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第五章:第二次ノンケ狩り戦争
第七三話:【閑話】残された人々 灰よ舞いあがれ!
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ワタシ――
船橋奈津美(ふなばし なつみ)は久しぶりに素振りをしていた。
竹刀なんてないので、適当にあった棒で振った。
周りに人のいないことを確認して、庭の隅のところでだ。
左手の小指から力を込めて、しっかりと棒を握る。
なんか、こんな感じで物を握るのは久しぶりだった。
決して強いわけではないけど、小学校のときから剣道は続けている。
ワタシの頭の中に、あの悪夢のようなダンジョンの中のことが少しだけ浮かび上がる。
教室に乱入してきた真っ赤な髪をした女の子。多分、ワタシたちと同じくらいの歳と思う。
その女の子が、机とか椅子の脚をねじ切った。素手で簡単に。
ダンジョンの壁も素手で殴って壊していた。
そして、天成君も、元々こっちの世界の人間だったのが分かったのが、壁を丸く切り抜いた瞬間だった。
ワタシたちは、そのときに食料を探すため、その鉄パイプを持たされた。
それを武器にしろと言われた。
そのときには剣道の握り方なんてできたもんじゃなかった。
ゾッとした。
ダンジョンの途中で、恵津子が泣きだした。多分100メートルも進んでない。
ワタシも、パニックになって泣いた。
そんなワタシたちをバカにして叫んでいたのが、あの異常者の千葉だった。
天成君はともかく、あの異常者の千葉に助けを求めるとか、最悪だった。
でも……
そうしないと生贄になる。
処女は生贄にされてしまう。
どうすれば……
雑念を払おうと、素振りを続ける。
そんなことをしても、なにがどうなる訳もなかった。
でも、なにかしていないと変になりそうだった。
「私、見たのよ……」
「わ!!」
驚いた。
心臓が止まるかと思った。
音もなく、近づいてきた市原恵津子(いちはら えつこ)が、か細い声でワタシに話しかけてきた。
「あんたね…… 恵津子、頼むから気配を消して近づいて、声をかけるのやめて。お願いだから」
ワタシは素振りを止めて行った。
少し息が上がっていた。
「どうも、最近、客足が遠のいているって。やっぱり、魔王様がいなくなったのが原因だっていっている」
恵津子は独特のイントネーションでポツポツと語りだした。
「それも、各地で異変が起きているらしいの。戦争だけじゃなくて……」
「そうなの」
確かにこの温泉街でも大きな地震があった。
その地震でここ以外の場所が被害をうけたのだろうか。
それで、お客さんが来なくなっているのかもしれない。
地震があったときは、まだ先生がいた。
たしか、先生がいなくなったのはその後すぐだ。
魔王様と崇められる先生がいなくなったのが原因で客足が遠のいたんではなく、天災で温泉どころじゃなくなっただけかもしれない。
だとしたら、処女を生贄にして、先生を召喚するとか意味がない。
そもそも、そんな生贄で先生が召喚できるかどうかも分からない。
まあ、あの人間を辞めてしまった先生なので、100パーセントあり得ないと言い切れないけど。
「温泉街の人たちは、戦争とか天変地異でお客さんが来なくなっているって分かっていないの?」
ワタシの質問になぜか、庭に生えた木の陰から答える恵津子。
この娘(こ)もちょっとよく分からない癖がある。
「全然。全ては魔王様を呼び戻せば解決するって言ってた。やっぱり、処女の生贄だって…… でも……」
「でも?」
「すごく、会議が揉めていたの。しばらくは大丈夫だと思うわ」
それは、ちょっとだけだけといい知らせだった。
少なくとも時間はかせげる。
その間に、池内先生が帰ってくれば、生贄なんてことはなくなる。
