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8.柿の実を採って売ろう
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――桃栗三年柿八年……
って、言葉は知っている。
が、実際に収穫できるまでの年数を正確に言っているわけではないだろう。
それにしたって、数年で柿木が種から実のなる木になるとは思えない。
「猿蟹合戦」の柿じゃあるまいし。
しかしだ。
女神様のいるこの神域であれば「ニョキニョキ」っと手軽にこう、生えてくるんじゃないかとボクは思った。
「何年もかかるぞ」
「直ぐ育つとか…… ニョキニョキと」
「無理じゃ」
女神・イルミナはジト目でボクを見やる。
美しい瞳の半分がまぶたに隠れた。
「女神様なのに?」
「いいか――」
「はい」
「「桃栗三年柿八年」という言葉を知らんのか?」
言葉に「呆れました」という色が塗り捲られている。
「いや……だから、それを乗り越えるための…… 女神様というか」
「我の力とて、万物の理の中にあるのじゃ。種からあっという間に実のなる木? 実ではなく草生えるわ」
そのような不条理は絶対に許さんという女神だった。
神域といっても――
女神といっても――
ファンタジー世界ではなく、現実と繋がっている「リアル」だからか?
あはは。
道具は神の力で凄いけど、時間的なチートは許さないという基準がよく分からない。ボクには……
「しかし…… こんなに美味いのに」
「それは、我の神域で採れた果実であるからの」
「売れるのになぁ」
「であれば、売ればよかろう」
「はい?」
「種から育てんでも、森へ行って採ってくればよかろう」
「なるほどぉぉ!!」
確かに言われてみればその通りで、それの点においてボクはアホウだった。
もうアホウの国からアホウを布教にきたアホウの使途レベルのアホウ。
ということで、自己批判する。
「ワシが実が生っている場所を教えてやるのだ!」
「おお! サンキュー キコ」
子鬼のキコに礼をいって、この件は終了だ。
いや、まて。
採ってきてどうする。
どうやって売る?
どうやって販売所でも作るのか?
「あの女神様」
「なんじゃ?」
「柿は採れるとして、どうやって売るのですか?」
「ああ、そんなことか……」
女神様はまたしても空間をかき混ぜる。
でもって、亜空間っぽいところに手を突っ込んで何かを取り出した。
ぱららぱっぱぱー!! という効果音でも欲しいところだ。
「スマホじゃ」
「スマホっすね」
「電話するのは久しぶりじゃのぉ~」
して、電話をする女神様――
「あ? 我じゃ。我、我、我、そう、我じゃ。あははははは。うむ、来て欲しいのじゃ。いつ? そうじゃのぉ~」
女神様はこっちを見た。
「明日は、柿を採るか?」と、女神様が訊いてきた。
「はい、まあそれでいいですけど……」
(誰に電話してるんだ。つーか、ここ電波きてるんだな……)
女神様は親しげに電話の相手と話すと「よろしくなのじゃ」といって電話を切った。
「今日の午後は竹を切って……、まあ、明日は柿でも採ってみるか。コウサクも現金収入をどう得るのか心配そうじゃからな」
女神様は、何ともいえない笑みを浮かべた。
いったい、何をどうする気なのだろうか?
「明日は柿を採って―― 売るんですか?」
「そうじゃ、我の流通チャネルのひとつを使う」
どや顔で女神様は言い切った。
◇◇◇◇◇◇
翌日――
ボクは柿採りをしたわけだ。
子鬼のキコに案内された場所は、柿木がいっぱい生えていて、空気まで甘い匂いに染まっていた。
「おぉぉ!」
「どうなのだ? すごかろう」
三個目のおにぎりをもしゃもしゃしながらキコは言った。
ボクは、背中から篭を下ろした。
女神様から貰った「神器」の篭だ。
なんでも、重さを感じないらしい。
こんな便利なものがあるのに、なぜに木の成長を操れないのか……
「キコ、木に登って採ってくれ」
「分ったのだ」
「で、投げてくれれば、下でボクが受け取る」
「投げるのだな」
「出荷するから、固めのやつを選んでくれ」
「固めだな。分ったのだ」
キコがスルスルと木に登った。
ボクはキコが投げる柿の実を受け取るわけだが……
キコは見た目と異なりパワーがある。
一撃でイノシシを葬り去るほどに……
ビューン!!
