社畜だったボクは豊穣の女神とゆったり農業生活をすることにした

中七七三

文字の大きさ
上 下
13 / 15

13.キュウリ探索

しおりを挟む
 水と安全はタダというが、真水資源はやはり貴重だった。
 神域だというのに、女神様も強気に出れず、意見を調整。
 ボクは、広大な森の中、キュウリを探して探索することになったわけである。

 キュウリをとってきて、畑で栽培するのだ。
 そのためには、

「どこにキュウリが自生しているんだ」

 背中に篭を背負ったボクは、緑一色に染まった周囲を見渡す。

「知らないのだ!」

 ドヤ顔でキコがずんずん前を進む。

「柿とかは知っているのに、キュウリは知らんのか?」

「あんな水っぽい物は好かんのだ」

「そうか」

 一応、獣道のような物が続いているので、鉈で伐開しながら進む必要はない。
 カッパもこのあたりの道を進んでいるのだろうと、類推し行くしかなかった。
 ネットで見たことある昭和のテレビ番組の「探検隊」じゃないんだから……と、思いつつも、意外に楽しんでいるのかもしれない。悪くない。
 森の中――密林に近いが――を歩いていると、濃厚な酸素のせいか気分もハイになってくるのかもしれん。

「あ、水が出ているのだ!」

「岩清水だな」

 森の中で巨大な岩がついたてのように立っている場所があった。
 そこから、チロチロと水が流れている。
 地下水が吹き出ているのだろう。

 思えば、喉が渇いていなくもない。

「飲んでも大丈夫だよな」

「平気なのだ!」
 
 ということで、ボクとキコは、染み出した天然水を手にとって飲んだ。
 冷たいし、上手い。アホウのように美味いのだからびっくりだ。

「この水だけでも売れるんじゃね」

「そうなのか?」

 ミネラルウォータとしても売れそうなほどの品質というか、これ以上に美味いミネラルウォータはないような気がした。
 しかし、目的は水の採取ではなく「キュウリの採取」なのである。
 
 この場所を記憶しつつ、先へ進む。

        ◇◇◇◇◇◇

「舞茸なのだ! 美味いのだ! ナメコもあるのだ!」

「おお、キノコか……」

 大量のキノコ類。
 もしかしたら、マツタケもあるかもしれないが、今はキノコ狩りにきているのではない。
 が、見逃すのもおしい。

「少しは持って返るか」

「それが良いのだ」

 以前、キコが仕留めたイノシシの肉の残りは、女神様の社にある冷蔵庫に保管してある。
 なぜか、無駄に大きい冷蔵庫を持っているのだった。
 もう一度、キノコ+牡丹肉で鍋ができる。

 ちなみに、女神様が電気代の支払いをどうしているのかは、よく知らない。
 
 ぜんまいのような山菜も一緒にとって、篭にいれる。
 しかし、キュウリは見つからない。

(どこにキュウリはあるんだ)

 ということで、ちょっとキュウリについてスマホで調べた。
 電波が通じる。
 神域といっても、一応千葉県内なので、当然なのだろう。
 電波を通さないような不可思議な障壁はここには無いようだ。

「キュウリって、ヒマラヤ原産なのか……」

 それから、温暖な気候を好むとか、探索にはあまり役に立ちそうもない情報を手にいれる。

        ◇◇◇◇◇◇
 
 緩やかな坂道(獣道)を登っていく。
 常陽樹林が密集して、日の光まで緑に染まっているようだった。
 キュウリも緑だ。保護色になっているんじゃないかと、探すがない。見つからない。
 
 坂道は平坦な道になって、今度は緩やかに下っている。

「あれ、なんか小さな丘のようだな」

「うむ、丸いおにぎりのような丘なのだ」

 ボクらが立っているのは半球の頂点のような場所。
 こんもりと森の中で盛り上がった場所だった。

「何者? おぬし、ら? いかがした、来たのか、どこから」

「え? なに?」

「知らん者、きた、来るというのは、何か? 誰なのか?」

 声がした。その方向を見る。

 いた。

 声の主は小さかった。
 声の主はどー見ても「埴輪」だった。

 村上春樹の小説なのか?
 困惑しようと、しまいと、ボクは自然にそう思ってしまうのであった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

引きこもりアラフォーはポツンと一軒家でイモつくりをはじめます

ジャン・幸田
キャラ文芸
 アラフォー世代で引きこもりの村瀬は住まいを奪われホームレスになるところを救われた! それは山奥のポツンと一軒家で生活するという依頼だった。条件はヘンテコなイモの栽培!  そのイモ自体はなんの変哲もないものだったが、なぜか村瀬の一軒家には物の怪たちが集まるようになった! 一体全体なんなんだ?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

おにぎり屋さんの裏稼業 〜お祓い請け賜わります〜

瀬崎由美
キャラ文芸
高校2年生の八神美琴は、幼い頃に両親を亡くしてからは祖母の真知子と、親戚のツバキと一緒に暮らしている。 大学通りにある屋敷の片隅で営んでいるオニギリ屋さん『おにひめ』は、気まぐれの営業ながらも学生達に人気のお店だ。でも、真知子の本業は人ならざるものを対処するお祓い屋。霊やあやかしにまつわる相談に訪れて来る人が後を絶たない。 そんなある日、祓いの仕事から戻って来た真知子が家の中で倒れてしまう。加齢による力の限界を感じた祖母から、美琴は祓いの力の継承を受ける。と、美琴はこれまで視えなかったモノが視えるようになり……。 第8回キャラ文芸大賞にて奨励賞をいただきました。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

処理中です...