素手ゴロエルフ! 最強喧嘩師が異世界に転生したら最強の超絶美少女エルフになった

中七七三

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27話:整列! いまから、お前たちをぶち殺す!

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「殴り込みだぁぁ! なにやってやがる!」

「どこの組織だぁぁ! ライジング・ドラゴン様の『奴隷繁殖牧場』にぃ!」

 ガチャガチャと武装した鉄の音を響かせ、ゾロゾロと人相の悪い奴らが集まってきた。

「オマエらが、ここの護衛なのかい?」
 
 ミーナコロシチャルが平然とした声音で訊く。
 ミルフィーナ、シコルノガスキーも平然と立っていた。
 シコルノガスキーは全裸で、体の一部もオッキしていた。
 
 その立ち上がったアサガオの蕾をミーナコロシチャルは見やった。

(ふふん、ここでも勃つかよ…… たまらねぇ、弟だぜ)

 シコルノガスキーは、姉の絶対的な強さ信じていた。
 もはや、それは信仰レベルである。

 そして、その姉に蹂躙されながら、達することが甘美な夢でもあった。
 であるので、姉の超暴力、蹂躙、殺戮、虐殺は、彼にとってオカズとなる光景だったのだ。
 その精神性の恐ろしさは、ある種の異形レベルにあった。
 元男子高校生・増田部瞬。この世界のシコルノガスキーとはそういう存在だった。

 ゾロゾロと降りてくる、「輩」としか言いようのない存在。
 全身から暴力性と残忍さ、そして獣臭がにじみ出る存在ばかりだ。

 ひとりがつかっけてきた。

「死ねやぁぁ、舐めくさりやがってぇぇ!!」

 安っぽい皮の鎧を着こんだ男だった。
 短い刀身を腰だめにして、体ごと突撃してきた。
 エルフの美少女の細く美しい肢体の背中を狙ってだった。 

「お姉さま!」
「ミーナ様!」

 シコルノガスキーと、ミルフィーナが叫ぶ。
 ミーナコロシチャルは、振り返り視界にいれた。
 ただ、それだけだった。

「あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ……」

 その瞬間に、男は止まった。ガクガクと震えた。
 じんわりと股間から暖かい液体が流れ出していた。
 それが湯気となり、濃厚なアンモニア臭が部屋の大気を汚していく。

「漏らしやがったかよ……」

 呟き、そして興味を失ったように視線を外す。
 鏡のように周囲の風景を映しこむ長い銀髪。
 それが、サラサラと流れる。

 美しいエルフの美少女。碧い瞳に、銀糸のような長い髪の毛。
 新雪のような色をたたえた透き通るような肌。

 だが、このエルフの美少女が見たままの存在でないこと。
 攻撃を仕掛けた男は、それが分かったのだ。
 まるで漆黒の闇の中に、碧い瞳が浮かび上がっているような錯覚を覚えたのだ。
 いや、それは本人にとっては現実(リアル)であった。

 半径2メートルで、ミーナコロシチャルの身にまとった殺気が直撃していた。
 瞬間、自我が崩壊。
 攻撃に移ることもできず、廃人となっていた。
 一般人であれば、即死レベルの殺意だ。廃人で済んだのはラッキーといえた。

「めんどくさいです。ドラグ・ブレスでみんな燃やしちゃいましょう」

 囚われた獣人たちのことなど気にしない豪快な提案だった。

「待て、ミルフィ」

「ん? ミーナ様」
 
 ベロを出して50万度の熱線を吐こうしていたミルフィーナがそれを中断した。

「これで全員かい?」

 最初からこのフロアにいた男に問うたのだ。
 可憐といっていい声音が空間に満ちていく。
 ただ、血と死の匂いを伴った可憐さであったが――

「な、なんだとぉ」

 ガクガクと全身を震わせながら、喉の奥から声を絞り出す。
 モヒカン刈り。肩パット。3メートル以上の巨体だった。
 その男は、生まれたての小鹿のように震えていた。  
 幅広の剣を構えながらも、ミーナコロシチャルに飛びかかることができないでいた。

