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本編
第24話 親友同士のパジャマパーティー-1(イメルダ視点)
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イメルダは自室でセイラとお茶を飲み、親しげに話していた。
丸いテーブルの上にはロイクが入れた紅茶、マリアの焼いたクッキー、そして異界の言葉で書かれた本が数冊置いてある。
「この服? セーラー服っていうの。ええと、私の世界では学生が着る服なの」
「セーラー服ですか。ずいぶんスカートが短いデザインで変わっているわ。ところであなた、学生でしたの?」
「そうよ。あー早く家に帰りたいなぁ。とりあえず用意してくれたこの本借りていい?」
セイラは机の上にある、解読不能な文字で書かれた本を開きながらイメルダに聞いた。
「良くってよ。貴女の為に用意したのだから。本の中に、元の国に戻る手がかりが見つかるといいわね」
イメルダがそう言うと、セイラは少しだけ寂しそうに笑った。
しかしその笑顔は突然真っ黒な視界に消える。
ああ、これは夢か。イメルダがそう自覚すると、イメルダの身体は重くて動かなくなってしまった。そして後頭部がズシンと鈍く痛い。
次第に頭の痛みは強くなっていく。
イメルダは頭の中に鐘が鳴り響くような頭痛でたまらず目を見開いた。
視界に入ってきたのは、父ボザックと、母のマリアだった。
二人は涙を流して良かった、と呟く。そしてお医者様を呼んでくると言って部屋から出て行ってしまった。
部屋は先程見た夢の中と同じ場所で、見慣れたものだった。
白いテーブルクロスがかけられた丸いテーブルと、木製で薔薇の意匠がされた椅子。
大きなクローゼットと化粧台。
自宅である屋敷の自分の部屋のベッドの上にイメルダは寝ているのだと気がつく。
腕には点滴が施されており、腕から管が伸びて、鉄の棒に吊るされた点滴の袋に繋がっていた。
先程見た夢をイメルダは点滴の袋を見つめながら思い出す。
夢の中の自分とセイラはとても親しげで、まるで友達同士のようだった。
イメルダは幼い頃から友達がいない。平民から貴族の身分に成り上がった為か、周りの貴族達からは蔑まれていた。
ロイクと知り合ってからは、ロイクだけが本音で語り合える唯一の存在だった。
セイラと仲良くなるなど怖気が走るくらい嫌だが、同性の友達がいたならばあんな風に楽しくお喋りをするのだろうか。
不思議と愉快な夢見心地をイメルダは感じる。
ゴンゴン、と乱暴なノックが扉から聞こえると扉がすぐに開く。
茶色の髪の毛を揺らして、セイラが勢いよく部屋に入りイメルダの横たわるベッドに走って向かってきた。
「また死んじゃったのかと思った……びっくりさせないでよ……」
セイラに涙声で話しかけられ、イメルダは戸惑いながらセイラの顔を見る。
どうしてセイラはわたくしを心配してくれるのかしらと疑問しか浮かばない。そして疑問といえば他にもある。
ローブの女はどうなったのだろう。
「あ、あの……心配してくれてありがとう……。その、ローブの女はどうなったの?」
イメルダがセイラに問いかけたが、部屋に向かって歩く足音が聞こえた為かセイラは返事をしなかった。
ボザックとマリア、その後にハワード家の先祖の医者が入室し、最後にロイクが部屋に入って扉が閉まった。
*
老齢の医者はイメルダにもっと栄養を取らないといけない。今回倒れたのは、運動量に対して身体を維持できるほど栄養をとれていなかった事からだとイメルダに説明する。
イメルダは運動をした事、というよりも魔法を使ったからであると理解していた。
イメルダの診察を終えて、医者は点滴を外すと帰っていった。
イメルダはベッドから起き上がり、部屋を見渡す。
まずイメルダから一番遠くの壁際に立つロイクを見た。元気そうだ。イメルダがロイクに微笑むと、 ロイクは恥ずかしそうに顔を染めて微笑み返した。
部屋の中央にいるボザックとマリアは、イメルダから一番近くにいるセイラと話しながら何度も御礼を言っている。
どうやらイメルダが誘拐に遭って、セイラがそれを救ったという事になっているらしい。
「聖女様……イメルダとロイクを救ってくださりありがとうございます」
父ボザックはそう言って、深々とお辞儀をした。
「いいんですよぉ! イメルダとあたしはお友達ですものぉ! それよりもぉ、先程のお願いは聞いてくれますぅ?」
セイラは普段の耳障りな甘ったるい声と口調で応える。
「勿論……王宮にも確認して、問題ないとご返答を。イメルダ」
「はい? お父様」
突然ボザックに話しかけられイメルダは、不思議そうに返事をした。
「聖女様は暫く我が家にて、お過ごしになられるそうだ」
ボザックは目を閉じて、神妙な面持ちで語った。
「イメルダー! 今晩は乙女同士のパジャマパーティーよ!」
セイラはイメルダに向かって笑顔で手を振っている。
