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旧約聖書 短編集
うつヨブ -ウツで神の義人試しを受けた人- 後編
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「だからよぉぉ、オマエが陰でかくれて悪事をやってたんじゃねーの? 因果応報? そんな感じでさ」
友人がまだクソのような説教かましている。
もうね、ワシは「因果応報」とか超越している「全知全能」だよ。
そのワシを、信じまくるかどうかが問題であってだな、人間の悪事とかなにそれな感じなわけだよ。
だって、今回だって、ただヨブがどれだけ、ワシをリスペクトしているか試しているだけだし。
悪事とか関係ねーから。
「因果応報だぁ? じゃあ、なんで世の中に悪人がいるんだよ。みんな死ねよ。俺みたいになって死ねよ。アホウか! 俺みたいな善人がこんな目にあって、悪人が栄える時点で、あり得ねーだろうが、因果応報なんてよぉぉ!!」
さすがに、ヨブの奴は義人だけあって、結構いいとこついてくる。
要するに、ワシ次第であるというこの世界の真実。それにちょっと接近したかなと思うよ。
で、ワシは地上に降りてしばらく見ていた。
言い争いは続いている。
「おい、サタンよぉぉ」
「なんっすか? 親父」
「おめぇの詰め甘いんじゃね?」
「はぁ?」
「病気の割に、ヨブは元気じゃね?」
ヨブは酷い皮膚病で寝込んでいる。ブラクラのグロ画像のようになっている。
ワシはこういうのは好きじゃない。もっとすっきり硫黄の炎とかでさっぱり焼いて消毒したり、水でキレイに流すのが好き。
サタンは「病気にしろといったのは親父じゃ…‥」とブツブツ言っているが、まあワシは寛大なので許すことにした。
本来、ワシに刃向えば、存在がなくなるのである。そもそも、この世界を創ったのはワシであるので、全てのモノはワシのものであるわけだ。
その基本が分かっているかどうか? 結構大事なとこだ。
「ヨブ、すげぇ論争してる余裕あるなぁ。あめぇんだよ。サタン」
「すいやせん。親父」
「まあ、こういう議論っていうの、そういうとこから、ワシへのリスペクトも見えてくるわけだよ」
「さすが、すげぇです。親父――」
ヨブは苦しみながら「神よぉぉ、なぜですか? 説明を! 私がなぜこのような目に!」とか言ってる。
クソ笑う。ただ、ワシへのリスペクトを試しているだけだからな。
コイツの友人たちは「因果応報」だとか「神が現れないのは、ヨブの信仰心が足らないからだ」とか言っている。
全然ダメ。コイツらアカンなぁ。それに比べれば、ヨブの方がマシだよな。
こんな目になっても、ワシにすがるわけだ。
ワシに対するリスペクトがあるから説明を求めているのだろう。
しかし――
ワシは説明する気はない。面倒だし。クソバカバカしいから。
「よう、ヨブゥゥ、痛いの? それって痛い? 家族とか財産失って、悲しいのかなぁ? どうなの? それってワシのせいなのかなぁ~」
ワシは姿を現すというか、基本ワシは遍在しているので、位置とか時間とか超越しているんだけどね。
「え? 神…… まじっすか? え? なんで」
「出てこいって言ったのオマエだろうよ。ほらキタヨ。言ってみ? なにが困ってるの?」
「あの…… いえ…… すいません――」
「てめぇ! 自分の吐いた唾も飲めねぇのか? ええ? ワシに説明せいとか、抗議するとか、訴えるか言ってたよなぁぁ! おお? どうなの?」
ワシは皮膚病で薄汚くなっているゴミクズの無一文のヨブを見て言った。
まあ、サタンに命じてやらせたけど、結構面白かったので、弄ってみることにした。
ガクガクと震えて、なんか黙ってやんの。
やっぱ、ワシが怖いの? 畏怖している? お、意外にリスぺトしてるじゃん。
「ま、ワシは天地創造したし、リバイアサンを瞬殺したし、凄いわけよ。分かるよなぁ? ええ? ヨブちゃーん」
「はい! 神は偉大です。もう、リスペクトしまくりです! 全ては神のために!」
ヨブのリスペクトをワシは感じた。
確かに、コイツここまでやっても、リスペクトの根本パラメータがカンストしているしなぁ。
まあ、バグっているのかもしれねーけど。
「でよぉぉ、クズどもよぉ~」
ワシはヨブを責めた友人たちを見やった。完全にビビってる。
そりゃ、目の前に神が出てくりゃビビるよな。これで、ビビらなかったら、悲惨なことになっていただろうよ。
「因果応報とか関係ねーから。なにそれ? 君たち仏教徒なの?
