66 / 94
三章〜出会いと別れ〜
六十六話 『バレタイン』
しおりを挟む
あれから数ヶ月が経った。緑川の勝負を勝ったり負けたりしながら過ごしているうちに、バレンタインデーを迎えた。
バレンタイン、それは女子にとってとても大事な日である。好きな人に想いを伝えることができる数少ない機会なのだから。
だから今年の女子達は本気だ。ギラギラと目を光らせている。目線の先は見るまでもなく、王子や西園寺などのイケメン達だろう。
まぁ、王子は受け取る気ゼロだろうな……王子って甘いもの大嫌いだし。香織様の手作りチョコレートはいつも受け取って嬉しそうに食べてるけど。
でも、今年は香織様のチョコレートはないだろうし、今年は誰も受け取らないだろうな……
そして西園寺の方は……
「はい。これあんたにあげる。義理だけど」
華鈴様が西園寺に渡してる……ここに玲奈様がいれば全力で華鈴様のことを揶揄っていた光景だ。まぁ、玲奈様は聖フローラ学園にいるからいないんだけど。
それにしても、こんなに人がめちゃくちゃいるところで渡すんだな……華鈴様って照れ屋さん……というかツンデレなのに。
「うん、ありがとう。白鷺さん」
西園寺、凄く嬉しそうな顔してるよ。まぁ、そりゃそっか。好きな人からの贈り物なんだもんね。そりゃ嬉しいよね。西園寺に贈ろうとしてた女子の手が止まったし。
あんな幸せそうな西園寺の顔見たら『敵わない』とか思っちゃうよね。それに華鈴様って敵も多いけど隠れファンも沢山いるし。
「伊集院様、あの品川様の告白とチョコレートを断ったらしいですわ!」
品川って……確か学園のマドンナ的存在だった人だよな? そんな子からの告白断ったのか!?
「伊集院様はやはりまだ香織様のことが好きなんでしょうか……?諦めた、と仰っていましたけれど……」
いや、それはないんだよなぁ。だって本当にあれ以来本当に邪魔しなくなったし。お兄様からも何も言われてないし。多分もう大丈夫だと思う。
それなら何故断ったのか……答えは単純だ。恐らく……とゆうか、間違いなく、興味がないのだろう。
美穂ちゃんが来たら興味が湧くと思うけど。
「透華様……」
そんなことを思っていると、声をかけられる。振り返るとそこには――
「あら。美月さんに佐川さんではありませんか!どうしたんです?」
美月さんと佐川がこちらに向かって歩いてきていたのだ。2人は私の前で立ち止まる。
「これ友チョコ作ったんで貰ってくれませんかね……?」
そう言って差し出された袋の中にはクッキーが入っていた。可愛らしくラッピングされている。
「もちろん頂きますわ!ありがとうございます!」
2人の手を取りながら言う。すると、少し頬を赤めながら笑みを浮かべてくれた。……この二人、めちゃくちゃ仲良くなってないか?……いや、嬉しいよ?
仲良いことはいいことだし。でもなんかちょっと寂しいような……?てゆうか、私……
「ご、ごめんなさい……私もらえると思ってなくて……その……用意してませんでした……」
「大丈夫ですわ。私が勝手に渡したいと思っただけですから」
「そうですよ。気にしないでください」
美月さんはともかく、佐川は何か裏がありそうで嫌なんだよね……。まぁ、今は考えないようにしよう。美月さんと一緒だし。
「そ、そうですか。なら、ホワイトデーには絶対返しますから!」
ホワイトデー。男の子が女の子へ想いを伝える日だが、最近は女の子でも返す人は多いらしいし。それに――、
「(お兄様は香織様を渡すだろうし、お兄様と一緒に選ぼう……)」
なんて思っていたら、
「しつこいな!いらねーって言ったろ!!」
突然怒号が聞こえてきた。王子の声だ。めちゃくちゃしつこい女子がいたんだろうな……
「伊集院様が嫌がっているのに無理矢理渡そうとするなんておこがましいにも程があるわ!」
緑川の呟きを聞きながら私は次の授業の準備をした。
バレンタイン、それは女子にとってとても大事な日である。好きな人に想いを伝えることができる数少ない機会なのだから。
だから今年の女子達は本気だ。ギラギラと目を光らせている。目線の先は見るまでもなく、王子や西園寺などのイケメン達だろう。
まぁ、王子は受け取る気ゼロだろうな……王子って甘いもの大嫌いだし。香織様の手作りチョコレートはいつも受け取って嬉しそうに食べてるけど。
でも、今年は香織様のチョコレートはないだろうし、今年は誰も受け取らないだろうな……
そして西園寺の方は……
「はい。これあんたにあげる。義理だけど」
華鈴様が西園寺に渡してる……ここに玲奈様がいれば全力で華鈴様のことを揶揄っていた光景だ。まぁ、玲奈様は聖フローラ学園にいるからいないんだけど。
それにしても、こんなに人がめちゃくちゃいるところで渡すんだな……華鈴様って照れ屋さん……というかツンデレなのに。
「うん、ありがとう。白鷺さん」
西園寺、凄く嬉しそうな顔してるよ。まぁ、そりゃそっか。好きな人からの贈り物なんだもんね。そりゃ嬉しいよね。西園寺に贈ろうとしてた女子の手が止まったし。
あんな幸せそうな西園寺の顔見たら『敵わない』とか思っちゃうよね。それに華鈴様って敵も多いけど隠れファンも沢山いるし。
「伊集院様、あの品川様の告白とチョコレートを断ったらしいですわ!」
品川って……確か学園のマドンナ的存在だった人だよな? そんな子からの告白断ったのか!?
