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25.白い肌には、亀甲縛がよく似合う
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ガトリング砲の銃弾は猖獗を極め、大神宮に血みどろの情景を現出せしめてしまった。
それは、鎖々木究のトラウマを抉りかえし、意識を遥か彼方に弾き出す。
要するに失神したのだった。
「究さまぁぁぁ~!」
由良以外には失神していることに気づいている者がいなかった。
気を失いながらもガトリング砲の転把を握って立っているので。
愛する者の視線がない場合「忍法脱衣無双」の威力も半減であった。
――あかん……
どないしよ。
流石の由良も動揺する。
「どうした? 男のことが気になるか?」
「じゃかわしぃわぁぁ!! 究様に心配はないわぁ!」
下帯だけの姿で、天牙に対峙する由良は叫ぶ。
瞳の奥に現れた、あるかなしかの不安を読まれないようにする。
「ふーん。ま、男は関係ないけどね」
天牙はガトリング砲の転把を握る鎖々木を一瞥するが、直ぐに視線を外す。
「じゃあ、いくかね」
言葉と同時に巨体が弾かれたかのように動く。
爆発のような挙動。
一気に間合いがつまる。
轟――
地獄と直結した唸りを上げ、拳が吹っ飛んできた。
「ごふッ」
由良の腹に食い込む。
白い肌が歪む。
巨岩のような拳がメリメリと突き刺さっていく。
――なんなん?
……これ?
ひとの拳?
思った瞬間、口の中に鉄の味が広がる。
血であった。
最強の防御力を誇る「忍法脱衣無双」の肉体をぶち抜き、由良の腹筋と内臓を破壊寸前まで追い込む。
天牙独尊の拳は半端ではなかった。人知を超えた兵器レベルの一撃だった。
「がはぁぁっぁ!!」
由良は腹に突き刺さったぶっとい腕を抱え込む。
そのまま、身体を回転させた。
ブワッと、長い黒髪が渦をまき、風を斬る。
「おおッ!?」
天牙が驚きの声を上げた。
投げた。天牙の身が宙を舞っていた。
由良が一五五キロの巨体をぶん投げて、地面に叩きつけた。
ドゴーンという地響きに、大神宮の木々が揺れる。
「やるねぇ…… ちょっと驚いたよ。俺を投げる者がいて、それが女だとはねぇ。いや、面白い」
仰向けになった天牙は言った。
貌には新しい玩具を手に入れた童のような笑みを浮かべていた。
明るく一切の陰を感じさせない笑み。
それが返って、獰猛さを際立たせていた。
「由良! こっちじゃ早く!」
声――
唐突な声だった。
由良は声の方を見た。
「なんね」
「早く! 鎖々木殿と一体になるのじゃ!」
その声は、座敷牢からの脱出とき、由良と鎖々木を助けた老人のものであった。
由良は「なぜ、あの老人が?」という疑問を意識下に押さえこむ。
反射的に、鎖々木の方に跳んだ。
◇◇◇◇◇◇
鎖々木と由良は一体となっていた。
老人がすばやい動作――老人とは思えぬ――で、由良の背中に鎖々木を縛りつけたのだった。
「白い肌には、亀甲縛がよく似合う―― ワシの持論よ」
老人がぽつりとその言葉を口にする。
由良の白い肌には縄が食い込んでいた。
まるで、乳房を強調するかのように、縄が亀甲のように結わかれていた。
その上で、鎖々木が背中に縛り付けられているのだ。
「あ゛あ゛あ゛究様ぁぁぁ――」
由良の魂は燃えていた。
鎖々木と密着したことにより、視線以上の効果を与えていた。
由良の発情エネルギーが戦闘力へと置換されていく。
一陣の風が吹いた。
由良の黒髪が風に流れる。
下帯がふわりと揺れる。
ガクガクと失神し首の据わらない鎖々木究は木偶人形のようであった。
「これからやで、天牙ぁぁぁ~」
「そのようだな」
黒曜石のような瞳から発情と殺意の入り混じったカオスの光が放たれてた。
ギチギチと音をたてそうなほどに、縄が肌に食い込んでいく。
