黒銀の精霊マスター ~ニートの俺が撃たれて死んだら異世界に転生した~

中七七三

文字の大きさ
上 下
93 / 122
第六章:禁忌の島とパンゲア王国復興計画

第九三話:唱えろ超絶禁呪! 唸れ聖装衣・エローエ!

しおりを挟む
「もうね、着替えるのよぉ」

 エロリィが俺を見つめて言った。

「お、おう。じゃあ、着替えてこい」

「なに言ってんのよ、ここで着替えるのよぉぉ」

「はぁ?」

「アインが着替えを手伝うのよ。これもエローエの正常起動のためには必須なのよ」

 勝ち誇ったように、エロリィはライサを見つめる。
 ライサとしても、この「聖装衣・エローエ」を起動させるのが大事なことだと分かっている。
 椅子に座ったまま、腕を組む。その腕がプルプル震え、血管が浮き出してきている。
 髪の毛がバチバチと放電するかのように音を立て、重力に逆らい始める。

「ちょ、ライサ……」

 ライサのルビー色の瞳の奥に灼熱の炎が膨れ上がってきている。
 落ちつけ。着替えるだけだ。

 ライサは「ふうぅぅぅ~」と、大きく息を吸い込んだ。
 
「これも、必要なことなんだ」

 俺は言った。

「わかってる。あのクソメガネ乳が捕まりやがるから…… 会ったら絶対にぶち殺す」
 
 怒りの矛先を捕えられたシャラートに向けた。いや、本当は違う。
 なんとなく、俺にはそれが分かってきている。

「あはッ、コイツのツルペタで凹凸の無い身体は見慣れているからな。好きなだけ着替えればいいよ」

「もうね! この魅惑のボディの良さが分からないのは無粋なのよぉ! 世界中に神聖ロリコーン王国の信者がいるのよ。その頂点の天才のプリンセスが私なのよッ!」

 バーンと胸を張って叫ぶエロリィ。

「とにかく、着替えればいいんだよな」

「そうなのよ、アインに脱がして欲しいのよ」

 チラリと目線をライサに向け、俺に背中をペタっとくっつけるエロリィ。
 普段着ている黒い服は、背中側に紐でとめられている。
 俺は紐をほどいていく。
 
 するりと、衣擦れの音をたて、服が地に落ちた。
 エロリィはその服の下には何も着ていないのだ。

 背中を俺にぴたりとくっつけるエロリィ。

「ああん、もうね、アインの体温が染み込んでくるのよぉ」

 エロリィの真っ白い背中とうなじに俺の目は釘づけだった。
 不意にエロリィが俺の手を握った。
 
 そして、自分の胸に俺の手を当てた。
 ぽちっとしたポッチがあるだけの、ツルペタボディ。
 しかし、そこにはあるかなしか、手で触れねば分からない微妙なふくらみも感じられる。

「ああ…… もうね、アインの指が気持ちいいのよぉぉ」

 顔だけを傾け、こちらに向けた。
 その碧い瞳が潤んで妖しい光を放っている。
 このボディで、このエロさ…… 

「おらぁぁぁ!! それ着替えかッ! カウントするぞ! おっぱい揉み一回だぞ!」

 ライサが立ち上がってビシッと指さした。
 俺たちは、許嫁エッチ拡散防止条約により、おっぱいを揉む回数などの上限が決められている。

「キャハハハハハ!! アンタは、黙ってそこで見ているのよぉぉ! もうね、これも儀式なのよぉぉ、禁呪の魔道具は繊細なのよぉぉ!」

 金髪ツインテールを揺らしながらエロリィが言った。

「ぐぬぬぬぬぬぅぅ」

 堪えるライサ。すまん。
 この借りは、俺が返してあげるから、きちんと。
 俺は誓いながらライサを見つめる。
 ライサが俺を見つめ、やっと落ち着く。

「とにかく、着替えるぞ」

「じゃあ、これを入れてほしいのよぉ~」

 俺の遺伝子を発射する部分に手を伸ばそうとする。

「紛らわしい言い方するな。オマエの頭にこれをくぐらせればいいんだな」

「もうね、そうなのよ。これを入れてほしいのぉ、アインに…… 痛くしないでほしいの。初めてだから……やさしく」

「痛いもくそもねーだろ。こんな、服着るの。そりゃ、初めてかもしれないけど!」

 俺はエロリィから、「聖装衣・エローエ」を受け取る。
 
「これが…… そうなのか……」

 それは一般的に「貫頭衣(かんとうぎ)」と言われるようなデザインの服。
 バスタオルのような布の真ん中に頭を通す穴があいているだけ。
 でもって、それを腰のあたりで紐で縛ると……

