上 下
3 / 4

3話:オシッコをもらしながら、逃げた

しおりを挟む
 ボクのオチンチンがはいずったアトは真っ黒になっています。
 だって、アリたちがビッシリとたかいるのです。

「オチンチンは、オシッコをもらしながら、逃げたんだ――」

 小学校二年生になったボクのオチンチンなのに、オシッコをもらすなんて、赤ちゃんのようです。
 でも、そのおかげでボクは、オチンチンをさがすことができます。

 アリたちでできた黒い道をたどって、ボクは走りました。
 はやく、オチンチンを見つけないと。大変なことになります。
 オトコノコがオチンチンを無くしたらどうなるのか?
 きまっています。
 オチンチンが戻ってこなければ、ボクは女の子になってしまうのです。
 
 女の子として「ちょっと、男子、まじめに、そうじしなさいよ。先生にいうわよ」とか言うのです。それは、いやです。
 
 そして、オチンチンの方も心配です。最悪の場合、アリにたかられているかもしれないのです。ガリガリとかじられているかもしれません。
 ボクはその光景を思い浮かべて、ぶるっと震えました。

 おそろしいことです――

 ボクのオシッコのあとは、カブトムシの森の手前でキレていました。

「はぁ、はぁ、はぁ―― 絶対に森の中ににげたんだ。ボクのオチンチン――」

 ボクは虫網をギュッと握りました。手があせでべっとりしています。
 でも、オチンチンは森に逃げてどうするつもりなんだろう?

「よし! しんちょうにさがすぞ!」

 白いワンピースのスカートをヒラヒラさせながら、ボクは森の中を歩きます。
 足がスースするのはたよりないし、オチンチンがないので落ちつきません。

 木の根本(ねもと)をよくみます。
 ボクはカブトムシやクワガタをさがすのが、とくいです。
 たぶん、オチンチンも同じように隠れているに違いありません。

 この森はカブトムシやクワガタがとれるので「カブトムシの森」と呼ばれています。
 家をでたときは7時くらいだから、もう樹液(じゅえき)にはカブトムシやクワガタはいないでしょう。
 ボクは、ときどき虫を捕りにこの森に入ることがあります。

「朝から、暑(あつ)いや…… すこし休もう」

 ボクはすわって「ふぅ~」と息(いき)をはきました。
 そして、リュックサックから、水筒を出します。
 
 ふたをあけて、一気に飲(の)みました。
 麦茶(むぎちゃ)です。ママのトクセイ麦茶(むぎちゃ)です。
 
「とっても、あまくておいしいや! やっぱりママの麦茶(むぎちゃ)は最高だ!」 

 ボクはもう一回ごくごくと飲(の)みました。
 ママのことを思い出しました。

「うふ、ボクちゃんのために、ホウワするまでオサトウとハチミツをいれてあるの。それにママの愛情(あいじょう)もよ。ボクちゃん」

 ママが言った「ホウワ」という言葉は二年生でも習っていません。でも、あまくてドロドロの麦茶(むぎちゃ)は大好きです。それに、ママも大好き……

「じゃあ、オチンチンをさがさないと!」

 ボクは立ち上がって、スカートをパンパンして土を払います。
 白いワンピースが少しよごれてしまいました。

 ママの作ってくれた麦茶で元気いっぱいになりました。
 やっぱり、甘い飲み物はチョーすごいです。ぼくは甘い物がダイスキです。
 
「まてよ…… ボクのオチンチンのもらしたオシッコにアリがたかっていたのは……」

 オシッコにアリがたかっていたことから、ボクは考えました。

「アリはあまい物がダイスキなんだ…… あ! 分かった!」

 ボクはひらめきました。
 
「ボクのオチンチンのオシッコはやっぱりあまいんだ!」

 最初にチラリと思ったとおりです。それはやっぱり正しいんだ。
 そして、ボクが甘い物がダイスキなように、ボクのオチンチンもあまい物がダイスキにちがいないのです。
 ボクのオチンチンは、あまい物をさがしているのかもしれない。
 ボクのオチンチンがあまい物がダイスキで、今はあまい物を探している。
 それは、とっても「ゴウリテキ」なケツロンです。
 
「森の中で甘いものがあるところ…… そうだ! 樹液(じゅえき)きだ! カブトムシのいる木だ!」

 ボクはひらめきました。
 このカブトムシの森は、カブトムシやノコギリクワガタ、コクワガタなんかがとれる森です。
 クヌギやブナの木があって、樹液(じゅえき)が出ている木もあります。

「この森の、樹液(じゅえき)のある場所をさがしていけばいいんだ!」
 
 ボクはさがす場所をきめました。
 樹液(じゅえき)のでる場所にこころあたりがありました。
 ボクのオチンチンはぜったいにそこにいるような気がしました。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

少年騎士

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。

がらくた屋 ふしぎ堂のヒミツ

三柴 ヲト
児童書・童話
『がらくた屋ふしぎ堂』  ――それは、ちょっと変わった不思議なお店。  おもちゃ、駄菓子、古本、文房具、骨董品……。子どもが気になるものはなんでもそろっていて、店主であるミチばあちゃんが不在の時は、太った変な招き猫〝にゃすけ〟が代わりに商品を案内してくれる。  ミチばあちゃんの孫である小学6年生の風間吏斗(かざまりと)は、わくわく探しのため毎日のように『ふしぎ堂』へ通う。  お店に並んだ商品の中には、普通のがらくたに混じって『神商品(アイテム)』と呼ばれるレアなお宝もたくさん隠されていて、悪戯好きのリトはクラスメイトの男友達・ルカを巻き込んで、神商品を使ってはおかしな事件を起こしたり、逆にみんなの困りごとを解決したり、毎日を刺激的に楽しく過ごす。  そんなある日のこと、リトとルカのクラスメイトであるお金持ちのお嬢様アンが行方不明になるという騒ぎが起こる。  彼女の足取りを追うリトは、やがてふしぎ堂の裏庭にある『蔵』に隠された〝ヒミツの扉〟に辿り着くのだが、扉の向こう側には『異世界』や過去未来の『時空を超えた世界』が広がっていて――⁉︎  いたずら好きのリト、心優しい少年ルカ、いじっぱりなお嬢様アンの三人組が織りなす、事件、ふしぎ、夢、冒険、恋、わくわく、どきどきが全部詰まった、少年少女向けの現代和風ファンタジー。

【完結】魔法道具の預かり銀行

六畳のえる
児童書・童話
昔は魔法に憧れていた小学5学生の大峰里琴(リンコ)、栗本彰(アッキ)と。二人が輝く光を追って最近閉店した店に入ると、魔女の住む世界へと繋がっていた。驚いた拍子に、二人は世界を繋ぐドアを壊してしまう。 彼らが訪れた「カンテラ」という店は、魔法道具の預り銀行。魔女が魔法道具を預けると、それに見合ったお金を貸してくれる店だ。 その店の店主、大魔女のジュラーネと、魔法で喋れるようになっている口の悪い猫のチャンプス。里琴と彰は、ドアの修理期間の間、修理代を稼ぐために店の手伝いをすることに。 「仕事がなくなったから道具を預けてお金を借りたい」「もう仕事を辞めることにしたから、預けないで売りたい」など、様々な理由から店にやってくる魔女たち。これは、魔法のある世界で働くことになった二人の、不思議なひと夏の物語。

