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四章 〜原作突入〜
七十六話 『少女漫画のヒーロー』
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美穂ちゃんと王子の勝負は常に争いが起きた。と言っても、王子は言い争いなんてしてないし、美穂ちゃんもしてない。
つまり、本人達ではなく、周りの人間達が言い争いをしているのだ。
と言っても、王子のファン達が騒いでいるだけなのだが。
今の王子はライバル心を燃やしているだけだから恋心は抱いてないだろうし、そもそも王子は恋愛に興味無いみたいだから大丈夫だと思うけどね。……今のところは、ね。
「…月坂さん、ちょっといい?」
不意にそんな声が聞こえてくる。あー、この声は――。
「如月くん……?どうかした?」
如月葵。王子――伊集院冬馬のライバルであり私と同じ『当て馬』だ。
当て馬ポジなのに、人気が高くてイケメンなため女子人気が高い。……透華とは全く、正反対である。
しかも、性格もいいときたものだ。その上、頭も良い。何こいつ。私とは全く……扱いが違うじゃない!同じ当て馬同士なのに!!
「いや、ちょっと話したいことがあって……」
この時期に如月くんが美穂ちゃんに話したいことって……何だ?漫画で語られてない部分だし。まぁ、スピンオフとかなら別だけど……
「は?あの女……伊集院様だけじゃなく、如月くんまで!?」
「許せないわ!!」
うわーー!女子達の怒りの声が聞こえる……これ、美月さんと一緒の状況じゃん……!最悪だよ……。
私はただでさえ面倒臭い状況にいるというのに、さらに厄介なことが起きてしまったことに絶望するしかなかった。
「ねぇ、皆さん、月坂さんって調子に乗ってると思いませんか?」
緑川がそんなことを言っている。そんなことを言う暇があるのなら勉強しろよ。そんなんだから私に負けるんだぞ。
だが、私の思いとは裏腹に話はどんどん進んでいく。
「ええ!月坂美穂をどうにかしないと!」
うーわっ、めんどくせぇ~!王子か西園寺来いや!こんな時に二人ともどこにいるんだよぉ~!この女子達の混乱を止められるのはお前らしか居ないのに!
「……緑川さん」
不意に、そんな声が聞こえた。低く、ドス黒いオーラを感じる声だ。……この声の正体が美月さんであることと理解するのに時間はかからなかった。
そしてその瞬間、教室内の空気が変わったような気がした。
まるで一瞬にして時間が止まったかのように静まり返ったのだ。
その空間には殺気のようなものを感じ取れた。
「な、何よ。水瀬さん……」
緑川の顔が引きつっている。……まぁ、緑川に同意するわけでもないけど、気持ちはわかる。だって怖いもん。そんなことを思っていると、美月さんが口を開く。
「そんなくだらないことまだするんですか?」
み、美月さん、カッコイイー!!めっちゃクールやんけ!あの時とは全く違う姿だぜ。マジで最高です!
「は?あんたがそれを言うの?あいつがいないと何もできない癖にさ~」
……ん?なんか雲行き怪しくなってきたんだけど……まさかとは思うけど喧嘩するつもりなのか?殴り合いでも始めるつもりですか? 私がそう思ったその時だった。
「何やってるの、お前たち?」
聞き覚えのある声と共に、扉が開かれた。そこには――
「い、伊集院様!?どうしてここに……」
「は?自分のクラスなんだからいてもおかしくは無いだろう?」
王子が現れた。……助かったぁ~!これで何とかなるかも!!王子は卑怯なことと卑劣なことが嫌いだから、この状況を見たらきっと止めてくれるはず!
「くだらねーことしてんじゃねーよ」
ギロリと睨みつけるように、女子達に言い放つ。すると彼女たちはすぐに黙り込んだ。
流石は王子だ。カリスマ性もあるし、人望も厚いし、顔もいいし、頭もいいし、運動神経抜群だし……
何だこいつ~~!完璧超人じゃねえか!!少女漫画のヒーローなんだから当たり前だけどさぁ!!!
