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4.わたしを食べないでください
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ぐくぅ~とお腹がなった。お腹がすいている。
でも、お腹いっぱい食べると、お肉がついて、ドラゴン様に美味しく頂かれてしまう。要するに食べられてしまう。
わたしは出された料理に少しだけ口をつけて残すことにした。
だけでも、本当にどの料理も美味しくて、食べないでいるのは、本当に辛いことだ。
村にいたときは、そもそも満足に食べることができないのが当たり前で、初期地の量も少なく、味なんか考えている場合じゃなかった。
生きるためにただ食事をするという感じだった。
それが今では生きるため―― 生き残るために、食事をしないということになっている。
目の前に美味しそうな(実際、美味しい)料理があっても食べちゃだめというのは、食べ物が無いより辛いことだった。
(でも、食べてお肉がついたら食べられてしまう……)
「シャノーラ嬢よ」
いきなりわたしは呼びかけられた。
「はい」
と、返事をして声の方をみると、すっごい美形の男の人が立っていた。
でも、人間じゃないのはすぐに分った。
だって、頭に二本の角が生えていたのだから。
いつもの給仕の竜人じゃない。
これは、いったい……
すごく、美形。で、よく見ると威厳というか威圧感もあった。
「あの…… わたしに……」
もしかしたら、食事をしないことに業を煮やし、もう食べてしまおうということになったのかもしれない。
わたしは、カクカク震えた。
絶望感に顔が真っ青になっていたかもしれない。
ああ、これでわたしは食べられて死ぬんだ……
と、思うと涙が自然に溢れてきた。
◇◇◇◇◇◇
(あ、あ、あ、あ、あ、あ―― 泣いてる! 泣かしてしまったぁぁぁ!)
ドラゴンの王太子・リュークは慌てた。どんでもなく、生涯記録を振り切るくらいに慌てたのだった。
「な、泣くな! 俺は――」
「わーーーーん!! 食べられる、食べられちゃうんだぁ~」
「食べない。食べたりするものか!」
「え?」
シャノーラは、ヒク、ヒクとえづきながらも、泣くのを止めた。
「最近、出された料理を食べないのが心配だったので見にきたのだ」
「え――!! 食べないというのは「今は食べない」という意味ですか」
「違う! ずっと食べない」
「え? ずっとですか」
「ああ、ずっと食べることはしない」
「本当ですか?」
シャノーラはそもそも、この人物が誰なのか知らない。
言っていることが本当なのかも分らない。
猜疑心の篭った目で、ジッとリュークを見つめた。
「本当だとも! この王太子・リュークが言ったことだ。前言を翻すことはない」
「誓って、本当ですか?」
「本当だ」
「じゃあ、一体? なんで……」
「一緒に食事をするのだ! この俺と。あははははは」
この言葉がまたしても誤解を生んだ。
シャノーラは「やはりわたしは食べられるんだ」と、思い込む。
結局、泣いているシャノーラを宥めるまで、ドラゴンの王太子・リュークは四苦八苦するのであった。
でも、お腹いっぱい食べると、お肉がついて、ドラゴン様に美味しく頂かれてしまう。要するに食べられてしまう。
わたしは出された料理に少しだけ口をつけて残すことにした。
だけでも、本当にどの料理も美味しくて、食べないでいるのは、本当に辛いことだ。
村にいたときは、そもそも満足に食べることができないのが当たり前で、初期地の量も少なく、味なんか考えている場合じゃなかった。
生きるためにただ食事をするという感じだった。
それが今では生きるため―― 生き残るために、食事をしないということになっている。
目の前に美味しそうな(実際、美味しい)料理があっても食べちゃだめというのは、食べ物が無いより辛いことだった。
(でも、食べてお肉がついたら食べられてしまう……)
「シャノーラ嬢よ」
いきなりわたしは呼びかけられた。
「はい」
と、返事をして声の方をみると、すっごい美形の男の人が立っていた。
でも、人間じゃないのはすぐに分った。
だって、頭に二本の角が生えていたのだから。
いつもの給仕の竜人じゃない。
これは、いったい……
すごく、美形。で、よく見ると威厳というか威圧感もあった。
「あの…… わたしに……」
もしかしたら、食事をしないことに業を煮やし、もう食べてしまおうということになったのかもしれない。
わたしは、カクカク震えた。
絶望感に顔が真っ青になっていたかもしれない。
ああ、これでわたしは食べられて死ぬんだ……
と、思うと涙が自然に溢れてきた。
◇◇◇◇◇◇
(あ、あ、あ、あ、あ、あ―― 泣いてる! 泣かしてしまったぁぁぁ!)
ドラゴンの王太子・リュークは慌てた。どんでもなく、生涯記録を振り切るくらいに慌てたのだった。
「な、泣くな! 俺は――」
「わーーーーん!! 食べられる、食べられちゃうんだぁ~」
「食べない。食べたりするものか!」
「え?」
シャノーラは、ヒク、ヒクとえづきながらも、泣くのを止めた。
「最近、出された料理を食べないのが心配だったので見にきたのだ」
「え――!! 食べないというのは「今は食べない」という意味ですか」
「違う! ずっと食べない」
「え? ずっとですか」
「ああ、ずっと食べることはしない」
「本当ですか?」
シャノーラはそもそも、この人物が誰なのか知らない。
言っていることが本当なのかも分らない。
猜疑心の篭った目で、ジッとリュークを見つめた。
「本当だとも! この王太子・リュークが言ったことだ。前言を翻すことはない」
「誓って、本当ですか?」
「本当だ」
「じゃあ、一体? なんで……」
「一緒に食事をするのだ! この俺と。あははははは」
この言葉がまたしても誤解を生んだ。
シャノーラは「やはりわたしは食べられるんだ」と、思い込む。
結局、泣いているシャノーラを宥めるまで、ドラゴンの王太子・リュークは四苦八苦するのであった。
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