剣の母は十一歳。求む英傑。うちの子(剣)いりませんか?三本目っ!もうあせるのはヤメました。

月芝
児童書・童話
世に邪悪があふれ災いがはびこるとき、地上へと神がつかわす天剣(アマノツルギ)。 ひょんなことから、それを創り出す「剣の母」なる存在に選ばれてしまったチヨコ。 辺境の隅っこ暮らしが一転して、えらいこっちゃの毎日を送るハメに。 第三の天剣を手に北の地より帰還したチヨコ。 のんびりする暇もなく、今度は西へと向かうことになる。 新たな登場人物たちが絡んできて、チヨコの周囲はてんやわんや。 迷走するチヨコの明日はどっちだ! 天剣と少女の冒険譚。 剣の母シリーズ第三部、ここに開幕! お次の舞台は、西の隣国。 平原と戦士の集う地にてチヨコを待つ、ひとつの出会い。 それはとても小さい波紋。 けれどもこの出会いが、後に世界をおおきく揺るがすことになる。 人の業が産み出した古代の遺物、蘇る災厄、燃える都……。 天剣という強大なチカラを預かる自身のあり方に悩みながらも、少しずつ前へと進むチヨコ。 旅路の果てに彼女は何を得るのか。 ※本作品は単体でも楽しめるようになっておりますが、できればシリーズの第一部と第二部 「剣の母は十一歳。求む英傑。うちの子(剣)いりませんか?ただいまお相手募集中です!」 「剣の母は十一歳。求む英傑。うちの子(剣)いりませんか?二本目っ!まだまだお相手募集中です!」 からお付き合いいただけましたら、よりいっそうの満腹感を得られることまちがいなし。 あわせてどうぞ、ご賞味あれ。

魔法が使えない女の子

咲間 咲良
児童書・童話
カナリア島に住む九歳の女の子エマは、自分だけ魔法が使えないことを悩んでいた。 友だちのエドガーにからかわれてつい「明日魔法を見せる」と約束してしまったエマは、大魔法使いの祖母マリアのお使いで魔法が書かれた本を返しに行く。 貸本屋ティンカーベル書房の書庫で出会ったのは、エマそっくりの顔と同じエメラルドの瞳をもつ男の子、アレン。冷たい態度に反発するが、上から降ってきた本に飲み込まれてしまう。

白紙の本の物語

日野 祐希
児童書・童話
 春のある日、小学六年生の総司と葵は図書室で見つけた白紙の本に吸いこまれてしまう。  二人が目を開けると、広がっていたのは一面の銀世界。そこは、魔女の魔法で雪に閉ざされてしまった国だった。 「この国を救って、元の世界に帰る」  心を決めた総司と葵は、英雄を目指す少年・カイと共に、魔女を倒す旅に出る。  雪に隠された真実と、白紙の本につむがれる物語の結末とは。  そして、総司と葵は無事に元の世界へ帰ることができるのか。    今、冒険が幕を開く――。 ※第7回朝日学生新聞社児童文学賞最終候補作を改稿したものです。

【奨励賞】おとぎの店の白雪姫

ゆちば
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 奨励賞】 母親を亡くした小学生、白雪ましろは、おとぎ商店街でレストランを経営する叔父、白雪凛悟(りんごおじさん)に引き取られる。 ぎこちない二人の生活が始まるが、ひょんなことからりんごおじさんのお店――ファミリーレストラン《りんごの木》のお手伝いをすることになったましろ。パティシエ高校生、最速のパート主婦、そしてイケメンだけど料理脳のりんごおじさんと共に、一癖も二癖もあるお客さんをおもてなし! そしてめくるめく日常の中で、ましろはりんごおじさんとの『家族』の形を見出していく――。 小さな白雪姫が『家族』のために奔走する、おいしいほっこり物語。はじまりはじまり! 他のサイトにも掲載しています。 表紙イラストは今市阿寒様です。 絵本児童書大賞で奨励賞をいただきました。

小さな王子さまのお話

佐宗
児童書・童話
『これだけは覚えていて。あなたの命にはわたしたちの祈りがこめられているの』…… **あらすじ** 昔むかし、あるところに小さな王子さまがいました。 珠のようにかわいらしい黒髪の王子さまです。 王子さまの住む国は、生きた人間には決してたどりつけません。 なぜなら、その国は……、人間たちが恐れている、三途の河の向こう側にあるからです。 「あの世の国」の小さな王子さまにはお母さまはいませんが、お父さまや家臣たちとたのしく暮らしていました。 ある日、狩りの最中に、一行からはぐれてやんちゃな友達と冒険することに…? 『そなたはこの世で唯一の、何物にも代えがたい宝』―― 亡き母の想い、父神の愛。くらがりの世界に生きる小さな王子さまの家族愛と成長。 全年齢の童話風ファンタジーになります。

処理中です...