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第五章:第二次ノンケ狩り戦争

第八一話:俺の大事な物

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 五身合体ガチホモⅤ(ふぁいぶ)とか、もう嫌な予感しかしない。
 俺は心に踏ん張りをかける。

 魔力回路から、流れ出す魔力で筋力の強化はできる。
 気持ちもハイテンションになってくることは確かだ。
 俺の魔力回路、7個をフル回転させれば、狂躁状態といってもいい気持ちになる。
 すげぇ、気持ちいいのだ。

 しかしだ――
 その気持ちになってやったことはたいていろくでもない。
 しかも、そんな大量の魔力はこの場では使えない。
 狭い塔の中の部屋で、無茶苦茶な力を発揮すれば、ここ全体が吹き飛ぶ。
 
 この下には、俺だけじゃない。
 深手を負った、ライサ、エロリィが治療中だ。
 千葉もいる。俺の母親であるルサーナもいるんだ。
 あと、誰かいたような気がするが、まあ忘れるということはどうでも……
 ああ、奴隷だ。エロリィが奴隷にしたガチホモがいたな。
 うん、これで全員だ。

 俺の親父であるシュバインは、城の中に入る前にルサーナの一撃で地面に埋まっている。
 今も埋まっているのだろう。
「雷鳴の勇者」も日本の生活で錆まくりだ。

「さあ、四天王よ! 我が元に来て、合体するのだ!」
 
 響くガチホモ王のバリトンボイス。
 
「おおおお…… 王。ガチホモ王……」

 血まみれで顔が変形しているアナギワ・テイソウタイが立ち上がった。
「カチン」という金属音。そしてコイツが装着していた金属製の貞操帯が外れ、床に落ちた。
 
 見苦しいガチホモの裸体を晒し、ガチホモ王の方にケツを向ける、ガチホモ四天王筆頭の男。
 
「行くぞぉぉ!! 合体だぁぁ! まず右腕ぇぇ!!」

 浅黒い色をして筋肉でパンパンに膨れ上がった腕。
 ガチホモ王の腕だ。
 そいつを天に向かって突き上げた。

「解放だ! ヤオイゲートを解放するのだ!」

「ああ、今まで戦っていたので…… 汗臭いかもしれないのです。ガチホモ王……」

「それで構わぬ…… もっと汗臭くなるのだからな――」

「しかし――」

「フッ、汗臭いからこそ、いいのだ」

 ヤバいセリフの応酬。
 それだけで、俺の精神がビシビシとダメージを受ける。

『キタわ。これ。アイン、注目よ』

 腐れ精霊のサラームがガチホモのセリフに反応する。
 オマエ、ホントに叩きだすよ。
 俺の精神はギリギリのところで、戦ってんだから。
 オマエの一言でポッキリいったらどーすんの?

 そして、ホモ・リンゴも立ち上がった。
 コイツもプリプリしたケツをガチホモ王に向けた。
 そして、ふんどしを横にずらした。横ずらしだ。 

 ケツに刺さったままの魔剣:アナル・ビーズがプルプル震えている。
 
「あ、あ、あ、あ~ 今、王に来られたら…… 頭が変になって……」

「ふッ、ホモ・リンゴよ、オマエは左腕よ…… これを奥までぶち込むのだ」

 これまた太すぎる左腕が突き上げられる。
 今、ガチホモ王は両手を上げた状態になっている。
 無防備といっていい。
 しかし、俺は動くことができない。体が見えないオーラで縛られているようだった。

「ああああああああああ~ ガチホモ王。ダメです想像しただけでぇ……」

 プルプルと尻を震わせ、ガクガクと膝も震えている。

「ホモ・リンゴよ、お前のヤオイゲートも解放するのだ。120パーセント解放だ!」

 バリトンボイスがビリビリと反響する。

「のがががぁぁぁ! 解放! ヤオイゲート解放ぉぉぉ!! あぁぁぁあああ!! アナルビーズが中でぇぇぇ、中でぇぇ~」

 見苦しく身をよじるホモ・リンゴ。
 もはや、この空間にいるだけで、地獄の罰ゲームのようになってきた。
 
『これは、なに? ガチホモの5Pなの? 期待できるわ』
 
 ワクワクとした声が脳内に響く。その声で俺の精神がまたダメージを受ける。
 俺のHPゲージが真っ赤になってきているんだけど。
 俺は、歯を食いしばる。
 魔力回路の回転数を上げる。
 今は1つだけだ。
 全部の魔力回路の連結は、この戦いの場も持たないし、俺の身体が持たない。

