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四章 〜原作突入〜

七十四話 『女の戦い』

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緑川と華鈴様は相性は悪い。それはもう最悪の一言で言い表せるくらいには悪い。
そんな二人を同じ空間にいるのがめちゃくちゃ気まずい。なーんか、バチバチ火花散らしてるし……


「あら。華鈴様もいらっしゃったんですね?」


「ええ。いたわよ。緑川さんの目は節穴なのかしら?」


華鈴様……凄く煽ってますやん……でも、その気持ちすっごくわかる!私もこの女は嫌いだから煽る気持ち分かる!!……けど、ここで喧嘩されても困るんだよねぇ……!


「……あ!あの!私そろそろバイトなので失礼します!」


早口でそう言いながら私はその場を去った。緑川には後日バカにされそうだけどそんなこと知ったこっちゃない!だって、今は一刻も早くこの場から立ち去りたいんだもん!


「は?あんたまだバイトなんてやってるの?」


緑川のバカにした声が聞こえるけど無視するに限る。
さて、今日のシフトは五時からだったはずだし、そろそろ行かないと間に合わないし。


「はぁー。疲れた……」


今日一日だけでどっと疲労感が押し寄せてくる。
なんだろう。今日は厄日かな?なんか変なことに巻き込まれるし……。


「……あら。透華さん。まだバイトまで時間があるんじゃなかったかしら?」


いつのまにか店の目の前まで来ていたみたいで美穂ちゃんにめっちゃくちゃ驚かれた。まぁ、三十分前に来たしね。そりゃ驚くよね。


「ええ……でも、ちょっと厄介ごとに巻き込まれて……」


「へぇ。そうなの……ま、学校にいる透華さんって遠巻きで見てたら女を侍らせるハーレム野郎にしか見えないものね」


え!?私、そんなイメージ持たれてるの!?ハーレム野郎って何それ初耳だよ!? というより、私の認識ではみんな友達感覚なんだけれども……!


「私も透華さんと話したいですけどね。学校でも」


「そ、それは私も同じよ!!」


だってー。美穂ちゃんって可愛いし優しいし面白いし最高じゃん?話したいと思うの当然だと思うんだけどなぁ……内部生の男子も密かに狙っている人、多いらしいし。


「……あ、話し込んでたら交代の時間過ぎてしまいましたね」


時計を見ると確かにあと数分で交代の時間になっていた。……というわけで、私は裏口から店に入り、制服へと着替え始める。
そして、いつも通り接客をこなしていく。


今日は平日だし、花を買ってくるお客さんは少ないからそこまで忙しくはない。
それにしても…。


「(……そろそろ中間テストよね)」


中間テスト。それは『貴花』にとってとても重要なイベントである。…だって美穂ちゃんが学年一位に君臨するだもの!それで本格的に王子に認識されるんだよねぇ。


原作だといじめにあったシーンを助けた時点で認識されていたけど、何かこの世界線は違うから本格的に認識するのは中間テストからになるから……あれ?特に原作に逸れてない気がしてきたぞ……? 


あ、そういえば……私、明日日直じゃなかったっけ?一分間スピーチとかあるんだよなー、今月のテーマは『願い事が一つ叶うのなら?』だったはず。


このテーマを初めて聞いた時、『お金』と思ったのだけど周りの人は健康とか災害とか戦争のない平和な国に生まれたいとか言っていたような気がする。自分の心の汚さに軽く自己嫌悪に陥った記憶がある。


結局、言うことはまとまらずに終わってしまったのだけれど…うーーん、どうしようかな。


「あ、あの、すみません。花を買いたいんですけど……」


……っと。考え事をしていたらお客様が来たようだ。私は思考を中断して仕事に集中することにした。


△▼△▼


バイト終わり。私は車に乗りながら家に向かっている最中だった。
ふぅ……。今日は疲れたわ。主に精神的に。美月さんと花咲さんのことが遠い過去のように思えるくらいには疲れたわ。そう思いながら窓の外を見つめていると、


「お嬢様……今日はいつも以上にお疲れですね……」


運転している執事が心配した様子で話しかけてきた。そんなに疲れた顔してたかしら?


「バイトは関係ないの。バイトというより人間関係が面倒だっただけよ」


「人間関係、ですか。まぁ、お嬢様は年頃の女性ですからそういうこともあるでしょう」


と、言って特に追及してくることはなかった。
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