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最終章
第36話 この世界にさようなら
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駄目だった。またイメルダは死んでしまった。
イメルダは最後の力を振り絞り、自身に後戻りのできない強化魔法をかけてロイクと復讐を遂げた。
言葉を失い座り込んだセイラの目の前で、二人で幸せそうな顔で並ぶイメルダとロイク。
時よ遡れ! と何度念じても、セイラの目の前の二人が消えて時間が戻る事はない。
もうやり直す事ができない。
イメルダは私が書き換えた結末通り『幸せになった』のだ。
だからもう時を遡る事ができない。
――セ……ラ――
――セイラ!――
誰かに呼ばれて、セイラは我に帰る。セイラが振り返ると、そこには金髪の美しい男性が立っている。 セイラを呼んでいたのはザーグベルトだった。
「二人とも死んじゃった……私、頑張ったのに……」
セイラは変わらない結末に、やりきれない思いで呟く。
涙が溢れて止まらないセイラの隣で、ザーグベルトはセイラの肩を叩いて語りかけてきた。
「セイラ、異界に帰りなよ。この国の事なんて気にしないでいい。今ならそこの魔女を使って帰れるよ」
「え……」
――そうだ。絶望した魔法を使える人間を使えば帰れる。私だけじゃなくて――
セイラは勢いよく立ち上がる。そして周りを見渡して一冊の本を拾い上げた。
少し前にメランが異界へ行く儀式を行く為に読んでいた書物だ。
「ありがとう、ザーグベルト様。えっと、突然ですが…………きでした」
セイラの言葉に、ザーグベルトはよく聞こえなかったと聞き返してきた。セイラはそれを無視して儀式を開始する。
セイラが呪文を唱え始めると、床に描かれた魔法陣が白く光りだした。風が巻き起こり、騒がしく教会中を鳴らしている。
「ザーグベルト様、魔法陣から離れて。私の世界にイメルダとロイクも連れて行くね。私のいた世界だったら、きっと最高のハッピーエンドになると思うの!」
「せい……も……いく」
ザーグベルトはセイラの言葉を聞いて、何か言っていた。それが風の音で聞き取れずセイラは儀式に集中することにした。
呪文を唱え進め、詠唱が終わった所でセイラはザーグベルトに手を振って別れの挨拶をした。
「それじゃあ、さようなら」
イメルダは最後の力を振り絞り、自身に後戻りのできない強化魔法をかけてロイクと復讐を遂げた。
言葉を失い座り込んだセイラの目の前で、二人で幸せそうな顔で並ぶイメルダとロイク。
時よ遡れ! と何度念じても、セイラの目の前の二人が消えて時間が戻る事はない。
もうやり直す事ができない。
イメルダは私が書き換えた結末通り『幸せになった』のだ。
だからもう時を遡る事ができない。
――セ……ラ――
――セイラ!――
誰かに呼ばれて、セイラは我に帰る。セイラが振り返ると、そこには金髪の美しい男性が立っている。 セイラを呼んでいたのはザーグベルトだった。
「二人とも死んじゃった……私、頑張ったのに……」
セイラは変わらない結末に、やりきれない思いで呟く。
涙が溢れて止まらないセイラの隣で、ザーグベルトはセイラの肩を叩いて語りかけてきた。
「セイラ、異界に帰りなよ。この国の事なんて気にしないでいい。今ならそこの魔女を使って帰れるよ」
「え……」
――そうだ。絶望した魔法を使える人間を使えば帰れる。私だけじゃなくて――
セイラは勢いよく立ち上がる。そして周りを見渡して一冊の本を拾い上げた。
少し前にメランが異界へ行く儀式を行く為に読んでいた書物だ。
「ありがとう、ザーグベルト様。えっと、突然ですが…………きでした」
セイラの言葉に、ザーグベルトはよく聞こえなかったと聞き返してきた。セイラはそれを無視して儀式を開始する。
セイラが呪文を唱え始めると、床に描かれた魔法陣が白く光りだした。風が巻き起こり、騒がしく教会中を鳴らしている。
「ザーグベルト様、魔法陣から離れて。私の世界にイメルダとロイクも連れて行くね。私のいた世界だったら、きっと最高のハッピーエンドになると思うの!」
「せい……も……いく」
ザーグベルトはセイラの言葉を聞いて、何か言っていた。それが風の音で聞き取れずセイラは儀式に集中することにした。
呪文を唱え進め、詠唱が終わった所でセイラはザーグベルトに手を振って別れの挨拶をした。
「それじゃあ、さようなら」
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