蒼の魔法士

仕神けいた

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蒼の魔法士-本編-

Seg 26 鳴きし虫はかく喧しく -01-

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 二人ふたりが歩く先は、永遠に参道が続くように見えたが、
「はい、着いた」
 井上坂いのうえさかが立ち止まると、目の前に出発した裏木戸があった。
 戸を開けると、中ではこと葉屋はやがみっちゃんとともにお茶をすすっている。

「お、終わったかね……おうおう、これはまた……」
「ユウどん、おかえり~……って! なんじゃそのボロボロ姿は! なんの襲撃しゅうげきを受けた!?」
 みっちゃんのおどろきはもっともだ。

「た……ただいま」
 井上坂いのうえさかの上着をいだユウは、頭のてっぺんから爪先つまさきまで血にまみれ、服は破れてほぼ着ていないに等しい。
「…えーと、ちょっと転んだ」

「こんな時でもボケるんかいっ!
 ……って、芸人だましいは認めるやが、ちょっとどころやないやん! え、救急車? AED!? ツッコミが追いつかん!」
 裏手みをしたり、頭をかかえてもだえたりと、みっちゃんはいそがしい。
 そんなかれ尻目しりめに、こと葉屋はやがユウの顔をじっと見る。
「まあ、派手に転んだんやねえ」
 言葉は明るい口調だったが、そこに笑顔えがおはなかった。

 こと葉屋はやは、ユウの身体の具合を丁寧ていねいて、一つも怪我けががないことを確認かくにんすると、
つかれたろ、風呂ふろにすぐ入りな」
 初めてやさしい表情をする。
 念のためかしといてよかった、とユウに風呂ふろの場所を指した。

「ありがとうございます」
 ユウはペコリと頭を下げて風呂場ふろばへ向かった。

 脱衣場だついばには、大きなおけや波のようなみぞられた板、壁際かべぎわに設置された五段のたなには大きめのカゴが所狭ところせましとあった。ここにあるものも、ユウが見たことのないものばかりである。

 こと葉屋はや井上坂いのうえさかがどのように生活しているのか、知識がまだまだ足りないユウには想像ができなかった。

「お風呂ふろ、入ろ」
 ながめていてもらちがあかないと首をり、ユウは服をはじめる。
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