 しかし、この柄は……

『アイン、このビッチの言ってる服って…… それ、私にはアレに見えるんだけど』
 
 精霊のサラームが言った。

『俺もそう思うが、異世界にもあるのか? こんなのが……』

『私は知らないわ』
 
 とにかく、その服に描かれたものはトんでもなかった。
 ただ、今はいい。
 とにかく、着替えさせることだ。

 どんな柄であろうと、それが機能すればいいのだ。

 俺は、エロリィに「聖装衣・エローエ」を着せた。
 ちょっと、肌に手が触れるだけで、悩ましい声を上げる北欧の妖精。

「ああん、アインは激しいのよぉ。夜も昼も鬼畜なのよぉぉ~」

 着替え終わったエロリィが言った。
 潤んだ、碧い瞳が俺を見つめ、吐息の色までピンクに染まっているような感じだった。

「もうね、王家の秘術を極めたお姉様がメロメロなのよぉぉ」
「もうね、百戦錬磨の天才といわれたお姉様が蕩(とろ)けてるのよぉぉ」

 ペタリィとツルリィの声が重なる。
 なんで、着替えるだけで、こんなエロいことになるの?
 
 つーか、その服……

「なあ、エロリィ、その服が『聖装衣・エローエ』なんだよな」

「もうね、そうなのよ。さすがパパなのよ。禁呪のブーストがもうかかり始めているのよ」

 確かに、金色のフォトンのようなものが、エロリィの体からこぼれ落ちてきている。
 体全体が、ほんのりと青い魔力光に包まれている感じもする。

「なあ、エロリィのお父さんって、何者だよ……」

 俺はそう訊かずにはおれなかった。

「元王子なのよ。なんか、故郷の国は禁断の呪法でどこか別次元に飛ばされて、滅びたって聞いてるけど……」

「そうか……」

 くるりとエロリィはその場でターンした。
 そして、真正面を向いて俺を見つめる。

 金色の長いツインテール。
 神秘の泉のような色をみせる碧い瞳。
 瑞々しいサクランボのような色の唇。
 気の強そうなチョンと尖った鼻。

 北欧の美の女神が心血を注ぎこみ、造り上げた美の結晶体といっていい。
 現人(あらひと)ビーナスである。
 そのエロリィが、今「聖装衣・エローエ」を身に付けているのだが……

『これ、エロ漫画だわ』

 端的な言葉でその柄を表現するサラーム。
 日本生活12年を経験したヲタ精霊は、その分野の知識すら貪欲に取り込んでいた。

 両面、裏表とも、まるでエロ漫画の一ページをそのまま貼り付けたような絵が描かれているのだ。
 しかも、絵のレベルが凄まじく高い。
 なぜ、この異世界で、このような絵を描ける人間が存在しているのか?
 そもそも「古代魔法文明」ってなんなんだ?
 色々な疑問が頭を駆け巡る。

 そして、絵の他に書かれている文字だ。
 その文字は、どう見ても、日本語だった。
 なぜだ?
 なぜ、古代魔法文明の文字が日本語なんだ?

