上 下
74 / 94
四章 〜原作突入〜

七十四話 『女の戦い』

しおりを挟む
緑川と華鈴様は相性は悪い。それはもう最悪の一言で言い表せるくらいには悪い。
そんな二人を同じ空間にいるのがめちゃくちゃ気まずい。なーんか、バチバチ火花散らしてるし……


「あら。華鈴様もいらっしゃったんですね?」


「ええ。いたわよ。緑川さんの目は節穴なのかしら?」


華鈴様……凄く煽ってますやん……でも、その気持ちすっごくわかる!私もこの女は嫌いだから煽る気持ち分かる!!……けど、ここで喧嘩されても困るんだよねぇ……!


「……あ!あの!私そろそろバイトなので失礼します!」


早口でそう言いながら私はその場を去った。緑川には後日バカにされそうだけどそんなこと知ったこっちゃない!だって、今は一刻も早くこの場から立ち去りたいんだもん!


「は?あんたまだバイトなんてやってるの?」


緑川のバカにした声が聞こえるけど無視するに限る。
さて、今日のシフトは五時からだったはずだし、そろそろ行かないと間に合わないし。


「はぁー。疲れた……」


今日一日だけでどっと疲労感が押し寄せてくる。
なんだろう。今日は厄日かな?なんか変なことに巻き込まれるし……。


「……あら。透華さん。まだバイトまで時間があるんじゃなかったかしら?」


いつのまにか店の目の前まで来ていたみたいで美穂ちゃんにめっちゃくちゃ驚かれた。まぁ、三十分前に来たしね。そりゃ驚くよね。


「ええ……でも、ちょっと厄介ごとに巻き込まれて……」


「へぇ。そうなの……ま、学校にいる透華さんって遠巻きで見てたら女を侍らせるハーレム野郎にしか見えないものね」


え!?私、そんなイメージ持たれてるの!?ハーレム野郎って何それ初耳だよ!? というより、私の認識ではみんな友達感覚なんだけれども……!


「私も透華さんと話したいですけどね。学校でも」


「そ、それは私も同じよ!!」


だってー。美穂ちゃんって可愛いし優しいし面白いし最高じゃん?話したいと思うの当然だと思うんだけどなぁ……内部生の男子も密かに狙っている人、多いらしいし。


「……あ、話し込んでたら交代の時間過ぎてしまいましたね」


時計を見ると確かにあと数分で交代の時間になっていた。……というわけで、私は裏口から店に入り、制服へと着替え始める。
そして、いつも通り接客をこなしていく。


今日は平日だし、花を買ってくるお客さんは少ないからそこまで忙しくはない。
それにしても…。


「(……そろそろ中間テストよね)」


中間テスト。それは『貴花』にとってとても重要なイベントである。…だって美穂ちゃんが学年一位に君臨するだもの!それで本格的に王子に認識されるんだよねぇ。


原作だといじめにあったシーンを助けた時点で認識されていたけど、何かこの世界線は違うから本格的に認識するのは中間テストからになるから……あれ?特に原作に逸れてない気がしてきたぞ……? 


あ、そういえば……私、明日日直じゃなかったっけ?一分間スピーチとかあるんだよなー、今月のテーマは『願い事が一つ叶うのなら?』だったはず。


このテーマを初めて聞いた時、『お金』と思ったのだけど周りの人は健康とか災害とか戦争のない平和な国に生まれたいとか言っていたような気がする。自分の心の汚さに軽く自己嫌悪に陥った記憶がある。


結局、言うことはまとまらずに終わってしまったのだけれど…うーーん、どうしようかな。


「あ、あの、すみません。花を買いたいんですけど……」


……っと。考え事をしていたらお客様が来たようだ。私は思考を中断して仕事に集中することにした。


△▼△▼


バイト終わり。私は車に乗りながら家に向かっている最中だった。
ふぅ……。今日は疲れたわ。主に精神的に。美月さんと花咲さんのことが遠い過去のように思えるくらいには疲れたわ。そう思いながら窓の外を見つめていると、


「お嬢様……今日はいつも以上にお疲れですね……」


運転している執事が心配した様子で話しかけてきた。そんなに疲れた顔してたかしら?


「バイトは関係ないの。バイトというより人間関係が面倒だっただけよ」


「人間関係、ですか。まぁ、お嬢様は年頃の女性ですからそういうこともあるでしょう」


と、言って特に追及してくることはなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

深窓の悪役令嬢~死にたくないので仮病を使って逃げ切ります~

白金ひよこ
恋愛
 熱で魘された私が夢で見たのは前世の記憶。そこで思い出した。私がトワール侯爵家の令嬢として生まれる前は平凡なOLだったことを。そして気づいた。この世界が乙女ゲームの世界で、私がそのゲームの悪役令嬢であることを!  しかもシンディ・トワールはどのルートであっても死ぬ運命! そんなのあんまりだ! もうこうなったらこのまま病弱になって学校も行けないような深窓の令嬢になるしかない!  物語の全てを放棄し逃げ切ることだけに全力を注いだ、悪役令嬢の全力逃走ストーリー! え? シナリオ? そんなの知ったこっちゃありませんけど?

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

転生したら攻略対象者の母親(王妃)でした

黒木寿々
恋愛
我儘な公爵令嬢リザベル・フォリス、7歳。弟が産まれたことで前世の記憶を思い出したけど、この世界って前世でハマっていた乙女ゲームの世界!?私の未来って物凄く性悪な王妃様じゃん! しかもゲーム本編が始まる時点ですでに亡くなってるし・・・。 ゲームの中ではことごとく酷いことをしていたみたいだけど、私はそんなことしない! 清く正しい心で、未来の息子(攻略対象者)を愛でまくるぞ!!! *R15は保険です。小説家になろう様でも掲載しています。

皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした

葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。 でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。 本編完結済みです。時々番外編を追加します。

目が覚めたら夫と子供がいました

青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。 1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。 「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」 「…あなた誰?」 16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。 シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。 そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。 なろう様でも同時掲載しています。

【完結】伝説の悪役令嬢らしいので本編には出ないことにしました~執着も溺愛も婚約破棄も全部お断りします!~

イトカワジンカイ
恋愛
「目には目をおおおお!歯には歯をおおおお!」   どごおおおぉっ!! 5歳の時、イリア・トリステンは虐められていた少年をかばい、いじめっ子をぶっ飛ばした結果、少年からとある書物を渡され(以下、悪役令嬢テンプレなので略) ということで、自分は伝説の悪役令嬢であり、攻略対象の王太子と婚約すると断罪→死刑となることを知ったイリアは、「なら本編にでなやきゃいいじゃん!」的思考で、王家と関わらないことを決意する。 …だが何故か突然王家から婚約の決定通知がきてしまい、イリアは侯爵家からとんずらして辺境の魔術師ディボに押しかけて弟子になることにした。 それから12年…チートの魔力を持つイリアはその魔法と、トリステン家に伝わる気功を駆使して診療所を開き、平穏に暮らしていた。そこに王家からの使いが来て「不治の病に倒れた王太子の病気を治せ」との命令が下る。 泣く泣く王都へ戻ることになったイリアと旅に出たのは、幼馴染で兄弟子のカインと、王の使いで来たアイザック、女騎士のミレーヌ、そして以前イリアを助けてくれた騎士のリオ… 旅の途中では色々なトラブルに見舞われるがイリアはそれを拳で解決していく。一方で何故かリオから熱烈な求愛を受けて困惑するイリアだったが、果たしてリオの思惑とは? 更には何故か第一王子から執着され、なぜか溺愛され、さらには婚約破棄まで!? ジェットコースター人生のイリアは持ち前のチート魔力と前世での知識を用いてこの苦境から立ち直り、自分を断罪した人間に逆襲できるのか? 困難を力でねじ伏せるパワフル悪役令嬢の物語! ※地学の知識を織り交ぜますが若干正確ではなかったりもしますが多めに見てください… ※ゆるゆる設定ですがファンタジーということでご了承ください… ※小説家になろう様でも掲載しております ※イラストは湶リク様に描いていただきました

処理中です...