素手ゴロエルフ! 最強喧嘩師が異世界に転生したら最強の超絶美少女エルフになった

中七七三

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32話:ゲドゥポリスへの一歩

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「おねぇさまぁぁぁぁぁーーーー!!」

 ダダダダァッっと土煙を上げながら、絶叫し接近してくる物体。
 ミーナコロシチャルを「お姉さま」と呼ぶ存在。シコルノガスキーだ。
 現世では高校生、増田部瞬。この異世界ではミーナコロシチャルの母の子宮に「転移」した。転生ではない。
 そして、彼女の弟となった存在だ。

 涙と涎の尾を引き全裸で突撃する。
 股間のアサガオのツボミがプルプルンと震えていた。エレクチオンしているのだ。

 ふひゅうッ――

 ミーナコロシチャルが短く鋭い呼気を吐く。同時に、足が地から跳ね上がる。
 つま先から太ももまで続く流麗なライン。それが兇悪な風をまとって空間を切り裂いていた。
 蹴り――
 前蹴りであった。

 どごおぉぉぉん。
 シコルノガスキーの胴体をぶち抜いた。
 下半身と上半身が千切れて吹っ飛ぶ。 

「がはぁぁぁぁ!! おねえさまぁぁぁ!! 強すぎぃぃ~!!」

 上半身だけになって、クルクルと回転しながら歓喜の声を上げるシコルノガスキー。
 この痛みすら彼にとってはご褒美だった。

 ドンっと地面に落っこちて、ズルズルと下半身のところまで這いずる。
 下半身ではアサガオのツボミが天を突いている。
 彼はエレクチオンしている間は不死身であった。
 ミーナコロシチャル以外の攻撃では傷すらつかないレベルなのだ。

「いきなり、フルチンで突撃してくるんじゃねぇぜ。シコル――」

 ミーナコロシチャルは、下半身と上半身をつなぎ合わせている弟に視線を向け言った。
 鋭い視線。
 前世でスデゴロ最強ヤクザとして裏の世界で無敵を誇った存在。
 そして、この世界で超絶的な美しさを持ったエルフの少女として生まれ変わった存在。
 それが彼女であった。

「ミーナ様…… みんな…… お父さん! お母さんも!」

 ポチルオだった。イヌ獣人の少年。ミーナコロシチャルが助け、そして熱い夜を過ごした獣人の少年。
 ミーナコロシチャルはそのペロペロで女としての絶頂を何度も味わっていた。

 奴隷繁殖牧場から助けた子どもたちと親の再会。
 お互いの尻の匂いを嗅ぎ合う獣人たち。尻尾をパタパタと振っている。
 そして、お互いを確認しあって抱き合う。

「よかったです。ミーナ様」

 この感動的な光景にも、微動だにも感情を動かされた様子のない平坦な声。
 機械で合成されたような美少女声。ミルフィーナだった。
 真紅の髪が夕日に照らされ、幻想的な光の中で揺れていた。

「これで、おわりじゃねぇ」
 
 ミーナコロシチャルは、沈みゆく陽光に顔を照らされながら、言葉を紡ぐ。
 その白いキャンパスのような肌が、朱色に映える。それは炎の色であった。

「そうです。僕とお姉さまの愛の物語はこれから―― はぁはぁ、おねぇ様は美しい……」

 そう言って、全裸でミーナコロシチャルを見ながら自慰行為を始めるシコルノガスキー。
 アサガオのツボミをにぎりしめ、ブリッジをきめる。見事なブリッジだった。

「白濁神様が、また奇跡を!」

 激しいポンプアクションの末、アサガオのツボミの先から、白濁液を天にむかって射出するシコルノガスキー。
 それが虹のような放物線を描き、赤味を増した陽光の中をキラキラと飛翔するのであった。
 ある種、荘厳な光景だった。

「すごい―― さすが、白濁神様だ――」

 賛嘆の声がイヌ獣人の少年たちの中から上がった。
 白濁神――
 それはシコルノガスキーのことであった。
 精液を搾り取られる訓練をしていたイヌ獣人の少年たちにとって、無限とも思えるシコルノガスキーの射精能力は「憧憬」そのものと言ってよかった。
 
