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7.激突!
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『ま、ストライク・ボールの判定はどーでもいいか』
『もう、よく分らない……』
実際、野球のルールは分らないし、身体は勝手に使われるしで、散々なのだけど、心の隅っこの方に「ちょっと楽しいかも」という考えが浮かぶ。
なにより、新鮮な刺激だった。
兄は二球目を投げた。
言っても、実際に投げたのはわたしの身体なのだけど。
キンッと音がして、ボールが右の方(わたしから見て)に飛んで言った。
『おいおい、左バッターで胸元のボールをあんな風にカットするかね、ちょっとびっくり』
『凄いの今の?』
わたしには、一球目の大きく飛ばされた方がすごいように思えた。よく分らないけど。
『高校生であそこを空振りしないのはたいしたもんだ』
『そーなんだ』
右投手(わたし)の投げたボールは、打者(伊来留さん)の胸元めがけ、対角線のように向かってくる。
だから、それをバットに当てるのは難しいというのだ。
なんか兄のペースに引きずりこまれいるような気がするけども……
まあ、悪くはない気分だった。
『ま、真琴のボールに差し込まれているけどな』
『差し込まれている?』
『ボールの勢いに負けているってことだよ。バットが』
『ふ~ん』
兄は変な風にボールを握った。
親指と人差し指で「OK」を作る。
それから、残りの指はわしづかみ?
今までと握り方が違っていた。
「んじゃ行きます!」
わたしに憑依した兄は、すっと脚を上げる。
そのまま、キュンと腕を振った。
毛細血管がブチブチ切れそうな感じ。
でも、痛みは兄がなんかの方法で止めているらしいので、痛くはない。嫌な予感はするけども。
コーンっと、またバットに当たった。
今度は、ボールは身体に遠いところに投げられていた。
それを腕を伸ばして当てた。
ボールは、低い弾道でまた、右の方に飛んで行った。
「おいおい、いきなりチェンジアップか? シンカーか? 変化球を投げないでくれよ!」
キャッチャー《ボールを取る人》をやっていた子々堂先生が言った。ここでは監督か……
「あ、すいません。先生なら取れるかと思いまして♥」
「ま、ゾーンにくれば捕れなくはないけどな」
『あははは、女子高生にああ言われたら捕れないとかいえないよなぁ』
『本当は捕れないの?』
『さあ? どうだろうなぁ―― それよりも……』
脳内で兄は真剣そうに言葉を続ける。
『内を攻めてから、外のチェンジアップについてくるとはなぁ。マジすげぇな。なんで公立高校にいるんだ?』
『チェンジアップって?』
『ああ、さっき投げたボールの球種だよ。落ちながら左打者の外に逃げていく変化をする』
『ふーん』
そのチェンジアップを投げるために、あの変な握りでボールを投げたのだろうと、わたしは思う。
『さてと、決めるかな……』
兄はそう言うと、指の握りを最初の形に戻した。
ボールの縫い目に指を合わせるような感じ。指先に縫い目の凸凹を感じる。
兄は投げた。
今までで一番、スカートが舞い上がった。勘弁して欲しい。
わたしのを見て喜ぶ男子もいないかもしれないけど――
キーン!!
また、金属音が響く。
「あがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
子々堂先生が絶叫していた。
まるで断末魔のように――
あ……
わたしは理解した。が、どれほど痛いかは分らない。
多分、相当痛いんだろうなとは、思う。
ボールはバットに当たった後、地面で跳ねて、先生の股間を直撃していた。
『あ――あ、こりゃ、痛いわな』
兄がぽつりと呟いた。
子々堂先生は悶絶していた。
『もう、よく分らない……』
実際、野球のルールは分らないし、身体は勝手に使われるしで、散々なのだけど、心の隅っこの方に「ちょっと楽しいかも」という考えが浮かぶ。
なにより、新鮮な刺激だった。
兄は二球目を投げた。
言っても、実際に投げたのはわたしの身体なのだけど。
キンッと音がして、ボールが右の方(わたしから見て)に飛んで言った。
『おいおい、左バッターで胸元のボールをあんな風にカットするかね、ちょっとびっくり』
『凄いの今の?』
わたしには、一球目の大きく飛ばされた方がすごいように思えた。よく分らないけど。
『高校生であそこを空振りしないのはたいしたもんだ』
『そーなんだ』
右投手(わたし)の投げたボールは、打者(伊来留さん)の胸元めがけ、対角線のように向かってくる。
だから、それをバットに当てるのは難しいというのだ。
なんか兄のペースに引きずりこまれいるような気がするけども……
まあ、悪くはない気分だった。
『ま、真琴のボールに差し込まれているけどな』
『差し込まれている?』
『ボールの勢いに負けているってことだよ。バットが』
『ふ~ん』
兄は変な風にボールを握った。
親指と人差し指で「OK」を作る。
それから、残りの指はわしづかみ?
今までと握り方が違っていた。
「んじゃ行きます!」
わたしに憑依した兄は、すっと脚を上げる。
そのまま、キュンと腕を振った。
毛細血管がブチブチ切れそうな感じ。
でも、痛みは兄がなんかの方法で止めているらしいので、痛くはない。嫌な予感はするけども。
コーンっと、またバットに当たった。
今度は、ボールは身体に遠いところに投げられていた。
それを腕を伸ばして当てた。
ボールは、低い弾道でまた、右の方に飛んで行った。
「おいおい、いきなりチェンジアップか? シンカーか? 変化球を投げないでくれよ!」
キャッチャー《ボールを取る人》をやっていた子々堂先生が言った。ここでは監督か……
「あ、すいません。先生なら取れるかと思いまして♥」
「ま、ゾーンにくれば捕れなくはないけどな」
『あははは、女子高生にああ言われたら捕れないとかいえないよなぁ』
『本当は捕れないの?』
『さあ? どうだろうなぁ―― それよりも……』
脳内で兄は真剣そうに言葉を続ける。
『内を攻めてから、外のチェンジアップについてくるとはなぁ。マジすげぇな。なんで公立高校にいるんだ?』
『チェンジアップって?』
『ああ、さっき投げたボールの球種だよ。落ちながら左打者の外に逃げていく変化をする』
『ふーん』
そのチェンジアップを投げるために、あの変な握りでボールを投げたのだろうと、わたしは思う。
『さてと、決めるかな……』
兄はそう言うと、指の握りを最初の形に戻した。
ボールの縫い目に指を合わせるような感じ。指先に縫い目の凸凹を感じる。
兄は投げた。
今までで一番、スカートが舞い上がった。勘弁して欲しい。
わたしのを見て喜ぶ男子もいないかもしれないけど――
キーン!!
また、金属音が響く。
「あがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
子々堂先生が絶叫していた。
まるで断末魔のように――
あ……
わたしは理解した。が、どれほど痛いかは分らない。
多分、相当痛いんだろうなとは、思う。
ボールはバットに当たった後、地面で跳ねて、先生の股間を直撃していた。
『あ――あ、こりゃ、痛いわな』
兄がぽつりと呟いた。
子々堂先生は悶絶していた。
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