本当に、永遠に会議は揉めてくれないかと思った。
「池内先生…… どこいっちゃったのかな」
ワタシはふと、空を見上げた。
「あ、流れ星かな、昼でも見えるんだぁ」
青い空に白い光を放つ流れ星がスーッと尾を引いて飛んで行った。
ずいぶんと長い事、見えていた。
そして、光の尾を引いて、地平線の彼方に消えて行った。
「昼でも見えるんだ。願い事言えばよかった」
「そうね」
恵津子の言葉に相槌を打つワタシ。
でも、なんでだろう。あの流れ星に願いをかけても、何も叶いそうにないとワタシは思った。
なんで、そう思ったのかは、分からないけど。
◇◇◇◇◇◇
「だから、ワシじゃぁぁ! ワシがこの手で、この指で、この目で確認すればいいのじゃ!」
プルプルと中指を1本伸ばしながら手を震わせる。
温泉街の宿屋の主人。
この温泉街で最も大きな宿を経営しており、池内先生を含む生徒たちが宿泊していた宿だ。
「あー、爺さんの確認じゃなぁ……」
「なんじゃぁぁぁ! ワシが耄碌(もうろく)しているというのかぁぁ!!! げほげほげげほげほ!」
「爺さん、興奮すんなって…… そうじゃねぇよ。生贄の処女を選ぶのに万が一の間違いも許されないんだぞ」
「ワシのゴールドフィンガーなら百発百中なのじゃぁぁ!!」
クネクネと中指を動かしながら、涎を垂らすジジイ。
もはや犯罪レベルの存在と化している。
主だったメンバーはジジイをスルーすることにした。
それでも、温泉宿の会議は紛糾していた。
この宿だけではなく、この温泉街の有力者たちが集まっている会議だった。
魔王様が消えて、何日も経過している。
徐々に客足は減少し、このままでは、温泉街の経営は危険水域に突入することが予想できた。
「戦争に、天変地異もあったって話だぞ。客足が減ったのは、それが原因で、魔王様はすぐ戻ってくるかもしれないぞ。元々魔王様いなくてもやっていたんだし……」
全員が全員、魔王様を呼び戻せというわけではないらしい。
魔王様を独占しているのは、一番大きな温泉宿であり、小さい宿は客足が減っても維持費用が少ないのでそう大きなダメージもなかった。
その分、冷静な意見もでたりしている。
「アホウか! 出来ることもやらずに、潰れるにまかせよというのか! 我々はやはり魔王様を呼び戻さなければならないのだ。もはや議論はそのような段階ではない!」
生贄強硬論は、大手の宿が中心だった。
もし、魔王様を上手く呼び出して、宿泊宿を変えさせれば、自分たちが良い目を見れると信じているからだ。
小さな、宿は魔王様の信徒(生徒)を受け入れるだけの規模が無い。
小さな宿屋の穏健な意見はこうして潰されていく。
しかし、問題は残る。
どうやって、生贄を選定するか。
確実に処女を見抜くかという方法だ。
最初は、自分が確認するという候補者が続出していた。
しかし、確実に処女を選べるかどうかというと、自信がない男たちばかりだったのだ。
しかも、宿に残った彼女たちは、魔王様の信徒である。処女の可能性は低いのではないかと言いだす者もいた。
あの魔王様を見ていれば、そう思うのは異世界も共通だった。
もしかしたら、体の構造も人間とは違う可能性もあった。
彼らは本気で悩んでいたのだ。
もし、自分が選んだ生贄で魔王を呼び戻すことができなければ、それは凄まじい責任問題となってしまうのだ。
今のところ、それを理解できていないのは、宿屋のボケ爺さんだけだった。
「女のことは、女に訊いた方がいいんじゃないか?」
誰かがポツリと漏らした。
「確かに、そうかもしれん」
ウンウンと頷きはじめる。
「そうなると、ババ様か……」
「うむ、ババ様の知恵を借りるしかあるまい」
会議は急転直下、方向性が決定してしまったのであった。
「ワシが調べるのじゃぁぁぁ! ババァの知恵など必要ないのじゃぁぁ!」
黄ばんで濁った白目をむきだして、ジジイが絶叫する。
