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8.少女を餌付けするドラゴン王太子

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 ドラゴンの王太子であるリューク様が土下座した。
 このわたしに……
 
「すまん! 本当に申し訳ない! シャノーラ」

「え…… でも、それは別に……」

 ペコペコと土下座をするだけの、リューク様を見ているとわたしも困ってしまう。

「許して欲しい、シャノーラが苛められていたのかと思うと、ついカッとなって……」

「ああ、はい…… いいんです。ちょっと驚いただけです」

「いいのか? 許してくれるのか?」

「許すもなにも…… わたしのためにしてくれたことですから」

 確かにあのときは、ちょっと怖かった。
 人間があんなに、吹っ飛ばされるのは初めてみたし。

「怖かったんだろ? 本当にすまない」

「ええ、確かに怖かったですけど、今は――」

「今は?」

「今は、少し平気です」

「そ、そうか!」

 リューク様はパッと満面の笑みを浮かべた。
 わたしも少し笑った。

「よし! 誓う、誓うぞ、俺はもうシャノーラの前では暴力は振るわん!」

 リューク様は力強くそう宣言した。
 拳を握り締め、響き渡る声で。
 そうしてくれるなら、わたしも安心できるな――と、思った。

        ◇◇◇◇◇◇

「料理をどんどん運ばせろ! 早くしろ!」

「はい! リューク様」

 シャノーラの部屋にどんどん料理が運び込まれる。
 贅を尽くした山海の珍味というか、至高で究極の人知を超えた料理が並ぶ。

「凄くおいしそうな匂いです」

「だろう! あはははは!」

 リュークとシャノーラは夕食を一緒にとるのだった。

「ドンドン食べてくれ、シャノーラは綺麗だけど、ちょっと細すぎかもしれないから、もっと……」

「え、わたし細すぎですか……」

「ああああああ、いや、細いのが悪いわけではないのだ! 綺麗だ! シャノーラは美しい。だが、健康であって欲しい。俺はそう思う。健康は食からなので、いっぱい食べて欲しいのだ。本当にそれだけだ。綺麗なシャノーラがもっと綺麗になる。絶対にだ!」

「え、そんな…… 綺麗だ、綺麗だって……」

「マジだ。ガチだ。本当に綺麗な者を綺麗というのはなにも間違っていない!」

 リュークは自信を持って言い切った。

「そうだ、俺が食べさせてやろう。人間はやるのだろう? こうやって――」

「え、それは……」

 リュークはフォークに肉を突き刺し、ニコニコ笑いながらシャノーラに突き出した。

「アーンして、食べてくれ」

 懇願するような、すがりつく様な瞳でリュークはシャノーラを見つめる。

(ええ…… ちょっと恥ずかしい)

 シャノーラは顔を真っ赤にする。
 が、ここで「自分で食べます」と拒否するのは、いかにも空気が読めず、リューク様の機嫌を損ねることになりかねない。
 
「はい……」

 小さく頷くと、シャノーラは可愛らしい口を開いた。

(あああああああああああああああああああああああ、なんて可愛いのだ! うひょぉぉぉぉぉぉ!!)

 リュークは身を捩らんばかりにして、フォークをそっとシャノーラの口の中にいれる。
 ぱくっとシャノーラが肉を口の中に入れた。
 
(餌付け! 餌付けの快感なのか! すげぇ、楽しい! ああ、もっとだ。もっと食べてくれ! 可愛いよシャノーラ!)

「さあ、シャノーラ、もっとだ。もっと食べよう。この若鶏の丸焼きはどうだ? 果物もあるぞ、あははははは」

「はい、いただきます」

 シャノーラはパクパクと、リュークが差し出す料理を食べ続けたのだった。
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