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第六章:禁忌の島とパンゲア王国復興計画

第九二話:エロリィ、衝撃の事実

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 神聖ロリコーン王国の王都にある城。
 その城の奥深くにある「古代魔法文明研究所」だ。

「どうぞ、こちらへ」

 案内の女の子が促した。
 会議室のような感じの部屋に入る俺たち。

 飾り気のない部屋だった。
 案内されたのは、でかいテーブルに、椅子のある部屋。それ以外ない。
 石の壁がむき出しとなり、それなりの広さがあるのに、圧迫感を感じる。
 
「あはッ、天井低すぎ」

 ライサの言葉の通りだ。天井が低い。
 そのため、圧迫感を感じるのだ。

「もうね、私たちにはこれで十分なのよ! 文句あるなら出て行けばいいのよ」

 エロリィが、青い瞳でライサを睨んで言った。

「なんだと、このクソロリ姫がッ!」

 ライサがルビー色の瞳から殺気を放つ。
 二人の視線が殺気を帯び、バチバチとぶつかり合っている。
 毎度のことであるが、ここで始めるのは勘弁してくれ。

「どうぞ、お座りになってお待ちください」

 俺が口を開こうとした瞬間だ。
 俺たちをここまで案内してきた女の子が、いいタイミングで声を発した。

 さすがに、城の奥深くで騒動を起こすわけにはいかない。
 ライサは、チラリと俺の顔を見た。
 俺は目でライサに「座れ」と意思を伝える。

「ふん!」

 ライサは、緋色の髪が重力に逆らって舞うような勢いで椅子に座った。
 そして、俺たちも座る。
 
「では、しばらくお待ちください」

 そう言って扉を開け、奥に入っていく女の子。
 見た目は、小学校高学年くらいに見える。
 ただ、この神聖ロリコーン王国の人たちは、見た目は大体こんな感じだ。
 最高でも高校生くらいかなぁという感じの女の子だ。

「なあ、エロリィ」

「ん、アイン。なんなのよ?」

「この国は男がいないのか?」

 街の中で見た男は巡礼者と言われる「神聖ロリコーン王国」の信者たちばかりだ。
 そして、城の中にも男の姿は無かった。

「いるわよ。でも外にはでないのよ。家の中にずっといるのよ」

「神聖ロリコーン王国の男の役目は繁殖なのよ。孕ませマシーンとなることが重要なのよ」

 なんだそれ?
 俺が黙って聞いていると、エロリィは言葉を続ける。

「巡礼者の中で、孕ませ能力の高い者が選別されるのよ。通過儀礼(イニシエーション)の通(ストリート)を無事に通過出来た者は、永遠にこの夢の楽園で死ぬまで、孕ませマシーンとなって、遺伝子を搾り取られるのよッ」

「お、おう……」

 千葉がその話を聞いたら、突撃するよ。
 股間の波動関数を収束させて。

「んじゃ、ロリ姫の父親もあんななのか?」

 ニヤニヤ笑いながら、ライサが言った。
 国王はエロリィの母親であって、父親は公式の場にも出てこなかった。
 まあ、完全に女性。つーか、ロリの支配する国なのか。
 男は、遺伝子供給マシーンとして、生きていくのか……

「もうね、庶民と王族は違うのよぉ! 私のパパは、ママが見つけて、連れてきたのよぉぉ」

「へぇ…… そうかぁ」

 ライサが「ふ~ん」って感じでエロリィの言葉を聞く。

「王族は世界を旅して、優れた遺伝子を持つ男を見つけて、お婿さんにするのよ! 私のパパは凄いのよ」

 エロリィは自慢げに言った。
 なんでも、エロリィの母親が、パンゲア大陸の外にある王国の魔法大学に留学していたときに見つけたらしい。
 その国の王子とのことだ。その王国の王家の試練で、ダンジョンの中を探検するうちに恋に落ちたらしい。
 
『なんか、「銀河裏美道69」のラストに出てくる星みたいね。このビッチの国は』
『ああ、似てなくもないか……』

 俺の脳に直接話しかける精霊サラーム。
 その感想に俺も同意してしまう。

『銀河裏美道69』はかなり昔のSFアニメ。SF漫画界の御大ともいえる存在の描いた漫画が原作だ。

 永遠に萎えることない機械の「チン〇」をタダでもらうために、少年「行野 早狼(いくの そうろう)」が謎の美女「らめぇ~いってる」と旅をする物語。
 アンドロメダにある機械の〇ンコをタダでくれる星を目指す。裏美道という、戦士の技を身に付け、旅を続ける2人。
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 ただ、「らめぇ~いってる」の本当の目的は、巨大な星を孕ませる機械のチン〇の部品となる男を集めてくることだったのである……
 まあ、物語はここから急展開するのだが、傑作アニメであることは確かだ。

 そして、そのイメージはなんとなく、この「神聖ロリコーン」王国に近い物がある。
 男を集めるところとか、男は繁殖のためだけに存在するってことが……

「パパは表に出ないけど、エローエの研究者としては、第一人者なのよぉぉ!」

「そうなのかぁ。俺、挨拶しなくていいのか?」

 一応、俺とエロリィは婚約者という関係だ。
 母親である女王とは謁見したが、父親とは会ってない。

「もうね、無理なのよぉ」

「なんで、戒律か?」

 この世界には訳の分からん、戒律が色々存在する。
 そのためかと俺は思った。

「違うのよぉ、パパは男が大嫌いなのよ。若いころに、男に襲われて酷い目にあったらしいのよ。男と会うと錯乱して発作を起こすのよぉ」

「ふ~ん」

 なんとなく、今の俺はその気持ちが分かる気がした。
 なぜだか知らないが、その父親とはすごく気が合いそうな気がした。

「で、結局、その騒動が原因で、その王国は滅びちゃったらしいのよ……」

 なぜか、エロリィは、碧い瞳で遠くを見つめるようにした。
 そして、その言葉はつぶやくような声音だった。
 まあ、色々あるのだろうなぁ、俺は思うしかない。

 とにかく「聖装衣・エローエ」を入手し、エロリィの禁呪の力にブーストをかける。
 そして「イオォール」まで行く。
 シャラートを助けるためにだ――

        ◇◇◇◇◇◇

「お待たせいたしました」

 そういって、2人の幼女が入ってきた。
 2人は大きな箱をもってきた。
「ヨイショ」って感じでそれをテーブルの上においた。
 その中に「聖装衣・エローエ」が入っているのか。
 まあ、いい。それはいい。

 それよりもだ……

「クソビッチロリ姫が、増殖した……」

 ライサが硬直したままつぶやく。
 その通り。
 この2人は「エロリィのクローンか?」と思うほど、彼女にそっくりだった。

「もうね、ツルリィに、ペタリィじゃやないの? アンタたち、ここで働いてたの?」

 エロリィが碧い瞳を丸くしてその幼女2人を見つめた。

「もうね、お姉様とは久しぶりなのよ!」

 エロリィそっくりの幼女が言った。
 可愛らしい笑顔を浮かべる。ちょこんとした八重歯まで同じ。
 ただ、そっくりだが、見分けるのは簡単だった。
 髪の毛の色がスカイブルーのような色をしているからだ。

「お父様が、お姉様に会いたがってるのよぉ。でも、男は厳禁なのよ! もうね、男を見るとお父様は発作が起きるのよぉぉ!」

 こちらの幼女も髪が青系統で、水色という感じの色の髪の毛だった。
 2人ともエロリィと同じツインテール。
 まるで、色指定を間違えた同一キャラのように見える。

 ライサはポカーンとした顔で、2人の幼女の顔を見ている。
 俺も同じような顔をしていたかもしれない。

「エロリィって姉妹がいるのか……」

 ようやく俺は言葉を出せた。

「いるのよ! もうね、私は6つ子の長女のプリンセスなのよぉ!」

「6つ子って……」

「濃い青の髪の毛がツルリィ、薄いのがペタリィなのよ。他にも、ロリリィ、ペドリィ、ヨジョリィがいるのよぉ!」

「お、おう……」

 俺はそれしか言えない。
 ライサは己の宿敵ともいえるエロリィとそっくりな存在が他に5人いるときいて、ぐんにゃりした顔をしている。
 超絶美少女のぐんにゃり顔。貴重なお宝映像だ。

「お父様の遺伝子は優秀なのよぉぉ、バンバンお母様を孕ませて、私の妹は大量産され、56人いるのよぉぉ!」

 ここにきて、驚くべき事実を発表するエロリィ。
 オマエの両親は人間なのか……
 
「もうね、私も、ママとパパに負けないように、アインの子どもをいっぱい孕むのよぉぉ!! バンバン排卵して受精して着床させるのよぉ!」

 地下室で俺の子どもを孕みたい宣言するエロリィ。
 俺、干からびそうなんだけど……

「てめぇ!! 私だってアインの赤ちゃん欲しいんだからな!」

 バーンと立ち上がり、俺の遺伝子争奪宣言をするライサ。

「もうね、なんなの? この女はアホウなの? バカなの? 殺すの?」

「もうね、お姉様の敵は、私たちの敵でもあるのよぉぉ!」

 エロリィの量産品が、2人で叫んだ。

「きゃはははは!! 殺す必要はないのよぉぉ! もうね、この赤色ゴリラ女には、私の孕んでパンパンになったお腹を見せつけるのよぉぉ」

「あはッ! 上等―― オマエより先に孕んでやるからな」

 バチバチと放電するかのような殺気を放つライサ。
 こんなことをしている場合じゃない。

「おい、2人とも、ここで揉めるな。まずは『聖装衣・エローエ』を確認するんだ」

 以前の俺なら、オロオロとこの2人の争いを見ているだけだったかもしれん。
 しかし、今の俺は違うのだ。
 俺の言葉で、2人はだまって席に着いた。
 ただ「ふん」とお互いに顔をそむける。

「もうね、お姉様の連れてきた男はカッコいいのよ~」

「もうね、側室でもいいから、孕ませてほしいのよ~」

 ツルリィとペタリィが俺に妖艶な視線を向ける。

「もうね! アインは私のなんだから、手を出すのは厳禁なのよ!」

「「もうね、分かったのよ、お姉様」」

 ハモる姉妹。エロリィの6つ子の内の2人。
 エロリィの威力が6倍になったら、俺はベット上で死んでしまうわ。
 今ですら、途中で意識が無くなって「シュレディンガーの童貞」状態なのだ。
 勘弁してくれ。

「とにかく、早く聖装衣エローエを見せるのよ」

 エロリィの言葉に、ペタリィとツルリィが、テーブルの上に箱を置いた。
 そして、2本の鍵を取り出した。
 2人はそれをその箱にある2か所のカギ穴に同時にさした。

「いっせーの、せッ!」

 息を合わせ同時に鍵を回す。
 カチャリと音がした。
 たぶん、鍵が開いたのだろう。

「この中にエローエが……」

 俺はごくりと唾を飲んだ。
 禁呪の力を増幅させるという魔道具――
 それさえあれば……

 キィィーッと軋む音を上げ、箱が開いた。
 そして、エロリィは「聖装衣・エローエ」の入っている箱を覗きこむ。

「さすが、お父様なのね…… 古代魔法文明の『魔絵』を完全に再現しているのよ」

 そして、「聖装衣・エローエ」を箱から取り出したエロリィ。
 バーンとそれを持った手を天に向かって突き立てた。

「もうね! この『聖装衣・エローエ』があれば、私は神にも悪魔にもなれるのよぉぉ!」

『やるわね……』

 俺の中でサラームがつぶやく。
 何に対して反応しているんだ?
 オマエは。

「つーか…… それが『聖装衣・エローエ』…… なのか?」

 俺は目の前に晒されたそれを見て言った。

「そうなのよ」

 エロリィが碧い瞳で俺を真っ直ぐに見つめて言った。
 その手に「聖装衣・エローエ」を持って。

 それこそが、神聖ロリコーン王国の最先端を行く古代魔法文明研究の結晶だった。
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