その絶叫を背に受け、会議参加者はゾロゾロと解散していった。
◇◇◇◇◇◇
「縄じゃ…… 縄を用意するのじゃ」
動かなければしわくちゃのオブジェにしか見えないババアだった。
彼女が温泉街の生き字引とも言われるババ様だった。
生徒たちが泊まっている宿屋の爺さんがガキのころからババァという筋金入りのババアだ。
生まれた時からババアだったという説もあるくらいのババアだ。
「縄ですか? ババ様」
「そうじゃぁ、藁でいい。それで作った縄を1本もってくるのじゃぁ」
「おい! 若い奴に言って縄をもってこさせろ!」
「はい!」
温泉街の旦那衆が動きはじめていた。
ババ様の言うとおりに、縄が用意された。
「こんなもんでいいっすかね?」
若い衆が縄を持ってきた。巻き取られており長さは分からないがそれなりに長いものだ。
その、縄を見つめ「うん、うん」と頷くババ様。
「この縄の入る、入れ物を用意するのじゃ」
「うーん、なんでもいんですか? 入れば」
「いいのじゃ。ただ、燃えない入れ物でないとまずいのじゃ」
「そうっすか…… 燃えないですか……」
若い衆は首をひねりながら、借り物競争のように出て行った。
「縄に燃えない入れ物…… ババ様はいったい……」
多くの者が首をひねっている。
すぐに、若い衆は戻ってきた。
手には、バケツを持っていた。
生徒たちが持ちこんだバケツだ。
今は使わなくなって、宿の隅に置き捨てられていた。
それを見つけて持ってきたのだ。
「これなら、入るんじゃないっすか?」
ババ様はしわの中に埋没していた目をぐにゅんと飛び出させ、そのバケツを見つめる。
そして、静かにうなづいた。
「それはよい入れ物じゃ……」
「じゃあ、さっそく準備しますか? ババ様お願いします」
「よかろうさ…… では、やるとするかね」
◇◇◇◇◇◇
「なんすかこれ?」
若い衆が声を上げる。しかし、答える者はいない。
これが何かというのは分かる。
今目の前で作ったのだ。
まず、天井から縄を吊るして、火をつける。
下にはバケツを置く。
燃えてできた灰がバケツの中に落ちていく。
ドンドンバケツには灰が溜まっていく。
今、目の前ではそう言うことが行われたのだ。
若い衆の質問には「縄の燃えた灰が入ったバケツ」と答えればいい。
しかし、なんでこんなもんが必要なのかということの意味は分からなかった。
ババ様はそれを見て、ウンウンと頷くだけだ。
「で、どうすればいいんですか? ババ様」
「衝立(ついたて)じゃ、見えぬよう、ついたてを用意するのじゃ。乙女の印を調べるのじゃ、恥じらいを考えてやるのが筋じゃ」
とりあえず、ついたてが用意され、向こう側に、灰の入ったバケツ。そしてババ様が残った。
旦那衆の視界は、全て衝立(ついたて)でブラインドされた状態になっている。
「よし、それでは生贄候補の娘たちを呼んでくるのじゃ」
衝立の向こうでババ様はそう言ったのであった。
◇◇◇◇◇◇
恵津子の言うとおり、数日は平穏な日々が続いた。
特に変わったこともなく、かといって何かをするでもなく、日々は過ぎて行った。
この間、先生が戻ってくればいいと淡い期待を抱いていたけど、そう簡単にはいかなかった。
そして、とうとうその日が来てしまったのだ……
ワタシたち女子は全員、一か所に呼び出された。
そこは、温泉街のかなり奥の方にある。大きな屋敷だった。
宿屋ではなく、個人の家のようだった。
「ねえ、奈津美…… やっぱり、処女検査するのかな」
津田沼春子(つだぬまぱるこ)が声を振るわせていた。
「分からないわ…… でも、やっぱり」
気が付くとワタシの声も震えていた。
一体どんなことをされてしまうのか、恐ろしくてその場に崩れ落ちそうになった。
「ねえ、恵津子、何か知らないの?」
春子が、柱の陰でこっちをジッと見ている市原恵津子に声をかけた。
恵津子はゆっくりとこっちに、歩いてきた。
「私、聞いたの…… これは、ここのババ様という長老が、処女を見抜く儀式をする場所だって」
恵津子の言葉に、声を失うワタシと春子。
グルグルと風景が回り出す。
その場に倒れてしまいたかった。
「なによ! こんなところに、呼び出して、もう!」
「ほんとよね!」
「あーあ、いったい何する気なの? サッサとして欲しいんですけどぉぉ」
浦安音澄(うらやす ねすみ)とその取り巻きの声だった。
その声がかろうじて、ワタシの意識を現実に引きとめた。
「じゃあ、これから、儀式を行います。これは神聖な儀式です」
顔を知っている宿屋の男の人が言った。
真剣な顔だった。
そして、一人づつ、「こより」のような物を渡された。
「なんなのこれ?」
浦安音澄が不満そうに言った。
すっと、衝立の陰から小さな何かが出てきた。
びっくりした。
それは、しわくちゃななにかだった。
「ババ様――」
「ここからは、ワシが説明するのじゃよ」
そのしわくちゃな存在は「ババ様」と呼ばれた。
「オヌシたちは、一人づつ順番にこの衝立の向こうに行くのじゃ」
ババ様の声は心に直接響いてくるようだった。
文句を言っていた、浦安音澄も静かに聞いている。
「そして、下半身に身に付けている者を全て脱ぐのじゃ」
どよめきが起きた。
声にならないような悲鳴。息を飲む音が聞こえる。
一気に空気が凍りついたような気がした。
「そして、衝立の向こうのバケツをまたぐのじゃ……」
どうやら、衝立の向こうにはバケツがおいてあるらしい。
なにをさせるきなのか。
「そして、その持っている、こよりで鼻をくすぐり、くしゃみを出すのじゃ」
そして、しばしの沈黙が空間を支配する。
みんなババ様の次の言葉を待っていた。
「それで、儀式は終了じゃ――」
呆然とする空気が空間を支配する。
なにをさせたいのか、さっぱり意味が分からない。
要するに、下半身になにも身に付けず、バケツをまたいで、こよりで鼻をくすぐってくしゃみをしろと、そういうことだ。
頭が混乱してきて、なにがなんだかわからなくなってきた。
そして、順番にその儀式が始まった。
◇◇◇◇◇◇
「くしょん!」
「よし、お前はこっちじゃ……」
「へくしょん!」
「お前もこっちじゃ……」
どんどん、儀式は進んでいく。衝立の向こうからくしゃみの音が続く。
もはや、自分たちがなにをやらされているのか、全く分からない。
意味が分からない。
もう、相当人数が儀式を終わらせていた。
今のところ、全員が一か所に集められていた。
津田沼春子も、市原恵津子も、儀式を終わらせていた。
「なんの儀式なのよ! まったく」
文句を言いながらも、浦安音澄は、衝立の向こうに行く。
「はっくしょーん!」
くしゃみの音。
そして同時に、衝立の向こうから凄まじい量の灰が舞い上がってきた。
まるで煙幕のように舞い上がった。
「よし! お前はこっちじゃ」
「ほほほほ!! やっぱり、私は他の奴とは違うのね」
さっきまで、文句を言っていた浦安音澄が満足げに声を上げていた。
彼女だけ、別の場所に連れて行かれた。
そして、ワタシの番が来た。
ジャージも全部脱いでバケツをまたいだ。
バケツの中に灰が入っているけど。
さっき、どうやって、浦安音澄は灰を舞い上げたんだろう……
さっぱり分からなかった。
しわくちゃの存在がこっちを見ている。
早く終わらせたい。ワタシは、こよりを鼻に入れて、くしゃみをした。
何も起きなかった。
ワタシも他のみんなと一緒のところに並ばされた。
そして、全員の儀式が終了した。
浦安音澄以外は全員、一か所に集められた。
さすがに、一人だけになった彼女は顔色が悪くなっていた。
なんで、彼女だけ灰が盛大に舞い上がったのか……
この儀式でなにが分かるのか……
ワタシにはさっぱり分からなかった。
