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三章〜出会いと別れ〜
六十七話 『嫌な予感』
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――緑川が彼氏に振られたという噂が流れた。イケメンで高身長の彼氏だっただけにショックが大きいようだ。
……でも、私が思うには緑川は彼氏と別れたからといって落ち込むようなタイプではないと思うんだけどな……。
むしろ、緑川って別れた彼氏に恨み事を言う。……そんなイメージがあるんだけど――、
「正直、ざまみろーって感じー。緑川のことあんまり好きじゃなかったし」
「わかる!私もそう思ってた!」
不意に聞こえてきた女子たちの会話が私の耳に入った。私は思わず声の主の方を見た。すると彼女たちはいつも緑川と一緒にいるグループの子たちだ。
いつもは私のことを見下し、嘲笑っている緑川の取り巻きたちが、今は楽しげに笑いながら話しているのだ。
「(……取り巻きなんて所詮こんなものか)」
漫画でも現実でも同じ。結局、人間の本質というのは変わらないものだ。結局、『仲良しごっこ』をしているだけなのだ。
「あ~あ、なんか気分悪くなったわぁ……」
緑川のことは腹立つし、嫌いだけど……流石にこの光景を見てると胸糞悪い。なんというか、こうモヤッとするものがあるし……
「あら。彼氏に振られた緑川すみれさんじゃないですか?ご機嫌いかが?」
不意にそんな声が聞こえてきた。それは明らかに挑発するような口調であり、馬鹿にした言い方であった。
「……あらぁ?顔色が悪く見えるけど大丈夫かしらぁ?」
めちゃくちゃ煽っている。……いや、これはもう喧嘩を売ってると言ってもいいくらいだろう。まぁ、緑川も緑川でめちゃくちゃ煽ってるわけだしどっこいどっこいだよね。
「うるさい!」
案の定、彼女はキレて大声で叫んだ。まぁ、人は余裕がないときほど大きな声を出すものなので仕方ないと言えば仕方ないだろう。
「こわーい」
とぼけたように言う女生徒。……うん、これはムカつくね。
「うるさいって言ったのよ!あんな奴、いい男じゃないんだから!」
「あらぁ?いい男じゃなかったんですねぇ。それなのに付き合ってたんですねぇ。ふぅん」
……うわぁ、すげえ煽りまくりやん。ここまで来るとある意味尊敬するレベルだよ。
緑川は顔を真っ赤にして震え、そして拳を握りしめていた。どう見てもブチギレ寸前である。
しかし、ここで暴力沙汰を起こすのはまずいと理性が残っているようでなんとか堪えているようだった。
緑川が黙ったことで、今度は彼女がニヤリとした笑みを浮かべて、
「あらぁ?何も言えないんですかぁ?」
……流石にこれはやりすぎだと思う。いくらなんでもいじめすぎるのはよくないし、何より相手は女の子だ。
止めるべきだろうと私が思ったそのとき――。
「おい」
王子が現れた。
彼は堂々とした態度で緑川達の前に現れる。
「お前ら道の邪魔になってんだよ」
緑川を庇うかと思いきや、そんな発言だった。まぁ、王子らしいっちゃらしいんだけどさ……もう少しやり方あるんじゃないですかね……
「す、すみません。伊集院様」
「わかればいい。……そうそう、こんなところで喚くな。周りに迷惑がかかる。……振られるのはメンタル的に辛いんだからあまり煽るな」
最後の最後で緑川にフォローを入れている。王子の言葉を聞いた女子達はバツの悪い顔をしてこの場に居づらくなってしまったのか、そそくさと去って行った。
「……ったく、胸糞わりぃな」
吐き捨てるようにそう呟いた後、王子はそのまま去っていった。……まぁ、王子も失恋したことはあるからそう言っただけなんだろうけど。
「伊集院様……」
再び一人になった緑川は先ほどの出来事を思い出しながら小さく彼の名を口にする。その頬は少し紅潮していた。……これってもしかすると……恋の始まり的な感じか?