風斬り音が鼓膜を叩く。
キコが柿を投げたのだった。
しかし見えない。
一瞬で空間を通過し、地面に食い込んだ。
「もう少し緩くなげてくれ。死ぬ。死んでしまう!」
「分ったのだ。贅沢だな。コウサクは」
小さくぼやくと、キコは柿木を緩く投げるようになった。
ボクはそれを受け取り篭の中にいれていく。
でもって、一杯になったのでボクとキコは女神様の社に戻って行った。
森を抜け、社まで行くと……
「来たのじゃ」
女神様がいた。それは当然だ。
しかし。
なんか車が止まっていた。
「あはッ! へぇ~ イルミナ様の神域で農業するって、あの男なんだぁ」
と、その存在は言ったわけだけど、ボクはびっくりして固まるしかなかった。
それは、(鹿のような)角を生やした、真っ赤な髪をした少女だった。
「柿を買い取ってくれる、業者じゃ」
「業者って言い方は酷いなぁ。これでも一応『龍神』なんだぜ」
神域に柿の買い手は――
車でやってきた龍神だった……
って、言葉は知っている。
が、実際に収穫できるまでの年数を正確に言っているわけではないだろう。
それにしたって、数年で柿木が種から実のなる木になるとは思えない。
「猿蟹合戦」の柿じゃあるまいし。
しかしだ。
女神様のいるこの神域であれば「ニョキニョキ」っと手軽にこう、生えてくるんじゃないかとボクは思った。
「何年もかかるぞ」
「直ぐ育つとか…… ニョキニョキと」
「無理じゃ」
女神・イルミナはジト目でボクを見やる。
美しい瞳の半分がまぶたに隠れた。
「女神様なのに?」
「いいか――」
「はい」
「「桃栗三年柿八年」という言葉を知らんのか?」
言葉に「呆れました」という色が塗り捲られている。
「いや……だから、それを乗り越えるための…… 女神様というか」
「我の力とて、万物の理の中にあるのじゃ。種からあっという間に実のなる木? 実ではなく草生えるわ」
そのような不条理は絶対に許さんという女神だった。
神域といっても――
女神といっても――
ファンタジー世界ではなく、現実と繋がっている「リアル」だからか?
あはは。
道具は神の力で凄いけど、時間的なチートは許さないという基準がよく分からない。ボクには……
「しかし…… こんなに美味いのに」
「それは、我の神域で採れた果実であるからの」
「売れるのになぁ」
「であれば、売ればよかろう」
「はい?」
「種から育てんでも、森へ行って採ってくればよかろう」
「なるほどぉぉ!!」
確かに言われてみればその通りで、それの点においてボクはアホウだった。
もうアホウの国からアホウを布教にきたアホウの使途レベルのアホウ。
ということで、自己批判する。
「ワシが実が生っている場所を教えてやるのだ!」
「おお! サンキュー キコ」
子鬼のキコに礼をいって、この件は終了だ。
いや、まて。
採ってきてどうする。
どうやって売る?
どうやって販売所でも作るのか?
「あの女神様」
「なんじゃ?」
「柿は採れるとして、どうやって売るのですか?」
「ああ、そんなことか……」
女神様はまたしても空間をかき混ぜる。
でもって、亜空間っぽいところに手を突っ込んで何かを取り出した。
ぱららぱっぱぱー!! という効果音でも欲しいところだ。
「スマホじゃ」
「スマホっすね」
「電話するのは久しぶりじゃのぉ~」
して、電話をする女神様――
「あ? 我じゃ。我、我、我、そう、我じゃ。あははははは。うむ、来て欲しいのじゃ。いつ? そうじゃのぉ~」
女神様はこっちを見た。
「明日は、柿を採るか?」と、女神様が訊いてきた。
「はい、まあそれでいいですけど……」
(誰に電話してるんだ。つーか、ここ電波きてるんだな……)
女神様は親しげに電話の相手と話すと「よろしくなのじゃ」といって電話を切った。
「今日の午後は竹を切って……、まあ、明日は柿でも採ってみるか。コウサクも現金収入をどう得るのか心配そうじゃからな」
女神様は、何ともいえない笑みを浮かべた。
いったい、何をどうする気なのだろうか?
「明日は柿を採って―― 売るんですか?」
「そうじゃ、我の流通チャネルのひとつを使う」
どや顔で女神様は言い切った。
◇◇◇◇◇◇
翌日――
ボクは柿採りをしたわけだ。
子鬼のキコに案内された場所は、柿木がいっぱい生えていて、空気まで甘い匂いに染まっていた。
「おぉぉ!」
「どうなのだ? すごかろう」
三個目のおにぎりをもしゃもしゃしながらキコは言った。
ボクは、背中から篭を下ろした。
女神様から貰った「神器」の篭だ。
なんでも、重さを感じないらしい。
こんな便利なものがあるのに、なぜに木の成長を操れないのか……
「キコ、木に登って採ってくれ」
「分ったのだ」
「で、投げてくれれば、下でボクが受け取る」
「投げるのだな」
「出荷するから、固めのやつを選んでくれ」
「固めだな。分ったのだ」
キコがスルスルと木に登った。
ボクはキコが投げる柿の実を受け取るわけだが……
キコは見た目と異なりパワーがある。
一撃でイノシシを葬り去るほどに……
ビューン!!
風斬り音が鼓膜を叩く。
キコが柿を投げたのだった。
しかし見えない。
一瞬で空間を通過し、地面に食い込んだ。
「もう少し緩くなげてくれ。死ぬ。死んでしまう!」
「分ったのだ。贅沢だな。コウサクは」
小さくぼやくと、キコは柿木を緩く投げるようになった。
ボクはそれを受け取り篭の中にいれていく。
でもって、一杯になったのでボクとキコは女神様の社に戻って行った。
森を抜け、社まで行くと……
「来たのじゃ」
女神様がいた。それは当然だ。
しかし。
なんか車が止まっていた。
「あはッ! へぇ~ イルミナ様の神域で農業するって、あの男なんだぁ」
と、その存在は言ったわけだけど、ボクはびっくりして固まるしかなかった。
それは、(鹿のような)角を生やした、真っ赤な髪をした少女だった。
「柿を買い取ってくれる、業者じゃ」
「業者って言い方は酷いなぁ。これでも一応『龍神』なんだぜ」
神域に柿の買い手は――
車でやってきた龍神だった……
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