そして、これから始まることも、分からなかった。
船橋奈津美(ふなばし なつみ)は久しぶりに素振りをしていた。
竹刀なんてないので、適当にあった棒で振った。
周りに人のいないことを確認して、庭の隅のところでだ。
左手の小指から力を込めて、しっかりと棒を握る。
なんか、こんな感じで物を握るのは久しぶりだった。
決して強いわけではないけど、小学校のときから剣道は続けている。
ワタシの頭の中に、あの悪夢のようなダンジョンの中のことが少しだけ浮かび上がる。
教室に乱入してきた真っ赤な髪をした女の子。多分、ワタシたちと同じくらいの歳と思う。
その女の子が、机とか椅子の脚をねじ切った。素手で簡単に。
ダンジョンの壁も素手で殴って壊していた。
そして、天成君も、元々こっちの世界の人間だったのが分かったのが、壁を丸く切り抜いた瞬間だった。
ワタシたちは、そのときに食料を探すため、その鉄パイプを持たされた。
それを武器にしろと言われた。
そのときには剣道の握り方なんてできたもんじゃなかった。
ゾッとした。
ダンジョンの途中で、恵津子が泣きだした。多分100メートルも進んでない。
ワタシも、パニックになって泣いた。
そんなワタシたちをバカにして叫んでいたのが、あの異常者の千葉だった。
天成君はともかく、あの異常者の千葉に助けを求めるとか、最悪だった。
でも……
そうしないと生贄になる。
処女は生贄にされてしまう。
どうすれば……
雑念を払おうと、素振りを続ける。
そんなことをしても、なにがどうなる訳もなかった。
でも、なにかしていないと変になりそうだった。
「私、見たのよ……」
「わ!!」
驚いた。
心臓が止まるかと思った。
音もなく、近づいてきた市原恵津子(いちはら えつこ)が、か細い声でワタシに話しかけてきた。
「あんたね…… 恵津子、頼むから気配を消して近づいて、声をかけるのやめて。お願いだから」
ワタシは素振りを止めて行った。
少し息が上がっていた。
「どうも、最近、客足が遠のいているって。やっぱり、魔王様がいなくなったのが原因だっていっている」
恵津子は独特のイントネーションでポツポツと語りだした。
「それも、各地で異変が起きているらしいの。戦争だけじゃなくて……」
「そうなの」
確かにこの温泉街でも大きな地震があった。
その地震でここ以外の場所が被害をうけたのだろうか。
それで、お客さんが来なくなっているのかもしれない。
地震があったときは、まだ先生がいた。
たしか、先生がいなくなったのはその後すぐだ。
魔王様と崇められる先生がいなくなったのが原因で客足が遠のいたんではなく、天災で温泉どころじゃなくなっただけかもしれない。
だとしたら、処女を生贄にして、先生を召喚するとか意味がない。
そもそも、そんな生贄で先生が召喚できるかどうかも分からない。
まあ、あの人間を辞めてしまった先生なので、100パーセントあり得ないと言い切れないけど。
「温泉街の人たちは、戦争とか天変地異でお客さんが来なくなっているって分かっていないの?」
ワタシの質問になぜか、庭に生えた木の陰から答える恵津子。
この娘(こ)もちょっとよく分からない癖がある。
「全然。全ては魔王様を呼び戻せば解決するって言ってた。やっぱり、処女の生贄だって…… でも……」
「でも?」
「すごく、会議が揉めていたの。しばらくは大丈夫だと思うわ」
それは、ちょっとだけだけといい知らせだった。
少なくとも時間はかせげる。
その間に、池内先生が帰ってくれば、生贄なんてことはなくなる。
本当に、永遠に会議は揉めてくれないかと思った。
「池内先生…… どこいっちゃったのかな」
ワタシはふと、空を見上げた。
「あ、流れ星かな、昼でも見えるんだぁ」
青い空に白い光を放つ流れ星がスーッと尾を引いて飛んで行った。
ずいぶんと長い事、見えていた。