 ぐちゃ――

 ブリッジがミーナコロシチャルに踏みつぶされた。
 更に頭にかかとが落される。頭をつぶされたシコルノガスキー。
 しかし――
 それでも、その右手はポンプアクションを止めることはなかった。
 踏みつぶされる前の一瞬で、ミーナコロシチャルのパンツを見た。
 それがエネルギーとなっていたのだった。そして不死身だから。 

「ゲドゥポリス。ライジング・ドラゴン――」

 バラの花びらを思わせるミーナコロシチャルのくちびるが動いた。
 そして、風にその言葉を乗せる。
 
「確かに、奴隷繁殖牧場を壊滅させても……」
「そうだ。また奴らがきたらどうする?」
「あああ、俺たちは、いったい……」

 獣人たち言葉がざわざとした音となり広がっていく。
 それは不安、恐怖の色をもった音であった。

 ゲドゥポリスは、このイヌディスに奴隷繁殖牧場を組織のある都市の名だ。
 そして、ライジング・ドラゴンとは、その組織のトップ。
 恐るべき力をもった存在だった。

 つまり、その組織、そしてライジング・ドラゴンがいる限り、このイヌディスに安寧はないということだ。
 それをミーナコロシチャルの言葉が示していた。
 
「いや! ミーナ様だ。最強エルフのミーナ様がいれば、ここは安全だ」
「そうだ! ミーナ様」

 すがるような視線がミーナコロシチャルに集まる。
 それを平然と受け止めるミーナコロシチャル。

(エルフ酒が飲みてぇ)

 美しく神秘の色を湛えた瞳。その眼差しをどこか遠くに向けるミーナコロシチャル。
 彼女は故郷を思った。エルフ酒を飲みたい。ふと思った。
 美しいエルフのメイドがクチャクチャとお米を噛んで、ペッとしたものを醗酵させた酒だ。
 エルフの唾液と米エキスの醗酵した、絶妙な味の酒――
 ふと、その味を思いだしていた。

「俺は、故郷に帰らなきゃならねぇ。しかし――」

 風が吹いた。
 砂塵とともに、ミスリル銀で作られたようなミーナコロシチャルの長い髪が舞った。
 その風の中に彼女の言葉は溶けこんでいった。

        ◇◇◇◇◇◇

「ゲドゥポリスへの案内。いいのかい? ポチルオ……」

 ミーナコロシチャルは膝の上に座った小さなイヌ耳少年を優しくなでながらいった。
 耳を伏せ、エルフの嫋やかな指の愛撫に、身を任せるイヌ耳少年、ポチルオだった。

「はい、ボクはミーナ様に恩返しがしたいんです。イヌ獣人は恩を一生忘れないのです」
「ふふん――」

 悪くは無かった。
 このイヌ耳少年を膝にのせ、モフモフした頭を撫でるのは気持ちよかったからだ。

「ミーナ様、竜車をひく竜の餌は積みました。水、食料も多分大丈夫です」
「いいぜ。ミルフィ」

 竜車。それはミーナコロシチャルが奪ったものだ。
 ゲドゥポリスに、ポチルオたちを奴隷として出荷する途中だったものを奪ったのである。
 それで、ゲドゥポリスに向かう。
 奴らが異変を感じ、それがイヌディスに着く前に、ゲドゥボリスをつぶす。皆殺しにする。

「簡単な話だぜ、なあ――」
 
 そういって、唇をイヌ耳少年の頭に寄せた。ふっとバラの香りに似た呼気を吹きかける。

「ミーナ様……」
 
 その心地よさに、思わず耳を伏せ、目を細めるイヌ耳少年。
 
「ぐぐぐぐぐぅぅーー おねえさまぁぁぁ~! 僕も、僕も抱っこして欲しいのであります!! しかし、これは―― この感覚はぁぁ ああ、NTR? NTRですねぇぇぇ! おねえさまぁぁ!!」

 拳を固め、絶叫するシコルノガスキー。拳の間から血がポタポタとたれている。
 しかし、エレクチオンであった。常にエレクチオンである。そしてエレクチオンしている間は不死身なのであった。

 ミーナコロシチャル、ミルフィーナ、シコルノガスキー。
 そして、イヌ耳少年のポチルオが竜車に乗った。
 ミーナコロシチャルが手綱を握る。

「じゃあ、行くぜ――」

 竜車がズンと前足を踏み出す。
 その一歩は、ゲドゥポリスへと続く道への一歩であった。
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