素手ゴロエルフ! 最強喧嘩師が異世界に転生したら最強の超絶美少女エルフになった

中七七三

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26話:皆殺しの挽歌

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「あそこかい?」

 ミーナコロシチャルとミルフィーナ、シコルノガスキー、獣人少年ポチルオ。
 彼らは廃墟の構造物に身をひそめ、その場所を見ていた。
 濃藍の空が広がっている。
 夜明けの直前であった。

「そうです。あそこが『奴隷繁殖牧場』です。ボクタチの……」

 ポチルオの声がかすれたように消えていく。

 奴隷繁殖牧場――
 それは、廃墟の街であるイヌディスの中にあった。 
 天に突き立つような巨大なビル。
 およそ異世界には相応しくない構造物。
 無数の蔦、名の知れぬ植物がその壁面に絡みついていた。
 文明の終末を思わせる。そう言った存在感があった。
 そこに、奴隷繁殖牧場があった。

「大丈夫だ――」

 ポンとミーナコロシチャルの嫋やかな手がポチルオの頭を軽くたたいた。
 そして、優しげな眼差しでポチルオを見つめた。

「ミーナ様……」

 消え入るような声で、ポチルオは言った。

 奴隷繁殖牧場には、ポチルオの両親を始め、逃げることができなかった子どもの獣人も捕えられていた。
 ゲドウ・ポリスへ獣人奴隷を供給するための施設である。
 気に入らなかった。
 
 風呂に沈んで身を売る女はいた。
 東京湾に沈んで魚の餌となった男もいた。
 しかし、それはそれなりの理由があった。

 獣人である――
 そのような理由だけで奴隷となるということは、ミーナコロシチャルは納得できなかった。

「筋が通らねェ」

 バラの花びらの色をもった瑞々しい唇が動き言葉を紡ぎ出す。
 可憐なエルフの美少女。しかし、その中身は最強喧嘩師と呼ばれたヤクザである。
 唇からチラリと見える犬歯にその獰猛な精神性が感じられた。

 筋の通らぬことは許せない。許せないので叩き潰す。
 簡単な話であった。

「ミーナ様、とりあえずさっさと皆殺しにしましょう」

 平坦な感情のこもらない声で、ミルフィーナが言った。
 他人の命など、虫けら以下の価値しかないと思っていそうだった。

「フッ―― 皆殺しかよ。悪くねェ……」

「命乞いしても、殺すのですな? お姉さま」

 シコルノガスキーが言った。
 言葉に反響するようにエレクチオンしたアサガオの蕾が、プルプルと振動する。
 仰角は75度を超えている。
 ミーナコロシチャルの弟として、母親のママデースの子宮に転移した高校生だ。
 全裸である。全身の肌で異世界の空気を感じている存在だった。

「俺に挑んでくる者は殺す。逃げる者も殺す。命乞いする者も殺す」

 ニッと神がかり的な美しさを持つ笑みを浮かべその言葉を口にした。
 ミーナコロシチャルの信条だった。それは転生しても変わる事のない公理であった。

「けひひひひぃ~ さすが、お姉さま―― 早くぶち殺しにいきましょう」

 シコルノガスキーが右手で己の物を握りしめながら言った。
 その角度は、姉の言葉により更に大きなものとなっていた。
 いじめのため引きこもりとなっていた高校生。
 それがシコルノガスキーの前世だ。
 暴力を振るい、弱者をいたぶる存在は許せないのだった。
 極度に歪んではいたが、正義感と言っても差支えのない物だ。

「行くかよ――」
「行きましょう」
「ひひゃぁぁぁ、お姉さま、ミーナ様。殺しましょう。皆殺しにぃぃぃ~」

 最強の三人が動きだした。

        ◇◇◇◇◇◇

「おらぁぁ!! まだこれしか出せねぇのか! 1リットル出すまでは飯抜きだ!」

 奴隷繁殖牧場の中に怒声が響いた。
 ビーカーの中の容器に白濁した液がたまっていた。
 500ミリリットルくらいであろうか。1リットルの半分だ。

「もう、も、もう限界です……」

 獣人の少年が下半身丸出しで、息を切らしている。
 まだ幼いといっていい遺伝子を発射する器官は力を失っていた。
 ピンク色の先っちょには、遺伝子を含んだ繁殖のための体液の残滓がこびりついていた。