そして、光の尾を引いて、地平線の彼方に消えて行った。
「昼でも見えるんだ。願い事言えばよかった」
「そうね」
恵津子の言葉に相槌を打つワタシ。
でも、なんでだろう。あの流れ星に願いをかけても、何も叶いそうにないとワタシは思った。
なんで、そう思ったのかは、分からないけど。
◇◇◇◇◇◇
「だから、ワシじゃぁぁ! ワシがこの手で、この指で、この目で確認すればいいのじゃ!」
プルプルと中指を1本伸ばしながら手を震わせる。
温泉街の宿屋の主人。
この温泉街で最も大きな宿を経営しており、池内先生を含む生徒たちが宿泊していた宿だ。
「あー、爺さんの確認じゃなぁ……」
「なんじゃぁぁぁ! ワシが耄碌(もうろく)しているというのかぁぁ!!! げほげほげげほげほ!」
「爺さん、興奮すんなって…… そうじゃねぇよ。生贄の処女を選ぶのに万が一の間違いも許されないんだぞ」
「ワシのゴールドフィンガーなら百発百中なのじゃぁぁ!!」
クネクネと中指を動かしながら、涎を垂らすジジイ。
もはや犯罪レベルの存在と化している。
主だったメンバーはジジイをスルーすることにした。
それでも、温泉宿の会議は紛糾していた。
この宿だけではなく、この温泉街の有力者たちが集まっている会議だった。
魔王様が消えて、何日も経過している。
徐々に客足は減少し、このままでは、温泉街の経営は危険水域に突入することが予想できた。
「戦争に、天変地異もあったって話だぞ。客足が減ったのは、それが原因で、魔王様はすぐ戻ってくるかもしれないぞ。元々魔王様いなくてもやっていたんだし……」
全員が全員、魔王様を呼び戻せというわけではないらしい。
魔王様を独占しているのは、一番大きな温泉宿であり、小さい宿は客足が減っても維持費用が少ないのでそう大きなダメージもなかった。
その分、冷静な意見もでたりしている。
「アホウか! 出来ることもやらずに、潰れるにまかせよというのか! 我々はやはり魔王様を呼び戻さなければならないのだ。もはや議論はそのような段階ではない!」
生贄強硬論は、大手の宿が中心だった。
もし、魔王様を上手く呼び出して、宿泊宿を変えさせれば、自分たちが良い目を見れると信じているからだ。
小さな、宿は魔王様の信徒(生徒)を受け入れるだけの規模が無い。
小さな宿屋の穏健な意見はこうして潰されていく。
しかし、問題は残る。
どうやって、生贄を選定するか。
確実に処女を見抜くかという方法だ。
最初は、自分が確認するという候補者が続出していた。
しかし、確実に処女を選べるかどうかというと、自信がない男たちばかりだったのだ。
しかも、宿に残った彼女たちは、魔王様の信徒である。処女の可能性は低いのではないかと言いだす者もいた。
あの魔王様を見ていれば、そう思うのは異世界も共通だった。
もしかしたら、体の構造も人間とは違う可能性もあった。
彼らは本気で悩んでいたのだ。
もし、自分が選んだ生贄で魔王を呼び戻すことができなければ、それは凄まじい責任問題となってしまうのだ。
今のところ、それを理解できていないのは、宿屋のボケ爺さんだけだった。
「女のことは、女に訊いた方がいいんじゃないか?」
誰かがポツリと漏らした。
「確かに、そうかもしれん」
ウンウンと頷きはじめる。
「そうなると、ババ様か……」
「うむ、ババ様の知恵を借りるしかあるまい」
会議は急転直下、方向性が決定してしまったのであった。
「ワシが調べるのじゃぁぁぁ! ババァの知恵など必要ないのじゃぁぁ!」
黄ばんで濁った白目をむきだして、ジジイが絶叫する。
その絶叫を背に受け、会議参加者はゾロゾロと解散していった。
◇◇◇◇◇◇
「縄じゃ…… 縄を用意するのじゃ」
動かなければしわくちゃのオブジェにしか見えないババアだった。
彼女が温泉街の生き字引とも言われるババ様だった。
生徒たちが泊まっている宿屋の爺さんがガキのころからババァという筋金入りのババアだ。
