蒼の魔法士

仕神けいた

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蒼の魔法士-本編-

Seg 04 魔の途を知る者 -03-

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「……」

 どうして自分はアヤカシを呼んでしまうのか。
 そして、ねらわれてしまうのか。

 兄は何も言わなかった。

 いや、ユウが教えてほしいと聞かなかったのだ。
 その考えにまでは至らなかったユウだが、自分に何かしら原因があったのだとはわかっていた。

 ユウはゆっくり視線を落とす。そして、すがるように東条を見上げる。

「あの!」
「ん? 何だい?」
「ボクは、この体質を治したいんです。あなたに会えばなんとかなるってにいちゃんが言ってました。もう、にいちゃんにも周りにも迷惑めいわくをかけたくないんです。ケガをしてほしくないです……!」

 ユウはベッド上で居住まいを正し頭を下げた。

「お願いします、助けてください」

「……ぼくに君の体質を治せと?」

 東条はキョトンとする。

「はい。東条さんは――」
「ミサギでいいよ」

「え、えと……ミサギさん……は、ボクと同じ体質だって聞きました。にいちゃんも、このことはミサギさんにたのめって。手紙、預かってます」

 そう言って、ふところからヨレヨレの手紙を差し出した。

 アヤカシとの戦いで、激しく動き回ったせいだろう。

 今や希少な紙で作られた、しわだらけの手紙を、木戸がかわりに受け取り、開封かいふうしてミサギに手渡てわたす。
 ミサギの視線は文面をなぞるでもなく、一点を凝視ぎょうししていた。

「……ふぅん、ヒスイは相変わらずみたいだね」
 しばらく手紙を見つめた後、かれはそう言った。

「?」

「君も見る?」

 手紙の内容はいたってシンプルだった。と、いうより、一言だけだった。


『お好み焼きは全混ぜがいい』


「に、にいちゃん……?」

 意味不明かつ兄らしい内容に、ユウの手紙を持つ手はなんともいえないふるえ方をする。

「ものの例えを食べ物でするクセは相変わらずだ」

 ミサギには兄の言わんとしたことがわかったのか、納得なっとくするように手紙をふところへしまう。

「なるほどわかった。ヒスイもこう言っていることだし、君をしばらくぼくのところで預かることにするよ」

「えっ!? その手紙の意味わかるんですか!?」

「君はわからないのかい? ほかにどう読めと?」

「いや、どうってか……」

 さすがは兄の友人というか、類は友を呼ぶというか。ミサギが不思議そうな顔をしているのを見て、ユウは思わずため息をついた。

「さて」
 ミサギは手のひらを打つ。

「君を預かるからには、部屋へやを用意しないといけないね。木戸、準備はたのむよ。ユウ君はしばらくここで待っていて」

 矢継やつばやに言い残して、ミサギは出て行った。

「……ぷはぁ」
 ユウは、のどおくにとどまっていた空気を一気にした。
 自分が話していたわけではないのに、なぜか息を止めていたようだ。

 そして、ふと背負っていた彼女かのじょのことを思い出した。

「なんでどっかにいっちゃったんだろ?」
 んでしまったことをあやまりたかった。しかし、どこかへ行ってしまった理由はそこにあるのかもしれない。
 アヤカシなんて見たら、みな恐怖きょうふし、成す術もないのだからげるしかないのだろう。

「ご心配でしょうが、きっと無事でいらっしゃいます」

「うわびっくりした!」

 文字通りび上がっておどろいてしまったユウ。

 壁際かべぎわに、木戸が立っていたのだ。てっきりミサギについていったのかと思われたかれは、それだけ言うと、深く頭を下げて部屋へやから出て行った。

「い……いたんだ……」

「あ、そうそうそれとね」
 とびらからひょっこりとミサギが顔を見せた。

「わあっ!」

「なにその反応」
 ミサギは少しムッとする。

 ユウは、止まらない心臓のどきどきを必死におさえつつ「すいません」とあやまった。
 この屋敷やしきの住人は人をおどろかせるのが好きなのだろうか。そんな思いをよそに、ミサギは単なる連絡れんらく事項じこうを言って部屋へやはなれた。

「夕飯は七時からだから」

 廊下ろうかでは、ミサギの鼻唄はなうたひびいていた。
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