「………えっ……ええええ!」
突然大の苦手なセイラとこれから過ごす事を告げられ、イメルダは苦い顔をして両手で頭を抱えた。
丸いテーブルの上にはロイクが入れた紅茶、マリアの焼いたクッキー、そして異界の言葉で書かれた本が数冊置いてある。
「この服? セーラー服っていうの。ええと、私の世界では学生が着る服なの」
「セーラー服ですか。ずいぶんスカートが短いデザインで変わっているわ。ところであなた、学生でしたの?」
「そうよ。あー早く家に帰りたいなぁ。とりあえず用意してくれたこの本借りていい?」
セイラは机の上にある、解読不能な文字で書かれた本を開きながらイメルダに聞いた。
「良くってよ。貴女の為に用意したのだから。本の中に、元の国に戻る手がかりが見つかるといいわね」
イメルダがそう言うと、セイラは少しだけ寂しそうに笑った。
しかしその笑顔は突然真っ黒な視界に消える。
ああ、これは夢か。イメルダがそう自覚すると、イメルダの身体は重くて動かなくなってしまった。そして後頭部がズシンと鈍く痛い。
次第に頭の痛みは強くなっていく。
イメルダは頭の中に鐘が鳴り響くような頭痛でたまらず目を見開いた。
視界に入ってきたのは、父ボザックと、母のマリアだった。
二人は涙を流して良かった、と呟く。そしてお医者様を呼んでくると言って部屋から出て行ってしまった。
部屋は先程見た夢の中と同じ場所で、見慣れたものだった。
白いテーブルクロスがかけられた丸いテーブルと、木製で薔薇の意匠がされた椅子。
大きなクローゼットと化粧台。
自宅である屋敷の自分の部屋のベッドの上にイメルダは寝ているのだと気がつく。
腕には点滴が施されており、腕から管が伸びて、鉄の棒に吊るされた点滴の袋に繋がっていた。
先程見た夢をイメルダは点滴の袋を見つめながら思い出す。
夢の中の自分とセイラはとても親しげで、まるで友達同士のようだった。
イメルダは幼い頃から友達がいない。平民から貴族の身分に成り上がった為か、周りの貴族達からは蔑まれていた。
ロイクと知り合ってからは、ロイクだけが本音で語り合える唯一の存在だった。
セイラと仲良くなるなど怖気が走るくらい嫌だが、同性の友達がいたならばあんな風に楽しくお喋りをするのだろうか。
不思議と愉快な夢見心地をイメルダは感じる。
ゴンゴン、と乱暴なノックが扉から聞こえると扉がすぐに開く。
茶色の髪の毛を揺らして、セイラが勢いよく部屋に入りイメルダの横たわるベッドに走って向かってきた。
「また死んじゃったのかと思った……びっくりさせないでよ……」
セイラに涙声で話しかけられ、イメルダは戸惑いながらセイラの顔を見る。
どうしてセイラはわたくしを心配してくれるのかしらと疑問しか浮かばない。そして疑問といえば他にもある。
ローブの女はどうなったのだろう。
「あ、あの……心配してくれてありがとう……。その、ローブの女はどうなったの?」
イメルダがセイラに問いかけたが、部屋に向かって歩く足音が聞こえた為かセイラは返事をしなかった。
ボザックとマリア、その後にハワード家の先祖の医者が入室し、最後にロイクが部屋に入って扉が閉まった。
*
老齢の医者はイメルダにもっと栄養を取らないといけない。今回倒れたのは、運動量に対して身体を維持できるほど栄養をとれていなかった事からだとイメルダに説明する。
イメルダは運動をした事、というよりも魔法を使ったからであると理解していた。
イメルダの診察を終えて、医者は点滴を外すと帰っていった。
イメルダはベッドから起き上がり、部屋を見渡す。
まずイメルダから一番遠くの壁際に立つロイクを見た。元気そうだ。イメルダがロイクに微笑むと、 ロイクは恥ずかしそうに顔を染めて微笑み返した。
部屋の中央にいるボザックとマリアは、イメルダから一番近くにいるセイラと話しながら何度も御礼を言っている。
どうやらイメルダが誘拐に遭って、セイラがそれを救ったという事になっているらしい。
「聖女様……イメルダとロイクを救ってくださりありがとうございます」
父ボザックはそう言って、深々とお辞儀をした。
「いいんですよぉ! イメルダとあたしはお友達ですものぉ! それよりもぉ、先程のお願いは聞いてくれますぅ?」
セイラは普段の耳障りな甘ったるい声と口調で応える。
「勿論……王宮にも確認して、問題ないとご返答を。イメルダ」
「はい? お父様」
突然ボザックに話しかけられイメルダは、不思議そうに返事をした。
「聖女様は暫く我が家にて、お過ごしになられるそうだ」
ボザックは目を閉じて、神妙な面持ちで語った。
「イメルダー! 今晩は乙女同士のパジャマパーティーよ!」
セイラはイメルダに向かって笑顔で手を振っている。
「………えっ……ええええ!」
突然大の苦手なセイラとこれから過ごす事を告げられ、イメルダは苦い顔をして両手で頭を抱えた。
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