「これで、ここのバカどもは全員かと訊いているんだぜ?」
 
「いいいい~? 全員かだとぉぉ?」

 モヒカン男は震えながらも怪訝な顔をする。

「皆殺しにするんだよ。めんどくせぇから、全員ここに集めろ――」
 
 ミーナコロシチャルは「ニッ」と笑みを浮かべる。
 この世界に美しさの根源粒子があるとするなら、その粒子がその場から無限に生成しているかのようであった。

 美しく、獰猛――
 エルフの超絶美少女は、現生から転生した最強の喧嘩師であった。
 異世界に転生し、そのパワーは更に人外のものとなっている。

 パンチの余波で月を砕き。
 母乳でブラックホールを生み出す。
 彼女自身は、気が付いてないが、すでに代紋(エンブレム)ランカー数人を葬っている。
 その中には、一桁ランカーすら存在していたのである。

「けひゃらら、ら、ら、ら、ら、ら、らぁぁぁぁぁ」

 恐怖の臨界を超えた者が突っ込んできた。
 精神がメルトダウンしたかのような叫びをあげる。
 鉄塊のようなメイスをもった男だった。
 パンパンに膨らんだ筋肉が躍動し、風が唸りをあげる。
 歪なボール状の打撃部分が吹っ飛んできた。

 ミーナコロシチャルは軽く手で払った。
 それだけで、メイスが原子を越え、素粒子レベルで分解。
 無の揺らぎの中に吸い込まれるように消えた。
 それはもう、破壊という現象すら超えていた。
 素粒子レベルの相転移であった。

「ま、魔法かぁぁ!?」

「しらねぇな。俺はこれだけだぜ」

 そう言うとスッと拳を持ち上げる。
 上腕に聖布・カエアンを撒きつけた細く、芸術品のような腕であった。
 ただ、握った拳の周囲の空間が、その肉体からあふれ出す魔力で歪んでいた。

 ならず者たちは、戦うことも無くミーナコロシチャル達の周囲を囲む。
 全員が奴隷牧場の支配者であるライジング・ドラゴンである部下たちだった。

「整列ッ!!!」

 ミーナコロシチャルの裂ぱく気合いの言葉が響く。
 ならず者たちが、まるで弾かれたように動き整列した。
 直立不動であった。

 まるで、教育係である歴戦の軍曹の前に並ぶ新兵のようであった。
 平均身長2メートルを超える男たちがずらりと並んだ。
 すでに、戦う気根がへし折られていた。
 整列している男の中には、虚ろな目で、ヨダレを垂らしている男までいた。

「いまから、お前たちをぶち殺す! これは暴力だ! 圧倒的な暴力だ。いいかい――」

 その言葉が終わった瞬間、ミーナコロシチャルの拳が吹っ飛ぶ。
 最初のならず者の首が吹っ飛び、首から先が無くなった。
 天井まで吹き出し、真っ赤に染めて行く。血圧が高かった。

 ボン!
 ボン!
 ボン!
 
 流れ作業のように首が吹っ飛び消えていく。
 その場には、首の無くなった男たちが、直立不動で立っているだけだった。

 囚われた獣人少年たちも、その光景を呆然と見ていた。
 ただ、自分たちが救われたという事実。それは理解しているようだった。

 ならず者は、抵抗することなく、直立不動で命を刈られていく。

 超絶美少女のエルフ―― 
 その身の内に発する圧倒的魔力によって生じる超暴力。
 それは対峙する者に、絶望しか感じさせなかった。
 抵抗を諦め、ただ機械的に整列し、己に死を送り込む拳を漫然と受けいるのだった。

 そして、残りが3人となった。
 
「あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ」
 
 ミーナコロシチャルがゆっくりと、そして無造作に拳を振りかぶる。

「ああああ! 待ってくれ! いるんだ! この牧場の現場の支配者! それが最上階にいるんだぁ!」

「ほう。そうかい―― なんていうんだい? そいつは」

 優しげな声だった。

「あ、あ、あ、あ、ムツ・ガロウという男――」

「ありがとよ」

 そういって、ミーナコロシチャルは拳を振りぬいた。
 血飛沫が上がる。

 いつしか、そのフロアには濃厚な血の匂いで満ちていた。
 血だまりに足をいれる。命の残滓ともいえる温度が伝わってくるようだった。

 ミーナコロシチャルは天井を見上げた。

「殺すか――」

 ほろりとその言葉を転がす。
 そして、美しきエルフは、可憐な笑みを浮かべるのだった。
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