 俺はすっと指がひん曲がりバラバラになっている右手を見た。
 左手で、その指を強引にたたみ込んで、拳を作り上げる。
 魔力が流れ込んでいるせいか、痛みだけは無い。

『アイン! 花〇薫みたいだわ! やればできるわね』

 大好きなネタに反応するサラーム。こっち方面だけにしてくれ。とにかく、今だけは。

「両足だ! 木冬木風よ! そして、アナル・ドゥーンよ! 立つのだ! 我が足を受け入れるのだ!」

 とんでもねぇこと言いだしたよ。このガチホモ。
 俺の魔力回路の回転数が落ちてきた。
 やばい。心が折れそうになってきている。

『足? 足をどーするのよ?』

 さすがのサラームも分からんようだ。
 俺は想像がついたけどね。
 もう、コイツラのパターンが想像つくよ。

 体育座りしていた木冬木風が立ち上がり、またしてもケツをガチホモ王に向けた。
 そして、ゆるゆるとふんどしを脱いだ。
 はらりと、ふんどしが舞うように動き床に落ちていく。

「ああ、私の尻を―― このヤオイゲートを見ていいのは、ガチホモ王だけなのです」

「うむ。相変わらず、美しいヤオイゲートよ……」

「あああ、奥の更にその奥―― 体の奥底まで、ガチホモ王を刻み込まれたいのです」

 会話を聞いているだけで鼓膜が汚染され、聴覚神経が腐ってきそうなやりとりだ。
 見たくないし、聞きたくもない。
 そもそも、この空間に一緒にいて空気を吸うことが苦痛になってきたヤバい。

 ダメだ。
 シャラートだ。
 俺はシャラート助けるんだ。
 俺は、脚に力をいれる。崩れ落ちそうになる体に力を込める。

 そして、シャラートの拷問でもはや死ぬ一歩手前。命の寸止め状態だったアナル・ドゥーンがゆっくりと立ち上がる。
 フラフラとよろける。
 それを木冬木風が支えた。

 プラプラとケツに刺さったホースが揺れている。
 アナル・ガンという狂った武器だ。まだ装着しているのかよ。

「あああ、す、すまない…… ぐ……」

「さあ、一緒に生まれたままの姿をガチホモ王に見せるのです。これで少しは楽になるでしょう」
 
 そう言うと、木冬木風は、血まみれのアナル・ドゥーンの乳首をクリクリしだした。

「ああああ…… それは、それは…… あああああぁぁ」

 汚らしい喘ぎ声を上げながら、ふんどしを脱ぐアナル・ドゥーン。
 
「ふふ、相変わらず、乳首が感じやすい奴よ――」

 ガチホモ王がバリトンボイスできついことを言う。

「キィィィィィーー!!」

 甲高い叫び声。
「男色孕ませ牧場」という名の触手と、それに捕えられた男たち。
 その上を這いまわる、ガチホモ王の子どもたち。
 それが、そろって人外の叫びを上げていた。
 股間の小さな槍を振り回し、触手に捕えられた男たちをその槍で突いていた。
 虚ろな目の男たちは、血を流しながらもなんの反応もしない。

 キツイ。
 マジで、キツイ。
 地獄。
 ここは地獄だった。

「行くぞ! ヤオイゲート解放だ!! 合体するのだ!!」

「「「「はい! ガチホモ王! ヤオイゲート全解放します!」」」」



 耳が汚染されそうな音が響き、ヤオイゲートがオープンする。

「右腕だ! アナギワ!」

「あああ、汗臭いのに…… ああ、この身体の奥に――」

 唸りを上げて右腕がアナギワテイソウタイのケツにぶち込まれた。

「左腕だ! ホモ・リンゴよ!」

 左腕が空間を突き破り、ホモリンゴのケツを穿つ。
 
「あああああ、熱い―― ガチホモ王の熱を体の奥で――」

 ブッとい左腕が湿った音をたて、突き刺さっていく。

 グンと両手を持ち上げるガチホモ王。
 その両腕には、四天王2人が貫かれ、アヘ顔で涎を垂らしている。
 ガチホモというグローブを装着したような状態だ。
 股間の長槍が黒光りし、ブルブルと振動している。

「いくぞ! 両足! 一度にだ!」

 そのまま、ガチホモ王が跳んだ。
 ケツを構えている木冬木風とアナル・ドゥーンの二人に両足をぶち込んだ!!