ブッティズムの考え方じゃね、それは――
ワシが、ブッディズムみたいなチンケナ教えと同じレベルってことなの?
そのへんどうなのかなぁ?」
友人たちは土下座して、ワンワン泣き出した。
許しを乞うている。神に許しを請うわけだ。
でも、助けるかどうかは、ワシ次第だからな。
「関係ね―から、悪とか善とか関係ね―の。俺の気分次第。それが重要。いいか、その点が分かってないと、ワシの教えなんてついてこれないからな」
「分かりました!!」
ヨブの友人たちは、土下座しながらいったので、ワシはとりあえず、ひとりづつ頭を蹴飛ばすだけで許した。
まあ、死にはしない。
用事は済んだので、帰ろうかなと思う。
結構、義人試し面白かった。これからもやろうかなと思う。
「で、すいません―― あの…… 神様……」
薄ぎたねぇ、皮膚病のヨブがすがりつくようにワシに言ってきた。
「なに? ヨブ、なんかまだあるの?」
「いえ、家族、一族皆殺しの上、財産を無くし無一文、おまけに酷い皮膚病なんですが……」
「で?」
ワシは言った。リスペクトの心。ワシへのご信心の心さえあれば、別にいいじゃん。
親兄弟、子ども、全部死のうが、一文無しで病気になろうが、ワシを信じてれば全然OKなわけだ。
「なに? ワシがなにかしなきゃいけないの? なんかワシのせい? どれが? なにが? どれがワシのせい?」
「…… いえいいです……」
ヨブは薄汚い布団の中に、グズグズになった皮膚をうずめ、寝込んだ。
サタンがきっちり仕事しているなら、治らないと思う。
で、死ぬ。死んだときに、ワシがヨブのことを覚えていれば、天国に行くかもしれないし、いかないかもしれない。
それは、そのときのワシの気分で、全ては不確定性の波の中にあるわけだ。
「親父…… 記録だけは変更しておきやしょうか?」
「ん?」
「一応、ヨブを元通りにしたということで、ハッピーエンドにしておけば、オヤジへのリスペクトも高まるかもしれやせんし」
サタンの提案。まあ、別にどっちでもいいんだけど。
ヨブを放置するのは決定事項として、ワシが直したことにするのは、まあ好きにすればいい。
ワシは寛大だから。
「ま、いいんじゃね。財産二倍して、全員復活して、ヨブは幸せに暮らしたことにしておけよ」
「はい、親父分かりやした!!」
サタンは、ヨブとヨブの友人に「おらぁぁ、今のお話聞いたやろうがぁぁ、ちゃんと記録に残せよぉぉぉ」とどなり散らす。
なんとも、スマートでないやり方であるが、まあ、仕方ない。
まあ、歴史なんて全知全能のワシが造る物だし、別にどうでもいいんだけどね。
これで、ワシへのリスペクトが増えればめっけものというくらいだ。
「んじゃ、まあ、ワシも忙しいしなぁ。人類救済しないとなぁ」
そう言ってワシは、アホウどもの前から消えたのであった。
ワシは常に正しく「全知全能」であることが、今回も証明されただけだった。
友人がまだクソのような説教かましている。
もうね、ワシは「因果応報」とか超越している「全知全能」だよ。
そのワシを、信じまくるかどうかが問題であってだな、人間の悪事とかなにそれな感じなわけだよ。
だって、今回だって、ただヨブがどれだけ、ワシをリスペクトしているか試しているだけだし。
悪事とか関係ねーから。
「因果応報だぁ? じゃあ、なんで世の中に悪人がいるんだよ。みんな死ねよ。俺みたいになって死ねよ。アホウか! 俺みたいな善人がこんな目にあって、悪人が栄える時点で、あり得ねーだろうが、因果応報なんてよぉぉ!!」