「良かった……伊集院様がきてくれて」
なんて美月さんはほっとした顔でそう言った。
つまり、本人達ではなく、周りの人間達が言い争いをしているのだ。
と言っても、王子のファン達が騒いでいるだけなのだが。
今の王子はライバル心を燃やしているだけだから恋心は抱いてないだろうし、そもそも王子は恋愛に興味無いみたいだから大丈夫だと思うけどね。……今のところは、ね。
「…月坂さん、ちょっといい?」
不意にそんな声が聞こえてくる。あー、この声は――。
「如月くん……?どうかした?」
如月葵。王子――伊集院冬馬のライバルであり私と同じ『当て馬』だ。
当て馬ポジなのに、人気が高くてイケメンなため女子人気が高い。……透華とは全く、正反対である。
しかも、性格もいいときたものだ。その上、頭も良い。何こいつ。私とは全く……扱いが違うじゃない!同じ当て馬同士なのに!!
「いや、ちょっと話したいことがあって……」
この時期に如月くんが美穂ちゃんに話したいことって……何だ?漫画で語られてない部分だし。まぁ、スピンオフとかなら別だけど……
「は?あの女……伊集院様だけじゃなく、如月くんまで!?」
「許せないわ!!」
うわーー!女子達の怒りの声が聞こえる……これ、美月さんと一緒の状況じゃん……!最悪だよ……。
私はただでさえ面倒臭い状況にいるというのに、さらに厄介なことが起きてしまったことに絶望するしかなかった。
「ねぇ、皆さん、月坂さんって調子に乗ってると思いませんか?」
緑川がそんなことを言っている。そんなことを言う暇があるのなら勉強しろよ。そんなんだから私に負けるんだぞ。
だが、私の思いとは裏腹に話はどんどん進んでいく。
「ええ!月坂美穂をどうにかしないと!」
うーわっ、めんどくせぇ~!王子か西園寺来いや!こんな時に二人ともどこにいるんだよぉ~!この女子達の混乱を止められるのはお前らしか居ないのに!
「……緑川さん」
不意に、そんな声が聞こえた。低く、ドス黒いオーラを感じる声だ。……この声の正体が美月さんであることと理解するのに時間はかからなかった。
そしてその瞬間、教室内の空気が変わったような気がした。
まるで一瞬にして時間が止まったかのように静まり返ったのだ。
その空間には殺気のようなものを感じ取れた。
「な、何よ。水瀬さん……」
緑川の顔が引きつっている。……まぁ、緑川に同意するわけでもないけど、気持ちはわかる。だって怖いもん。そんなことを思っていると、美月さんが口を開く。
「そんなくだらないことまだするんですか?」
み、美月さん、カッコイイー!!めっちゃクールやんけ!あの時とは全く違う姿だぜ。マジで最高です!
「は?あんたがそれを言うの?あいつがいないと何もできない癖にさ~」
……ん?なんか雲行き怪しくなってきたんだけど……まさかとは思うけど喧嘩するつもりなのか?殴り合いでも始めるつもりですか? 私がそう思ったその時だった。
「何やってるの、お前たち?」
聞き覚えのある声と共に、扉が開かれた。そこには――
「い、伊集院様!?どうしてここに……」
「は?自分のクラスなんだからいてもおかしくは無いだろう?」
王子が現れた。……助かったぁ~!これで何とかなるかも!!王子は卑怯なことと卑劣なことが嫌いだから、この状況を見たらきっと止めてくれるはず!
「くだらねーことしてんじゃねーよ」
ギロリと睨みつけるように、女子達に言い放つ。すると彼女たちはすぐに黙り込んだ。
流石は王子だ。カリスマ性もあるし、人望も厚いし、顔もいいし、頭もいいし、運動神経抜群だし……
何だこいつ~~!完璧超人じゃねえか!!少女漫画のヒーローなんだから当たり前だけどさぁ!!!
「良かった……伊集院様がきてくれて」
なんて美月さんはほっとした顔でそう言った。
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