10 / 15
10.灌漑設備完成を目指して
しおりを挟む
柿の採取は、貴重な現金収入の元になる。
一日で三万円以上の稼ぎになるのだから悪くない。
キコは、おにぎり三個で手伝ってくれるし、元手がかかっていない。
ただ「採集」なので安定した収入になるかというと分らない。
というわけで、ボクは「農業」をするわけだ。
「この竹を女神様のところまで運ばんとな――」
「分っているのだ」
竹は山ほど伐採した。そろそろ運び出していいだろう。
ということで、ボクは先日Amazonで購入した「リヤカー」を神域に持ち込んだのだった。
積載量最大三五〇キログラムの頑丈なやつだ。
竹をリヤカーに詰め込むのだが、さすがに一回では全部運びきれないというか、何往復すればいいのか、よく分からん。
開拓した農地はおよそ、一ヘクタールくらい。一〇〇メートル四方。一万平米ということになる。
「女神様、竹です」
「うむ、この一〇倍ほどもあれば、十分であろう」
「一〇倍って、一〇往復ですか?」
「そうじゃな」
「結構、大変だ……」
「面白いのだ」
後ろで落ちないように竹を支えているキコは楽しんでいるようだった。
ボクはさほど楽しくはないが、まあ前の会社での仕事に比べれば、目標が明確でやりがいもあるというものだ。
「あ、女神様」
「なんじゃ?」
「リヤカーを神器に改造するとかできないんですか? 能力を付与するとか?」
「それは出来ぬのじゃ」
「そうなんですか……」
「神域の外で作られたものを神器にすることはできぬ。それは人の手により創られたものであり、神の物ではないのじゃ」
理屈はよく分からないが、ルールとしてそういうルールなのだと理解はできる。
まあいい。
ということで、ボクは竹運びを続けるのだった。
◇◇◇◇◇◇
「結構な量になりますね」
「これくらいあれば、十分であろうな」
女神様は笑みを浮かべ、竹の山を見やる。
すっと歩み寄ると手を当てる。
ぼぉっと手が金色の光につつまれた。
「ほいさ」
「うわッ!」
「凄いのだ!」
女神様がちょっと気を流し込んだのだろうか?
神様の気だから「神気」か。
竹は爆ぜるように飛んでいき、ドリップ灌漑設備のチューブとなって、耕地に設置されていく。
「おお、凄いな……」
「凄かろう。小一時間で灌漑は出来てしまうのじゃ」
「そうですか」
「で、なにを作るのじゃ? 高作は」
「なにを作ったらいいですかね」
なにを作るかと聞かれても、ちょっと即答できない。
質問を質問で返してしまうボクだった。
「トマトかのぉ~」
「トマトですか」
特に反対する理由もない。
トマトが嫌いな人もいるだろうが、ボクは別に好き嫌いがない。
「はい! ではトマトでお願いします」
「分った。では設備が完成次第撒くことにしようか」
ということで、農業生活はいよいよ本格化しそうだった。
一日で三万円以上の稼ぎになるのだから悪くない。
キコは、おにぎり三個で手伝ってくれるし、元手がかかっていない。
ただ「採集」なので安定した収入になるかというと分らない。
というわけで、ボクは「農業」をするわけだ。
「この竹を女神様のところまで運ばんとな――」
「分っているのだ」
竹は山ほど伐採した。そろそろ運び出していいだろう。
ということで、ボクは先日Amazonで購入した「リヤカー」を神域に持ち込んだのだった。
積載量最大三五〇キログラムの頑丈なやつだ。
竹をリヤカーに詰め込むのだが、さすがに一回では全部運びきれないというか、何往復すればいいのか、よく分からん。
開拓した農地はおよそ、一ヘクタールくらい。一〇〇メートル四方。一万平米ということになる。
「女神様、竹です」
「うむ、この一〇倍ほどもあれば、十分であろう」
「一〇倍って、一〇往復ですか?」
「そうじゃな」
「結構、大変だ……」
「面白いのだ」
後ろで落ちないように竹を支えているキコは楽しんでいるようだった。
ボクはさほど楽しくはないが、まあ前の会社での仕事に比べれば、目標が明確でやりがいもあるというものだ。
「あ、女神様」
「なんじゃ?」
「リヤカーを神器に改造するとかできないんですか? 能力を付与するとか?」
「それは出来ぬのじゃ」
「そうなんですか……」
「神域の外で作られたものを神器にすることはできぬ。それは人の手により創られたものであり、神の物ではないのじゃ」
理屈はよく分からないが、ルールとしてそういうルールなのだと理解はできる。
まあいい。
ということで、ボクは竹運びを続けるのだった。
◇◇◇◇◇◇
「結構な量になりますね」
「これくらいあれば、十分であろうな」
女神様は笑みを浮かべ、竹の山を見やる。
すっと歩み寄ると手を当てる。
ぼぉっと手が金色の光につつまれた。
「ほいさ」
「うわッ!」
「凄いのだ!」
女神様がちょっと気を流し込んだのだろうか?
神様の気だから「神気」か。
竹は爆ぜるように飛んでいき、ドリップ灌漑設備のチューブとなって、耕地に設置されていく。
「おお、凄いな……」
「凄かろう。小一時間で灌漑は出来てしまうのじゃ」
「そうですか」
「で、なにを作るのじゃ? 高作は」
「なにを作ったらいいですかね」
なにを作るかと聞かれても、ちょっと即答できない。
質問を質問で返してしまうボクだった。
「トマトかのぉ~」
「トマトですか」
特に反対する理由もない。
トマトが嫌いな人もいるだろうが、ボクは別に好き嫌いがない。
「はい! ではトマトでお願いします」
「分った。では設備が完成次第撒くことにしようか」
ということで、農業生活はいよいよ本格化しそうだった。
0
お気に入りに追加
206
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
晴明さんちの不憫な大家
烏丸紫明@『晴明さんちの不憫な大家』発売
キャラ文芸
最愛の祖父を亡くした、主人公――吉祥(きちじょう)真備(まきび)。
天蓋孤独の身となってしまった彼は『一坪の土地』という奇妙な遺産を託される。
祖父の真意を知るため、『一坪の土地』がある岡山県へと足を運んだ彼を待っていた『モノ』とは。
神さま・あやかしたちと、不憫な青年が織りなす、心温まるあやかし譚――。
あやかし蔵の管理人
朝比奈 和
キャラ文芸
主人公、小日向 蒼真(こひなた そうま)は高校1年生になったばかり。
親が突然海外に転勤になった関係で、祖母の知り合いの家に居候することになった。
居候相手は有名な小説家で、土地持ちの結月 清人(ゆづき きよと)さん。
人見知りな俺が、普通に会話できるほど優しそうな人だ。
ただ、この居候先の結月邸には、あやかしの世界とつながっている蔵があって―――。
蔵の扉から出入りするあやかしたちとの、ほのぼのしつつちょっと変わった日常のお話。
2018年 8月。あやかし蔵の管理人 書籍発売しました!
※登場妖怪は伝承にアレンジを加えてありますので、ご了承ください。
おっ☆パラ
うらたきよひこ
キャラ文芸
こんなハーレム展開あり? これがおっさんパラダイスか!?
新米サラリーマンの佐藤一真がなぜかおじさんたちにモテまくる。大学教授やガテン系現場監督、エリートコンサル、老舗料理長、はたまた流浪のバーテンダーまで、個性派ぞろい。どこがそんなに“おじさん心”をくすぐるのか? その天賦の“モテ力”をご覧あれ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる