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15.憧れの女教師との再会
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「まさか、振られたってことはないよなぁ」
裕介はとりあえず自宅に戻っていた。安普請のアパートの一室だ。
普段であれば飲みに行くこともあったが、今はそんな気分じゃなかった。
ベットに寝転がり「はぁ~」とため息をつく。寝返りを打って、スマホを取り出した。
画面をタップして「LINE」を起動。何度目になるだろうか。メッセージを確認した。
「既読」は全くついていない。
美女に童貞を捧げた、三日前の夜のことを思う。自分の拙いセックスでも乱れまくってくれた由里――。
ドロドロに溶け合うほど愛し合った。
(ぼくの事は、気に入ってくれたと思うんだけど……)
自分が嫌われてしまったのかという小さな棘の刺さったような不安はあった。
でも、よく考えればそれは不合理だ。
気に召さない人間に、マンションの鍵を渡すわけがない。振られたなんてあり得ない。
裕介は、ポケットの上から鍵を触る。それは確かにそこにあった。
衝撃的で陶酔感を覚えるような初体験だった。
彼女のことを思うと股間が熱くなってくる。
由里の安否は心配ではあったが、どうしようもない男の本能を抑えることはできなかった。
「どうしたんだろうなぁ。三日も……」
不安げに呟き、スマホをしまう。
自分の力ではどうにもできないし、下手に動いて混乱の原因を生み出すのも避けたかった。
股間には絡みつくような、美しい女社長の温もりが克明に残っている。甘美な傷跡のようだった。
「今日も、オナニーするかなぁ」
由里の行方に関する不安はあった。それはそれとして、
有り余る若い精力、硬くなっていく股間。とにかく発散したくなってくる。どうしようもない男の生理だった。
由里のことを思いティッシュに二回放出した。どうにか頭がすっきりしてくる。
どうにか性欲が解消されると、次は食欲だった。
(飯でも食いにいくかな~)
まだ夕食を食べていないことに気づき、裕介は自宅を後にした。
◇◇◇◇◇◇
駅前の繁華街に出てどの店にいこうか考える。いつもであれば居酒屋に行ったかもしれないが、酔っ払う気にはならなかった。
(どうすっかなぁ~)
腹がすいて外に出てみたものの、いざ店を選ぶとなると億劫だった。
結局、よく行くハンバーガーショップに入っていた。並んでいる人も少なかったし、なにより手っ取り早かった。
お金に余裕がないわけではなく、由里から貰った食事代もまだ残っていた。
適当にセットメニューを頼み、注文が出来たらトレイごと席に持っていく。いつも通りのルーチンワークだ。
店の中はそこそこ混んでいたので、二階に上がる。窓際の席を確保した。二階はまだ席に余裕があった。
「ん……」
ちょっと離れたところに、えらく背を丸めた窮屈な姿勢で本を読んでいる女の人がいた。
長い髪を後ろで束ねた、ポニーテールだ。
(あら……どこかで見たことあるような)
裕介は記憶の底を漁る――
あまり女の人をじろじろ見るのは気が引けたが、彼女の姿を網膜に映し出す。
薄手のレディーススーツ――。スカートスーツ姿。身長は普通くらい。背中を丸めて本を読んでいる。
確かにどこかで会ったような気がする。
「あ……、鳥飼先生」
思わず声がでていた。鳥飼愛美。裕介の中学校時代、英語を教えていた教師だった。
「え? あら、えっと……彼田君……」
探るような感じで愛美は言った。手にしていた本を閉じた。英語教師らしいのか、原書の本を読んでいた。
「お久しぶりです。こんなところで」
「お久しぶり、何年ぶりかしら。もう大学生かしら?」
「いえ、大学は出ました。一応、社会人です」
今は失業中で、女社長のヒモ志願なので、胸を張って「社会人です」とは言いがたかった。
しかし、裕介にも見栄というものがある。
「そうなの。もう、そんなになるのね……私も齢をとるわけだわ」
吐息と共に言葉を漏らす。
「相席いいですか」
「いいわよ。どうぞ」
「すいません」
二人用のテーブルを独りで使っていた愛美。そこに裕介は移動する。
「先生はいまでも中学校で教えているんですか」
「ううん、今は駅前の塾で講師をやっているの。学校は二年前に辞めたの。いろいろあって」
「そうですか……」
いろいろという点について、聞くのは不躾だろうと思い、裕介はただ相槌を打つ。
(中学校時代も綺麗な先生だと思ったけど、今でも綺麗だなぁ)
愛美は掛け値なしの美人だった。
どこか癒される柔からかな雰囲気のある美女だ。
三十六歳になるが、女子大生でも通じるような若々しさと熟した女性の魅力が合い混ぜになっている。
女社長の由里はメガネの似合う巨乳でクールな美女だったが、愛美は彼女とは別のタイプの美女だった。
長いポニーテールは、中学校時代の記憶のままだ。それが無ければもう少し気づくのが遅れたかもしれない。
(今も独身なのかな)
裕介は由里の薬指に目をやる。指輪はそこに無かった。ちょっとホッとする。
中学時代の三年間、一生懸命英語を勉強したのも、英語の担任がずっと愛美だったという理由が大きい。
子ども心に先生と結婚できたらいいなと、思ったこともあった。
「ずっと本を読んでいたから、背中が硬くなっちゃったみたい」
愛美は「んん~」と伸びをした。
(わッ…… おっぱい、デカッ)
甘えたくなるような、母性的な身体のライン。胸はとんでもなく隆起しておりシャツを破って飛び出そうだ。
裕介の目が一瞬、釘付けになる。
シャープな細身のフォルムの中でバストラインが強調された由里とはまた違った柔からかさを感じさせる肉体だった。
成熟味を増した女体は熟れ切っていた。中学時代も「大きいなぁ」と思っていた美乳は、更に質量を増していた。
「彼田君は今何をしているの?」
「はぁ、会社を辞めたばかりで求職中といいますか」
裕介は頭をかきながら言った。女社長のヒモになる予定ですとは流石に言えない。
そもそも、肝心の由里が行方知れずなのだ。
「あら、大変ね」
「そうでもないです。もう、行き先の目処は立ってますから」
嘘ではないが、相手の誤解を期待した言い分だった。
愛美はソフトドリンクのストローを口に咥え、残りを飲んだ。
「ごめんなさい、もうそろそろ行かなくちゃいけないの」
愛美はバッグを手に取る。席を立とうとした。
「えッ、もう行っちゃうんですか……」
「これから仕事なの。予備校で講師をしているから」
「そうなんですか」
がっくりと肩を落とす裕介。憧れだった女教師に出会い舞い上がっていた気持ちが萎んでいく。
「なに? そんなにがっくりして。ふふ。おかしな彼田君」
彼田にとっては全然おかしくないのだが、愛美は柔かな笑みを浮かべ軽くいなす。
「先生、あの……予備校が終わるまで、待っていてもいいですか」
「え゛? それは……いいけど、結構遅い時間になるわよ」
苦笑したような困ったような顔をしながら、愛美は言った。
それでも、本格的な拒否の色はない。
長い睫が沈みこみ、黒く大きな瞳に翳を作る。
「夜中でもかまいません。求職中(失業中)ですから。はは」
「君がいいならいいわ。じゃあ、待っててね」
由里のことはあったが、自分ではどうにも出来ない。
偶然再会した愛美との機会を無駄にしたくは無かった。
「はい」と裕介は勢いよく返事をしていた。
裕介はとりあえず自宅に戻っていた。安普請のアパートの一室だ。
普段であれば飲みに行くこともあったが、今はそんな気分じゃなかった。
ベットに寝転がり「はぁ~」とため息をつく。寝返りを打って、スマホを取り出した。
画面をタップして「LINE」を起動。何度目になるだろうか。メッセージを確認した。
「既読」は全くついていない。
美女に童貞を捧げた、三日前の夜のことを思う。自分の拙いセックスでも乱れまくってくれた由里――。
ドロドロに溶け合うほど愛し合った。
(ぼくの事は、気に入ってくれたと思うんだけど……)
自分が嫌われてしまったのかという小さな棘の刺さったような不安はあった。
でも、よく考えればそれは不合理だ。
気に召さない人間に、マンションの鍵を渡すわけがない。振られたなんてあり得ない。
裕介は、ポケットの上から鍵を触る。それは確かにそこにあった。
衝撃的で陶酔感を覚えるような初体験だった。
彼女のことを思うと股間が熱くなってくる。
由里の安否は心配ではあったが、どうしようもない男の本能を抑えることはできなかった。
「どうしたんだろうなぁ。三日も……」
不安げに呟き、スマホをしまう。
自分の力ではどうにもできないし、下手に動いて混乱の原因を生み出すのも避けたかった。
股間には絡みつくような、美しい女社長の温もりが克明に残っている。甘美な傷跡のようだった。
「今日も、オナニーするかなぁ」
由里の行方に関する不安はあった。それはそれとして、
有り余る若い精力、硬くなっていく股間。とにかく発散したくなってくる。どうしようもない男の生理だった。
由里のことを思いティッシュに二回放出した。どうにか頭がすっきりしてくる。
どうにか性欲が解消されると、次は食欲だった。
(飯でも食いにいくかな~)
まだ夕食を食べていないことに気づき、裕介は自宅を後にした。
◇◇◇◇◇◇
駅前の繁華街に出てどの店にいこうか考える。いつもであれば居酒屋に行ったかもしれないが、酔っ払う気にはならなかった。
(どうすっかなぁ~)
腹がすいて外に出てみたものの、いざ店を選ぶとなると億劫だった。
結局、よく行くハンバーガーショップに入っていた。並んでいる人も少なかったし、なにより手っ取り早かった。
お金に余裕がないわけではなく、由里から貰った食事代もまだ残っていた。
適当にセットメニューを頼み、注文が出来たらトレイごと席に持っていく。いつも通りのルーチンワークだ。
店の中はそこそこ混んでいたので、二階に上がる。窓際の席を確保した。二階はまだ席に余裕があった。
「ん……」
ちょっと離れたところに、えらく背を丸めた窮屈な姿勢で本を読んでいる女の人がいた。
長い髪を後ろで束ねた、ポニーテールだ。
(あら……どこかで見たことあるような)
裕介は記憶の底を漁る――
あまり女の人をじろじろ見るのは気が引けたが、彼女の姿を網膜に映し出す。
薄手のレディーススーツ――。スカートスーツ姿。身長は普通くらい。背中を丸めて本を読んでいる。
確かにどこかで会ったような気がする。
「あ……、鳥飼先生」
思わず声がでていた。鳥飼愛美。裕介の中学校時代、英語を教えていた教師だった。
「え? あら、えっと……彼田君……」
探るような感じで愛美は言った。手にしていた本を閉じた。英語教師らしいのか、原書の本を読んでいた。
「お久しぶりです。こんなところで」
「お久しぶり、何年ぶりかしら。もう大学生かしら?」
「いえ、大学は出ました。一応、社会人です」
今は失業中で、女社長のヒモ志願なので、胸を張って「社会人です」とは言いがたかった。
しかし、裕介にも見栄というものがある。
「そうなの。もう、そんなになるのね……私も齢をとるわけだわ」
吐息と共に言葉を漏らす。
「相席いいですか」
「いいわよ。どうぞ」
「すいません」
二人用のテーブルを独りで使っていた愛美。そこに裕介は移動する。
「先生はいまでも中学校で教えているんですか」
「ううん、今は駅前の塾で講師をやっているの。学校は二年前に辞めたの。いろいろあって」
「そうですか……」
いろいろという点について、聞くのは不躾だろうと思い、裕介はただ相槌を打つ。
(中学校時代も綺麗な先生だと思ったけど、今でも綺麗だなぁ)
愛美は掛け値なしの美人だった。
どこか癒される柔からかな雰囲気のある美女だ。
三十六歳になるが、女子大生でも通じるような若々しさと熟した女性の魅力が合い混ぜになっている。
女社長の由里はメガネの似合う巨乳でクールな美女だったが、愛美は彼女とは別のタイプの美女だった。
長いポニーテールは、中学校時代の記憶のままだ。それが無ければもう少し気づくのが遅れたかもしれない。
(今も独身なのかな)
裕介は由里の薬指に目をやる。指輪はそこに無かった。ちょっとホッとする。
中学時代の三年間、一生懸命英語を勉強したのも、英語の担任がずっと愛美だったという理由が大きい。
子ども心に先生と結婚できたらいいなと、思ったこともあった。
「ずっと本を読んでいたから、背中が硬くなっちゃったみたい」
愛美は「んん~」と伸びをした。
(わッ…… おっぱい、デカッ)
甘えたくなるような、母性的な身体のライン。胸はとんでもなく隆起しておりシャツを破って飛び出そうだ。
裕介の目が一瞬、釘付けになる。
シャープな細身のフォルムの中でバストラインが強調された由里とはまた違った柔からかさを感じさせる肉体だった。
成熟味を増した女体は熟れ切っていた。中学時代も「大きいなぁ」と思っていた美乳は、更に質量を増していた。
「彼田君は今何をしているの?」
「はぁ、会社を辞めたばかりで求職中といいますか」
裕介は頭をかきながら言った。女社長のヒモになる予定ですとは流石に言えない。
そもそも、肝心の由里が行方知れずなのだ。
「あら、大変ね」
「そうでもないです。もう、行き先の目処は立ってますから」
嘘ではないが、相手の誤解を期待した言い分だった。
愛美はソフトドリンクのストローを口に咥え、残りを飲んだ。
「ごめんなさい、もうそろそろ行かなくちゃいけないの」
愛美はバッグを手に取る。席を立とうとした。
「えッ、もう行っちゃうんですか……」
「これから仕事なの。予備校で講師をしているから」
「そうなんですか」
がっくりと肩を落とす裕介。憧れだった女教師に出会い舞い上がっていた気持ちが萎んでいく。
「なに? そんなにがっくりして。ふふ。おかしな彼田君」
彼田にとっては全然おかしくないのだが、愛美は柔かな笑みを浮かべ軽くいなす。
「先生、あの……予備校が終わるまで、待っていてもいいですか」
「え゛? それは……いいけど、結構遅い時間になるわよ」
苦笑したような困ったような顔をしながら、愛美は言った。
それでも、本格的な拒否の色はない。
長い睫が沈みこみ、黒く大きな瞳に翳を作る。
「夜中でもかまいません。求職中(失業中)ですから。はは」
「君がいいならいいわ。じゃあ、待っててね」
由里のことはあったが、自分ではどうにも出来ない。
偶然再会した愛美との機会を無駄にしたくは無かった。
「はい」と裕介は勢いよく返事をしていた。
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