「「ああああああああ~ 奥に、奥がぁぁぁ」」

「ふ、温かいぞ、二人とも」

 無駄に優しげなバリトンボイス。

 そしてその異形が立ち上がる。
 異形だ。
 見ているだけで頭が変になりそうな異形。
 心をダイレクトにへし折ってくるような、そんな狂った存在が出現していた。

 俺の中に棲んでいる、腐った精霊ですら、言葉を失う存在。
 それくらいヤバい奴が出てきた。

『アイン! 魔力回路! 回転が落ちてるわ』

「ああああああ…… 分かって、分かってるけど……」

 俺の筋肉組織に流れ込む魔力の量が減ってきている。
 魔力回路が、回転しない。
 そもそも、第一の魔力回路が回転しなければ、7つ魔力回路があっても意味が無い。
 最初の魔力回路の回転、これが急速に勢いを失っていた。
 徐々に、砕けた俺の右拳から、うずくような痛みが染み出てきた。

「どうしたのだ? 精霊マスターよ。顔色が悪いぞ――」

 巨体が口を開いた。
 両手、両足に自分の部下である、ガチホモ四天王を刺し込んだガチホモ王だ。
 5人のガチホモが合体し、一つのクリチャーになっていた。
 
 腕はもう肩までずっぽり入っている。
 脚はもう太ももまでぶっぽりだった。

「ぬん!!」

 気迫のこもったガチホモ王の声。
 右腕を突きだす。
 ガチホモ四天王の筆頭、アナギワ・テイソウタイの顔が俺の前に付き出された。
 そして、そいつが口を開ける。
 ヌルヌルとしたよだれを垂れ流しながらだ。
 その虚ろな目は、完全に意識を失っているように見えた。

 グボッ――

 湿った音をたて、アナギワ・テイソウタイの開けっ放しの口から浅黒い何かが出現した。
 拳だ。
 ガチホモ王の拳だった。
 
「ふふ、ヤオイゲートを通過し、まさに全身を貫通―― もはや、我らは一体。何人たりとも離すことはできぬ」

 言い放つガチホモ王。
 そして、同じように左手からも拳が出現する。
 
「さあ、雌雄を決しようではないか。アイン、精霊マスターよ。ここで、雌雄を決し、オマエは俺の子を孕み、生むのだ――」

 折れそうになる俺の心。
 歯を食いしばった。
 口の中に鉄の様な味が広がってくる。
 血だ――
 血の味だ。

 くそ。俺はシャラートを助ける。
 シャラート、俺の大事なメガネのお姉様。クールビューティ。
 シャラート、俺の専用の大きくやわらかいおっぱい。
 シャラート、痴女でサイコで暗殺者。
 シャラート、黒く長く揺れる髪――

「ぬごぉぉぉ!!! くそがぁぁあ!! 殺してやる! このバケモノが!」

 叫ぶ。回れ俺の魔力回路。くそ! 回れ!
 体の奥から重低音の響きが聞こえる。
 俺の魔力回路。その最初の魔力回路が回転を増してきた。 

 俺の筋肉組織に魔力が流れ込んでくるのが実感できる。
 体が軽くなる。
 全身にパワーがみなぎってくる。
 しかし、骨格までは強化できない。
 よって、全力でパンチを撃てばこうなる。
 俺はバラバラにひん曲がった右拳を見る。
 構わない。
 全部の骨が砕けても、コイツを、目の前の悪夢をぶち殺す。
 
「おう、いいぞぉぉ、抵抗する者を無理やりというのが大好きなのだ。その強気な目。その黒と銀の髪を俺の遺伝子でヌルヌルにしてやろう――」

 俺は地を蹴った。
 ヌルリとした空気の抵抗を感じる。
 全身を一個の弾丸として、奴をぶち抜く。
 
 脚にガチホモを装着したガチホモ王は、俺の倍以上の身長になっている。
 俺は跳ぶ。
 蹴りだ。全力の蹴り。
 技もくそもない。ただ魔力を込めたこの足を顔面に叩きこむ。
 