生まれた時からババアだったという説もあるくらいのババアだ。
「縄ですか? ババ様」
「そうじゃぁ、藁でいい。それで作った縄を1本もってくるのじゃぁ」
「おい! 若い奴に言って縄をもってこさせろ!」
「はい!」
温泉街の旦那衆が動きはじめていた。
ババ様の言うとおりに、縄が用意された。
「こんなもんでいいっすかね?」
若い衆が縄を持ってきた。巻き取られており長さは分からないがそれなりに長いものだ。
その、縄を見つめ「うん、うん」と頷くババ様。
「この縄の入る、入れ物を用意するのじゃ」
「うーん、なんでもいんですか? 入れば」
「いいのじゃ。ただ、燃えない入れ物でないとまずいのじゃ」
「そうっすか…… 燃えないですか……」
若い衆は首をひねりながら、借り物競争のように出て行った。
「縄に燃えない入れ物…… ババ様はいったい……」
多くの者が首をひねっている。
すぐに、若い衆は戻ってきた。
手には、バケツを持っていた。
生徒たちが持ちこんだバケツだ。
今は使わなくなって、宿の隅に置き捨てられていた。
それを見つけて持ってきたのだ。
「これなら、入るんじゃないっすか?」
ババ様はしわの中に埋没していた目をぐにゅんと飛び出させ、そのバケツを見つめる。
そして、静かにうなづいた。
「それはよい入れ物じゃ……」
「じゃあ、さっそく準備しますか? ババ様お願いします」
「よかろうさ…… では、やるとするかね」
◇◇◇◇◇◇
「なんすかこれ?」
若い衆が声を上げる。しかし、答える者はいない。
これが何かというのは分かる。
今目の前で作ったのだ。
まず、天井から縄を吊るして、火をつける。
下にはバケツを置く。
燃えてできた灰がバケツの中に落ちていく。
ドンドンバケツには灰が溜まっていく。
今、目の前ではそう言うことが行われたのだ。
若い衆の質問には「縄の燃えた灰が入ったバケツ」と答えればいい。
しかし、なんでこんなもんが必要なのかということの意味は分からなかった。
ババ様はそれを見て、ウンウンと頷くだけだ。
「で、どうすればいいんですか? ババ様」
「衝立(ついたて)じゃ、見えぬよう、ついたてを用意するのじゃ。乙女の印を調べるのじゃ、恥じらいを考えてやるのが筋じゃ」
とりあえず、ついたてが用意され、向こう側に、灰の入ったバケツ。そしてババ様が残った。
旦那衆の視界は、全て衝立(ついたて)でブラインドされた状態になっている。
「よし、それでは生贄候補の娘たちを呼んでくるのじゃ」
衝立の向こうでババ様はそう言ったのであった。
◇◇◇◇◇◇
恵津子の言うとおり、数日は平穏な日々が続いた。
特に変わったこともなく、かといって何かをするでもなく、日々は過ぎて行った。
この間、先生が戻ってくればいいと淡い期待を抱いていたけど、そう簡単にはいかなかった。
そして、とうとうその日が来てしまったのだ……
ワタシたち女子は全員、一か所に呼び出された。
そこは、温泉街のかなり奥の方にある。大きな屋敷だった。
宿屋ではなく、個人の家のようだった。
「ねえ、奈津美…… やっぱり、処女検査するのかな」
津田沼春子(つだぬまぱるこ)が声を振るわせていた。
「分からないわ…… でも、やっぱり」
気が付くとワタシの声も震えていた。
一体どんなことをされてしまうのか、恐ろしくてその場に崩れ落ちそうになった。
「ねえ、恵津子、何か知らないの?」
春子が、柱の陰でこっちをジッと見ている市原恵津子に声をかけた。
恵津子はゆっくりとこっちに、歩いてきた。
「私、聞いたの…… これは、ここのババ様という長老が、処女を見抜く儀式をする場所だって」
恵津子の言葉に、声を失うワタシと春子。
グルグルと風景が回り出す。
その場に倒れてしまいたかった。
「なによ! こんなところに、呼び出して、もう!」