「尻を出せ――」

 怒声を発した男は、好色な笑みを浮かべ、カチャカチャとズボンのベルトを外そうとする。

「ああああ! いやです! 止めてください!! お願いします」

「ひゃはははは、もう出せねぇなら、俺が後ろから補充してやるぜ――」

 そんなことで、補充ができるわけがなかった。
 この男はただ己の獣欲を満たすために、獣人の少年を犯そうとしていたのだ。

「おいおい、あんまり無茶して、ガキの腰の骨を砕くなよ」

 隣で獣人少年にしゃぶらせている男が言った。

「そこまで、無茶はしねぇよ。商品だからな」

「まあ、そうだな」

「種馬として役にたたねぇなら、この味を覚えさせて、少年肉奴隷として出荷するだけだ―― そのためには、こういった教育も必要だぜ」

 どす黒く使いこまれたゲスの遺伝子を発射する器官を少年の顔に着きつける。
 奴隷繁殖牧場に残された少年は、種馬としての能力を鍛え、将来種馬となる道がある。
 そして、そうでない者は、肉奴隷として出荷される。
 獣人の「少年」の需要もあるのだ。肉欲の対象となるのは女ばかりではない。

 ここはそう言った場所だった。
 獣人の少年が集められ、種馬となれるかどうか、自分で遺伝子を絞り出す。
 ノルマは1日1リットルだった。 
 それが出来なければ、酷い目に遭うのだ。

 あちらこちらに獣人の少年がいた。
 彼らは、発射器官を握り締め生命を次世代につなぐための体液を絞り出そうとしている。
 その荒い呼気が、空間に満ちていた。

「おら、まずどうするか、分かっているだろう?」

「はい――」

 獣人少年がゆっくりと口を開き、舌を伸ばし――

 ドガァァァァ!!

「なんだ! いったい!」

 慌てて、ズボンを引き上げベルト絞める男。
 音の方向を見やった。
 ドアが吹き飛んでいた。
 鋼鉄製のドアだ。厚さ410ミリの特殊鋼で出来た扉だった。
 それがグズグズの鉄くずになっていた。
 いや、一部は融解し、真っ赤な光を発し床に流れ出していた。
 熱が大気を陽炎のように歪めていた。

「下司だな――」

 陽炎の向こうから、澄んだ風のような声が流れてきた。
 
「なんだ! キサマらぁぁ! ここを、ライジング・ドラゴン様の『奴隷繁殖牧場』だって知ってるのか!」

「知ってるぜ。だから来たんだよ」

 すっと陽炎の向こうからその身が完全に姿を現した。
 全ての光を反射し、映し出すような輝くプラチナのような長い髪。
 透明感を持ちながら瑞々しさを持った白い肌。
 神秘とさえ言っていいブルーの瞳。

 伸びる四肢は優雅な曲線で構成され、その動きは完成された舞のようなものだった。
 
 その肉体が一歩前に出た。

 美の結晶体。
 美の現人神。
 美の特異点。
 
 その肉体はそのような存在だった。

「て…… め、え…… エ、エルフか……」

 暴風雨(テンペスト)のような圧倒的な美。
 ミーナコロシチャルであった。
 その美の前に、男は固まるしかなかった。

 彼女は、トンっと優雅な動きで間合いを詰めた。
 全く予備動作のない動きだった。

 同時に右の拳が弓を引くように後方に引きしぼられる。
 
 衝撃波を発し、大気が砕けた。
 その砕けた大気の中を、エルフの右拳が吹っ飛んできた。
 プランクレベルの空間すら押しつぶす。
 その速度は空間にローレンツ収縮を発生させた。
 拳の速度が光速に接近し、質量が無限大へと突き進む。

 破壊音が響く前に全てが終わっていた。

 ミーナコロシチャルの拳は男の顔面に着弾。
 その表皮を一瞬で、素粒子レベルに分解。 
 10のマイナス100乗秒の時間で、男の頭が素粒子に分解された。
 さらに、素粒子であることすら許さず、グルオンスープとなり、13次元空間突き抜ける。
 膜宇宙の彼方、別次元にエネルギーをぶちまけていく。
 男の頭を破壊するには、あまりにも巨大すぎるエネルギーであった。
 
 その余剰エネルギーが拳から奔流となって流れだす。
 奴隷繁殖牧場の壁面が吹っ飛び、巨大な穴が開いた。
 ビリビリとその空間が震える。

 男は、頭を失い首の断面からピュピューと血を噴き出すだけの存在となった。
 ミーナコロシチャルは軽く蹴りをぶち込む。
 すでに死んでいる男の腹が突き破れ、腸(はらわた)が飛び散る。

 内臓の破片、肉片、そして血がミナーコロシチャルにもかかった。
 殺戮の化粧であった。
 そして、血まみれの笑みを浮かべた。

「皆殺しだ――」

 エルフの美少女の声が奴隷繁殖牧場に響いた。
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