素手ゴロエルフ! 最強喧嘩師が異世界に転生したら最強の超絶美少女エルフになった

中七七三

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10話:「最低です…… ボクは」

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 それはテニスボール大の白い玉だった。
 ミーナコシチャルの肉体に撃ちこまれた「おっぱい元気玉」だった。

 高密度の魔力と母乳により、その密度は極めて高い。
 自重で空間を捻じ曲げ、重力レンズを形成するほどであった。
 その巨大な質量と密度をった球形の弾丸が、ミーナの肉体に食い込んでいた。

 胴体に5発。両足の太ももに2発。
 合計7発の「おっぱい元気玉」だ。
 それが、1歳を迎えた女の子のエルフの肉体に食い込んだのだ。

 それから1週間が経過していた。

 それらは、まるで美しいエルフの1歳児の。
 その肢体を彩る宝玉のようにその身体にめり込んだままだった。

(悪くねぇ――)

 エルフの一歳児となった最強素手ゴロヤクザは、その美しい顔に笑みを浮かべた。

 体の中に、玉をいれる――
 場所は異なるが、それは極道の文化の中にもある事であった。
 エルフの文化と極道の文化は共通性が多いのかもしれないと彼は思った。

「姐さん、大丈夫ですかね」

 ミーナの護衛メイドであるミルフィーナ・リップが言った。
 美少女声だが平坦で感情が読めない声音だった。

「しばらく魔法は使えないらしいな」

「はい、ミーナ様、あーんして」

「あーん」
 
 ミルフィーナとの会話が中断した。
 ミーナコロシチャルが、口移しでメイドから離乳食をもらったからだ。
 ミーナは、口の中で転がすようにエルフの離乳食を味わう。

 銀シャリ。
 エルフの母乳。
 エルフの唾液。

 この3つが程よく混ざり合い、バランスのいい甘みを演出していた。
 48人のエルフが、次の口移しを待ち構え「くちゃくちゃ」と自分の口を動かしていた。
 エルフのメイドたちの咀嚼音が、ディナーの程よいバックミュージックとなる。
 耳が心地よかった。

「ママデース様は、1年ほどで魔法が使えるようになります」

 黒髪真ん中分けの真面目そうなエルフが言った。
 メイド長のハイテイロンだった。

「1年ですか。そうですか」
 
 ミルフィが言った。
 そして、自分も食事をする。スプーンでスープを掬(すく)うが細かく手が震えている。
 ミーナは「クチャクチャ」と離乳食を味わいながらそれを見た。

「お゛い…… んん、相変わらず手はそんな感じかい?」

「むしろ、日常的な細かい動作に慣れないんです」

 ミーナの護衛メイド。ミルフィーナは、元代紋(エンブレム)ランカーだった。
 その戦いの中で、両腕、右目、そしていくつかの身体の器官を失っているという。

「そうかい」

 ミーナは短く言葉を返した。
 自分が襲撃(カチコミ)喰らって1年が経過しようとしていた。
 ミルフィが来て約1年だ。その間、同じような襲撃は無かった。
 今のところ、彼女が護衛としてどの程度使えるのかは全く分からなかった。
 
(戦えるのか――)

 ミーナは目の前の少女を見つめた。震える手でスプーンを持つ少女を。
 細く、まるで未成熟な少年のような肢体。
 そして、大きく赤い瞳。真紅のウェイブのかかった長い髪。
 三次元からの二次元への逆襲。そのレベルの美少女だ。

(弱くはない―― それは分かる)

 あの母親が自分の護衛に選んだのだ。
 しかも、元代紋(エンブレム)ランカーだ。
 弱いはずがなかった。
 しかし、その強さがどれほどのものなのか、ミーナもその点について読み切れなかった。

        ◇◇◇◇◇◇

 青白く湿ったような月明かりが部屋の中に染み込んでいた。
 夜――
 まるで、月の光が落ちてくる音が聞こえてきそうなほど、静かな夜だ。
 寒くは無かった。かといって暑くもない。
 
 ミーナはベッドの中で母のことを思った。
 現生の母については良い思い出など無かった。
 離婚し自分を連れて行ったはいいが、新しい男ができると邪魔になったのだろう。
 彼(彼女)は施設に捨てられた。
 父親も、新たな家族を持っていたからだ。父も母も面会に来たこともなった。
 彼(彼女)は、両親から捨てられていた。