「ほんとよね!」
「あーあ、いったい何する気なの? サッサとして欲しいんですけどぉぉ」
浦安音澄(うらやす ねすみ)とその取り巻きの声だった。
その声がかろうじて、ワタシの意識を現実に引きとめた。
「じゃあ、これから、儀式を行います。これは神聖な儀式です」
顔を知っている宿屋の男の人が言った。
真剣な顔だった。
そして、一人づつ、「こより」のような物を渡された。
「なんなのこれ?」
浦安音澄が不満そうに言った。
すっと、衝立の陰から小さな何かが出てきた。
びっくりした。
それは、しわくちゃななにかだった。
「ババ様――」
「ここからは、ワシが説明するのじゃよ」
そのしわくちゃな存在は「ババ様」と呼ばれた。
「オヌシたちは、一人づつ順番にこの衝立の向こうに行くのじゃ」
ババ様の声は心に直接響いてくるようだった。
文句を言っていた、浦安音澄も静かに聞いている。
「そして、下半身に身に付けている者を全て脱ぐのじゃ」
どよめきが起きた。
声にならないような悲鳴。息を飲む音が聞こえる。
一気に空気が凍りついたような気がした。
「そして、衝立の向こうのバケツをまたぐのじゃ……」
どうやら、衝立の向こうにはバケツがおいてあるらしい。
なにをさせるきなのか。
「そして、その持っている、こよりで鼻をくすぐり、くしゃみを出すのじゃ」
そして、しばしの沈黙が空間を支配する。
みんなババ様の次の言葉を待っていた。
「それで、儀式は終了じゃ――」
呆然とする空気が空間を支配する。
なにをさせたいのか、さっぱり意味が分からない。
要するに、下半身になにも身に付けず、バケツをまたいで、こよりで鼻をくすぐってくしゃみをしろと、そういうことだ。
頭が混乱してきて、なにがなんだかわからなくなってきた。
そして、順番にその儀式が始まった。
◇◇◇◇◇◇
「くしょん!」
「よし、お前はこっちじゃ……」
「へくしょん!」
「お前もこっちじゃ……」
どんどん、儀式は進んでいく。衝立の向こうからくしゃみの音が続く。
もはや、自分たちがなにをやらされているのか、全く分からない。
意味が分からない。
もう、相当人数が儀式を終わらせていた。
今のところ、全員が一か所に集められていた。
津田沼春子も、市原恵津子も、儀式を終わらせていた。
「なんの儀式なのよ! まったく」
文句を言いながらも、浦安音澄は、衝立の向こうに行く。
「はっくしょーん!」
くしゃみの音。
そして同時に、衝立の向こうから凄まじい量の灰が舞い上がってきた。
まるで煙幕のように舞い上がった。
「よし! お前はこっちじゃ」
「ほほほほ!! やっぱり、私は他の奴とは違うのね」
さっきまで、文句を言っていた浦安音澄が満足げに声を上げていた。
彼女だけ、別の場所に連れて行かれた。
そして、ワタシの番が来た。
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バケツの中に灰が入っているけど。
さっき、どうやって、浦安音澄は灰を舞い上げたんだろう……
さっぱり分からなかった。
しわくちゃの存在がこっちを見ている。
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何も起きなかった。
ワタシも他のみんなと一緒のところに並ばされた。
そして、全員の儀式が終了した。
浦安音澄以外は全員、一か所に集められた。
さすがに、一人だけになった彼女は顔色が悪くなっていた。
なんで、彼女だけ灰が盛大に舞い上がったのか……
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そして、これから始まることも、分からなかった。
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