 俺の足が伸びていく。
 どこまでも突き抜けていくようなそんな感覚だ。
 顔だ。この尖った頭の顔面に、俺の魔力のこもった蹴りをぶち込む。
 
 ガチホモ王は顔に嫌な笑みを貼りつけたまま俺を見ている。 
 口の端を釣り上げ、涎を垂らしていやがる。

 俺の足に凄まじい衝撃が発生した。
 頭の天辺からその衝撃が突き抜けた。
 一瞬、視界が真っ白になった。

 グシャッという感触が俺の足から伝わってきた。

「やった!! ……あれ? え……」

 俺の足は確実にガチホモ王の顔面を捉えていた。
 鼻の上を直撃だった。
 ツーーっ、と赤い血が流れてくる。
 
「鼻血が出たな。興奮しているのかもしれぬ」

 ガチホモ王は言った。なんのダメージも感じさせないバリトンの声だ。
 俺は、視線の焦点を奴の顔面から、俺の脚に移した。
 折れ曲がっていた。
 俺の膝が変な方向に曲がっていた。
 
「魔力はあるが、体がついてこないか――」

 ガチホモ王はそう言って、俺の脚を握った。
 
「がはっ!!」

 肺の中の空気を根こそぎ吐きだしたような気がした。
 そして、吐き気。
 凄まじい痛みが俺を貫く。

「いい顔だぞぉぉ! これから、毎晩、そう言う顔になるのだ!」
 
 ガチホモ王はまるで、雑巾のように俺を掴みあげた。

 ブン―
 風を感じた。
 俺の銀と黒の髪が流れていくの感じる。

『アイン!!』

 サラームが叫ぶ。
 
 背中に衝撃を感じた。
 頭も打った。
 壁だ。
 壁に叩きつけられたんだ。
 
 その事実を俺の脳が認識する。

「ほう―― 空気の壁で減速して、ダメージを軽減したか。やるな。さすが精霊マスター。詠唱なしで戦いの中でそこまで魔法を使えるか」

 壁に背をあずけ、崩れ落ちている俺の視野が黒くなっていく。
 
『閃風斬!』
 
 サラームだった。
 俺の魔力を使って、サラームが攻撃を仕掛けていた。
 空気のクッションというのも、この精霊のやったことだろう。
 意外に、親切だな。サラーム……

 キーンと乾いた音が聞こえる。
 俺の魔法が弾かれたのだと想像がついた。

「ほう、そのような状態からでも、魔法を放つのか―― ますます、俺の花嫁に相応しい」

 どす黒いバリトンボイスが耳に流れ込む。

 俺は壁に背をあずけながら立つ。
 片足だった。
 右足がひん曲がって、立つのに役に立たない。

「まあ、魔法は危険だからな。まずは意識を刈っておくか――」

 黒く染まっていく視界の中、巨大な存在が、拳のようなものを振り上げたのが分かった。
 
 ゴメン――
 シャラート。
 ダメだ。
 なんで、ダメなんだ俺は――
 くそ。
 結局、この世界でもこんなのか……
 コンビニで強盗に撃たれて死んで。
 この世界では、ガチホモになぶり殺しになる。

 くそ!
 ダメだ。
 俺は立たなきゃダメだ。
 大事な物。
 この世界には絶対に守らなきゃいけない俺の大事なものが――
 
 しかし、俺の身体はもう動かない。
 体が崩れ落ちていく。

 魔力回路の回転も徐々に勢いを失っている。

『アイン! 魔力が薄いわ! なにやってんのよ!』

 クソ精霊の声が聞こえる。
 ダメなんだよ。動かないんだ――
 精霊の泣くような叫びが脳内に反響する。

 次の瞬間だった。
 熱い風の塊が顔にぶつかってくるのが分かった。
 次は―― 実体のある拳――
 俺は目をつぶり、その時間を待つしかなかった。

 高い音が響いた――
 なにか、ぶつかる音だ。
 でも、俺はなにもしていない。
 なんだ? 生きてるのか? 俺――

「キサマぁぁ!!! ぐぉぉぉ!!」
 
 ガチホモ王の声が響いた。
 なにが起きた?
 いったいなんだ?

「おい、アイン、どうした? 相当やられたじゃないか?」
 
 聞き覚えのありすぎる声がした。
 まさか――
 おい。本当か……

「父さん……」

 ゆっくりと目を開けた俺の前にいた。
 俺の親父。
 切れるような笑みを浮かべている。十数年は見たこともない表情。

「雷鳴の勇者」シュバイン・ダートリンク。

 世界を救った勇者。
 俺の父親。
 その存在が、ガチホモの拳を片手で止めていた。
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