5 / 9
5.外に出たいんですけど
しおりを挟む
「どうだ? 料理は」
「はい、とても美味しいです」
「では、俺が食べさせてやろう」
「は、はい……」
「では、アーんしろ」
「はい…… あ~ん」
わたしはアーンして、フォークに刺さったお肉を食べた。
もくもぐ―― ああ、美味しい。本当に美味しい、ほっぺが溶け落ちるような美味しさ……
美形の男の人は、ドラゴンの王太子でリュークと名乗った。
リュークはわたしを「絶対に食べない!」と言ったけど、本当かどうか分らない。
だから逆らわず、わたしは「アーン」してお肉を食べるのだった。美味しい。
わたしはトロリとした蜂蜜入りミルクを飲んだ。
「そのミルクは美味しいか?(うう、可愛い……)」
「はい、とっても」
ジッとわたしを見つめるリューク。
「あの……」
「ん、なんだ?」
「わたしは本当に食べられないんですよね」
「ああ、王太子の名にかけて嘘偽りない。シャノーラ嬢を食べることなどありえん!(ああ、別の意味で食べてしまいたいが)」
「じゃあ、なんでわたしはここに囚われているのですか?」
「ん?」
リュークはくるっと周囲を見た。
「ここは不快か? ベッドも人間用の最高のものを用意したはずだが…… 照明も太陽光と同じ魔力光を出しているし」
「ベッドは快適です。明るさもいいんですけど……」
「では、何が問題だ?」
リュークは心底意味が分らんという顔で訊いてきた。
「外へ行きたいんです」
「外! もしかして村に帰りたいのか! オマエを捨てた村に!」
「いえいえ、今更帰っても、わたしに居場所はありませんから」
「では、いいではないか! ここで食べて寝て、十分ではないのか?」
リュークは本気でそう言った。
◇◇◇◇◇◇
「セバスチャン! セバスチャンはどこだぁぁぁ!!」
リュークがドラゴンの咆哮を上げた。
言葉に灼熱の炎がこもっていそうだった。
「は、ここに!」
「セバスチャン、一緒に食事をしたぞ」
「それは、よろしゅうございました」
「しかし、大きな問題が、新たで大きな問題がでてきたのだ」
「ほほう、それは一体?」
「外に出たいと言っておるのだ。シャノーラ嬢は」
「では、出させてやればよろしいのでは? 元の村に帰るわけにもいきますまい」
「確かにそれは、言っておったのだが…… 外は危険であろう」
リュークは心底心配そうに言った。
「人間は弱い。その弱い人間を襲う『モンスター』がそこかしこにおるだろう」
自分がその「モンスター」の最たる者であることを忘れたかのようにリュークは言い募る。
「では、ここは一緒に出かけたらよろしいかと――」
「何? 一緒にだとぉぉ!」
それは考えても見なかったという感じ。
「その手があったかぁ!」という感じでリュークは言った。
「この近くの浜辺にでも散策すれば、人間の気も晴れるかと」
「おお!! なるほどぉぉ」
ということで、リュークはシャノーラ嬢を連れて出ることになった。
リュークは緊張でドキドキするのだが、なんでドキドキするのか、いまひとつよく分からなかった。
「はい、とても美味しいです」
「では、俺が食べさせてやろう」
「は、はい……」
「では、アーんしろ」
「はい…… あ~ん」
わたしはアーンして、フォークに刺さったお肉を食べた。
もくもぐ―― ああ、美味しい。本当に美味しい、ほっぺが溶け落ちるような美味しさ……
美形の男の人は、ドラゴンの王太子でリュークと名乗った。
リュークはわたしを「絶対に食べない!」と言ったけど、本当かどうか分らない。
だから逆らわず、わたしは「アーン」してお肉を食べるのだった。美味しい。
わたしはトロリとした蜂蜜入りミルクを飲んだ。
「そのミルクは美味しいか?(うう、可愛い……)」
「はい、とっても」
ジッとわたしを見つめるリューク。
「あの……」
「ん、なんだ?」
「わたしは本当に食べられないんですよね」
「ああ、王太子の名にかけて嘘偽りない。シャノーラ嬢を食べることなどありえん!(ああ、別の意味で食べてしまいたいが)」
「じゃあ、なんでわたしはここに囚われているのですか?」
「ん?」
リュークはくるっと周囲を見た。
「ここは不快か? ベッドも人間用の最高のものを用意したはずだが…… 照明も太陽光と同じ魔力光を出しているし」
「ベッドは快適です。明るさもいいんですけど……」
「では、何が問題だ?」
リュークは心底意味が分らんという顔で訊いてきた。
「外へ行きたいんです」
「外! もしかして村に帰りたいのか! オマエを捨てた村に!」
「いえいえ、今更帰っても、わたしに居場所はありませんから」
「では、いいではないか! ここで食べて寝て、十分ではないのか?」
リュークは本気でそう言った。
◇◇◇◇◇◇
「セバスチャン! セバスチャンはどこだぁぁぁ!!」
リュークがドラゴンの咆哮を上げた。
言葉に灼熱の炎がこもっていそうだった。
「は、ここに!」
「セバスチャン、一緒に食事をしたぞ」
「それは、よろしゅうございました」
「しかし、大きな問題が、新たで大きな問題がでてきたのだ」
「ほほう、それは一体?」
「外に出たいと言っておるのだ。シャノーラ嬢は」
「では、出させてやればよろしいのでは? 元の村に帰るわけにもいきますまい」
「確かにそれは、言っておったのだが…… 外は危険であろう」
リュークは心底心配そうに言った。
「人間は弱い。その弱い人間を襲う『モンスター』がそこかしこにおるだろう」
自分がその「モンスター」の最たる者であることを忘れたかのようにリュークは言い募る。
「では、ここは一緒に出かけたらよろしいかと――」
「何? 一緒にだとぉぉ!」
それは考えても見なかったという感じ。
「その手があったかぁ!」という感じでリュークは言った。
「この近くの浜辺にでも散策すれば、人間の気も晴れるかと」
「おお!! なるほどぉぉ」
ということで、リュークはシャノーラ嬢を連れて出ることになった。
リュークは緊張でドキドキするのだが、なんでドキドキするのか、いまひとつよく分からなかった。
0
お気に入りに追加
98
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました
市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。
私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?!
しかも婚約者達との関係も最悪で……
まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!

女性の少ない異世界に生まれ変わったら
Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。
目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!?
なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!!
ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!!
そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!?
これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。

だから言ったでしょう?
わらびもち
恋愛
ロザリンドの夫は職場で若い女性から手製の菓子を貰っている。
その行為がどれだけ妻を傷つけるのか、そしてどれだけ危険なのかを理解しない夫。
ロザリンドはそんな夫に失望したーーー。


優しく微笑んでくれる婚約者を手放した後悔
しゃーりん
恋愛
エルネストは12歳の時、2歳年下のオリビアと婚約した。
彼女は大人しく、エルネストの話をニコニコと聞いて相槌をうってくれる優しい子だった。
そんな彼女との穏やかな時間が好きだった。
なのに、学園に入ってからの俺は周りに影響されてしまったり、令嬢と親しくなってしまった。
その令嬢と結婚するためにオリビアとの婚約を解消してしまったことを後悔する男のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる