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三章〜出会いと別れ〜

六十六話 『バレタイン』

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あれから数ヶ月が経った。緑川の勝負を勝ったり負けたりしながら過ごしているうちに、バレンタインデーを迎えた。


バレンタイン、それは女子にとってとても大事な日である。好きな人に想いを伝えることができる数少ない機会なのだから。


だから今年の女子達は本気だ。ギラギラと目を光らせている。目線の先は見るまでもなく、王子や西園寺などのイケメン達だろう。


まぁ、王子は受け取る気ゼロだろうな……王子って甘いもの大嫌いだし。香織様の手作りチョコレートはいつも受け取って嬉しそうに食べてるけど。


でも、今年は香織様のチョコレートはないだろうし、今年は誰も受け取らないだろうな……


そして西園寺の方は……


「はい。これあんたにあげる。義理だけど」


華鈴様が西園寺に渡してる……ここに玲奈様がいれば全力で華鈴様のことを揶揄っていた光景だ。まぁ、玲奈様は聖フローラ学園にいるからいないんだけど。


それにしても、こんなに人がめちゃくちゃいるところで渡すんだな……華鈴様って照れ屋さん……というかツンデレなのに。


「うん、ありがとう。白鷺さん」


西園寺、凄く嬉しそうな顔してるよ。まぁ、そりゃそっか。好きな人からの贈り物なんだもんね。そりゃ嬉しいよね。西園寺に贈ろうとしてた女子の手が止まったし。


あんな幸せそうな西園寺の顔見たら『敵わない』とか思っちゃうよね。それに華鈴様って敵も多いけど隠れファンも沢山いるし。


「伊集院様、あの品川様の告白とチョコレートを断ったらしいですわ!」


品川って……確か学園のマドンナ的存在だった人だよな? そんな子からの告白断ったのか!?


「伊集院様はやはりまだ香織様のことが好きなんでしょうか……?諦めた、と仰っていましたけれど……」


いや、それはないんだよなぁ。だって本当にあれ以来本当に邪魔しなくなったし。お兄様からも何も言われてないし。多分もう大丈夫だと思う。
それなら何故断ったのか……答えは単純だ。恐らく……とゆうか、間違いなく、興味がないのだろう。


美穂ちゃんが来たら興味が湧くと思うけど。


「透華様……」


そんなことを思っていると、声をかけられる。振り返るとそこには――


「あら。美月さんに佐川さんではありませんか!どうしたんです?」
美月さんと佐川がこちらに向かって歩いてきていたのだ。2人は私の前で立ち止まる。


「これ友チョコ作ったんで貰ってくれませんかね……?」


そう言って差し出された袋の中にはクッキーが入っていた。可愛らしくラッピングされている。


「もちろん頂きますわ!ありがとうございます!」


2人の手を取りながら言う。すると、少し頬を赤めながら笑みを浮かべてくれた。……この二人、めちゃくちゃ仲良くなってないか?……いや、嬉しいよ?


仲良いことはいいことだし。でもなんかちょっと寂しいような……?てゆうか、私……


「ご、ごめんなさい……私もらえると思ってなくて……その……用意してませんでした……」


「大丈夫ですわ。私が勝手に渡したいと思っただけですから」


「そうですよ。気にしないでください」


美月さんはともかく、佐川は何か裏がありそうで嫌なんだよね……。まぁ、今は考えないようにしよう。美月さんと一緒だし。


「そ、そうですか。なら、ホワイトデーには絶対返しますから!」


ホワイトデー。男の子が女の子へ想いを伝える日だが、最近は女の子でも返す人は多いらしいし。それに――、


「(お兄様は香織様を渡すだろうし、お兄様と一緒に選ぼう……)」


なんて思っていたら、


「しつこいな!いらねーって言ったろ!!」


突然怒号が聞こえてきた。王子の声だ。めちゃくちゃしつこい女子がいたんだろうな……


「伊集院様が嫌がっているのに無理矢理渡そうとするなんておこがましいにも程があるわ!」


緑川の呟きを聞きながら私は次の授業の準備をした。
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