蒼の魔法士

仕神けいた

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蒼の魔法士-本編-

Seg 25 在りし絆、綴りて証 -04-

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おれもだ」
「?」
 顔の赤みをおさえられず、上気したまま井上坂いのうえさかを見る。かれは、言いにくそうに少しうつむいた。

「最初、無愛想にしていてごめん。おれたちのとこに来る客は、全員が楽して事を成そうとする大人おとなだから。
 ……だから、君みたいな子供は初めてだけど同じように考えてた」

 でも君はちがった、とかれあやまった。

「何であやまるの?」
 予想していた返事とちがう言葉に、井上坂いのうえさかは「え……?」と目を丸くする。

「ボクだって、こうやって井上坂いのうえさかさんや言の葉屋さんにたよってるよ」

「いや、君の場合は世界の方を君に合わせないといけないからだろ。それは言の葉屋とおれでないとできない事だ」
 自分でも不思議なくらい擁護ようごしている、と井上坂いのうえさかは思った。

 それもそうだ。ユウの姿に、かれのよく知る面影おもかげが重なっていることに、今気付いた。

 井上坂いのうえさかは、小さな頭をでる。
 大切に大切に、こわさないようにそっと。

「君を見ていて、なつかしい人を思い出した」
 かれひとみは、ユウを通してその人を見ている。

 恩人か友人か、はたまたおもい人か。なつかしき思いで表情がやさしげになる。
 ユウもつられてほおゆるんだ。
「きっと、その人も井上坂いのうえさかさんのこと、大切にしていると思う」
「え……?」

 ――どうして、そう思う

 言おうとしてやめた。
 ユウが言うなら、そうなのだろう。そう思えた。

「……そうだね。きっとそうだろうね」

井上坂いのうえさかさんが大切に感じているのだから、その人も井上坂いのうえさかさんのこと大切に思っている。ボクだったら、そう考えた方がうれしい」

 薄菫うすすみれひとみはまっすぐ井上坂いのうえさかを映し出す。
 とおったひとみをきれいだと、ずっと見ていたいとかれは思った。

「ねえ、ユウ……手の平を出して」
「はい?」
 急なことに戸惑とまどっていると、井上坂いのうえさかから手をばしユウの手をとる。

「わっ……!?」

おれから君へ御守おまもりの歌をつづるから。もし、危険なことにったら、この歌を歌って御覧ごらん
 そう言って、ユウの手の平に指で文字をつづった。

 つづられた文字はあわく光り、読み取ることはできなかったが、ユウの脳裏のうりに歌となって流れてきた。

「うあ……なんか、すごい」
 初めての感覚に、言葉の表現が追いつかない。

「忘れてたのを思い出したような感じがする?」
「うんっ!」
「そう、きっと役に立つよ」
 言われて喜ぶユウの顔が、井上坂いのうえさかを自然と笑顔えがおにした。
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