 そして、彼はアウトローの道へと進んだのだ。
 育ちが悪い――
 両親が悪い――
 そのような言いわけをする気は無かった。

 彼は拳を持ち上げた。
 彼は圧倒的な暴力で道を切り開くしかなかった。
 そして、それが可能なほどの破格の暴力結晶体だった。

 しかし、この世界の母――
 エルフとなった母は違っていた。
 2億5000万年の歴史を誇るエルフの高貴な血筋。
 その伝統の中でも7発のおっぱい元気玉を出した母親はいない。
 そして、それを受け止めた子もいないのだ。

 そして、ミーナは拳を下ろした。
 心地よいまどろみが彼(彼女)を包み込もうとしていた。 

        ◇◇◇◇◇◇

 ギシギシとベッドが揺れていた。
 細かい振動に、ミーナは気付いた。
 続いて、か細いが荒い呼吸音が耳に届いた。
 それは、知っている少女の声だった。
 なにやら、湿った音まで聞こえてきた。

 薄暗がりの中、ミーナはスッと薄目を開けた。
 声のする方に首を向けた。自然にだ。
 あくまでも、寝ている人間が自然に首を動かしたようにだった。
 
 月明かりだけがある部屋。
 ベッドの隣。
 そこに、美く赤い瞳をした少女がいた。
 潤んだ蕩けるような眼差しで、こちらを見つめ、体を小刻みに振動させていた。

 ミルフィーナ・リップだった。 
 一瞬、その動きが止まった。

「ミ、ミーナ様…… お、起きてる?」

「……」

「ほッ…… 起きてない……」

 そして、また荒い呼吸音とベッドの揺れ、湿った音が聞こえてくる。
 
 これは何を意味しているのか――
 細かく震える少女の身体がなにを意味しているのか。
 自分のベッドにもぐりこみ、何をしているのか。

 脳裏に次々と疑問の声が上がった。

 元32歳、童貞の喧嘩ヤクザでも分かる事であった。
 自分で自分を慰める行為。
 それが分かった。

「細かい微妙な動きが…… まだ……」

 ミーナはゆっくりと視線を下の方にもっていく。
 なにやらミルフィーは棒のような物を握っている。
 義手では上手く自分を慰めることができず、道具を使っているのか――
 ただ、暗くその形まではよく分からなかった。

 そして、もっと分からないことがある。
 なぜ、エルフの「女」の一歳児である自分をオカズにしているのかということだ。

(女同士か…… 悪くは無い……)

 その思いにたどり着く。
 百合に憧れが無いと言えば、それは嘘になった。
 32歳童貞の喧嘩ヤクザの胸の内にはその思いがあった。

 喧嘩ヤクザが転生したミーナは美しいエルフだった。
 銀色の長い髪。
 コバルトブルーの瞳は母譲りだった。
 とても、1歳児には見えない美貌のエルフであった。
 それでも、見た目はせいぜい3歳児――
 それを超えることはなかった。

 そのような存在をオカズにできるか?
 かつての自分ならどうか?

 不思議なことであった。 
 しかし、怒りは無い。
 自分をオカズにされた怒りはなかった。
 年頃の少女が腕を失い、不自由な状態なのだ。
 道具に頼ってまで、自分を慰めようとしている。

 それは許されるべきことであると彼(彼女)は思った。

 そして、荒い呼吸音だけが響き。
 ベッドの揺れが止まった。

「最低です…… ボクは」

 荒い呼気の中、絞り出すような声が聞こえた。

「ムッ!!」
「なんです?」

 同時だった。同時に声を上げていた。
 ミーナが目を開けた。
 行為を終えたミルフィーがベッドから跳ねるように出た。
 一瞬の動きだった。

「なんの気だ―― コイツは……」

「禍々しい…… 凶器? なにか凄まじいものがいます。この屋敷の中に」
 
 蕩けそうな顔で、自分を慰めていた少女。
 彼女は一瞬で「護衛メイド」の顔に戻った。

「来たかよ……」

 ミーナコロシチャルも感じていた。
 近い。
 まるで抜身の刃のような気をまとった存在。
 いや、それ以上だ――
 そのような者が、この屋敷の中に忍び込んだ。

 ミーナの顔に自然と笑みが浮かんでいた。
 獰猛なエルフの一歳児の笑みであった。
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