよ。キレイな体だ。本当に白いな――」

 全裸になったアバロウニの素肌に指を這わせていくヘベレケン。
 指は、緩やかな膨らみを見せる胸を通り、下腹乳首の上でクルクルと回った。
 そして、ゆっくりと下腹部に到達した。
 淡い翳りをみせる、アバロウニの股間に中指を捻じ込んでいく。

「クッ……」
  
 アバロウニが喉の奥で声を上げた。
 そして、顔をそむけた。

「その、恥じらいの表情も…… 肉奴隷だったとは思えないねぇ」
 
 股間を弄りながら、ヘベレケンは話を続けた。

「あんなことが無ければ、高く売れたのにねぇ、でも、それだからウチにいるということもあるか――」
 
 その言葉に、反応するアバロウニだった。
 そもそも、自分が売り飛ばされず、なぜこの傭兵団に残ったのか?
 その疑問はあった。ただ、どのような道筋をたどろうが、自分の運命は似たような物だったろうという思いはあったが。

 そんなアバロウニの表情を読んだのだろうか。
 ヘベレケンはゆっくりとアバロウニに話し始めた。

「盗賊に、殺された主人のとこにいた肉奴隷ってのは『縁起が悪い』ってことらしいね―― 冷たいよねぇ」

 キリシャガは商人仲間、取引をする仲間の中での評判は悪くなかった。
 甘い人間ではないが、正当な商売をする男であると評価されていた。
 キリシャガのコネクションは広く、傭兵団の方では、どこかの商人がアバロウニを買うと思っていたのだ。

「金持ちはそういったモノを気にするんだね。捨て値で売れば、売れたけど―― もったいないからね。ウチで娼婦にしようって、俺が団長に言ったんだよ」

 つまり、アバロウニが傭兵団の娼婦になることを決めた男が、このヘベレケンだということだ。

「あれ…… そんなに弄ってないけど…… 気もち良いの? ずいぶんと――」
「ち、違う…… 違う」

 アバの股間は濡れ始めていた。
 たやすく、感じて、男を受け入れる準備をしてしまう媚肉―― 
 肉奴隷として丹念に調教された体は、敏感に反応してしまう。アバ本人の意志とは関係なくだ。

 グイッと、ヘベレケンが、アバの身体を持ち上げた。
 すごい力だった。
 アバを抱きかかえながら、自分のズボンをおろし、オス器官を露出させる。
 それは、すでに臨戦態勢になっているものだった。

「俺のオチンポで耐えられれば、まあ、1日に5人は客がとれるよ。そうすれば、銭は稼げる―― 自由を買うこともできるかもな」

(自由――)

 その言葉にアバが反応した瞬間だった。
 灼熱の金棒を捻じ込まれたのかと思った。熱だ。痛いというより、熱いだった。

「俺のオチンポはどうだい? キリシャガよりいいだろぉ?」

 アバは、抱きかかえられたまま挿入された。
 太く黒い光沢を放つヘベレケンのオス器官がアバの身体の奥深くまで貫いていた。
 
「ああ、ああああああああああ――ッ!! あ、あ、ああああ――!!」

 アバは屈強な腕に抱きかかえられながら貫かれ、メスの鳴き声を上げていたのだった。
 
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