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第1話:桃太郎を○○○○が書いたら

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 現在のところ鬼が島から船を発見したという微候は察知されていなかった。キジの報告を信じるならば。

 もし――

 もしだ。

「鬼が島」への正面上陸が成功したとしても、こちらの支払う対価はそれなりのものとなるであろう。

 しかし、この鬼が島攻略が成功裏に終わることになれば、――それは多大な問題を孕んでいたが――大きなアドバンテージを村に対して与える筈だった。

 キビ団子で集めた急増の戦隊である「イヌ」、「サル」、「キジ」が鬼が島の戦闘においてどの程度の効果を発揮するのか。

 この点については桃太朗にとっても成功を担保するあれこれを用意することは簡単ではなかった。


 鬼が島奇襲上陸が失敗に終わった場合、たとえ、村のおじいさん、おばあさんが作戦計画に賛同してるとしてもその批判の矛先は桃太朗に向かうであろうことは容易に想像がついた。

 桃太朗は莫迦ではない。莫迦に桃から生まれることを許し主人公という存在にするほど日本の物語は甘くはない。

 
 問題は(難易度から順に考えるならば)、上陸時の隠密製の維持、鬼の本拠地の早期制圧。戦術レベルであれば鬼たちの金棒を喰らうことは避けたかった。


「海が荒れてきましたな」犬が言った。

「そう悪いことでもないだろう」桃太朗は答える。

「雉の偵察の必要性は」

「どうだろう――」


 桃太朗は、腰につけたキビ団子を取り出し、今発言したサルに与えた。

「この天候であれば、鬼たちもこちらの発見が難しくなっている、鬼が展開可能な 航空戦力が皆無である現実を考えれば、荒天は有利な状況であるとは言える」

「出ますか」

 キジが怯懦というものを一切を感じさせない表情で言った。


「いや、その必要も無いだろう」

「なぜですか」

「上陸時の鬼側(敵)戦力がどうであれ、こちらの戦力は限定されているということだよ」

「われ等は少数精鋭ですからな」



 イヌが諧謔を込めた声音で言った。

 全く、全くもってその通りだった。これ以上ないくらいに端的に少数精鋭だ。

 
 ワクワクする話じゃないか。

 桃太朗は古きよき武篇の者を想起させるかのような表情を貌に浮かべていた。

「結局のところ、われ等のできることは限られている。それゆえ、やることも単純だ。鬼の殲滅――」

 桃太郎は言った。

 鬼が島への奇襲上陸作戦とはいってしまえば、そのようなものであったのだ。
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