さすがに、ヨブの奴は義人だけあって、結構いいとこついてくる。
要するに、ワシ次第であるというこの世界の真実。それにちょっと接近したかなと思うよ。
で、ワシは地上に降りてしばらく見ていた。
言い争いは続いている。
「おい、サタンよぉぉ」
「なんっすか? 親父」
「おめぇの詰め甘いんじゃね?」
「はぁ?」
「病気の割に、ヨブは元気じゃね?」
ヨブは酷い皮膚病で寝込んでいる。ブラクラのグロ画像のようになっている。
ワシはこういうのは好きじゃない。もっとすっきり硫黄の炎とかでさっぱり焼いて消毒したり、水でキレイに流すのが好き。
サタンは「病気にしろといったのは親父じゃ…‥」とブツブツ言っているが、まあワシは寛大なので許すことにした。
本来、ワシに刃向えば、存在がなくなるのである。そもそも、この世界を創ったのはワシであるので、全てのモノはワシのものであるわけだ。
その基本が分かっているかどうか? 結構大事なとこだ。
「ヨブ、すげぇ論争してる余裕あるなぁ。あめぇんだよ。サタン」
「すいやせん。親父」
「まあ、こういう議論っていうの、そういうとこから、ワシへのリスペクトも見えてくるわけだよ」
「さすが、すげぇです。親父――」
ヨブは苦しみながら「神よぉぉ、なぜですか? 説明を! 私がなぜこのような目に!」とか言ってる。
クソ笑う。ただ、ワシへのリスペクトを試しているだけだからな。
コイツの友人たちは「因果応報」だとか「神が現れないのは、ヨブの信仰心が足らないからだ」とか言っている。
全然ダメ。コイツらアカンなぁ。それに比べれば、ヨブの方がマシだよな。
こんな目になっても、ワシにすがるわけだ。
ワシに対するリスペクトがあるから説明を求めているのだろう。
しかし――
ワシは説明する気はない。面倒だし。クソバカバカしいから。
「よう、ヨブゥゥ、痛いの? それって痛い? 家族とか財産失って、悲しいのかなぁ? どうなの? それってワシのせいなのかなぁ~」
ワシは姿を現すというか、基本ワシは遍在しているので、位置とか時間とか超越しているんだけどね。
「え? 神…… まじっすか? え? なんで」
「出てこいって言ったのオマエだろうよ。ほらキタヨ。言ってみ? なにが困ってるの?」
「あの…… いえ…… すいません――」
「てめぇ! 自分の吐いた唾も飲めねぇのか? ええ? ワシに説明せいとか、抗議するとか、訴えるか言ってたよなぁぁ! おお? どうなの?」
ワシは皮膚病で薄汚くなっているゴミクズの無一文のヨブを見て言った。
まあ、サタンに命じてやらせたけど、結構面白かったので、弄ってみることにした。
ガクガクと震えて、なんか黙ってやんの。
やっぱ、ワシが怖いの? 畏怖している? お、意外にリスぺトしてるじゃん。
「ま、ワシは天地創造したし、リバイアサンを瞬殺したし、凄いわけよ。分かるよなぁ? ええ? ヨブちゃーん」
「はい! 神は偉大です。もう、リスペクトしまくりです! 全ては神のために!」
ヨブのリスペクトをワシは感じた。
確かに、コイツここまでやっても、リスペクトの根本パラメータがカンストしているしなぁ。
まあ、バグっているのかもしれねーけど。
「でよぉぉ、クズどもよぉ~」
ワシはヨブを責めた友人たちを見やった。完全にビビってる。
そりゃ、目の前に神が出てくりゃビビるよな。これで、ビビらなかったら、悲惨なことになっていただろうよ。
「因果応報とか関係ねーから。なにそれ? 君たち仏教徒なの?
