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35話:イエスは救世主か?
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神殿の神官どもと、わらわらと出てきた。
「バカどもが出てきましたぜ」
「サドカイ派のクソ神官どもかよ―― もう、いい加減論破も飽きたんだけどぉぉ」
「やっぱローマの介入はなーか」
「面倒なのでしょうな。なるべくユダヤの争いには介入したくないのでしょう」
冷静に状況を語るのはユダだった。
そういえば、コイツは神殿で暴れていたかな?
なんか顔を見なかったような気がした。
ま、気のせいかも知れんけど。
ユダの言うとおりローマのクソどもはこういった騒ぎは面倒くさいので介入はしてこないだろう。
実際に、神殿の回廊のとこまで出てきてはいたが、なんもしない。傍観していただけだ。
「今の総督府のピラトは無事任期を終わらせたいだけの人物ですので――」
「ふーん、詳しいんだな」
「まあ、私は元々商人ですので。先生」
ユダはあるかなしかの韜晦の表情を見せ、俺に言った。
「で、なに? 俺を救世主だって崇める集団も結構集まっているんだな――」
俺の訊いた話では、神殿の閉鎖された正門辺りで、騒乱状態になっているらしい。
俺を救世主として、この腐ったユダヤ社会を改革しようとするユダヤ市民革命の動きである。まあ、古代社会なんだけど。
そんな神殿の外の喧騒とは関係なく、俺とサドカイ派の神官は対峙していた。
「このインチキ救世主が! ガリラヤ地方――ナザレとかいう村の淫売の子どもじゃねぇか! だいたいあんな貧民村から救世主なんか出るわけねーだろ!」
「そうだ、救世主はベツレヘムで生まれるんだよ! このインチキが!」
言いたい放題なのであるが、この程度のことならなれている。
ただ、面倒くさいので、全員手持ちのトンカチで血の海に沈めてやろうかと思う。
つまり、俺の中にいる凶悪な剣の心が、「やっちゃえ! やっちゃえ!」と行動指針を示すわけですよ。
俺はこの地に平穏をもたらすのではなく、騒乱と血をもたらすのであるな――と今気づいた。
そもそも、平穏な改革などありえんのだ。
「わが先生が救世主ではないという理由はなんでしょうか?」
俺の弟子たちの中では例外的(マリアちゃん除く)インテリのユダが言った。
まあ、ここは弟子に任せておくのも威厳があっていいかな――と思った。
「まず、ベツへレムで救世主は生まれるのだ! ナザレではない。そしてダビデ王の血を引くものだ!」
「それどうでしょう?」
「なんだと……」
「ダビデは救世主を「主」と呼んでいますが―― この意味は分りますか?」
「ぬっ……」
ほう、そう来たかと、俺は感心した。
ダビデの子孫が救世主でありながら、ダビデはその血族を「主」と呼ぶ矛盾。
ここを突いてきたわけだ。
なるほどなぁ~
「ぐぬぬぬぬぬ!」
神官たちは黙ってしまう。
弟子のレベルでこれである。
俺がでてきたら、もう手に負えないことは確実だろう。それくらい想像する頭はあると俺も期待したい。
「この騒動の始末はつけさせてやる!」
神官たちは、苦虫を噛み潰し、その汁を堪能した顔で、ぞろぞろと帰って言った。
だもんで、俺たちも、近くのエルサレムを出て、村に帰ったのだった。
「バカどもが出てきましたぜ」
「サドカイ派のクソ神官どもかよ―― もう、いい加減論破も飽きたんだけどぉぉ」
「やっぱローマの介入はなーか」
「面倒なのでしょうな。なるべくユダヤの争いには介入したくないのでしょう」
冷静に状況を語るのはユダだった。
そういえば、コイツは神殿で暴れていたかな?
なんか顔を見なかったような気がした。
ま、気のせいかも知れんけど。
ユダの言うとおりローマのクソどもはこういった騒ぎは面倒くさいので介入はしてこないだろう。
実際に、神殿の回廊のとこまで出てきてはいたが、なんもしない。傍観していただけだ。
「今の総督府のピラトは無事任期を終わらせたいだけの人物ですので――」
「ふーん、詳しいんだな」
「まあ、私は元々商人ですので。先生」
ユダはあるかなしかの韜晦の表情を見せ、俺に言った。
「で、なに? 俺を救世主だって崇める集団も結構集まっているんだな――」
俺の訊いた話では、神殿の閉鎖された正門辺りで、騒乱状態になっているらしい。
俺を救世主として、この腐ったユダヤ社会を改革しようとするユダヤ市民革命の動きである。まあ、古代社会なんだけど。
そんな神殿の外の喧騒とは関係なく、俺とサドカイ派の神官は対峙していた。
「このインチキ救世主が! ガリラヤ地方――ナザレとかいう村の淫売の子どもじゃねぇか! だいたいあんな貧民村から救世主なんか出るわけねーだろ!」
「そうだ、救世主はベツレヘムで生まれるんだよ! このインチキが!」
言いたい放題なのであるが、この程度のことならなれている。
ただ、面倒くさいので、全員手持ちのトンカチで血の海に沈めてやろうかと思う。
つまり、俺の中にいる凶悪な剣の心が、「やっちゃえ! やっちゃえ!」と行動指針を示すわけですよ。
俺はこの地に平穏をもたらすのではなく、騒乱と血をもたらすのであるな――と今気づいた。
そもそも、平穏な改革などありえんのだ。
「わが先生が救世主ではないという理由はなんでしょうか?」
俺の弟子たちの中では例外的(マリアちゃん除く)インテリのユダが言った。
まあ、ここは弟子に任せておくのも威厳があっていいかな――と思った。
「まず、ベツへレムで救世主は生まれるのだ! ナザレではない。そしてダビデ王の血を引くものだ!」
「それどうでしょう?」
「なんだと……」
「ダビデは救世主を「主」と呼んでいますが―― この意味は分りますか?」
「ぬっ……」
ほう、そう来たかと、俺は感心した。
ダビデの子孫が救世主でありながら、ダビデはその血族を「主」と呼ぶ矛盾。
ここを突いてきたわけだ。
なるほどなぁ~
「ぐぬぬぬぬぬ!」
神官たちは黙ってしまう。
弟子のレベルでこれである。
俺がでてきたら、もう手に負えないことは確実だろう。それくらい想像する頭はあると俺も期待したい。
「この騒動の始末はつけさせてやる!」
神官たちは、苦虫を噛み潰し、その汁を堪能した顔で、ぞろぞろと帰って言った。
だもんで、俺たちも、近くのエルサレムを出て、村に帰ったのだった。
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