「(……いやな予感がする…)」
私はこれから起こるであろう出来事に不安を感じずにはいられなかった。
……でも、私が思うには緑川は彼氏と別れたからといって落ち込むようなタイプではないと思うんだけどな……。
むしろ、緑川って別れた彼氏に恨み事を言う。……そんなイメージがあるんだけど――、
「正直、ざまみろーって感じー。緑川のことあんまり好きじゃなかったし」
「わかる!私もそう思ってた!」
不意に聞こえてきた女子たちの会話が私の耳に入った。私は思わず声の主の方を見た。すると彼女たちはいつも緑川と一緒にいるグループの子たちだ。
いつもは私のことを見下し、嘲笑っている緑川の取り巻きたちが、今は楽しげに笑いながら話しているのだ。
「(……取り巻きなんて所詮こんなものか)」
漫画でも現実でも同じ。結局、人間の本質というのは変わらないものだ。結局、『仲良しごっこ』をしているだけなのだ。
「あ~あ、なんか気分悪くなったわぁ……」
緑川のことは腹立つし、嫌いだけど……流石にこの光景を見てると胸糞悪い。なんというか、こうモヤッとするものがあるし……
「あら。彼氏に振られた緑川すみれさんじゃないですか?ご機嫌いかが?」
不意にそんな声が聞こえてきた。それは明らかに挑発するような口調であり、馬鹿にした言い方であった。
「……あらぁ?顔色が悪く見えるけど大丈夫かしらぁ?」
めちゃくちゃ煽っている。……いや、これはもう喧嘩を売ってると言ってもいいくらいだろう。まぁ、緑川も緑川でめちゃくちゃ煽ってるわけだしどっこいどっこいだよね。
「うるさい!」
案の定、彼女はキレて大声で叫んだ。まぁ、人は余裕がないときほど大きな声を出すものなので仕方ないと言えば仕方ないだろう。
「こわーい」
とぼけたように言う女生徒。……うん、これはムカつくね。
「うるさいって言ったのよ!あんな奴、いい男じゃないんだから!」
「あらぁ?いい男じゃなかったんですねぇ。それなのに付き合ってたんですねぇ。ふぅん」
……うわぁ、すげえ煽りまくりやん。ここまで来るとある意味尊敬するレベルだよ。
緑川は顔を真っ赤にして震え、そして拳を握りしめていた。どう見てもブチギレ寸前である。
しかし、ここで暴力沙汰を起こすのはまずいと理性が残っているようでなんとか堪えているようだった。
緑川が黙ったことで、今度は彼女がニヤリとした笑みを浮かべて、
「あらぁ?何も言えないんですかぁ?」
……流石にこれはやりすぎだと思う。いくらなんでもいじめすぎるのはよくないし、何より相手は女の子だ。
止めるべきだろうと私が思ったそのとき――。
「おい」
王子が現れた。
彼は堂々とした態度で緑川達の前に現れる。
「お前ら道の邪魔になってんだよ」
緑川を庇うかと思いきや、そんな発言だった。まぁ、王子らしいっちゃらしいんだけどさ……もう少しやり方あるんじゃないですかね……
「す、すみません。伊集院様」
「わかればいい。……そうそう、こんなところで喚くな。周りに迷惑がかかる。……振られるのはメンタル的に辛いんだからあまり煽るな」
最後の最後で緑川にフォローを入れている。王子の言葉を聞いた女子達はバツの悪い顔をしてこの場に居づらくなってしまったのか、そそくさと去って行った。
「……ったく、胸糞わりぃな」
吐き捨てるようにそう呟いた後、王子はそのまま去っていった。……まぁ、王子も失恋したことはあるからそう言っただけなんだろうけど。
「伊集院様……」
再び一人になった緑川は先ほどの出来事を思い出しながら小さく彼の名を口にする。その頬は少し紅潮していた。……これってもしかすると……恋の始まり的な感じか?
「(……いやな予感がする…)」
私はこれから起こるであろう出来事に不安を感じずにはいられなかった。
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