「伊集院様はやはりまだ香織様のことが好きなんでしょうか……?諦めた、と仰っていましたけれど……」
いや、それはないんだよなぁ。だって本当にあれ以来本当に邪魔しなくなったし。お兄様からも何も言われてないし。多分もう大丈夫だと思う。
それなら何故断ったのか……答えは単純だ。恐らく……とゆうか、間違いなく、興味がないのだろう。
美穂ちゃんが来たら興味が湧くと思うけど。
「透華様……」
そんなことを思っていると、声をかけられる。振り返るとそこには――
「あら。美月さんに佐川さんではありませんか!どうしたんです?」
美月さんと佐川がこちらに向かって歩いてきていたのだ。2人は私の前で立ち止まる。
「これ友チョコ作ったんで貰ってくれませんかね……?」
そう言って差し出された袋の中にはクッキーが入っていた。可愛らしくラッピングされている。
「もちろん頂きますわ!ありがとうございます!」
2人の手を取りながら言う。すると、少し頬を赤めながら笑みを浮かべてくれた。……この二人、めちゃくちゃ仲良くなってないか?……いや、嬉しいよ?
仲良いことはいいことだし。でもなんかちょっと寂しいような……?てゆうか、私……
「ご、ごめんなさい……私もらえると思ってなくて……その……用意してませんでした……」
「大丈夫ですわ。私が勝手に渡したいと思っただけですから」
「そうですよ。気にしないでください」
美月さんはともかく、佐川は何か裏がありそうで嫌なんだよね……。まぁ、今は考えないようにしよう。美月さんと一緒だし。
「そ、そうですか。なら、ホワイトデーには絶対返しますから!」
ホワイトデー。男の子が女の子へ想いを伝える日だが、最近は女の子でも返す人は多いらしいし。それに――、
「(お兄様は香織様を渡すだろうし、お兄様と一緒に選ぼう……)」
なんて思っていたら、
「しつこいな!いらねーって言ったろ!!」
突然怒号が聞こえてきた。王子の声だ。めちゃくちゃしつこい女子がいたんだろうな……
「伊集院様が嫌がっているのに無理矢理渡そうとするなんておこがましいにも程があるわ!」
緑川の呟きを聞きながら私は次の授業の準備をした。
0
お気に入りに追加
64
あなたにおすすめの小説
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
深窓の悪役令嬢~死にたくないので仮病を使って逃げ切ります~
白金ひよこ
恋愛
熱で魘された私が夢で見たのは前世の記憶。そこで思い出した。私がトワール侯爵家の令嬢として生まれる前は平凡なOLだったことを。そして気づいた。この世界が乙女ゲームの世界で、私がそのゲームの悪役令嬢であることを!
しかもシンディ・トワールはどのルートであっても死ぬ運命! そんなのあんまりだ! もうこうなったらこのまま病弱になって学校も行けないような深窓の令嬢になるしかない!
物語の全てを放棄し逃げ切ることだけに全力を注いだ、悪役令嬢の全力逃走ストーリー! え? シナリオ? そんなの知ったこっちゃありませんけど?
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
一年で死ぬなら
朝山みどり
恋愛
一族のお食事会の主な話題はクレアをばかにする事と同じ年のいとこを褒めることだった。
理不尽と思いながらもクレアはじっと下を向いていた。
そんなある日、体の不調が続いたクレアは医者に行った。
そこでクレアは心臓が弱っていて、余命一年とわかった。
一年、我慢しても一年。好きにしても一年。吹っ切れたクレアは・・・・・
転生したら攻略対象者の母親(王妃)でした
黒木寿々
恋愛
我儘な公爵令嬢リザベル・フォリス、7歳。弟が産まれたことで前世の記憶を思い出したけど、この世界って前世でハマっていた乙女ゲームの世界!?私の未来って物凄く性悪な王妃様じゃん!
しかもゲーム本編が始まる時点ですでに亡くなってるし・・・。
ゲームの中ではことごとく酷いことをしていたみたいだけど、私はそんなことしない!
清く正しい心で、未来の息子(攻略対象者)を愛でまくるぞ!!!
*R15は保険です。小説家になろう様でも掲載しています。
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした
葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。
でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。
本編完結済みです。時々番外編を追加します。
目が覚めたら夫と子供がいました
青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。
1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。
「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」
「…あなた誰?」
16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。
シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。
そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。
なろう様でも同時掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる