黒銀の精霊マスター ~ニートの俺が撃たれて死んだら異世界に転生した~

中七七三

文字の大きさ
上 下
88 / 122
第五章:第二次ノンケ狩り戦争

第八八話:迫る! 決着までのタイムリミット

しおりを挟む
「悠斗くん、体調はどう?」

 悠斗くんが熱を出して一晩が経った。
 昨日よりかは顔色も良くなっている気がする。

「昨日よりかはだいぶ良くなったよ。小春のおかげだ」
「それなら良かった。一応体温計ってね」

 私は手に持っている体温計を悠斗くんに渡す。
 三十八度を下回っていれば嬉しいんだけど……
 待つ事数秒、体温を計り終えた悠斗くんは私に体温計を渡してきた。

「うん。結構下がったね」

 体温計には三十八度丁度と表示されている。
 
「でもまだ治っては無いから安静にしなきゃダメだからね!」
「うん。分かってる」

 私は悠斗くんに毛布をかけながら言う。

「食欲はある? あるなら今日はお粥じゃなくて違うの作るよ?」
「食欲は昨日よりもあるかな。小春に任せるよ。簡単なもので良いからね」
「じゃあ今日は饂飩《うどん》にしようか。今から作って来るね」

 私はキッチンへと向かい、冷凍の饂飩を取り出し料理した。
 毎日お粥だったら飽きちゃうもんね。早く治ってほしいけど、いつ治るか分からないし、もしかしたらまた上がってきちゃうかもしれないもん。
 冷凍の饂飩は直ぐに作れる、だから直ぐに持っていける。

「悠斗くん、できたよ。冷凍の饂飩だけど、ごめんね」
「ありがとう。そんな、謝らなくても良いよ簡単なもので良いって言ったのは俺だし。それに俺は作ってもらってる側なんだから」

 私は悠斗くんのベッドの横にミニテーブルを設置して、そこに饂飩を置いた。

「ちょっと待ってね。ふー、ふー。はい、あーん」
「じ、自分で食べれるよ」

 せっかくあーんしてあげようと思ったのに、悠斗くんに断られちゃった。
 結構勇気出したのに……

「え⁉」

 私が落ち込んでいることに気づいたのか、悠斗くんは私が差し出している饂飩を食べてくれた。
 やっぱり悠斗くんは優しい。

「うん。美味しい。ありがとね、小春」

 悠斗くんは笑顔でお礼を言ってくれた。
 
「れ、冷凍の饂飩なんだから誰でも美味しくできるよ」

 私は嬉しさを抑えて笑いながらそう言う。
 
「小春が作ってくれたから美味しいんだよ。好きな人が作ってくれたものはなんでも美味しいんだよ」

 急にそんなこと言われて照れないでいるなんて私には無理だった。
 私も熱が出たのではないかというほど顔が赤くなって熱くなる。

「ん? どうかしたの? 顔赤いけど」
「な、なんでもないよ」
「まさか小春も体調悪くなったの⁉ もしかして俺が移しちゃった⁉」

 顔が赤くなったのは悠斗くんのせいだけど……でも熱も多分ないと思う。体も重くないし頭痛も無いから。

「だ、大丈夫だよ。本当に熱ないから」

 私は両手を振りながら否定する。

「本当に? でも本当に移しちゃったらダメだから後は自分で食べるよ。ありがとう」
「う、うん。じゃあ私リビングに居るから、何かあったら読んでね。早く治してね」

 そう言って私はリビングに向かった。
 
「私も熱だして悠斗くんに看病してほしいな……」

 悠斗くんが熱を出して苦しんでいるのにそんな事言っちゃダメなのは分かってる。分かってるはずなのに言ってしまった。
 熱を出して弱ってる私のためにお粥作って私に食べさせてほしいもん……
 でも、悠斗くんの熱が治っていつも通りこのリビングで、このソファーで二人で並んで座って、笑い合って話したい。
 それが今の私の一番の理想。

「明日には治っててほしいな……」
しおりを挟む
ツギクルバナー

WEB小説執筆や書評(小説、漫画、一般書)などあれこれ書いています
ネット小説書きの戯言
よろしければどうぞ。
感想 19

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

処理中です...