ブッティズムの考え方じゃね、それは――
ワシが、ブッディズムみたいなチンケナ教えと同じレベルってことなの?
そのへんどうなのかなぁ?」
友人たちは土下座して、ワンワン泣き出した。
許しを乞うている。神に許しを請うわけだ。
でも、助けるかどうかは、ワシ次第だからな。
「関係ね―から、悪とか善とか関係ね―の。俺の気分次第。それが重要。いいか、その点が分かってないと、ワシの教えなんてついてこれないからな」
「分かりました!!」
ヨブの友人たちは、土下座しながらいったので、ワシはとりあえず、ひとりづつ頭を蹴飛ばすだけで許した。
まあ、死にはしない。
用事は済んだので、帰ろうかなと思う。
結構、義人試し面白かった。これからもやろうかなと思う。
「で、すいません―― あの…… 神様……」
薄ぎたねぇ、皮膚病のヨブがすがりつくようにワシに言ってきた。
「なに? ヨブ、なんかまだあるの?」
「いえ、家族、一族皆殺しの上、財産を無くし無一文、おまけに酷い皮膚病なんですが……」
「で?」
ワシは言った。リスペクトの心。ワシへのご信心の心さえあれば、別にいいじゃん。
親兄弟、子ども、全部死のうが、一文無しで病気になろうが、ワシを信じてれば全然OKなわけだ。
「なに? ワシがなにかしなきゃいけないの? なんかワシのせい? どれが? なにが? どれがワシのせい?」
「…… いえいいです……」
ヨブは薄汚い布団の中に、グズグズになった皮膚をうずめ、寝込んだ。
サタンがきっちり仕事しているなら、治らないと思う。
で、死ぬ。死んだときに、ワシがヨブのことを覚えていれば、天国に行くかもしれないし、いかないかもしれない。
それは、そのときのワシの気分で、全ては不確定性の波の中にあるわけだ。
「親父…… 記録だけは変更しておきやしょうか?」
「ん?」
「一応、ヨブを元通りにしたということで、ハッピーエンドにしておけば、オヤジへのリスペクトも高まるかもしれやせんし」
サタンの提案。まあ、別にどっちでもいいんだけど。
ヨブを放置するのは決定事項として、ワシが直したことにするのは、まあ好きにすればいい。
ワシは寛大だから。
「ま、いいんじゃね。財産二倍して、全員復活して、ヨブは幸せに暮らしたことにしておけよ」
「はい、親父分かりやした!!」
サタンは、ヨブとヨブの友人に「おらぁぁ、今のお話聞いたやろうがぁぁ、ちゃんと記録に残せよぉぉぉ」とどなり散らす。
なんとも、スマートでないやり方であるが、まあ、仕方ない。
まあ、歴史なんて全知全能のワシが造る物だし、別にどうでもいいんだけどね。
これで、ワシへのリスペクトが増えればめっけものというくらいだ。
「んじゃ、まあ、ワシも忙しいしなぁ。人類救済しないとなぁ」
そう言ってワシは、アホウどもの前から消えたのであった。
ワシは常に正しく「全知全能」であることが、今回も証明されただけだった。
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そうか、こうしたんですね。
イエスのユダへの最後の態度は原作通りとしてもクソオヤジ神に反抗するラストシーンがサイコーですよ!
おつかれさまでした。
ありがとうございます!
久しぶりの更新感謝。
旧約の神様のクズ描写も大概ですがキリスト言行録のほうも負けず劣らずでいい感じ。
ユダが銀貨貰っちゃってるんじゃない疑惑の伏線が露骨過ぎて震えますなあ
ありがとうです! 最後まで書ききる感じでがんばります
モーセも門番の天使をぶっ殺したり、1体を失明させたり、死の間際に迎えに来た天使を殺すかなにかして神を迎えに来させたと中々の武闘派だった。
作中の神を見ていると人間に介入を辞めたのはモーセやヤコブに神がビビり、イエスにも何かされて人間怖いになったのではないかと思えてしまう。
感想ありがとうございます。そんな怖いことはしていないのですけど、そう言った設定をプロット時に思いついていたら採用していたかもしれませんね。面白すぎです。