素手ゴロエルフ！ 最強喧嘩師が異世界に転生したら最強の超絶美少女エルフになった

プロローグ

　最強――
　無敗――
　無敵――

　その存在は倦んでいた。
　最強であることに飽きていた。
　戦い、勝利すること。
　その最高の娯楽が、いつからか、ただのルーチンと化していた。

　気が付くと、その存在に戦いを挑もうとするものすらいなくなっていた。
　戦わないでいることは、倦むような戦いを繰り返すよりも辛いことだった。

　その存在は戦いが好きだった。
　いや、正確には違った。

「ああ、俺は勝つことが好きなのだ」

　その存在は、闇に溶けこむような声を発していた。
　勝利だ。
　肉が弾け、脳髄が痺れるような勝利。

「それが欲しいから、俺は戦っているのだろう」

　その思いが自然に言葉となって吐き出されていた。

　創ればいい――

　どこからか、その声が響く。
　無ければ、創ればいいのではないか。
　ああ、そうだ。
　自分が創ればいい――

　最強を――
　無敗を――
　無敵を――

　己の存在。その全てを証明するために。

　そして、その存在はゆるゆると動きはじめていた。