それすらも、由良の発情を高め、戦闘力を上げていくのだった。
本当の戦いはこれからであった――
それは、鎖々木究のトラウマを抉りかえし、意識を遥か彼方に弾き出す。
要するに失神したのだった。
「究さまぁぁぁ~!」
由良以外には失神していることに気づいている者がいなかった。
気を失いながらもガトリング砲の転把を握って立っているので。
愛する者の視線がない場合「忍法脱衣無双」の威力も半減であった。
――あかん……
どないしよ。
流石の由良も動揺する。
「どうした? 男のことが気になるか?」
「じゃかわしぃわぁぁ!! 究様に心配はないわぁ!」
下帯だけの姿で、天牙に対峙する由良は叫ぶ。
瞳の奥に現れた、あるかなしかの不安を読まれないようにする。
「ふーん。ま、男は関係ないけどね」
天牙はガトリング砲の転把を握る鎖々木を一瞥するが、直ぐに視線を外す。
「じゃあ、いくかね」
言葉と同時に巨体が弾かれたかのように動く。
爆発のような挙動。
一気に間合いがつまる。
轟――
地獄と直結した唸りを上げ、拳が吹っ飛んできた。
「ごふッ」
由良の腹に食い込む。
白い肌が歪む。
巨岩のような拳がメリメリと突き刺さっていく。
――なんなん?
……これ?
ひとの拳?
思った瞬間、口の中に鉄の味が広がる。
血であった。
最強の防御力を誇る「忍法脱衣無双」の肉体をぶち抜き、由良の腹筋と内臓を破壊寸前まで追い込む。
天牙独尊の拳は半端ではなかった。人知を超えた兵器レベルの一撃だった。
「がはぁぁっぁ!!」
由良は腹に突き刺さったぶっとい腕を抱え込む。
そのまま、身体を回転させた。
ブワッと、長い黒髪が渦をまき、風を斬る。
「おおッ!?」
天牙が驚きの声を上げた。
投げた。天牙の身が宙を舞っていた。
由良が一五五キロの巨体をぶん投げて、地面に叩きつけた。
ドゴーンという地響きに、大神宮の木々が揺れる。
「やるねぇ…… ちょっと驚いたよ。俺を投げる者がいて、それが女だとはねぇ。いや、面白い」
仰向けになった天牙は言った。
貌には新しい玩具を手に入れた童のような笑みを浮かべていた。
明るく一切の陰を感じさせない笑み。
それが返って、獰猛さを際立たせていた。
「由良! こっちじゃ早く!」
声――
唐突な声だった。
由良は声の方を見た。
「なんね」
「早く! 鎖々木殿と一体になるのじゃ!」
その声は、座敷牢からの脱出とき、由良と鎖々木を助けた老人のものであった。
由良は「なぜ、あの老人が?」という疑問を意識下に押さえこむ。
反射的に、鎖々木の方に跳んだ。
◇◇◇◇◇◇
鎖々木と由良は一体となっていた。
老人がすばやい動作――老人とは思えぬ――で、由良の背中に鎖々木を縛りつけたのだった。
「白い肌には、亀甲縛がよく似合う―― ワシの持論よ」
老人がぽつりとその言葉を口にする。
由良の白い肌には縄が食い込んでいた。
まるで、乳房を強調するかのように、縄が亀甲のように結わかれていた。
その上で、鎖々木が背中に縛り付けられているのだ。
「あ゛あ゛あ゛究様ぁぁぁ――」
由良の魂は燃えていた。
鎖々木と密着したことにより、視線以上の効果を与えていた。
由良の発情エネルギーが戦闘力へと置換されていく。
一陣の風が吹いた。
由良の黒髪が風に流れる。
下帯がふわりと揺れる。
ガクガクと失神し首の据わらない鎖々木究は木偶人形のようであった。
「これからやで、天牙ぁぁぁ~」
「そのようだな」
黒曜石のような瞳から発情と殺意の入り混じったカオスの光が放たれてた。
ギチギチと音をたてそうなほどに、縄が肌に食い込んでいく。
それすらも、由良の発情を高め、戦闘力を上げていくのだった。
本当の戦いはこれからであった――
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