「パパの研究では、この『兄妹系』という禁呪が魔力ブーストに最も効果的という結果が出てるのよ」

 エロ漫画の描かれたタオルに穴をあけて被ったような衣装を身に付けた幼女。
 つまり、聖装衣・エローエを身にまとったエロリィが言ったのだ。

「もうね、お父様は『鬼畜嗜虐系』、『人妻NTR系』、『お姉様教えてあげる系』でも研究をすすめているのよ」

「『鬼畜嗜虐系』は回復系、『人妻NTR系』は水系、『お姉様教えてあげる系」は火系の禁呪に対応しているのよぉ」

 量産型エロリィと言うしかない、ペタリィとツルリィが説明を加える。
 
「まあそうなのね、その他にも色々あるのよ。もうね、古代魔法文明の禁呪の体系は複雑で膨大なのよ。パパ程の天才でも、解明したのは一部なのよ」

 エロリィは自慢げに言った。エロリィは父親のことが好きなのだろうか。
 自分の父親のことを語るときはなぜか誇らしげだ。
 俺は、こんなものを描く、父親がいるのはちょっと嫌だけど。

『日本とこの世界の古代では何かのつながりがあったのかしら?』
 
 サラームが言った。

『まあ、そうかもしれんが…… なんで、エロ漫画?』

『それは知らないわ』

 この異世界において、古代、日本語が魔法の呪文の言葉だった時代があった可能性はある。
 なんで、それが、こんな呪文なのか?

 もしかすると、この世界の太古に転生者がいて、それが日本人で……
 俺の脳裏に妄想のような発想が浮かんでくる。

「じゃあ、超絶禁呪の詠唱なのよ」

 エロリィの言葉が、俺の思考を中断させる。
 ひらひらと、エロ漫画が書かれたタオルを身に付けた幼女が俺に近づいてくる。
 横から見たら、素肌が丸見えの服なのだ。

「詠唱って?」

「この『聖装衣・エローエ』に描かれた超絶禁呪を読み上げるのよ。アインも一緒に!」

「え? 俺も? なんで?」

「ああ、そうね…… アインが古代魔法文明の文字を読めるわけなかったわね。今から――」

「読めるよ俺…… 読める」

「え? アイン……」

「くぱぁ ほら、オマエの魔力回路、もうこんなに回転している。らめぇ…… 見ないで、そんなに見ちゃらめぇ」

 俺は最初の方の吹きだしの中のセリフをちょっと読んだ。
 
「アイン…… どこで超絶禁呪を……」

 エロリィが絶句する。

「すごいのよ! お姉様の男は凄いのよ!」
「もうね、お父様が知ったら、嫉妬で発作を起こすのよぉ!」

 ツルリィとペタリィが声を上げた。
 なんだよ、さっきから発作って……

「アイン、やっぱり凄いわ…… もうね、凄くて凄くて…… やっぱり、アインに孕ませてほしいのよ」

 エロリィが涙ぐんで俺を見つめる。
 そんな、泣くほどのことなのか?
 
「いや、とにかく、起動させるんだろ? やるぞ、読み上げるぞ!」

 俺がそう言うと、エロリィはその細く白い嫋やかな手を俺に伸ばしてきた。

「握って欲しいの――」

「ああ」

 俺はエロリィの手をとった。

 エロリィが細かく震えているのが分かった。
 そうだ。これはまだ、起動実験だ。
 もしかしたら、この禁呪には何か危険があるのかもしれない。
 もし、未完成で、起動に失敗したら――

 しかし。
 やるしかないんだ。

「いくぞ! エロリィ!」
「もうね! やるのよ!」

 ふぅぅぅ~
 っと二人で息を思い切り吸いこんだ。

 一気にだった。
 俺とエロリィは、一気に超絶禁呪を詠唱したのだ。

『くぱぁ』
『ほら、オマエの魔力回路、もうこんなに回転している』
『らめぇ…… お兄ちゃん見ないで、そんなに見ちゃらめぇ』
『ぬぷぅぅぅ――』
『ああん、こんなの初めてぇぇ。お兄ちゃんの魔素の味を覚えちゃうぅ』
『奥に、魔力回路の奥にガンガンあたって、そんなにグリグリ押し付けないで~』
『お兄ちゃんの魔素で、魔力回路の入口が開いちゃうのぉぉ。中に、早く中にぃぃ』
『ああああ、イッくぅぅ、らめぇ~、早く魔素を中にドピュドピュだしてぇぇ』

 俺とエロリィの超絶禁呪の調べが城の地下深くに響き渡ったのであった。
しおりを挟む
ツギクルバナー

WEB小説執筆や書評(小説、漫画、一般書)などあれこれ書いています
ネット小説書きの戯言
よろしければどうぞ。
感想 19

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

処理中です...